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この街に、プロサッカークラブを。 ~選手の能力が見えるIT社長、県6部からプロを目指す~  作者: いとやん
第二章 地域定着編

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2年目 第4話 二年目

 引き続きリーグ戦の方も順調だった。


 さすがに六部の時と比べれば、簡単に勝たせてくれない試合は増えた。


 先制される試合もあったし、最後まで一点を争う試合もあった。


 それでも大きく崩れることはなかった。


 岡本さんの指導のもとでチーム全体が少しずつ成長している。


 今年入った二人の新入社員も、すっかりチームに馴染んだ。


 そして友近も、ボランチとして去年より明らかに良くなっている。


 そうやって一年を通して勝点を積み重ねた結果──。



「よっしゃあああ!」


 試合終了の笛と同時に歓声が上がった。


 京都府五部優勝。


 そして、来年の京都府四部への昇格が決まった。


 二年連続の優勝。


 二年連続の昇格だ。


「社長! 二年連続ですよ!」


「おお! やったな!」


 近くにいた選手と次々にハイタッチをする。


 去年も嬉しかったけど、今年もやっぱり嬉しい。


 一つ上に行けば、また一つ上が見えてくる。


 こうやって一段ずつ上がっていくのは気持ちいいな。



「みなさーん! 写真を撮りますよー! 応援の方もどうぞ、選手を中心に集まってください」


 今年も総務部課長が声をかける。


 そうだ、今年も優勝記念の写真を撮らなければ。


 選手たちが集まっていく。


 スクールの子どもたちも、我先にとコーチの横に入っていく。


 保護者の方や岡本さん、スタッフ、今日応援に来てくれていた社員たちも集まってくる。


 去年に引き続き、筋トレ部が横断幕を広げる。


 その様子を少し離れたところから眺める。


「おお……」


 去年も優勝した後、みんなで写真を撮った。


 でも、今年は明らかに違う。


 紫が多い。


 選手たちのユニフォームだけじゃない。


 スクールの子どもたちも紫のユニフォームを着ている。


 保護者の中にも、この前作った京南FCのTシャツを着てくれている人がいる。


 一年前にはなかった紫だ。


 俺が思っていた以上に、この一年で増えていたらしい。


「社長ー! 早く入ってください!」


「あ、はい!」


 篠宮さんに呼ばれて、慌ててみんなのところへ走る。


「撮りますよー!」


 みんながカメラを見る。


「京南FC、五部優勝ー!」


「おおー!」


 シャッターが切られた。


 二年目の優勝写真。


 去年より、ずっと紫が増えていた。



 記念撮影後には、選手にサインをねだる子どもが増えていた。


 今年はサイン用の色紙を準備していたようだ。


 去年のお絵かき帳から進化している。


「全部のコーチに書いてもらった!」


 と、嬉しそうにしている。


 いいな。


 あの子たちに引き続き憧れてもらえる存在でいられるように頑張ろう。


「友近コーチのサイン、へんー!」


「何だと! 俺が三日三晩考え抜いた最新イタリア式のサインなんだぞ!」


 なんじゃそりゃ。


「なんて書いてあるか分かんないもん!」


「くそ、子どもにはまだ早かったか……」


「渡部コーチのサイン、かわいい!」


「ふっ、友近よ。サイン勝負はオレの勝ちだな」


 見せてもらうと、ひらがなの「渡部」という文字を上手く使って、キャラクターっぽくしていた。


 意外なところに才能みたいなのがあるものだ。


 俺もサイン練習しようかな。


 万が一のために。



 二年目もいろいろあった。


 サッカースクールはさらに増えた。


 スクール同士での交流試合も定期的に行うようになって、子どもたちは京南FCのユニフォームを着てくれるようになった。


 京南FCに入りたいと言ってくれる人も初めて現れた。


 マネージャーをやりたいと言ってくれる社員まで現れた。


 初めてエンペラーカップの予選にも出た。


 地域リーグのチームとも戦った。


 市役所からイベントに参加してほしいと声をかけてもらい、それをきっかけに地域活動も増えた。


 そして最後は、京都府五部優勝。


 振り返ってみると、あっという間に二年だ。


 たかが二年。


 だけど、二年で結構状況も変わってきた気がする。


 一年目は、俺たちの方からいろんなところへ声をかけていた。


 今年はちょっとだけ違った。


 京南FCに入りたい。


 京南FCを手伝いたい。


 京南FCに来てほしい。


 大半はこちらから動きかけないといけないが、少しでも向こうから言ってもらえるようになった。


 まだ京都府五部の小さなクラブだ。


 それでも少しずつ、この街に京南FCという名前が根付いてきているのかもしれない。



 そして、来年も楽しみなことがある。


 板垣蓮。


 来年の春、高校を卒業してノードシードに入社する予定の選手だ。


 あいつにはかなり期待している。


 初めて見た時から、サッカーの能力は高かった。


 俺には数字も見えているから、その才能はよく分かる。


 岡本さんの評価も高い。


 うちに入って成長すれば、かなり面白い選手になると思う。


 ただ、一つだけ気になることがある。


「なあ、隠岐」


「何です?」


「板垣って、会社の方は大丈夫そう?」


「大丈夫ですよ」


「コミュニケーションとか」


「……大丈夫ですよ」


「なんで今ちょっと間があった?」


「気のせいです」


 本当か?


 サッカーの才能には期待している。


 コミュ力はちょっと心配だ。


 まあ、それも含めて来年のお楽しみということにしておこう。



 一年目、京都府六部優勝。


 二年目、京都府五部優勝。


 来年は京都府四部。


 京南FCの三年目が始まる。



 ──なお。


 今年も恒例の忘年会が開催された。


 去年との大きな違いが一つ。


 友近が二十歳になった。


「俺、今年は酒飲めるんですよ!」


「おお、そういえばそうだな」


「去年はずっとジュースでしたからね!」


 嬉しそうだな。


「よーし、今日は飲むぞー!」


「ほどほどにしとけよ」


「大丈夫ですよ!」


 そう言っていた友近は、ずいぶん楽しそうに酒を飲んでいた。


 そして翌日。


 京南FCでは、友近の飲酒が禁止された。


 何があったのかは、あまり思い出したくない。

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