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Myth  作者: 詞葉
Myth 外伝
59/83

もう一歩!(8)

今日の2話目更新。

『もう一歩!』最終話です。

「どう思う? あれ」

「もう、大丈夫だと思います」

「その根拠は?」

「『帰る』って、言いましたから」


 前は『戻る』だったのが、今日は『帰る』になっていた。だから、もう大丈夫だ。


「帰る場所が分かったんです。居場所があるんですから。だから、大丈夫です」

「それもそうだね」


 一所でもいられる場所があるなら、いても良いと思える場所があるなら、それは『安心』の糧になる。心に余裕があれば、二人の関係も何とかなるだろう。


「それじゃあ、僕らも『帰る』?」

「! はいっ。今日は何がよろしいですか?」

「それじゃあ和食で、あっさりしたのか食べたいなぁ」

「分かりました」


 クスクス笑いながら、こちらの二人も『家』へと帰っていった。



         ※ ※ ※ ※ ※



 目標を確認。距離十メートル。振り向く気配なし。


「ヘイムダル様ぁーッ!」


 セロシアは、どう考えても呼びかけるにはふさわしくない声を上げながら、おもむろに前方を歩く彼に向かって飛び蹴りをかました。

 無論、ひょいっと軽く避けられてしまったが。


「ちっ、今日もはずしたか……」


 ズザザザザザッ、と着地しながら舌打ちする。そんな彼女を見て、ヘイムダルは最近日課になった溜息をついた。


「何がしたいんだ、お前は」

「いや、ヘイムダル様に掠める位になれば、色々できることも増えるかなって」

「どういう基準だ」


 確かにヘイムダルに攻撃を当てられれば、少しどころかかなり優秀な兵士になれるだろうが。こう毎回後ろからの攻撃には疲れてくる。というのが彼の本音らしい。


「どの道、当分先の話だな、それは」

「あ、言いましたね! こうなったら絶対ぎゃふんと言わせてやる!」

「勝手にしろ」


 言い捨てて彼は再び歩き出す。セロシアもその後を追った。

 先程より幾分歩調はゆっくり。きっと合わせてくれているのだろう。よく見ていれば彼の色々な面が知れて結構面白いこともある。


「セルリアからお茶菓子貰ったんです。明日お茶につけますね」

「ああ」


 ほら、少し嬉しそうなのがわかる。


「ミッドナイトホーンもだいぶ良くなりました。餌、普通のに戻しても?」

「そうだな」


 ほら、ちゃんと見てる。


「お夜食いります?」

「……ああ、頼む」


 肩越しに少しこちらを見て、フッと笑う。

 うん、もう大丈夫だ。知っていけること、気づけることはまだまだたくさんある。


「はい、お任せあれです!」


 明日は、今日よりさらにもう一歩先の関係へ。

 楽しそうに歩く二人の影が、夕日に照らされアースガルドの道に長く伸びていた。まるで、これから先の時間を暗示するように。


これにて『もう一歩!』は完結です。

でもまだまだ小話は出していきます!

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