もう一歩!(8)
今日の2話目更新。
『もう一歩!』最終話です。
「どう思う? あれ」
「もう、大丈夫だと思います」
「その根拠は?」
「『帰る』って、言いましたから」
前は『戻る』だったのが、今日は『帰る』になっていた。だから、もう大丈夫だ。
「帰る場所が分かったんです。居場所があるんですから。だから、大丈夫です」
「それもそうだね」
一所でもいられる場所があるなら、いても良いと思える場所があるなら、それは『安心』の糧になる。心に余裕があれば、二人の関係も何とかなるだろう。
「それじゃあ、僕らも『帰る』?」
「! はいっ。今日は何がよろしいですか?」
「それじゃあ和食で、あっさりしたのか食べたいなぁ」
「分かりました」
クスクス笑いながら、こちらの二人も『家』へと帰っていった。
※ ※ ※ ※ ※
目標を確認。距離十メートル。振り向く気配なし。
「ヘイムダル様ぁーッ!」
セロシアは、どう考えても呼びかけるにはふさわしくない声を上げながら、おもむろに前方を歩く彼に向かって飛び蹴りをかました。
無論、ひょいっと軽く避けられてしまったが。
「ちっ、今日もはずしたか……」
ズザザザザザッ、と着地しながら舌打ちする。そんな彼女を見て、ヘイムダルは最近日課になった溜息をついた。
「何がしたいんだ、お前は」
「いや、ヘイムダル様に掠める位になれば、色々できることも増えるかなって」
「どういう基準だ」
確かにヘイムダルに攻撃を当てられれば、少しどころかかなり優秀な兵士になれるだろうが。こう毎回後ろからの攻撃には疲れてくる。というのが彼の本音らしい。
「どの道、当分先の話だな、それは」
「あ、言いましたね! こうなったら絶対ぎゃふんと言わせてやる!」
「勝手にしろ」
言い捨てて彼は再び歩き出す。セロシアもその後を追った。
先程より幾分歩調はゆっくり。きっと合わせてくれているのだろう。よく見ていれば彼の色々な面が知れて結構面白いこともある。
「セルリアからお茶菓子貰ったんです。明日お茶につけますね」
「ああ」
ほら、少し嬉しそうなのがわかる。
「ミッドナイトホーンもだいぶ良くなりました。餌、普通のに戻しても?」
「そうだな」
ほら、ちゃんと見てる。
「お夜食いります?」
「……ああ、頼む」
肩越しに少しこちらを見て、フッと笑う。
うん、もう大丈夫だ。知っていけること、気づけることはまだまだたくさんある。
「はい、お任せあれです!」
明日は、今日よりさらにもう一歩先の関係へ。
楽しそうに歩く二人の影が、夕日に照らされアースガルドの道に長く伸びていた。まるで、これから先の時間を暗示するように。
これにて『もう一歩!』は完結です。
でもまだまだ小話は出していきます!




