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茶色いノート  作者: ふりまじん
魔法の呪文

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作者、幽霊作家をかたる11


「熊浦の正体をまずは披露しましょう。未完1の文月の話を私に話してくれる?」

作者はコーヒーを手に私を見る。

「はい。」

私は返事をして、何か素敵なBGMを考えました。

春の夜風の精霊は魅力的な音を出す特別のヴァイオリンを持っているのです。

サン=サースンの『死の舞踏』をお願いしましょう。この曲は19世紀のフランスの音楽家サン=サースンによって作曲されました。

『死の舞踏』とは、ヨーロッパの概念で王様でも富豪でも死を避けることはできないというもので、芸術家が音楽や絵画、小説などに表現する普遍のテーマです。

この曲はアンリ・カザリスの詩からインスパイヤーを受けて作曲されたと言われています。


さあ、この甘美で不気味な調べに乗って物語を始めましょう。

夜はふけて外は闇。雪が溶け、冬の寒さに形を保たれた獣の骸は土の上で息づいた生命の働きにより朽ちゆき土に帰り、新たな生命へと生まれ変わるのです。


世紀を超えて語り継がれた『悪霊』もまた、電子の世界で新たな物語へと変貌するのです。

主人公は文月。二代後半。出版社に中途採用で就職1年目。

ミステリー雑誌の編集部に所属しています。そして、春が近い2月のある日、喫茶店に人を呼び出して相談に乗ってもらおうとしています。

彼の出版社の作家江戸川乱歩が連載途中で書けなくなったと逃亡したのです。

編集長は乱歩を探し、そして、社員全員に呼びかけるのです。乱歩の止めた『悪霊』の結末を探せ。と。

それを見つけられた人間には金一封と昇進を約束すると。


田舎に婚約者を待たせている文月はこのチャンスを掴んで、出世して結婚したいと思っていました。

推理小説なんて書いたことはありませんが、とにかく、このチャンスに乗ることにしたのでした。

何しろ、失敗しても失うものなんてありませんし、恋人は自分が迎えに来るのを待っているのですから。


文月は考えます。自分でも小説を書くような先輩たちと密室殺人のトリックを探しても負けるだけです。

ここは何か、面白い提案をして目立つ方がいいと。

編集部の噂では、この『悪霊』は密室殺人ではないからミステリの解決編はないんだと乱歩先生が言っていたらしいのです。なんでも、催眠で被害者の曽根子を操り、自分で服を脱がせ、精神力?怪しの力で曽根子を浮き上がらせてカミソリを操って殺害した。と、そういったというのです。

みんなはバカにしていました。でも、文月はそこを素直に受け取って、どういった手口を使えるのか、近代的な超常現象の話を聞こうと、神秘ミステリーマガジンの編集長を少し前までやっていた大学の先輩の向井に相談しようとしていたのです。


やってきた向井は一通り話を聞いて、『悪霊』がモキュメンタリーである事を指摘して、現実世界で物語をまとめられる可能性を示唆します。

そして、登場人物にモデルがいる可能性を話します。何か、モデルになる事件、登場人物がいるのではないかと。

そして、物語の降霊会のメンバーから熊浦という人物に焦点を当てて、この人物のモデルを探そうと、そう話すのです。


「本当に、この話、面倒臭いよね。」

曲の終わりに作者が私に呟いた。

「そうですね。」

私はコーヒーにミルクをたっぷりと入れて作者に渡した。そろそろ深夜になりそうです。この一杯でそろそろ今夜はお開きにしましょうか。

「うん。なんだか矛盾が沢山あって混乱するのよ。そして、その矛盾を細かく調べると、ここから面白い展開があるんだから救われないわ。だって、どんなに面白くても結末に近づくと、また矛盾が生まれるんだもの。あの頃は、密室殺人から離れて、乱歩の否定から始めようとしたのよね?」

「はい。とにかく、オカルト知識で突っ込むとか言われていましたね?」

「そうね。私も克也に言われて、『超能力は当時は先端科学だ!!』って言われた時は面を食らったけれど、確かにそうかもしれないと考え直したわ。で、当時のオカルトも調べ始めたのよ。

でも、その前に、キャラクターの1人が凄く嘘くさいキャラなのが気になったのよね。」

作者は肩をすくめる。

「そうでしたね。熊浦は偽名?ペンネームみたいだし、誰か、有名人のパクリみたいな事をしながら執筆してるとか、変な人だと思ったわ。」

作者はため息をついた。

「でも、作中の地名を見ていてある人物にたどり着くのでしたね?」

私は当時のワクワクを思い出した。

『悪霊』では、発見者の作家が地名をそのまま使わないと明記しています。それなのに、被害者の曽根子の自宅の地名が登場するのです。

これは、とても不可解な感じがしました。曽根子の自宅があるのは牛込区の河田町と書かれているのです。これは仮名とは言えない気がしました。




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