間話12 魔王と姫の……
ヒヨシマルがチームメンバーを探しに行き、私と魔王様は二人きりになりましたわ。
——チャーンス!
ここで、一気に魔王様との仲を……
仲を……
あら?
えーっと、どうやって仲良くなったら良いんですの?
えーっと、えーっと……
……あああ、どうしましょう。
今まで、殿方にこんな事を意識して話したことなんて無かったですわ。
一体、どうすれば良いんですのー!?
「時に、スノウディアどの」
「ひゃい!?」
いやぁぁ!?
急に話しかけられて、変な声が出てしまいましたわ。
魔王様に変に思われたらどうしましょう……
「 そ な たの様な姫君が、どうして探索者などを?」
「——えっ?」
魔王様が、なぜ私の事を知ってるんですの?
「な、なぜ私が姫だと……?」
「いや今し方、ふと思い出したのだ。そなた、5年前の皇都での会合に来ておったであろう?」
5年前の、イースタン・インペリウム……?
ふわぁぁぁぁ!?
そっ、そんな昔の事覚えてらっしゃいますの!?
私なんてすっかり忘れてましたのに。
あれは確か、諸侯であるお父様が皇都にお呼ばれした際に、家族みんなで行くことになったのでしたわね。
そういえば、初めて魔王様を見たのはその時だったかもしれませんわ。
「よ、よく覚えてらっしゃるのですね」
直接お会いしたわけでもないのに、私のことをちゃんと覚えておられたのですね。
ひょっとして、魔王様は私のこと……
ああああ。
なんだか、胸が熱く——
「なに、海馬筋と大脳皮質筋は日頃から鍛えておるからな。記憶力には自信がある」
——え?
今なんて?
「かいば……きん?」
「うむ、毎日の脳トレでその辺りは特に重点的に鍛えておる。最近ではダンベル30kgも行けるようになった」
「そ、そうですの……」
おっしゃってる言葉がさっぱり分かりませんわ。
脳トレ?
脳トレって、計算とか文字のクイズとか、間違い探しとかじゃありませんの?
ダンベル30kg?
持ち上げますの?
どうやって???
「あの時のそなたはもう少し幼かったゆえ、思い出すのに時間がかかった。王族独特の雰囲気がなければ尚の事気が付かなかったであろう」
「えっ……ど、どうして……」
雰囲気が漏れて……?
まさか、王隠銀靴の魔法が切れてましたの!?
とっさに足元へ目を……
おかしいですわね、ちゃんと機能してますわ。
「ああ、王隠銀靴は私には効かぬぞ。我が眼力はその手の隠蔽魔道具を貫通する」
すっ、すげーですわ。
王隠銀靴の魔法を打ち破るなんて、この国の人間では誰も出来ませんのよ。
驚いた顔で魔王様を見つめると、魔王様も私を見つめてましたわ。
——っ。
なんだか気恥ずかしくて俯いてしまいますわ。
「ふむ。しかし、よもやここまで美しく成長するとはな……」
「えっ、やっ……そっ、そんな美しいだなんて……」
「謙遜することはない、まさに噂に違わずだ。お父上のウェルホーム殿も鼻が高かろう」
「もう、魔王様ったら、お上手なんですからぁ……」
こんなの、両手を頬に当てて身悶えしてしまいますわぁ。
——はっ!?
こんな、スライムみたいにぐねぐねふにゃふにゃとするなんて、淑女として相応しい姿とは言えませんわ。
——コホン。
小さく咳払い。
姿勢を正して、改めて魔王様に向き合いまして……と。
「あの、魔王様」
「うむ? 何かね?」
「魔王様は……その……お付き合いされてる方とか居られませんの? こんな所で私などを口説いている場合ですの?」
そこなのですよね……
いくら舞い上がった所で、魔王様が心に決めた方がすでにいらっしゃったなら、私は身を引くしかありません。
魔王様を諦めて、他の殿方を探さないといけませんわ。
……本当に。
……切実に。
人外との邂逅的に考えて……
「む、口説いたつもりはなかったのだが……確かにそうとも取れるな。失礼した」
「いえ、失礼だなんて……」
「しかし、その心配は無用だ。我には共に想い合う女性などおらぬ」
「それは……」
「服が無く、ありのままでいる。それは常に隠していなければならない者達にとっては異物でしか無いのだ」
「魔王様、私は……」
「その点、そなたは変わっておる方よな」
「えっ?」
「我に壁を作る事なく接してきた女性など、数えられるほどしかおらぬ。ましてや妙齢の者となるとなおさらだ」
「……お嫌でした?」
「いや、むしろ好ましく思う……ありがとう姫よ、これからも良き友人でいて欲しい」
「魔王様……もちろんですわ」
そこは友人止まりですのね。
いいえ、まだまだこれからですわ。
なんとしても魔王様には、私に惚れていただきますわ。
……正直どうしたら惚れてもらえるのかなんて分かりませんけど。
いっそ私から……いえ、淑女がそんなはしたないこと……恥ずかしくてできませんわ。
お母様も、お父様から求婚されたわけですし、殿方が淑女に求婚するのが筋というものですわね。
それにしても、もう、なんでこの方は全裸なんですの?
これさえなければ、人柄も何もかも申し分ありませんのに。
こうなったら子分に絶対、魔王様の服を作らせなければなりませんわ。
お尻を引っ叩いてでも作らせてやりますわ!




