間話10
「ハーイ、ではそろそろ転生してみよかー」
死神の間延びした言い方のせいだろうか。
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
あ、もう転生できるのか。
「すまんなー。これ以上引っ張ると、読者の皆様から他の伏線多すぎて忘れたって言われそうな気がしたもんでな」
?
「最近は出番も無かったしな」
???
「……スマン、こっちの事情や。気にせんでええ」
……いや、気になるんだが。
「文句があるなら、そいつは“太古の創造神・サクーシャ”にぶつけたって。ワイのせいやない」
誰だよ!?
「ワイもそろそろ本来の業務に戻らんといかんさかい、堪忍したってや。転生後は悪いことにはならんようにしとくさかい」
……はあ。
いずれにしろ拒否権とかは無いんだろう?
そろそろ講義ばっかり聞くのも飽きてきてたし良いよ。
「助かるわぁ。それでな、転生後のキミは前にも言うたように、モブやってもらうことんなっとる」
具体的にはどんな役——
あ、いや待って。
そもそも、物語を書いているのって、誰?
少なくとも人間じゃ無いよね?
「これは話したことなかったかな。あらゆる世界のいたる所に創話神ってのがおるねん。世界で起きる全ての物語は神のシナリオに沿って流れていくんや」
なんだって……?
じゃあ、物語の中に居るときは神に操られてるってことか?
自分の意思は無い?
「自由意志も計算に入れてのシナリオや、神ってものを人間のスケールでは測ってはあかんで。まあ、たまに神が思いもよらん考えや行動に至る奴もおるけどな」
そうなったらシナリオ崩壊するんじゃないか?
「そこは創造神によりけりやな、笑いながら余裕でシナリオ書き換える神も居れば、奇声発して踊り出す神も居れば、固まったままン百年も動かんくなる神もおる」
3分の2は崩壊するんだな。
「まあ、エタる(*)だけやさかい心配いらん」
(* 英語のeternal(永遠)から派生した、小説やゲームなどの創作が途中で頓挫して未完となることを指す言葉)
えたる?
どう言うこと?
「いや、こっちの話や。とにかくシナリオ崩壊については、あんさんは気にせんでええ」
気にするなと言われると気にな——
「そ・れ・で・や。ファニィバーシアでも創話神が何柱かおってな。その内の一柱が魔王をネタに書いとってな、モブ役の魂連れてくるよう頼まれとったんよ。あんさんにそれやってもらおと思ってな」
魔王……
ああ、あの全裸の。
「そそ、あの全裸の魔王な。君の転生するシナリオ上のポイントは、魔王が伝説の仕立て屋ん所に行って、なんやかんやあって迷宮に潜るところんなった所や」
なんやかんやって……
そこ知らなくて大丈夫なの?
「今から説明するさかい。まず魔王は服を作ろ思うたわけや。せやけど、魔王は普通の服は着れん。ここは大丈夫やな」
ああ、服を着たら弾け飛ぶんだっけ。
「で、魔王が目をつけたんが“伝説の仕立て屋”ことノーワン・ドンラーガっちゅう男や」
伝説にも色々あるんだって、死んでから知ったよ。
「で、魔王が会いに行ったところ、爆発を経てパンツを作ろうっちゅう流れになった」
……?
えーと……
どういうこと?
「“弾け飛ぶ現象”の検証で魔王に服着せる → 爆発。オッケー?」
オッケー? じゃねえよ。
弾け飛ぶって、爆発するほどだったのかよ。
そんで、爆発からなんで話がパンツに行くんだよ。
「“ラスボス衣装もパンツから”って言うやろ。基礎は大事やで」
言わねえよ!
千里の道も一歩からみたいな言い方すれば誤魔化せると思うなよ。
「そこで誤魔化される君が好き(はあと)」
キモイわ!
わかった、パンツを作るね。
面倒だからそれでいいよ。
「そんでな、パンツを作るための材料が足りひん事がわかってな。材料をストックしとるノーワンの国のお城まで行かなあかん様なったわけや」
パンツ一つで、随分とまた大変な事になってるんだな。
「ところが、路銀がこれまた足りひん。そこでノーワンの弟子が材料を取りに向かいつつ、路銀を稼ぐため迷宮に潜ることんなった」
さらに遠回りしだしたよ。
本当にパンツ作れんの?
「さらに問題があってな。ノーワンの弟子は、仕立て屋の弟子だけあって、迷宮なんぞ潜ったことあらへんかってん。そこで魔王が同行を申し出たっちゅうわけや」
あー。
確か魔王は高難易度の迷宮踏破者なんだっけ?
「そそ、せやからノーワンの弟子はもう文字通り“大船に乗った”気分で意気揚々と迷宮に向かう事になったんやな」
気楽なもんだね。
「で、ここから君の出番や。ノーワンの弟子はこれから迷宮に潜るための——」
ちょっと待った。
「どないした?」
今思ったんだが……
いちいち迷宮に潜らなくても、魔王が路銀だせば済む話じゃないの?
王様ならお金たくさん持ってるだろ?
「そこに気づくとは……」
お、なんだ?
ひょっとして、結構いいとこ突いてた?
「わりと普通やな」
普通かよ!?
「誰もが思うことやしな。ついでに、そこから先に考えが及ばん所が甘い」
甘いって……何がさ?
「魔王は何人類やった?」
確か魔人類とかいう……
「せや、魔人類の脳みそどうなっとるか覚えとる?」
えっと、確か——あ。
「そう、あいつらの頭ん中に詰まっとるのは“筋繊維”や。あんさんらの常識を当てはめてはアカン。おそらく、魔王は“何も考えとらん”。迷宮行くのか、じゃあ一緒に行こうぐらいなもんやと思うで」
な、なるほど……
「さっ、いよいよ大詰めや、あんさんにやってもらうのはな——」
この後、死神から詳しい役割について聞かされた。
話を聞きながら、ふと思った。
この白い床と黄色い空も、そろそろ見納めになるんだなと。
ここは不思議と落ち着ける場所で悪くなかった。
「——てな感じで頼むで」
死神が目の前に、縦長の楕円形をした光るものを作り出した。
ブーンと低い唸り声のような音が出ている。
これは転生門と言うらしい。
これを潜れば、いよいよ転生だ。
セリフちゃんと言えるかなぁ。
魂だけになっても緊張するんだな……




