Myth ~Ragnarok~〈Serruria〉
きっと、一瞬のことだったんだと思う。
痛いとか、苦しいとかじゃなくて、ただ、漠然と冷たい、と思った。
自分の背中から胸にかけて突き抜けた光。次いで口からこみ上げたのは、真っ赤な液体。
ああ、早く行かなきゃ行けないのに。
早く、知らせなきゃいけないのに。
「……ッ! ……アッ、セルリア!」
倒れるはずだった私の体。冷たくて、寒いのに、それを支えた何かが酷く温かかった。
「……あ、っ……ゴホッ…………キ、まッ、ゴホゲホッ!」
「喋るな! すぐにエイルのところにっ!」
私を抱えなおして走り出そうとする金の髪の主。
咄嗟にその腕を掴んで、引き止めた。上手く掴めていたか分からないけれど。
「セルリア?」
呼びかけに、一生懸命首を振る。
きっと、もう間に合わない。
自分の体のことだもの、自分が一番よく分かってる。なら、残った時間は彼のために。
「ロ、キ様……っ」
「クソッ! ふさがれよぉっ!」
ああ、そんなことしてくれなくて良いのに。こんな所で無駄な魔力を使っちゃいけない。ここから、あの人から逃げるためには――
「……ロキ、様っ」
「喋るなって言ってるだろう!」
「逃げ、て……」
「え?」
「……ディン、様が…………っ、ロキ様っ、を……」
愕然とした表情。
ごめんなさい。貴方にそんな顔をさせて。聞きたくなかったですよね。だって、兄弟なんですもんね。
でも、それでも……私は、貴方に
「逃げて……だ、さいっ…………生きてっ、ゴホッ!」
「セルリア!」
もう、時間がない。伝えたいこと、たくさんあったのになぁ。
あんまり見えないけど、どうか泣いたりしないで。私は貴方の従者だから。貴方を守るのが当然なんです。だから、私のことじゃなく、自分のことを考えて。
「最後、までっ……一緒、に…………ごめ、なさっ」
「っ、嫌だよ……傍にいてくれるんだろう? 約束だってあるじゃないか!」
ああ、そうだ。私、まだ役目があるんだ。
「ダメだ。いなくなるな……そんなこと許さないからねっ、これは命令だ!」
あは、こんな時まで、ほんと我侭ばっかりだなぁ。
ごめんなさい。最後まで一緒にいられなくて、守れなくて。
ごめんなさい。貴方との約束を守れなくて。
でも、私は貴方に、ロキ様に生きていてほしいから。自由でいて欲しいから。どうか、ここに縛られることを望まないで。私の死を嘆かないでください。
望まぬことに飲まれないで。
貴方が幸せになる道を、世界の常識なんかに埋もれさせてしまわないで。
だって、貴方は私に、かけがいのないものをくれた、かけがえのない人だから。
「ロキ、様……」
抱きかかえられているから、いつも以上に顔が近くに見える。
ほら、泣かないで。私は――
「あ……なたに、会えて…………」
「セ、ル……リア? ……セルリア、セルリアッ!」
世界中の誰よりも、幸せでした。




