作者、幽霊作家をかたる5
「初めの時代浪漫のイベントでは、『分水嶺』と言う言葉をテーマがあったのよ。だから、それっぽい話を作ることから始めたわね?」
作者の言葉に当時の記憶が蘇ります。
「そうでしたね。初めは1人のキャラクター、確か、熊浦と言う民俗学者について考えるような、そんな物語でしたね。」
私はその頃の事を思い出していた。
我々のような、ホラーや文学、いわゆる不人気ジャンルという分類で書いている、その上、それほど人気のない作家の場合、サイト運営さんの季節のイベントは新規の読者の獲得という意味でも参加する意義があります。そして、作者のように未完を複数抱えるような作家の場合、完結できる力があると自他に認識できるイベントでもあります。
私の作者もイベントでは完結することが初めのうちでは出来たのですが、最近ではこのような事態に陥ることも増えてきました。
「うん。この話、江戸川乱歩の『悪霊』って、初めは、用心しながら読んでいくのよ。
で、読み進めると、なんだか犯人がわかった気がするの。でも、話を進めるうちになんだか様子がおかしくなって、一度、頭の中が破綻してくるのよ。
多分、この話、いろんな『抜け』があるんだと思う。ふわっとした表現で、登場人物はほとんど感情がない状態で短編だから、どんな解釈もできてくるんだと思う。
それって逆に言えば、誰かの正解は、誰かの間違いになるんだと思う。」
作者は少し私の肩に頭を預けて寂しそうにそういった。
「解決編で、乱歩もそんな事を思ったのでしょうか?」
私も作者の頭に自分の頬を寄せました。作者の髪から優しいローズマリーの香りが流れてきます。
「さあ、分からないわ。でも、混乱はしたでしょうね。ってか、この話は数十年の間に、沢山のプロ、アマのミステリファンが挑戦してきたと思うの。だから、解決編なんて私が書いても、どこかの誰かが既に披露していて、『パクリ』疑惑をかけられないか、そっちの方が心配だったわ。
だから、熊浦の、キャラクターのメタ視線の考察ミステリーを考えたのよね?」
作者はため息をつく。
「そうでしたね。そして、他の話も書かなければいけなかったので、期間は一週間で一気に書いたのでしたね?」
ここで『まさかWEBでミステリー大賞にリベンジする日が来るなんて』が登場します。
明智小五郎デビュー100周年ものを考えていた作者は、克也さんと『悪霊』のミステリーについて話したことがあるのです。
「うん。結局、未完だったけれど、今回は投稿してなかったから放置したのよ。でも、1万文字を書いた作品となれば、なんとか公表したくなるじゃない?で、次の時代小説イベントにリニューアルして投稿しうることにしたのよ。
あああああ。本当、やらかしたわ。あと1話で解決だから、絶対完結するって思ったもん(;ω;)
少し、日が空いたから、誤字とか直しながら投稿して書けば良いって、そんな気楽な気持ちになったのは、きっと、みんなわかってくれるわよね???」
肩越しにすがるように私を見るのは反則です。
「はい。」
それしか、言いようが無いではありませんか。
「でも、さ、ここでキャラクターが、色々やってくれるなんて考えなかったわ。そして、この『悪霊』が相当、変な話だって、書き直すまで気が付かなかった。
私、現在、
未完1 熊浦の考察
未完2 向井の完結
第2部予定 UFO文月編
と、3つのエンディングができるなんて思わなかったわ。新作はUFOよ。まさかのUFO!
本当に、すごいわよ。そこで、思ったの。この話、普通に書くより、WEB小説の特徴を活かして、ゲームブック仕様にしたら面白いんじゃ無いかって、そう思ったの。」
作者はそういって立ち上がり、コーヒーを作るとキッチンへと向かいます。
ついでゆかないと。作者に深夜のとびきりのコーヒーを淹れるのは私の役目なのですから。




