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茶色いノート  作者: ふりまじん
魔法の呪文

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作者、幽霊作家をかたる8


「それにしても、克也は面倒臭いやつだけれど、たまに、すごく良い事を言うの。」

作者は『幽霊作家』未完1を思い出しながらそう言った。

「そうですね。彼の方は、とても斬新です。」

でも、勝谷さんは私の作者にメールで暴言を吐くので、あまり好きにはなれそうもありませんが。

「うん。まさか、あの『悪霊』の密室をサイコキネシスと催眠術で華麗に推理するとは思わなかったもの。

初めは馬鹿じゃないかって思ったけれど、よく考えたら、これはいい方法だって思い返したのよ。」

作者は苦笑して残りのホットミルクを飲み干した。

「そうですね。江戸川乱歩の『悪霊』を密室殺人ではなく、SFミステリーにジャンル変更すると言う考えには確かに驚かされました。」

「そうよね。克也の仮説が正しいとしたら、乱歩はすでに1933年には戦後SFXの技術と共に人気を博したSFミステリーを昭和初期には既に手掛けようとしたって事になるんだから。

これだけでも、なんだかすごい気がするし、何しろ、SFミステリーにジャンルを変更すると100年近く受け継がれる乱歩ファンの追跡から逃れられるんだもん。」

作者はそう言って笑う。

「そうですね。基本、推理小説を書く作家さんは現実に即した物語を考えますから、お化けが原因とかいうオカルトの話を書くのは苦手な方が多い印象ですよね?」

「うん。まあ、例外はいるとは思うけれど、オカルト関係で乱歩の批判をしても推理ファンはノーダメージだから、批判も受けづらいしね。そして、本格的なミステリー作家とか、そんなグループに所属してるような人は、サイコキネシスを使って密室殺人を考えたりはしてないだろうから、これはパクリを気にしないで書けそうだって思ったのよね。」

作者はそう言いながら『悪霊』を読み返す。

「それにしても、ここから、熊浦に注目いた貴女もすごいと思いますよ。」

私は作者を褒めた。

作者は褒めて伸びる子なのです。私は作者の事を甘やかしてゆきたいのです。

「ありがとう。まあ、でも、この話、これですまない色々が出て来るんだけれど、とにかく、一度はオチをつけて区切りをつけたいから、まずは熊浦の物語を話しましょう。」

作者はそう言ってノートを取り出した。


『悪霊』は単純な中短編の未完の推理小説です。

蔵で女性が殺される。そして、その犯人を探す。犯人は被害者の所属していた交霊会のメンバーの誰か。

よくある物語のようでありますが、毎回、様々なおかしい部分に気がついて、何か、違う方向に誘われるのです。

この話は未完2でお話しすることとして、まずは、熊浦編の話をしたいと思います。


我々は密室殺人のトリックを考えることはしません。

これは密室殺人ではない、というところから推理を始める物語です。


でも、『悪霊』が1月合まで発表されるにあたって、犯人と事件はあったものだと考えています。乱歩はのちに『抜け殻同然の文章の羅列に堪えられなく…』と、発言したと言われていますが、たとえ、この物語が抜け殻の文章の羅列であったとしても、ミステリーとして初めに構想した作者の頭の中ではまず、事件が、そして、犯人が初めに生まれたはずなのです。


では、ここでなぜ、物語を放棄しようとしたのか?


乱歩が密室殺人として作品を描いていなくて、後で、宣伝した手前、密室殺人のトリックを後付けで考えさせられたとしたら、なんとなく、辻褄が合う気がするのです。

そして、密室殺人に固執しなければ、この物語には、解決できる『なぞ』と『答え』が用意されていて、当ててもらえるように計算されて話が動いていたに違いないのです。

ここで問題なのは、わざわざ、作者が物語を始めている。と、言うことです。

1933年で、すでに、乱歩は『モキュメンタリー』の物語を作ろうとしていたのだと思うのです。



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