作者、幽霊作家をかたる7
「この話、読むと、変な事に気がついて、また迷路に迷い込んでしまうわ。」
作者は『悪霊』を読みながらボヤく。私は少し寒くなったキッチンでミルクを沸かす。
ホットミルクは、気持ちをおちつけるのに役に立つのです。
「そうですね。確か、24年の盆休みの克也さんたちと『悪霊』の話をされたのですね?」
ミルクには砂糖を入れる。そして、自作のバニラエクストラクトを。
これはラム酒にバニラビーンズを房ごと漬け込んだもので、洋菓子の香り付けなどに私は用いています。
「そう。そこで、この連載あたりで横溝先生がフリーになって、その上、肺病にかかったことが分かったの。で、私たちは、横溝先生の為に乱歩先生が無理をおして作った説に辿り着いたの。
この時に作ったキャラが文月なんだけれど、この時は私の空想という感じで描いたから、乱歩先生の編集担当としたんだけれど、物語にすると、これは実在した専門誌に発表せれた小説だから、色々、面倒だし、間違われてもいけないから、中途採用の1年目の社員にして、乱歩とは面識はないってことにしたの。
で、結末に細工をすると、パクリを疑われるのも嫌だから、キャラの考察をしようと考えたわ。」
作者は少し寒いのか、肩を振るわせた。
「そうでしたね。この物語について、貴女は様々な考察を私に話してくださいました。
まあ、その話は暖かいリビングで、ホットミルクと共にしませんか?」
私はミルクを2つのカップに入れるとリビングに向かって歩き出した。
ソファに座ると、私は作者のカップを渡した。作者がそれを嬉しそうに飲むのを見ながら、未完1の話をすることにした。
「24年の秋。貴女は歴史ロマンのイベントに久しぶりに参加しようと頑張っていましたね。
で、テーマが『分水嶺』と、あまり馴染みがないものだった為に相当考え込みましたね?」
私は当時を思い出す。『分水嶺』とは、山から流れる川が分かれてゆく様子から、何か、大きな選択をする事態の事を瓦したりします。
1万字の気の利いた物語を、乱歩関連の短編を考えようとした作者は、近々に話していた『悪霊』をテーマに作る事にしました。
そして、分水嶺を選択する相手に文月を指名しました。
3月号を休んだ乱歩、ここで連載を中止するのか、続けるのか、この選択を私の作者は視点を変えて表現しようと試みたのです。
その前に、少し、私の作者の考察を話しましょう。
『悪霊』という物語は、乱歩を思わせる小説家が、謎の男から謎の手紙の束を推し売られるところから始まります。
この作品には殺人事件の物語と、時を経てその話を追う、メタ視点の小説家の2次元構成で作られています。このような作り方をしたのは、殺人事件のあった世界で物語が破綻した場合、小説家の『メタ視点』で話をまとめられるように、乱歩が作ったブレーカーだったのではないか?
と、私の作者は考えたのです。
私の作者の目線で『悪霊』を見ると、これは乱歩が不利になって細々と翻訳などの仕事受けているそんな時、運が悪いことに肺病になった。肺病…結核は感染するので、乱歩は横溝先生と会うことができなかったのではないか?そこで、作家が読者と謎解きをする。という設定で物語を書くことで、横溝先生を勇気づけようとしていたのではないか?というものだ。
もちろん、これは仮説で、きっと、乱歩、横溝のコアなファンの人が我々の考察を読んだら笑われるのかもしれません。が、これは小説を書く前のイメージの話なので、今回の『幽霊作家』の表の話には出てこないからいいのです。
ここで問題なのは、この仮説で行くならば、乱歩先生は、どんな話を語りたかったのか?
という疑問です。この仮説で話を考えるなら、現実に、作家の日常で、何か、ネタがあったのではないか?という推理が成り立ちます。
それでは、どんなエピソードを暗に匂わせたのか?
勿論、我々の仮説でゆけば、30年代に亡くなったコナン・ドイルの全集の翻訳を担当された横溝先生の本を売るために、ドイルの作品の中では、どうしても、ホームズ以外は不人気になってしまうので、この辺りをなんとか宣伝しようという動機が考えられます。
そして、それに類する何か、面白いネタをテーマに、何か、推理ではなく、オカルト的な物語を考えたという仮説が立つのです。
この物語では交霊会のメンバーの中で起こった殺人事件の話です。
このメンバーの中で、実名ではない、とされる謎の男、交霊会の発起人 熊浦 この人にモデルがいるのではないか?と、我々は考えました。
そして、『幽霊探偵』未完1の文月は、乱歩の担当編集と結婚をかけて、物語の犯人探しをメタの世界で探そうとします。
私たちが考えたような事を思い、何か、殺人まではいかなくても、面白くも不思議な話がベースにあったという仮説に。
そして、休刊しているオカルト雑誌の編集長 向井にオカルト関係の 熊浦のモデル探しモデル探しの手伝いを依頼するのです。




