表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/9

空騒ぎなのか

 シノビメはヒガシ湖でギルドの対立を煽っている者がいると、捜していたらしい。話すところへ来たのが、王家の四頭立て馬車。先導しているのは荷馬車だが、ジュリーが「逃げられたか」と叫びながら近づき、降りる。幌馬車も近くへ停まり、ワカーレルが下りてきた。後ろには騎士と罪びとを乗せる金網の設けられた荷馬車。

「ワカーレル様。わざわざ男爵領へご用事でしょうか」

 やはり、王家へ挨拶するのが礼儀だ。

「ウワキムンが夜中に城を抜けたのじゃ。侯爵領へ向かうと思って追って来たのである」

 ジュリーたちの存在は知っていたらしく、情報を聞いて、ここへ来たのだ。

「おにわばんとか、私たちの国にもいるの」

(探偵みたいで興味があるよね)

「正体は明かせないのじゃ。探偵ごっことはわけがちがうぞ」

「そうかー。私たちも役に立っったでー」

「そうだよ、あの、シノビメさんのお陰だけど」

「困った令嬢さんたちであるな。遊びではないのじゃ」

 ワカーレルが、それぞれの家にも連絡しなければならないと言い出す。

「そうだ。反逆の証を手に入れたよ。優秀でございましょう」

 ここで、有能なのも教えたい。例の契約書を見せる。

「だから。ほんとうにオテンバじゃな」

 反逆の証拠には関心もしめしたようすだ。


 ジュリーはシノビメと話していたが、近づいて来た。

「この男たちがヒガシ湖でギルドの対立を煽っていたと思われます」

「どれどれ、ん、この顔は覚えているぞ」

 リーダー的な役割をしていて、ワカーレルも顔は覚えていたらしい。

「罪びとを金網の中へ乗せよ」

 騎士たちに合図した。

「あとは、逃げたあの野郎だね」

 慌てたのはシノビメ。

「あんたらには無理や。すべてばれとるさかい。軍隊を動かしよるかもしれんのや」

「窮鼠猫を噛むだね」

 呑気に言うが、何が起こるか予想つく。

(いやいやいや、まずいでしょ。武力衝突になるよ)

「探偵ごっこをしたいのか」

 ジュリーが尋ねる。当然うなずく。

「近くから応戦やなー。カニクバル伯爵領の騎士団がおりよるでー」

「君たちは、もう」

 ワカーレルは叱りたいようすだが、何か思いついたようだ。

「カニクバル伯爵の応援は欲しいところだ。連絡して、そのまま、王都へ戻るのがいいである」

「王都か―。縁談の話も気になるなー」

「あの野郎、じゃなくて。ウワキムン様の反逆を話せば、ブイバン王国も理解してくれると思う」

 そういうわけで、カニクバル伯爵へ早馬で連絡に行かせる。

「着替えてから王都へ、なっ」

 ジュリーが提案した。確かめると、ドレスには乾いた土や枯れ葉が、汗でくっつく。契約書をドレスの襞のポケットへ納めると、ハンカチを取って汗を拭く。

「写真館の近くに、ドレスショップがあったでー」

 まずは、幌馬車に乗る。ジュリーは侯爵領へ様子を探りに行くらしい。

(また、一緒かな。ちょっと嫌だよ)

 シノビメがどうするのか気になった。

「これで和解しよるやろ。連れて行くでな」

 罪びとを乗せた馬車に乗り込むシノビメ。

(やっぱり、仕事だけの関係だよ)

 ロメーヌはなぜか安心もした。これは恋かも知れない。


 町営のこじんまりした迎賓館がある。町役場の隣だ。騎士団はここへ集結する。

 風呂も借りて着替えたところに、ワカーレルが近くのスグソコ男爵と騎士たちを連れてきて、相談をしていた。テラスで成り行きを眺めると、片隅には舞台が設けられて提灯がさがる。

「十五夜祭りの時期やなー」

「ナガイタニ町は賑やかだよ」

 のどかに話しているところへ、ナガイタニ男爵が会いに来た。

「公爵様のお嬢様が、何事でござるか」

 やはり、爵位の高い方へ話す。

「不倫の連絡は届いておるるやろー。ウワキムン様がなー。逃げたんよー。それを追いかけてワカーレル様がいらっしゃってはるでなー」

 ちょっと驚く男爵。

「侯爵様がお引き取りすると聞いてござる。これは、兄弟の私怨でございましょうか、迷惑でござる」

 男爵は町の領主で頑固な者も多い。

「反逆ですね。新しく国をつくるとか」

 契約書を取り出して見せる。

「両国の侯爵領から軍隊が攻めて来るかもです。ナガイタニ男爵様にも、防衛の依頼をするはずですけど」

(肝心のナガイタニ男爵様には話を通してないのかしら)

 そのまえに、騎士を集めることが優先だったのだろう。

「そんなはずは、ござらん」

 ナガイタニ男爵が言い切る。

「いまも、騎士団長が、ここへおいででござれば、呼んでまいろう」

(すぐに争いが起りそうにはないね。侯爵が指示をだしてからかしら)

 それにしても呑気な町だ。舞台では太鼓が響いて、踊りの予行演習も始まる。

「騒がせるのは何者だ」

 二人の騎士が小走りで来た。あとを追うナガイタニ男爵。

「ワカーレル様もいらっしゃってござる。穏便に」

「この女たちは、あっ、公爵令嬢様」

 気づいたのはショボドボ王国の騎士団長。

「話は聞いた。内乱か」

 ブイバン王国の騎士団長らしい男が、詳しく聞きたいようす。内乱へは関わりたくないらしい。

「両国の侯爵領を併せて建国する野望が発覚しております」

 ロメーヌは契約書を見せる。二人の騎士団長がなかば呆れたように笑う。ナガイタニ男爵が代弁するように話す。

「任命したのは女王様であらせられる」

「さよう。騎士道として、誰につくか」

「おろかな。騒ぎを起こすは、反逆でござろう」

 二人の騎士団長の意見は同じらしい。

「余興の練習中でござれば」

「貴族は勝手に騒がれなされませ」

 茶番に付き合っていられないと、舞台のほうへ歩いて行った。


 さて、カニクバル伯爵がかき集めた、貴族の連れた騎士たちも集まりだした。

「王都へ戻ろう。見つけられたら叱られる」

 ロメーヌは、無茶をするな、と両親から言われてもいた。

「時間稼ぎやけどなー。縁談のことも知りたいでー」

(そりゃやね。いま叱られるか、あとから叱られるかの違いだけど)

 先伸ばしして、相手の感情を和らげたい。良いところへワカーレルが来た。

「男爵から聞いた。敵はあの侯爵だけだ」

 反逆罪で捕まえるらしい。当然だろう。これで、離縁の話が無難に済んでいたら、王都の十五夜祭りへいってみようと、話しながら軌道馬車へ乗った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ