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この街に、プロサッカークラブを。 ~選手の能力が見えるIT社長、県6部からプロを目指す~  作者: いとやん
第二章 地域定着編

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6年目 第5話 昇格決定大会 グループステージ

京都府リーグ一部優勝。


六部から始まった京南FCが、ついにここまで来た。


毎年一つずつ昇格を重ね、とうとう京都府リーグの頂点に立ったのだ。


ただし、まだ終わりではない。


俺たちの目標は、京都府リーグで優勝することではなく、地域リーグに昇格することだ。


そのためには、最後にもう一つ、大きな壁を越えなければならない。


地域リーグ昇格決定大会。


京都府リーグを制した俺たちが、次に挑む大会の名前である。


この大会には、関西の六府県から、それぞれ府県リーグ一部の上位二チームが出場する。


大阪、兵庫、京都、滋賀、奈良、和歌山。


各府県から二チームずつ、合計十二チーム。


それを四チームずつ三つのグループに分け、総当たりで三試合を戦う。


各グループの一位と、二位の中で最も成績がよかった一チームが決勝トーナメントに進出。


準決勝と決勝を勝ち抜き、優勝した一チームだけが地域リーグ二部へ自動昇格できる。


準優勝チームにも入れ替え戦という道は残されているが、そこでも勝たなければ昇格できない。


つまり、確実に昇格するためには五試合を戦い、最後に優勝する必要がある。


「……厳しくない?」


大会要項を読み終えた俺は、思わずそうつぶやいた。


「そら、地域リーグに上がるための大会やからな」


隣に座っていた岡本さんが、あっさり答えた。


「今までは各府県の中だけの戦いやった、けど地域リーグは関西全域が対象や。

 そのリーグに上がろうってわけやから厳しいのも当たり前やで」


「いや、分かってますけど……。

 京都府で一位になったんだから、もうちょっと優遇してくれてもいいんじゃないかなって」


「ほかの府県の一位も同じこと思っとるわい」


「ですよねえ」


まったく、その通りである。


京都府一位。


その肩書きは、京都府内では立派なものだ。


しかし、この大会に来れば、俺たちと同じように各府県の頂点に立ったチームが集まっている。


しかも二位のチームだって、決して弱いわけではない。


考えてみれば、ここからが本当の関西への挑戦なのだろう。


「ここで厳しい言うてたら、もう一個上に上がるとき苦労するで」


「……」


そうか、次に上がるときは全国での戦いになるもんな……


そんなことを考えていると、岡本さんが組み合わせ表を机に置いた。


「ここまで来たチームならどこも強いが、今回はなかなか厄介なグループやで」


「え?」


俺は表に目を落とした。


京南FC。


和歌山県代表(二位)。


大阪府代表(一位)。


奈良県代表(二位)。


「大阪の一位と一緒になったんですか」


「そうです」


「大阪って、やっぱり強いんですか?」


「まぁ大体都会の方が強いな。ただ、今回の大阪代表はそれとは違う」


岡本さんが、別の資料を取り出した。


「このチーム、去年までずっと地域リーグ二部におったんや」


「えっ?」


思わず顔を上げた。


「地域リーグにいたことあるチームなら別に珍しくない。

 同グループの奈良代表も在籍経験はある」


え、みんなそうなのか。


「ただ、このチームはそんなチームとは格が違う。

 去年でも本当の実力なら、地域リーグ二部でも上位、昇格を狙えるようなチームやったんやないかな。

 ただ去年、主力の怪我が続いて、降格してしまったというわけや」


「なるほど……」


「ただ、今年はその選手たちが戻ってきとる。

 大阪府リーグも圧倒的大差で優勝しとるし、一年で地域に戻る気満々やろうな」


それは、なかなか厄介な相手だ。


俺たちは地域リーグを目指して、下から勝ち上がってきたチーム。


向こうは、もともと地域リーグで戦っていたチーム。


同じ大会に出場していても、意味合いが少し違う。


「つまり、実力的には地域リーグのチームってことですか」


「そう考えておいた方がええ」


岡本さんは組み合わせ表を指でたたいた。


「ただ、初戦は和歌山代表や。まずはそこに集中やな」


「そうですね」


いきなり大阪代表のことばかり考えても仕方がない。


まずは一勝。


そして、できることなら得失点差も稼いでおきたい。


……などと、このときの俺は少し気楽に考えていた。


まさか、その得失点差に後であんなに感謝することになるとは、まだ知らなかったのである。


◇


初戦の相手は、和歌山県代表。


京都府の外で行われる昇格決定大会ということで、選手たちも多少は緊張しているかと思ったが、意外と落ち着いていた。


「いつも通りやればええ。変に気負う必要はないで」


試合前、岡本さんがそう声を掛ける。


長谷川も選手たちを集め、いつものように声を出していた。


「まず一試合。集中していこう!」


「おう!」


うん。


いい雰囲気だ。


試合が始まると、京南FCは序盤から主導権を握った。


中盤では大久保が落ち着いてボールを動かし、前線では板垣が積極的に仕掛ける。


相手も決して弱くはなかったが、こちらの攻撃に対応しきれない場面が増えていった。


前半、大久保からのパスを受けた板垣が先制点。


その後も京南FCが攻め続け、後半に二点を追加した。


結果は三対〇。


初戦としては、申し分のない勝利だった。


「いやあ、よかった!」


試合終了後、俺は思わず笑顔になった。


府リーグとは違う大会。


知らない相手。


初めての地域リーグ昇格を懸けた戦い。


いろいろと不安はあったが、まずはしっかり勝つことができた。


「内容も悪くなかったですね」


岡本さんもうなずいた。


「ただ、次はこうはいかんな……」


「大阪代表ですね」


「そうやな。今日のように自由にボールを持てへんやろうな……」


そう言われて、改めて気を引き締めた。


三対〇という結果は嬉しい。


しかし、この大会で必要なのは、最初の一勝だけではないのだ。


◇


第二戦。


相手は、噂の大阪府代表チームだ。


試合前の練習を見ているだけでも、何となく初戦の相手とは違う印象を受けた。


一つ一つの動きに無駄が少ない。


選手同士が声を掛け合い、ボールを動かすテンポも速い。


もちろん、練習が上手だから試合にも勝つとは限らない。


それくらいは、俺だって分かっている。


だが、長年地域リーグで戦ってきたという経歴には、やはりそれなりの説得力があった。


「社長、そんな心配そうな顔したらあかん」


「え、そんな顔してました?」


「しとる」


「いやあ、相手が相手なだけに、ちょっと……」


「社長がそんな顔してたら勝てるもんも勝てへんで。

 いつも通りヘラヘラしとってや」


岡本さんはいつも通りだった。


こういうとき、監督が落ち着いているのはありがたい。


しかし、俺はいつもそんなにヘラヘラしてるだろうか……


まぁ俺がベンチで余計な心配をしていても、関係ないもんな。


そう自分に言い聞かせて、極めていつも通りの様子を装った。


そして、キックオフ。


数分後には、相手チームの強さを実感することになった。


「……あれ?」


京南FCがボールを持っても前に進めない。


大久保が中盤でパスを受けようとすると、相手の選手が素早く距離を詰める。


無理に奪いに来るわけではない。


前を向かせず、危険な場所へのパスコースを消してくる。


大久保が一度ボールを下げ、別の位置で受け直そうとしても、今度は違う選手が対応する。


「徹底してますね……」


俺がつぶやくと、岡本さんもうなずいた。


「大久保を自由にさせんつもりやな」


それでも大久保は、何度か前にパスを通そうとした。


だが、その先にいる板垣にも、しっかり対策が施されていた。


板垣が裏へ走れば、相手の最終ラインがそろって下がる。


足元で受けようとすれば、すぐに体を寄せられる。


ドリブルで抜こうとしても、周囲の選手がカバーに入ってくる。


「くそっ!」


板垣が悔しそうに声を上げた。


いつもなら、多少マークがついていても強引にシュートまで持ち込む。


だが、今日はその形がなかなか作れない。


大久保と板垣。


今の京南FCの攻撃を支える二人が、ここまで抑えられるとは思わなかった。


しかも、守るだけの相手ではない。


ボールを奪うと、すぐに前へ運んでくる。


味方がパスを受ける前から、次の選手が動き出している。


一人が走れば、別の選手が空いた場所に入る。


特別に速い選手がいるわけでも、驚くような個人技を見せるわけでもない。


それなのに、気づけば京南FCの守備陣が後手に回っている。


「長谷川! 右!」


岡本さんの声が飛んだ。


相手のサイド攻撃に、長谷川が対応する。


クロスを上げられたが、何とかクリア。


続く攻撃も、田中が体を張って止めた。


「ナイス、田中!」


ベンチから声が上がる。


田中はいつも通り、守備ではしっかり仕事をしていた。


ただ、一つ気になることがあった。


「田中、今日はあんまり上がらないですね」


俺が言うと、岡本さんはピッチを見たまま答えた。


「もうちょい上がれって言ってるんやけどな」


「なるほど、相手のプレッシャーで上がれないってことですか」


「せやな。ただ、サイドが上がらんと、向こうは守りやすいやろな……」


なるほど。


大久保と板垣が封じられている。


本来なら、別の場所から攻撃の選択肢を増やしたい。


しかし、田中は相手の攻撃を警戒して、なかなか前に出られない。


無理もないと思う。


実際、相手のカウンターは鋭い。


田中が上がった裏を使われれば、失点につながるかもしれない。


だが、上がらなければ攻撃の人数が足りない。


攻めてほしいけど、点も取られたくない、難しいものだ。


そんなことを考えている間にも、お互い攻め手がない状態が続いていた。


前半二十分過ぎ、少しずつ相手の攻めの圧力が増してきた。


相手に中央を崩され、ペナルティエリアの手前からシュートを打たれる。


ボールはわずかにゴールの横へ外れた。


「危なっ!」


思わず声が出た。


その数分後には、右サイドからのクロスに頭で合わせられる。


今度はGKが何とか弾き出した。


明らかに押されている。


こちらは前線にうまくボールを繋げられない。


逆に相手は少しずつ京南の守り方に対応してきている。


これは、厳しい。


そう思っていた前半三十分過ぎ。


京南FCが、久しぶりに相手陣内でボールを持った。


大久保がパスを出そうとしたところを相手に寄せられ、ボールが左サイドへこぼれる。


そこに走り込んだ味方が、何とかボールを残した。


そして、相手DFに当たってコーナーキックを獲得する。


「おっ!」


俺は身を乗り出した。


流れの中では、ほとんどチャンスを作れていない。


しかし、セットプレーなら話は別だ。


大久保がボールをセットする。


ゴール前では、板垣や上がってきたセンターバックが相手DFと位置を取り合っていた。


笛が鳴る。


大久保が助走を取り、右足を振り抜いた。


高く上がったボールが、ゴール前へ向かう。


中央で競り合っていた板垣の上をボールが追い越す。


長谷川が動いている!


コーナーとは逆サイドに飛び込む!


そして――。


「入った!」


ゴールネットが揺れた。


長谷川のヘディングシュート。


京南FC、先制!


「よっしゃあ!」


俺は思わず立ち上がった。


ベンチの選手たちも、一斉に飛び出しかける。


長谷川は拳を握り、駆け寄ってきた仲間たちと喜び合っていた。


いやあ、キャプテン!


本当に頼りになる!


押されっぱなしだった試合で、まさか先に点を取れるとは。


「よく決めましたね!」


岡本さんも厳しい顔で


「こっからやぞ!」


と声を張り上げる。


長谷川やディフェンス陣も分かっているようだ。


直ぐに集まって何やら声を掛け合っている。


◇


先制したからといって、試合の流れが変わったわけではなかった。


むしろ大阪代表は、さらに攻勢を強めてきた。


ボールを奪われる。


取り返す。


また奪われる。


そんな時間が続く。


京南FCも必死に守っていたが、相手の攻撃は途切れない。


前半は何とか一対〇で折り返したものの、後半に入っても状況は変わらなかった。


「大久保、もう少し外で受けられへんか!」


岡本さんが指示を飛ばす。


大久保の位置を変え、相手のマークをずらそうとする。


板垣も中央だけでなく、サイドへ流れてボールを受けようとした。


だが、大阪代表は落ち着いて対応してきた。


一人が動けば、別の選手がカバーする。


こちらが配置を変えても、相手の守備は大きく崩れない。


「……強いなあ」


俺は思わずつぶやいた。


もちろん、京南FCだって弱くない。


府リーグでは、ほとんどの相手に主導権を握って戦ってきた。


しかし、今は違う。


相手の方が、試合をうまく進めている。


そして後半二十分過ぎ。


とうとう、その時間が訪れた。


大阪代表が右サイドでボールをつなぐ。


京南FCの選手が寄せると、相手は無理に突破せず、中央へ戻した。


そこから逆サイドへ大きく展開。


そこには相手の左サイドバックが上がってきていた。


マークを受け渡し、田中があたりに行く。


しかし中央にボールが入れられる。


「まずい!」


俺が声を上げたときには、相手の選手がペナルティエリア内へ走り込んでいた。


短いパス。


そして、シュート。


GKが反応したが、ボールはその手をすり抜けた。


一対一。


同点。


「……ああ」


思わず、ため息が漏れた。


ここまでよく守っていた。


だが、あれだけ攻められ続ければ、いつかは失点する。


そんな内容だった。


「切り替えろ! まだ同点だぞ!」


長谷川が大きな声を出した。


選手たちが互いに声を掛け合う。


その姿を見て、俺も気持ちを切り替えた。


そうだ。


まだ負けたわけじゃない。


一点取れば、勝てる。


だが、そこからも京南FCは有効な攻め手を見つけられなかった。


大久保がボールを持っても、相手の守備がすぐに寄せる。


板垣も何度か仕掛けたが、シュートまで持ち込めない。


田中は守備で奮闘しているものの、攻撃参加はほとんどできていなかった。


残り十分。


岡本さんが選手交代を行い、前線に変化をつける。


しかし、決定的なチャンスは生まれない。


逆に、大阪代表の攻撃を何とかしのぐ時間が続いた。


後半終了間際には、相手にペナルティエリア内からシュートを打たれる。


「うわっ!」


完全にやられたと思った。


だが、GKが横っ跳びで弾き出した。


「ナイスセーブ!」


思わず叫んだ。


その後のコーナーキックも長谷川が跳ね返し、何とか危機を脱する。


そして、試合終了の笛が鳴った。


一対一。


引き分け。


俺は、大きく息を吐いた。


「……助かった」


勝てなかった。


それなのに、真っ先に出てきた感想がそれだった。


府リーグで引き分けたときには、もっと悔しかった気がする。


だが、今日は違う。


負けなくてよかった。


心の底から、そう思っていた。


「社長」


岡本さんに声を掛けられた。


「はい」


「これが経験の差やな」


その言葉は、思った以上に重かった。


「大久保と板垣を抑えられたら、攻撃の形が作れへん。

 ほかの選手も、リスクを恐れて前に出られんかった」


「……そうですね」


「ただ、負けんかったんは大きいな。長谷川もよう決めたし、守備陣も最後まで粘った」


岡本さんはピッチを見つめた。


「せやけど、次に当たったとき、同じことをやってたら勝てん」


俺もうなずいた。


その通りだ。


大阪代表は強い。


だが、倒せない相手だと決まったわけではない。


今はまだ、攻略法が見つかっていないだけだ。


……その攻略法を見つけるのが、簡単なら苦労しないんだけどね。


◇


翌週のグループリーグ最終戦。


相手は奈良県代表だった。


ここまで一勝一分けの京南FC。


大阪代表も同じく一勝一分けで、勝点は並んでいる。


グループ一位を決めるうえで、得失点差が重要になる状況だった。


しかも、二位になれば必ず決勝トーナメントに進めるわけではない。


三つのグループの二位のうち、進出できるのは一チームだけ。


できれば、首位で突破したい。


「絶対勝とう!」


試合前、長谷川が声を掛けた。


選手たちも力強く応える。


大阪戦の疲労は残っているはずだが、気持ちは切れていなかった。


試合は、簡単なものではなかった。


奈良代表は守備を固め、ボールを奪うと素早くカウンターを仕掛けてくる。


京南FCも大久保を中心に攻撃を組み立てたが、なかなか点が入らない。


それでも前半に先制し、後半にも追加点を奪った。


しかし、終盤に一点を返される。


二対一。


最後は相手の攻撃をしのぐ時間が続いたが、何とか逃げ切ることができた。


これで二勝一分け。


勝点七。


「よし!」


俺は拳を握った。


三試合で二勝一分けなら、十分いい成績だ。


問題は、大阪代表の結果である。


向こうも最終戦に勝利したという情報が入ってきた。


同じ勝点七。


ということは、得失点差で順位が決まる。


スタッフが結果を確認する。


京南FCは、初戦の三対〇が大きく効いていた。


大阪代表との直接対決は引き分け。


奈良代表には二対一で勝利。


三試合を終えて、得失点差はプラス四。


そして、大阪代表はプラス三。


「……一位?」


俺は思わず聞き返した。


「はい。京南FCがグループ一位です」


「おおっ!」


やった!


首位突破だ!


初戦の三点差が、ここで効いてきた。


あのときは、いい勝ち方ができたと喜んでいただけだった。


しかし、まさか最後に得失点差で順位が決まるとは。


これが一点の重みってやつか。


選手たちにも結果が伝えられ、歓声が上がった。


大久保と板垣も笑顔で喜んでいる。


長谷川は仲間たちと握手を交わし、田中も嬉しそうに笑っていた。


府リーグ優勝に続いて、昇格決定大会でもグループ首位。


あと二勝。


あと二勝すれば、地域リーグ二部に昇格できる。


ようやく、そこまで来たのだ。


◇


その後、ほかのグループの結果も出そろった。


大阪代表は、二位チームの中で最も成績がよく、決勝トーナメント進出を決めた。


やっぱり来たか。


まぁ二勝一分け、勝ち点七だもんな。


二位でこれ以上の成績はないだろう。


そして、準決勝の組み合わせが発表された。


京南FCの相手は、兵庫県代表。


兵庫県リーグでも一位でこのグループリーグでも一位になった強豪チームだ。


大阪代表とは別の山に入ったため、再戦するとすれば決勝になる。


「大阪と、もう一回当たる可能性があるんですね」


俺が言うと、岡本さんはうなずいた。


「そうやな。向こうが勝ち上がってくれば…やな」


「……次は勝てますかね?」


「勝てる」


岡本さんは言い切った。


さすが、指導者経験が長いだけある、カッコいいぞ。


「でも攻め方については考えなあかん。板垣と大久保の二人だけに頼ってたら、おんなじや」


二人だけに頼る……


俺は大阪戦の田中を思い出した。


守備では何度も相手の攻撃を止めていた。


だが、攻撃ではほとんど前に出られなかった。


相手が強いからこそ、守備を優先する。


その判断自体は、決して間違いではない。


ただ、それだけでは勝つための攻撃が足りなくなる。


「難しいですね」


「難しいな。でも上のリーグではこれが出来んかったら勝てへん。」


岡本さんは、いつもの調子でそう言った。


そうだな。


こういった壁を乗り越えるから強くなれるんだ。


今までサッカーの実力では明確な壁はなかったと思う。


この壁を越えて、俺たちは地域リーグに行くんだ。


「まずは兵庫代表ですね」


「せやな」


岡本さんは準決勝の組み合わせ表を見つめた。


「兵庫も強い。高さも強さもある」


「……やっぱり、そうですよね」


「でも俺たちも強い。

 その強さをちゃんと発揮できるように準備するだけや」


そう、他のチームに比べたら短いかもしれないが、

俺たちだってちゃんと積み上げてきた強さがあるんだ。


信じて応援しよう。


準決勝からは会社で準備していた応援バスも出る。


伊東からは、参加希望者が予想以上に集まっていると報告を受けている。


社員だけでなく、家族やスクールの子どもたちも応援に来てくれるらしい。


ありがたいことだ。


選手たちにも、きっと大きな力になるだろう。


俺はもう一度、組み合わせ表を見た。


準決勝、兵庫県代表。


そして、その先には決勝。


六年間かけて、ようやくたどり着いた場所。


ここから先は、もう一つも負けられない。


「よし。あと二つだ」


俺は小さくつぶやいた。


京南FCの地域リーグ昇格まで、あと二勝。


本当の勝負は、ここからだった。

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― 新着の感想 ―
攻撃パターンやSBの攻守のバランス等の戦術・戦略面が課題になってても当たりの強さやスタミナ等のフィジカル面が課題になることが少ないのは、やはりAIトレーナーによるフィジカル強化が効いてるのかな? やは…
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