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ネコミミよ、この世界のしるべとなれ  作者: 金子ふみよ
第二章

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ウキヨによる補足説明

「はあ、そろそろいいか」

 重く重くため息をついたのはウキヨだった。実に嘆かわしいとでも言わんほどである。しかもその視線はピコライトのネコミミ部隊と研究室室長、および官僚に向けられている。

「ネコミミを発見し調整したまでは認めてやろう、室長」

 ウキヨからお褒めの言葉をいただいて情緒不安定になっていた室長が安堵の色を見せた。

「この国の文明力が創造したのではないネコミミは、かつての民が作り出したものだ。イヌミミも、まあイトラスが言ったようなことだ。それはピコライト国の前身とは言えない。どことも言えない。が、確かに人々は願いのため、神の力を顕現させるためにミミを作り出したのだ。そうしなければ回避できない災悪があったからだ。そして彼らはどうにかこうにか災悪を退けることはできた。かといって永劫の安寧と言うわけではなかった。ネコミミやイヌミミを巡っての人々の争い、などと言っている場合ではなかった。災悪は身を変え、手を変え繰り返しやって来るのだ。お前たちはそれを《災悪》と呼んでいるのだろう? そんな時に人同士で争うのは徒労でしかない。人は望むものだろう。どんなに過酷な環境に直面しても、安心を平穏を幸福を愛を。だからそれらのためにネコミミを使っていたのだ。しかし、《災悪》はそこに的を絞ったのだ。秩序が保たれている時間が流れると人は警戒を解く、そのことに。人々はネコミミを忘れ、《災悪》は人々を一掃はせず小出しに侵食し狂わせ自滅させるようにしていった。それから時は流れて、というわけだ」

 滔滔と語るものだから喉を鳴らす間もなく一同聞き入っていた。

「やはりネコミミは人々の暮らしを守るために使うのだ、間違ってない!」

 女騎士がお墨付きをもらったのでイトラスににらみを利かせながら手をぎゅっと力強く握った。

 室長も依然として鼻高々になっている。

 デイザンもイングロードも妙に感心をしている。

「ところで、ウキヨさんはどうしてそうもお詳しいのでしょうか」

 感心に関しては春日大も負けず劣らずだが、全く骨の髄まで承服している感じがなかったのは語調に無自覚に隠れていた。

「あたりまえだ。設計者に助言を与え、オオカミの心配の溜飲を下げさせたのは私なのだから」

 それを聞き逃さなかったのだろう。喝にも等しい答えだった。絶句よりも呼吸が止まってしまった一同。この虎猫はどう見ても老猫ではない。

「歳! 歳聞いた方がいいって」

「いや、あのちんまいのが言っていることが本当とは」

「シッ。聞こえるって」

「でも本当だった神話のオオカミってのと対等。ってことは……」

 漏れる小声が混とんな状況を如実に表していた。

「ウキヨ、様……?」

 明後日の方を向きながら言いにくそうに滑舌悪くなっているのは、こういう時にこういう役を押し付けられる者である。すなわち異人なら、怒られはしないだろうということで。

「様はいらない。信じるも信じまいも、言ってしまえば聞いた者に委ねられる。それより、ここに至って再確認しておかなければならんことがある。それが分かるか?」

 ネコミミ部隊も室長も官僚も首をかしげる中、男子高校生が

「こうも雁首揃えたってことか」

「そうだ」

 オオカミとかいう神様的存在と肩を並べる付喪神みたいな存在から花丸をいただいた。

「さすが背子様。かぶっているネコらとは大違い」

 イトラスに懐かれるのはまあいいとしても、慣用句が微妙にずれているのに、ネコミミの装着をかぶると表現するならば、それはそれとして存外的外れでもないので、一概に否定できない。

「特にイヌミミが、それを使用できる者、異世界から来訪するとは」

 ウキヨは計るような視線を春日大に向けた。

「ミミを適切に使ってもらえるようにならなくては、確実にこの国は滅亡することは断言できる」

 つまりはミミが出そろい、なおかつイヌミミまで現れたというのは単に考古学的発見の歓喜と、もろ手を挙げて喜んでいる状況ではなく、むしろ喫緊な状況であるのだと裏打ちしていると証明しているのだ。

「私たちは十全にネコミミを使えてない、そういうことを言いたいのか」

 カトゥンは急いているようだ、というより困惑しているのだろう。意図せず、室長にも視線が向かう。

「私たちができるのは分析。それこそ開発者の意図とか込めた性能とか、分析が不十分とか言われたら、研究を続けますとしか答えようがないわ」

お手上げみたいに肩をすくませてから、無念さと諦念が混じったように息を一つ吐いた。

「この国を守りたいか、ネコたち」

 虎猫がネコミミを持つ人間たちへ確認を取る。春日大が表情をしかめたのはそんなギャグみたいなネタのせいばかりではなかった。ただ、それが明確な一言になってないため、ネコミミ部隊をジト目で見るしかなかった。

 そのネコミミ部隊は息を飲んで決然とした表情で一同が頷いた。

「なに、このコント」

 もうこらえきれずになって春日大は愚痴ってしまった。

「他人事ではないぞ、ダイ」

 ウキヨが春日大を見た。まさにタイガーアイの光沢がしきりに言外に訴えかけてきた。

「これを使いこなすことが出来たなら、俺は帰れるのか?」

 策謀ではない。知略でもない。率直な問いだった。しかし、その返答如何によっては放り出すという選択もなくはないのだ。

 ウキヨは目を細くした。

「容易ではない、だろうがな」

 含みのある笑みを浮かべた。春日大は大きく息を吐いた。

「で、何をすればいい」

 ピコライト国と日本の物理的距離を測定することは不可能である。光年単位なのか、あるいは人間の測定ではとらえられないほどなのか、それさえも。イヌミミで来た上は帰る方法もあるはずだ。ひょんなことで来たのに、ひょんなことで帰れない以上、イヌミミを探るしかない。一人では無理だが、室長がいるし、さらにはミミに関して熟知していると思われる虎猫もいるし、眷属の獣人もいる。となれば、春日大に選択肢は一つしかないのだ。

「修練、しかないだろ」

 イトラスのいかいも作為的な作り笑いに、春日大だけでなくミミを持つ誰しもが息を飲んだ。


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