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この街に、プロサッカークラブを。 ~選手の能力が見えるIT社長、県6部からプロを目指す~  作者: いとやん
第二章 地域定着編

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3年目 第6話 三年目

三年目のリーグ戦が終わった。


結果から言えば――。


京南FCは京都府四部リーグを優勝した。


そして、来年からは京都府三部リーグへ昇格する。


これで一年目の六部、二年目の五部に続いて、三年連続の昇格だ。


「三年連続優勝、昇格か……」


改めて口にすると、なんだかすごい。


もちろん、今年も簡単だったわけじゃない。


エンペラーカップでは、ついにプロチームとも公式戦で戦った。


結果は負け。


だけど、今まで遠くに見えていたものが、ほんの少しだけ近くに見えた一年でもあった。


そしてリーグ戦では、きっちり結果を残した。


京都府三部。


また一つ上だ。


来年も楽しみだな。


◇


「それでは、今年度のサッカー事業部について報告します」


年末。


毎年恒例になりつつあるサッカー事業部の報告会が始まった。


伊東に発表してもらっているので、役員の反応を確認しながら聞く。


去年に比べるとだいぶ改善していると思うが、役員たちの反応はどうだろうか。


まずは――。


「スクールですが、現在三十か所で開催しています」


「三十?」


お、橋田が反応した。


――橋田は去年、役員会で厳しいことを言ってくれた役員だ。


「順調に伸びていますね」


橋田は厳しい意見は出すが、ちゃんと事業として正しいかどうか判断してくれる。


好意的な反応だった。


「はい。引き続き出張型のスクールが好調で、京南市近隣の会場でも開始しています」


「それは素晴らしいですね」


スクールの報告としてはここまでだが、先にジャブを打っておいてもらう。


「サッカー事業部のスクール事業は順調に成長しています。

 今後の成長のために、新しい投資をするべきと考えています。

 それはこの役員会の最後に説明させていただきます」


新しい投資という言葉にぴくっと反応する役員たち。


最後にとのことなので、報告を続けてもらう。


「続いてスポンサーの獲得状況を報告します。

 現在、京南FCのスポンサーは三十社を超えました。

 小口ばかりではありますが……」


「おお、三十社」


別の役員も反応した。


いい傾向だ。


京南武田工務店との契約から、隠岐、営業部に引き続いて動いてもらった。


飲食店。


不動産会社。


学習塾。


地元のメーカー。


整骨院。


など、いろいろな企業に賛同いただくことができた。


もちろん、大企業が何千万円も出してくれるようなスポンサーではない。


十~三十万円の契約だ。


それでも合わせれば、今年のスポンサー収入は約六百万円になった。


六百万円。


去年までゼロだったことを考えれば大きい。


でも、俺が嬉しいのは金額だけじゃなかった。


また、京南武田工務店さんとはスポンサーだけじゃなく、ノードシード社の社内保育園関連の工事にも関わってもらっている。


これぞ共存共栄の第一歩だ。


そして。


いよいよ一番大事な話だ。


「それでは今年度の収支です」


去年のサッカー事業部は約五千二百万円の赤字だった。


「まず収入です。スクール事業が約三千万円。スポンサー収入が約六百万円。物販などを含めて、合計約三千九百万円です。

 昨年の約二千万円と比較して大幅に増えています」


役員たちが反応する。


「去年の倍近くになっているのか」


「収入はいいですね。支出はどうですか?」


やはり気になるところはそこか。


「はい。支出は約八千二百万円です。

 昨年より約九百万円増加しています」


スクールが増えれば、それを運営する費用も増える。


選手やスタッフも増えた。


用具もいる。


グラウンドや設備の維持費もある。


事業が大きくなれば、収入だけが増えるわけではない。


「今年度のサッカー事業部は、約四千三百万円の赤字となります。

 昨年比、九百万円改善しています。

 今後の収支予測ですが、最短で四年で黒字転換できる見込みです。

 詳細はお手元の資料を参照ください」


伊東が発表を切り上げる。


俺は役員たちの反応を待つ。


「昨年よりも改善していますね。

 予測は若干楽観的な気がしますが、許容範囲です」


橋田が言う。


「伊東さん、皆さんよく頑張りましたね。

 引き続き改善を続けてください」


サッカー事業部に深く関わっている俺としては、よくやっていると思っていた。


ただ、役員会でこんなにあっさり話が進むとは思っていなかった。


きっちり改善に向かっていることが評価されているんだろう。


では、すかさず後回しにした話題を挙げる。


ここからは俺がスピーカーだ。


「継続したスクール事業の成長のために、グラウンド設備に投資しようと思う」


「理由をお伺いしても?」


「もちろん。現状のグラウンド一面では、増えたスクール生の対応ができなくなるためだ」


俺は現状のグラウンドで発生している問題を報告。


さらに、増設しなかった場合に発生する事象を説明した。


せっかく入ってもらったスクール生が減り、さらに今後増やしていくことが難しくなること。


この二点だ。


「別に大きなスタジアムや何面もの芝のグラウンドを作るわけじゃない。

 今のグラウンドの横にサブグラウンド、簡易的な観客席を作りたいんだ」


サブグラウンドはスクールや交流戦でも使える。


トップチームの練習でも使える。


簡易的でも観客席があれば、保護者が試合を見る環境も良くなる。


「予算は?」


「三千万円だ」


日下が三千万円という金額と、二年目、三年目のスクールの収支を確認している。


「分かりました。認めましょう」


「早い!」


「別に好き好んで難癖をつけているわけではありません。

 妥当性、必要性、合理性があればちゃんと認めます」


「ありがとう、日下大明神!」


「でも、ちゃんと社内手続きを通してくださいね。

 稟議書の提出をお願いします」


「え、社長からの起案で、役員会でOKなのにいるのか?」


「手続きなので……」


「分かった」


頼んだぞ、伊東。


こうして思ったよりもすんなりと役員会は終了した。


◇


京南FCの三年目が終わった。


京都府四部優勝。


三年連続の昇格。


全国社会人サッカー大会予選では、府一部のチームとも戦った。


エンペラーカップでは、本戦に出場した。


プロとも戦った。


田中が結婚した。


スクールは三十か所。


スポンサーも三十社を超えた。


保育園も来年の開園に向けて工事が進んでいる。


――これは京南FCには直接関係はないが。


赤字も去年よりは減った。


そして来年には、サブグラウンドと観客席もできる。


三年前。


会社のサッカー部を作ろうと思った。


最初は、それだけだった。


それが今では。


子どもたちが集まり。


地域の会社が集まり。


選手が結婚し。


新しい施設まで増えていく。


少しずつ。


本当に少しずつだけど。


京南FCというものが、この街の中に根を張り始めている気がする。


まだ京都府三部。


上には二部がある。


一部がある。


その先もある。


まだまだ先は長い。


でも。


三年目も、いい一年だった。

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