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Myth  作者: 詞葉
Myth 外伝
58/83

もう一歩!(7)

今日は2話更新。

「てな感じだったんですが、どう思います? 何であんな急にたくさん話したんだろう。次の日からはもう元に戻ってたんですよ」


 あの珍しいことが起こった日から数日、セロシアはまたロキ邸のお茶に参加していた。主ともども迷惑をかけたお詫びと、セルリアを安心させるために来たのだ。

 ちなみに、ヘイムダルは仕事でヴァルハラに行っている。


「ま、ある意味怒ってたんじゃないの、あいつも。僕の家を出た瞬間に君の危機的状況を見ちゃったんだろうね。驚いたことに走ったよ、あのヘイムダルが」

「つまり、あの饒舌は説教というわけですか……」


 怒る時だけ話すようになるってどうよ、と思わずにはいられない。


「心配したっていうのもあると思うよ。困惑してたしね。ねえ、セルリア?」

「そうですね。珍しく困ってらっしゃいました」

「へぇ……あ、そういえばイムダル様怖がってたよ。セルリアが怒ったこと」

「え!?」

「ああ、あれね、僕も怖かった」

「ええ!?」


 二人の会話に彼女だけが青ざめて行く。その様子を面白そうに見ながら、セロシアは抱きついた。


「ん~、でもあたしのために怒ってくれたんだし、嬉しかったよ!」

「大事な妹だもん。怒る時は怒るよ」


 何でもないようにそう言ってくれたセルリアが、本当に嬉しい。


「で? その後は何とかなってるわけ?」

「まあ、話すのが本当に苦手なようですし。でも言いたいことは言うんだって分かったし。聞いてることは聞いてるようなので……時間あれば、何か一緒にするようにしてますし」

「進歩したねぇ~」


 それはビックリだ、と口笛を吹くロキ。寡黙すぎるヘイムダルを知っている彼からすれば、少し想像しにくいかもしれない。

 そして、セロシアは知っている。今のロキから想像できないロキがいることを。ヘイムダルからばっちり聞いた。


「セルリア、このお茶菓子貰ってもいい? ヘイムダル様もセルリアのお茶菓子好きそうだし。明日のお茶請けにしたい」

「え? うん、良いよ。ちょっと待っててね。今包んでくるから」


 人好きのする笑みを浮かべて、その場を離れるセルリア。遠くに行くのを見計らって、セロシアはロキに視線を投げた。それはもう、バッチリ殺気を込めて。


「やっぱり猫かぶってましたね。ロキ様!」

「何のことだかさっぱり」

「嘘言わないでください! 聞きましたよ? ずいぶんな本性をお持ちのようで!!」


 聞いただけだが、結構、今見ているのとは逆の性格をしているらしい。それが片割れの傍にいるかと思うと――


「猫って言うより、羊の皮をかぶった何とやら、だわ」

「僕の息子はそれだしねぇ」

「はぐらかさないでください! とにかく、何度も言いますが、セルリアに手出したらただじゃあおきませんよっ! あの子には良い人見つけてもらって、絶対幸せになってもらうってあたしが決めてるんですからっ!」

「君が決めてどうするのさ」


 あはは、面白いねぇせロシアは、と、意気込んで言った内容もあっさり流されてしまう。この神はヘイムダルより扱いにくいかもしれない。

 もうセルリアも戻ってきそうだ。ここまでか、と思った矢先。頬杖をつきながらこちらを見ていたロキがにやりと笑った。


「やれるもんならやってみろよ。俺をどうこうなんて、お前にゃ到底無理だろうけどな」


 ピキンと、辺りが凍りつく。


(今、『俺』とか言った……?)


 セロシアの知っている彼からは考えられない一人称。ありえない言葉遣い。再びにっこり笑うロキに、ひくつく口元が止められない。


「あれ? どうしたのセロシア? 固まっちゃって」

「セルリアァ! ダメ、絶対ダメ! ここにいたら危険だって! 今からでも遅くないから申請して他の主見つけようよ~!」

「え!? どうしたの急に?」

「ホントどうしたんだろうねぇ」

「首を傾げたって、貴方の腹黒さは消えないんですからね!!」


 ダメだ。前はロキとの方が気が合うかもと思ったが、実際はヘイムダルよりもロキの相手をしている方が疲れる。

 自分はヘイムダルの方が主として合っているのかもしれない。


「あ、セロシア。あれヘイムダル様じゃない?」

「ほえ?」

 セルリアの指差す方向。そこには確かに黒い点が。この神界であそこまで黒尽くめなのはヘイムダルに他ならない。きっと仕事の帰りなのだろう。


「ホントだ! んじゃあたしも帰るね、セルリア、これありがとう!!」


 挨拶もおざなりに、見つけた背に向かって走っていく。ここからなら追いつくだろう。セロシアは後ろで二人が笑っているのにも気づかず、ひたすら前に向かって駆け出した。


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