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この街に、プロサッカークラブを。 ~選手の能力が見えるIT社長、県6部からプロを目指す~  作者: いとやん
第二章 地域定着編

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4年目 第4話 変わっていくもの

四年目のリーグ戦が始まってから、しばらくが経った。


今年も京南FCは上位につけていた。



「板垣!」


長谷川からのパスを受けた板垣が、一人目をかわす。


そのまま二人目の前にボールを運び、右へ切り返した。


相手が一瞬遅れる。


その隙に左足を振り抜く。


ゴール。


「よし!」


板垣が拳を握る。


その一点が決勝点となり、試合は二対一で終了した。


「勝ったー!」


俺も観客席で手を叩く。


「板垣コーチやったー!」


板垣を応援する子どもの声も聞こえてくる。


板垣もこのチームのエースとして認められてきたかな?


府三部に上がっても勝ててはいる。

だが、去年までのように安定して勝つことはできていない。


去年よりも失点が増え、引き分けや負けも増えた。


それでも何とか勝ちが先行し、順位は上位。


昇格だって十分に狙える位置にいる。


順調。


そう言ってもいいはずだ。


でも、友近が抜けた穴はまだ完全に埋まっていないようだ。


試合後にはスクールの子どもたちが選手のところに集まるようになっている。

以前のサイン集めがまだ流行っているようだ。


やはり人気は長谷川に集中している。

田中や渡部も人気だ。


その中で、一人の男の子が板垣のところへ走っていく。


「板垣コーチ、サインちょうだい!」


「この間も書いたぞ」


「いいからお願い!」


板垣も渋々サインをする。


板垣が子どもに懐かれているようで嬉しい。


「コーチの真似してシュートするから見てて!」


男の子がボールを蹴る。


コーンを狙ったのだろうか。

少し外れて、俺のところまで転がってくる。


「あー!」


「惜しいな」


俺はボールを拾い、男の子のところに持っていく。


「板垣コーチのファンなのかい?」


「うん! コーチ、俺のパス褒めてくれたもん!」


おお、いいじゃないか。


「コーチ、また来週ね!」


男の子は去っていった。


「おう」


今度は板垣に声をかける。


「板垣、あの子にめっちゃ懐かれてるじゃん」


「……そうですかね」


板垣自身もよく分かっていないような顔をする。


「何かしたの?」


「いや……この前、ちょっと褒めたくらいです」


「それだけ?」


「はい」


「まぁ褒めるって大事だもんな。いい指導してあげてよ」


「分かりました」


板垣も真面目にやってくれてるな。

あとは岡本さんの指導をもっと聞いてほしいが……


岡本さんは引き続き、パスの重要性や、行く時と行かない時の判断などを板垣に指導している。


ただ、現状は試合で活躍できているということもあって、個人技の練習ばかりしているようだ。


こちらはまだ時間がかかりそうだ。



◇



リーグ戦では勝てていても、上の相手にはそうはいかなかった。


今年のエンペラーカップ予選、全国社会人サッカー大会の予選も勝ち進むことはできなかった。


上位カテゴリーのチームが相手だと、板垣の個人技だけでは得点を奪えないのだ。


また、橋本もまだ期待しているような活躍はできていない。

いいパスは出せるのだが、試合から消える時間が長い点が改善されないままだ。


日々練習を頑張っているようだが……


といっても橋本もまだ高卒一年目。

今年のカップ戦はしょうがない。


来年以降に期待するとしよう。


今年はリーグ戦に集中だ。



◇



トップチームとは別に、サッカースクールについても新しい動きがあった。


「社長、ちょっといいですか?」


伊東がやってくる。


「おう、どうした?」


「ジュニアチームの件です。

 こちらの資料にまとめました」


保護者から多くの要望をいただいているので、来年からジュニアチームを開設すべく準備を進めているのだ。


伊東の資料を確認する。


募集する子どもの年代。

入団見込みの子どもの数。

練習日や場所、ユニフォームや用具について。


チーム登録の手続きや、試合日の選手の対応など。


さすがにトップチームで一度経験しているからか、ジュニアチーム始動の準備は順調のようだ。


「ありがとう。何か問題はある?」


「指導者ですかね」


「今のコーチじゃ足りない?」


「はい、いけなくもないですが……

 選手にコーチのサポートをしてもらうことで、人数的には足りそうです。

 ただ、人数よりも外部と試合をするとなると、コーチ同士の伝手が必要なので、今の人員だとそのあたりが不足しそうです」


なるほど。

確かに公式戦は登録すれば参加できるだろう。


ただ、それ以外の練習試合や大会となると、伝手がなければ、どこに声をかければいいのかも分からない。


ジュニアチームは作りました、でも試合は全然ないです! じゃ意味ないもんな。


「なるほど……

 岡本さんでも、さすがにジュニアの伝手はないかな?」


「そうですね。

 ずっと高校生年代の指導だったので、ジュニア世代の指導者とはあまり関係がないそうです。

 地域もここから遠いですし」


「なるほど。すまないが、またサッカー協会の永井さんに紹介してもらおうか」


「そうですね。あたってみます」


「他は大丈夫そう?」


「はい、問題ありません」


伊東もどんどんたくましくなったな。

サッカー事業部の事務面は、実質伊東が回している気がする。


「落ち着いたら、また飲みに行こう」


「はい。ただ、妻が妊娠して、しばらく飲みは無理そうです」


「お、いつの間に!?

 おめでとう! 男の子? 女の子?」


「ありがとうございます。男の子の予定です」


「男の子か、いいな~。

 京南FCジュニアチームがスカウトするよ」


「はい、楽しみですね。

 では、これで失礼します」


伊東も子どもが生まれるのか。

選手以外もどんどん変化していく。


伊東の子どものためにも、ジュニアチームをちゃんと始動できるようにしないとな。


今の社員たちの子どもが、京南FCのユニフォームを着て試合をする。


そんな姿を想像して、少し楽しみになった。

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