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ネコミミよ、この世界のしるべとなれ  作者: 金子ふみよ
第三章

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出撃

 兵士が報告を上げる場合、正確さが速さを上回る。それは日本だろうが、地球だろうが、ピコライト国だろうが変わりはしない。だから研究室に飛び込んできた兵士が、あるいはその兵士に伝令を促した上官が誤っているとは考えられない。事態としてはネコミミ部隊が出動しなければならないような何者かが出現している。ただ、ネコミミ部隊はそれが《災悪》であると断定されたことに納得はできていなかった。というのも、《災悪》の出現にはネコミミ部隊が感知する能力がある。その知覚がないのだ。しかし、室長は異質な存在であるのは間違いないと断言した。とすれば、《災悪》ではないが《災悪》っぽい何かが現れた、と推論するに至るわけなのだが、とするならば、ネコミミ部隊が直面しなければならない問題が新たに現れたことになる。ただでさえ《災悪》絡みの問題を完全に処理できているわけではないのだ。

 とはいえ、

「ヘンシン!」

 カトゥンが疾走中にネコミミを装着。それに引き続いてデイザンもイングロードも、

「「ヘンシン!」」

 ネコミミを装着する。

 向かうは城下近くの林。といっても奥深く進む場所ではない。かといって入口というわけでもない。というより、入り口から扇形に木々が破壊・なぎ倒されていた。かの者はそういう風にして林の中に進行しているのだ。

「待て!」

 そのまがまがしい背に叫ぶ。カトゥンに並び疾走を止めた。

それは歩みを止め、ゆっくりと振り返った。

「なっ!」

「うそだろ」

「どうして」

 カトゥンもデイザンもイングロードも驚嘆で言葉が続かない。

「おい、どうなってる」

 巨大化したウキヨの背中にまたがった春日大とイトラスが到着。

「私を乗り物扱いしているのはダイの方ではないか」

 首根っこをつまみあげられた上に、乗馬ならぬ乗猫と相成ったわけである。春日大としてはバスとでも言ってやろうかと思ったのだが、当地に該当する名詞があるかどうか不明なため放っておくことにした。ミミ関連の情報源にしてのっぴきならない存在をしてこのぞんざいである。少々の愚痴で収まったことをむしろ感謝した方がいい。

 みるみると小さくなるウキヨの背から飛び降りると、

「あれも、いや……」

 困惑のまま、すでに変身済みのネコミミ部隊の顔を覗く。頭部もフルフェイス形の装備を被っているわけだから、表情を読み取ることはできないのだが、春日大へ一言も告げられないという一点だけで尋常ではないと解釈して間違いではないのだ。

 となれば、博識の猫に尋ねるべきである。なのだが、それよりも

「イトラス、どうした?」

 陽気な眷属がわなわなとしていた。

「背子様。人でもミミでもないものが来てしまった」

 恐れているのか泣きそうなのか、懇願でもしそうな表情になっていた。そんなシリアスな場面のはずなのに春日大は必死にこらえたことがあった。だが、

「お前が言うか」

 すっかりご機嫌を損ねたウキヨが吐き捨てるように言った。思わずしっかりと肉球を握った春日大は、「よく言ってくれた」と言わんばかりの激しいシェイクハンドである。

「私の扱いをぞんざいにするな」

 奪い取るように自らの前足を春日大の手から引っこ抜いた。

「しかし、これで分かった。それはネコミミではない!」

 悠然と指をさす春日大。

「だが……」

「それもそうか」

「だったら、あれは」

 ネコミミ部隊はいまだ困惑を隠しきれてない。なぜなら彼らの目の前にいるのはネコミミらしきものを装着しているのだった。イトラスのような頭部にちょこんではない。部隊と同じように頭部に装着し、装甲で身を包んでいるのだ。

「ウキヨ、説明してくれ。あれはいったい何なんだ」

 春日大の大声の問いに、

「分からん」

 猫様は解答を放棄しやがった。

「分からんて……」

 逆ギレして詰問しそうな春日大に可憐な肉球を見せつける。触って落ち着けとでも言いたいのだろうか、と手を伸ばすと、

「だ~か~ら、いつもいつもいつも。あれが何なのか分からんと言っただけで、あれがネコミミではないということは断言できる。最後まで話しを聞け」

 断定をしてくれた。それはいいのだが、それは先ほど春日大が確信的に叫んだはずである。

「つまり、ネコミミを偽造したということだ」

 その一言が春日大もネコミミ部隊もハッとさせた。

「ということは、製作者がいて、それはネコミミについて何かしら熟知しており、大人しく人目を忍ぶわけではないということか」

「おおむねそう言うことだろうな。ネコミミについて、となれば絞りようもあるだろ」

 ネコミミ部隊を凝視するウキヨにつられて、春日大はカトゥンの様子を覗いた。微細だが背筋が伸びたように見えたからである。

「まずはこいつをどうにかしないとならないのは、変わらんてわけだ」

 イヌミミを取り出す春日大。イトラスに時の声をしそうである。

「変身!」

 頭部にイヌミミを着け、ポージングアクション。見る見るうちに春日大の身体が装甲化されていく。

「カトゥン、仕切れ!」

 作戦立案と攻撃パタンは、この複数のメンバーが参戦している以上、専門家に任せておくべきである。

「お前は好きなように動け。私たちは私たちで戦う」

 部隊長の言うことが最もである。いきなり新参者が連係プレーに加われるはずはない。それこそ修練と切磋琢磨の日々の積み重ねでできることである。変に関われば、むしろその効果的な戦法を台無しにしかねない。

「分かった。俺はイトラスとコンビで当たる。邪魔ならそう言ってくれよ」

「ああ、無理はするなよ」

 そうして春日大プラスイトラスおよびネコミミ部隊vs疑似ネコミミとの戦闘が始まった。


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