40話
さて軽い夕食後の腹ごなしのお時間なわけですが・・・
「えーとシゼル、この変装用の衣装・・・ホントに着なきゃダメ?」
「お言葉ですがご主人様、顔バレして全世界に巨乳好き罪で指名手配されても良いのですか?」
「顔バレは確かに嫌だけど巨乳好き罪ってなに? おっさんが巨乳好きだと何故罪になるの?」
シゼル曰く渾身の出来らしい変装衣装に着替えながら突如として出現した「巨乳好き罪」というワードについて質問をぶつけてみる。
ちなみに女性陣はもう着替え終わっています。しかも何故かみんな抵抗なくむしろノリノリで登場ポーズの練習とかをしている。
何故登場ポーズの練習をしているかって? 変装用の衣装が「ゴレンジャー風」だからです。
なんだろうね・・・シゼルが作ったから非常に高い防御力を有しているのは確かなんだけど、おっさんの年齢でこの衣装を着るのは結構な勇気がいるワケでして・・・
子供の頃はこんな感じの衣装を身に纏った戦隊ものが「カッコイイ!」と無邪気に感じていたけど、実際に自分で着るとなるとこれは中々くるものがあるね。
幸いなことに日々の鍛錬のおかげで一応人様にお見せできるレベルの体ではあるけれど、正直恥ずかしい。
もっと若ければそれこそ10代後半~20代前半くらいの年齢なら、カッコよく着こなせるんだろうか? ・・・ダメだ。想像してみたけどやっぱりダメそうな気がする。
しかも変身して一瞬で衣装を身に纏わずに普通に服のような感じで着ているから、傍から見たらさぞかしシュールな光景だろうな。
きっとおっさんが幼い頃に見たデパート屋上のヒーローショーも舞台上では華やかでカッコよかったけど、舞台裏ではいまのおっさんのような状態だったんだろうな・・・子供に夢を与えて本人は対価としてお金を頂く。ヒーローショーもれっきとした労働だね。
あのときのヒーローの中の人たち、お疲れ様でした!
一応着替え終わって鏡でおっさんの姿を見たが・・・まんまヒーローショーの人である。
ちなみにみんなの配色はこんな感じ。
・レッド➡おっさん
・ブラック➡シゼル
・ブルー➡レヴィさん
・ゴールド➡ティアさん
・ローズ➡アリア
・パープル➡アリシア
・グリーン➡シオン
色のチョイスが微妙だと感じるのはおっさんだけだろうか?
「ご主人様・・・すべての女性が自分の理想とするバストを有しているわけではないのです。血反吐を吐くような過酷な鍛錬やマッサージ、食事制限などありとあらゆる努力の積み重ねが大きさとカタチの良さを形成しているのです」
「はあ・・・そうなんですか」
「しかし世界にはそれほどまでの努力をしても自身の理想とするバストを手に入れることのできない、宿命を背負った貧乳力の持ち主が存在するのです。幸いにもご主人様の周囲にいる私を含む女性陣は巨乳です。ですが「おっさんは巨乳好きだ! 貧乳は胸とは認めない!」などと万が一にでも叫んだ場合、ご主人様はこの世界の貧乳という宿命を背負った者たちを敵に回すことになります。そのことを夢お忘れなく」
なんかすげー真面目な表情でシゼルに「乳」ついて忠告されたんだけど・・・おっさんはどんな反応をしたら正解なんだこれ?
「なんて言えば良いかわからないけどまずおっさんは万が一にでも「おっさんは巨乳好きだ! 貧乳は胸とは認めない!」とか往来で叫ばないし、それに巨乳好きだけど別に貧乳を否定しているわけではないよ? ほら「貧乳はステータスだ。希少価値だ!」って言うじゃない? アレだよアレ」
苦し紛れだがおっさん的にそこそこの意見を繰り出してみる。
「ふ・・・詭弁ですね。ご主人様、それを貧乳という宿命を背負った方の前で言えますか?」
「いや、それは・・・」
重い。なんて重い言葉なんだ・・・
「真剣な雰囲気のところ悪いのじゃが、みんな着替え終わったようじゃしそろそろ行かんか?」
おっさんとシゼルの「乳論争」に終止符をうったのは、アリシアだった。
しかもかなりあきれた表情で。
「これは失礼しました。では参りましょう」
シゼルが着替え終わったみんなを引き連れて転移先の場所を地図上で確認し始めた。
おっさんじゃなくてシゼルが返事し主導権を握るこの感じ・・・やっぱりおっさんは行かなくても良いのでは?
と思っていたおっさんの手が下に引っ張られた。
何かと思って視点をその方向に移すとそこには仲良し3人組(セレス、虎鉄、小雪)が、おっさんをガン見していた。
「どうしたの? さっき説明したけどお留守番しててね」
まだ一緒に行くことを諦めていないのかと思い、もう一度連れていけないことを説明したが・・・なんか反応が微妙だな。賢い子達だから理解していると思うんだけど・・・
「おるすばんはしゅるの。だから・・・」
セレスがお気に入りの熊のぬいぐるみを抱きしめながら、おっさんを上目遣いで見て・・・
「おみやげがほしいの!」
「「わん!」」
セレスのお土産おねだりに賛同するように虎鉄と小雪が元気よく吠えた。
あ、お土産が欲しくておっさんをガン見してたのねキミたち。
お留守番に納得したご褒美にお土産か・・・それは良いんだけど今から行く場所にお土産になりそうなものあるかな?
流石にシオンに惨殺された連中の首というわけにはいかないしな・・・どうしよう。
「だめ?」
「「くう~ん」」
仲良し3人組(セレス、虎悦、小雪)がしょんぼりし始めた。
これはいかん! どうにかしないと・・・
「わかったよ。何か面白そうなものがあったらお土産として買ってくるよ」
おっさんがそう言うと仲良し3人組(セレス、虎悦、小雪)は分かりやすいくらい喜んで、小躍りし始めた。
これは下手なものお土産に買ってこれないな。あとでアリアに聞いていみようかな?
もしくはお土産という名目でおっさんが何か製作するしかないか・・・また胃が痛い案件が誕生したよ。
けん玉・ベイブレード・ミニ四駆のどれかを予定しておこう。
あ、熊師匠達はお土産とかいります? 「いらないから無事に帰っておいで」ですか。
わかりました。無事に怪我無くすぐにマッハで戻ってきます。
仲良し3人組(セレス、虎悦、小雪)の相手をよろしくお願いします。
「ご主人様、転移先の座標がわかりました。参りましょう」
おっさんが仲良し3人組(セレス、虎悦、小雪)の相手をしているうちに、転移先の正確な座標がわかったらしい。これおっさんマジで行く意味あるかな?
「じゃあ、行ってきます」
「ぐうぁ!」
「おみやげ~♪」
「「わおーん♪」」
居残り組に挨拶をして現地に転移するのを待っていると、一向に景色が変わらない。
何故だ! そしてなんでみんなおっさんの近くに集まっているのかな?
え、おっさんがまとめて転移させるの?
鍛錬は続けているから転移も出来るようにはなっているけど・・・何故おっさん?
・シゼル、レヴィさん、ティアさん➡出来るけどなるべく世界に干渉しないため(※本音は面倒くさいから)
・アリア、アリシア、シオン➡そんな精度で長距離の転移などそもそもできないから。
あんたらわりと他力本願だな、オイ。
もうこれ以上余計なことを考えると無駄に疲れそうだから、おっさんが転移させよう。
座標確認・・・イメージ完了・・・
「跳ぶよ」
「「はい!」」
おっさんの掛け声とともに光に包まれ一瞬視界が暗転し、次に瞼を開いたときには老朽化したレンガ造りの建物の上にいた。
周囲を見渡すとみんないるようなので、どうやら転移はちゃんと成功したようだ。
おっさん一安心。
「何故転移が成功したのかわかるのかって?」それは眼下に広がる景色が森の中とは全く違うからだ。
おそらくは最近まで使われていたであろう良い意味で年季の入った数多くの屋台(?)のようなものが、破壊されて散乱している。
もとは広場か何かだったのだろう。大きめの破れた天幕や衣装のようなものが引き裂かれて落ちている。
「・・・アリア確認だけど、ここが転移先のヒューマンの国であってる?」
あまりの荒廃具合におっさんがアリアに確認を取ろうと話しかけたが、話しかけられた当の本人はそれどころではないご様子で・・・
「な!? これはどういうことだ! 町の人たちは、皆はどこだ!?」
おっさんの問いかけをガン無視して、ボロボロになっている手すりに手を置いて身を乗り出して鬼気迫る感じで叫んでいた。
「ご主人様、アリアの反応から察するにヒューマンの国で間違いなさそうです」
「いや、そうなんだけど・・・シゼルさんや、ちょっと空気を読もう。目の前に広がっている荒廃した街並みとかアリアの精神様態の心配とか色々あるじゃん」
「私には関係のないことですので。ご主人様、あの真新しい建物から多くの気配を感じます。おそらくダークエルフ達はあそこに監禁されているのでしょう」
ダークエルフ救出のためにここに来たわけだから、他の出来事に興味がないのはわかるけど・・・今日もシゼルは平常運転だね。機嫌が悪そうに感じたのはやっぱりおっさんの勘違いだったのか?
アリアの隣にはアリシアが寄り添いながら何か話しているようだ。年の功があるだろうからメンタルケアはアリシアにひとまず丸投げしておこう。
「元々ここら辺にあった建物とかを根こそぎ破壊して、新しく監禁実験施設を建てた感じか」
「新築物件ですね、ご主人様。ですが私ならこのような悪趣味な外観の物件は絶対に購入しませんね」
「その意見にはおっさんも全面的に同意するよ」
だって見た目がファミコン時代の初期ロッ○マンのDr.ワ○リーの城なんだもん!
建物の中央部にでっかいドクロが鎮座してるのよ、これが。
しかも新築だけに真っ白!
これを建造した奴のセンスを本気で疑うレベル・・・これホントに罠じゃないよね?
こんなあからさまに最終ステージっぽい場所に捕虜を監禁するかね・・・ただラスボスがいるだけだったりして。
などと考えていても仕方ないのでそろそろ行動しようと思って後ろを振り返ると、ティアさんがシオンを足で踏みつけていた。
「確認のために聞きますけど、何でシオンを足で踏みつけているんですか?」
「建物を見た途端に特攻しようとしたから、狂犬を黙らせただけだ」
「あーなるほど」
踏まれているシオンは「ガルルル」という感じの唸り声をあげており、まさに狂犬状態である。
アリシアがアリアのケアをしているからシオンの手綱を握る人がいないから、ティアさんが代打をしたわけね。
シオンの側にいって膝を折って厳重注意をしておく。
「シオン、仲間を助けたいのはわかるけど今は集団行動中だから独断専行はやめてね? 方針に従えないならここに置いていくよ?」
おっさんがちょっとイライラオーラを出しながらそう言うと、狂犬シオンは「くう~ん」という具合に大人しくなった。
狂犬状態による野生の勘なのか自分より強者には素直に従うようだ。おーよしよし。
とりあえずシオンが落ち着きを取り戻したので、Dr.ワ○リーの城に捕虜を救出しにいきますか。
あーそう言えば、アリアは大丈夫なのかな? 破壊された広場を見て若干錯乱してたけど・・・
「おーいアリアそろそろ捕虜を救出しに行くけど、行けそう? ダメそうなら今からでも森に帰るかい?」
精神的にヤバそうなら正直お帰り願いたい。だって面倒ごとにさらに面倒ごとが上乗せされるわけでしょ?
これ以上の面倒ごとはおっさん御免です。
「・・・すまない。もう大丈夫だ」
「強がりはよすのじゃ。とても大丈夫そうには見えんのじゃ」
アリアに寄り添っているアリシアがアリアの「大丈夫だ」を秒で否定した。
まあ顔面蒼白とまではいかないけど、見るからに顔色は悪いよね。
「確か万全の状態ではないが祖国の内情を少しでも知っておきたい。頼む、同行させてくれ」
そう言ってアリアは頭を下げた。それはまるでお手本のような美しいお辞儀だった。
「はあ~わかった。ただし今以上に顔色が悪くなったら強制送還するからね? あとレヴィさん。すみませんがアリアのバックアップをお願いできますか? 万が一があると困るので」
全員無事に帰るには保険は多いことにこしたことはない。本当にヤバいときはおっさんが魔装を展開してどうにかしよう。
「あらあら、おーちゃんは心配性ね。アリアちゃんならたとえコンディションが万全でなくとも、森の外の生物には絶対に負けることはないわよ でもおーちゃんの頼みだから聞いてあげる♪」
「じゃあ、行きますか」
で、今現在おっさん達はDr.ワ〇リー城の頭頂部にあたる部分に立って、中の様子をうかがっているのだが・・・うーん城の中がわりとカオスな状態だから、このまま突入して狂犬シオンのメンタルが破壊されないか心配だ。
ちなみに何故建物の中の状況が把握できているかというと、気配察知スキルと透視スキル(?)的なもののおかげである。
透視スキル(?)なのは、「中が見たいな~」とおっさんが思ったら見えちゃったからである。便利で助かるけど・・・なんかちょっと怖い。
ちなみにおっさん以外ではシゼル、レヴィさん、ティアさん、アリシアが建物の中で何が行われているのか見えている。
アリアは近接戦闘タイプなので気配察知はある程度出来るらしいが、流石に透視は無理だそうだ。
狂犬シオンは・・・まあできないよね。
捕虜の人数だけど予想通り半数以下になってしまったようだ。
まあ拉致されてからこれだけ時間が経てば当然だと思う。
そこで問題になるのはどこまでの状態を「生きている」と判断するかだ。
五体満足で栄養失調気味で傷だらけの状態➡生きている
たび重なる凌辱で精神が破壊された状態➡生きている
四肢を切り落とされ手足に器具をつけられて魔量を吸われている状態➡生きている
頭部だけで脳みそが露出されて電極を刺されて貯水槽的な容器に入れられている状態➡生きているかな?
全身を溶かされて魔術媒体にされた状態➡生きて・・・これはアウトかな
てな感じな状況なので具体的な中の様子を今のところは狂犬シオンに伝えてはいないけど、マジでどうしよう? あ、胃がキリキリしていた。
『おっさん殿、どうするのじゃ? このまま突入するのか?』
アリシアが視線は動かさずに念話で行動方針を聞いてきた。
『おっさん達のメンタルは大丈夫でも、狂犬シオンのメンタル崩壊率が高そうだよね』
『ご主人様、でしたら殴って結界をはってここに放置していくのはどうでしょうか? ことが済んだら回収すれば問題はありません』
『シゼルの案は正直名案だと思うけど、そうすると狂犬シオンがここに来た意味がなくなっちゃうからさ・・・』
『ご飯の人よ、事が終わるまで私が踏んでおくか?』
『あらあら、キャンキャン吠えるようなら私が遮音結界をはっておくわよ♪』
みんな狂犬シオンへの扱いが段々雑になっていくな・・・まあ面倒くさいからね。
『とりあえず中の捕虜たちの状況は伝えない方向でいこう』
『ちなみにご主人様、その心は?』
『もう考えるのもめんどくせー』
『その点に関しては皆の心は1つですね』
「ダークエルフの捕虜たちは中にいるみたいだね。ただし敵さんたちと一緒だけど」
念話での会話をまるでなかったかのごとく、自然に全員に話しかける。
おっさん我ながら役者張りの名演技。
「関係ない! 皆殺しにして同胞を救い出す!」
狂犬シオンが歯を食いしばり再び「ガルルル・・・」モードになったようだ。
誰か早く首輪かハーネスをつけてあげて! 周囲の人に迷惑がかかるから。
「ステイなのじゃ、シオン! 正面から突入したら捕虜になっているお主の同胞に危険が及ぶのじゃ。ここは隠密行動で一人ずつ確実に殺していくのが定石なのじゃ」
おーアリシアが正論で真面目なことを口走っている。これは完全に発見されるフラグが立ったな。
アリシアの提案を聞いた狂犬シオンは一瞬冷静になったように見えたが、激情にかられて走りだそうと一歩を踏み出して・・・落ちた。
より正確に言えば狂犬シオンが一歩目を踏み出した足裏が外壁に触れた瞬間に、外壁が砕けて落ちていった。
このDr.ワ〇リーの城は欠陥住宅なんじゃないか? 見た目は新築同然なのに。
きっと急ピッチで突貫工事したから手抜き工事だったんだろうな。
あれ? 狂犬シオンが床に倒れたまま動く気配がないんだけど・・・
打ち所が悪かったのか、それとも不意打ち(この場合は事故だけど)への対応がまだ不十分だったのだろう。
いずれにせよ今回の主役が勝手に突入して、早々に勝手に意識を手放しやがったよ。
それにいきなり傍から見たら全身奇抜なスーツを着た不審者が落ちてきたから、敵さんと研究員たちがみんな手を止めて呆然と立ち尽くしているよ。
どーすんのよ、この状況。
誰か気を利かせて「親方、空から女の子が!」みたいな発言をして、場を和ませてくれないかな。
「な!? 敵襲か!」
「おい、上を見ろ!」
フリーズ状態からいち早く解凍、いや立ち直った敵の兵士がおっさん達の存在に気がついた。
敵さんから見たら月明りに照らされたおかしな恰好の集団なんだろうな・・・おっさんの年齢的にやっぱり恥ずかしい。
「何だ、貴様たちは!」
「ひとつ、人の世の生き血をすすり・・・」
アリアが良く通る声でいきなり口上を言い出した。
よし、恥ずかしいから止めよう。
「ちょっ・・・」
「ふたつ、不埒な悪行三昧・・・」
アリシアまでいつのも「のじゃ!」口調を封印して、真面目モードでアリアに続いて口上をしそして・・・
「みっつ、醜い浮き世の鬼を・・・」
ここでまさかのティアさんがアメリカンドックの残骸の棒を、口に加えた状態で3つ目の口上を言って3人が同時におっさんの方を見た。
これはティアさん食べ物で買収されたな!? てかなんでみんな「桃○郎侍」知ってるの? 誰の入れ知恵だよ!
なんの打ち合わせもなしにアドリブで場の状況に合わせられるほど、おっさん芸達者じゃないよ。どうする、右か左か左か右か・・・考えろ。
「退治してくれよう、我らお助け戦隊ダイジョウブだー!」
おっさんのセンスのないアドリブ口上に合わせるように、全員が決めポーズをして各自の着ているスーツに対応した爆発と煙が背後で発生した。
なに念入りに仕込んでんだよ! おまえら本来の目的忘れてない!!
何気にシゼルとレヴィさんもしっかりとポーズ決めてるし。ノリノリなのかお前ら!?
おっさん達を見て敵兵達は「ポカーン」としている。
安心してください、それが正常な反応です。
「騒がしいな。一発ヤッてイイ気分なんだ静かにしろや」
気取るそうな声とともに奥の部屋からズボンのベルトを直しながら、ガタイの良い男が出てきた。
扉が閉まる前に見えた光景は手足を拘束され、男の好き勝手な欲望の捌け口にされたダークエルフの女性たちだった。
アリシアとアリアにも見えたようで、アリシアは剣呑な雰囲気を出しアリアは奥歯から「ギリっ」とする音が聞こえるほど憤っていた。
「何だこの変な格好の連中は?」
「えっと・・・どうやら敵襲のようなのですが・・・」
「じゃあ、とっとと殺しちまえ。そのために俺たちは高い金で国から雇われてるんだからな」
思い切り国との癒着発言したよこの男。金で雇われているとはいえ、いいのかそれで。
「っと、ちょっと待て。変な格好をしているがよく見ればエロい体つきしてるじゃねーか。おい、お前らはこいつらが逃げられない用に囲んどけ。この俺が直々に相手をしてそのついでに楽しませてもらうぜ」
おっさんを除く女性陣を舐めまわすような視線で見たかと思うと、ベルトに手をかけながらこちらに歩いてくる。それも股間を大きく膨らませながら。
「チッ野郎が一人混じってるじゃねーか。とっとと殺して・・・いや待てよ。そいつの前で女どもを犯すか! 自分の仲間の女どもが俺に「アンアン♪」喘がされる様を特等席で見せてやろう! 部下の連中も最近この仕事に飽きてきたようだから、ちょうどイイ娯楽になるだろうよ!」
「ヒャッホー!! さすがはボス、やることが鬼畜っすね。あとできればボスが飽きた後でいいんで俺らにもおこぼれをくだせい」
「ったく図々しい奴らめ。いいぜ、ただしその頃には穴という穴はユルユルのガバガバでボテ腹になってるだろうがな」
「クズどもが!」
目の前の男どもの一連の会話を聞いてアリアが不快感と怒りをあらわにしているが、そんなことはどうでもいい。
「何じゃ? 急に寒気が・・・それに何故体の震えが止まらんのじゃ・・・」
どうやら周囲の温度が急激下がり、どこからか「ピキピキ」と異音が聞こえ始める。
建物に亀裂でも入ったか? ああ、空間そのものに亀裂が生じ始めたのか。
まあ今はどうでもいいけど・・・
何故かさっきまで威勢よく品性のかけらもない下品な言葉を、おっさんの家族に吐いていた男の足が止まっている。
それにまるで壊れたゼンマイ仕掛けの人形の玩具のように、カタカタと震えだした。
おいさっきまでの威勢はどうしたんだ? ついでに股から汚い液体が大量に漏れているぞ? 泌尿器科に行った方が良いんじゃないか?
「あらあらあら?」
「ご飯の人よ、どうした?」
「これはいけませんね」
さて今おっさんの目の前にいる人間の形をしたあの醜い肉の塊はさっき何と言った?
おっさんの家族に対してどんな暴言を吐いた?
おっさんの目の前で家族をどうすると言った?
あーなんか久しぶりだなこの感覚。純粋な怒り。
そもそも「日々平穏」がモットーのおっさんが、自分の用事でもないのに外に出た挙句になんでこんな不快な思いをしないといけないのだろうか?
おっさんの自業自得な面があることは自覚しているけど、それにしてもあんまりだな。
「ティア、さっき落下して気絶した馬鹿とそこで失禁して気絶している2人を私たちの近くに運んでください」
「わかった。・・・うんん、ばっちい」
「レヴィは私と一緒に私たちの周囲とこの建造物を覆う形で結界の展開を」
「あらあら、了解よ♪ シゼルちゃん、今のおーちゃんの状態って・・・」
「ええ、久々に完全にキレています。あの状態になると見境がなくなるので、結界内の私たち以外のものは完全に消滅するでしょうね」
おっさんを中心に漆黒の球体が結界内を完全に覆いつくす形で発生し、すべてを無に帰した。
誰かと一緒にベンチに座っている夢を見た。
目の前には大きな湖が広がり、紅葉したもみじの葉が水面に浮かんでいる。
隣にいる誰かが何かがおっさんに話しかけてきたようだが、上手く聞き取れない。
すぐ隣にいるのに言葉が聞き取れないのはおかしいと思い、その人の顔を見るが酷い靄がかかったような状態で見えない。
ただ光を反射するくらいの美しい長い銀髪と、スカートを着用していることから女性だということはわかる。
懐かしいと感じる反面、この景色には見覚えがない。一体どこなのだろう?
顔が見えないので確証はないけどたぶん隣の女性(?)も初対面の人だと思うのだが、言葉は聞き取れないがおっさんに対して親しげに話しかけているのは分かる。
言葉が聞き取れないからなんと返事をしたものか・・・
おっさんが困り始めると隣に座っている女性がある方向を指さした。
そこには姿見くらいの大きさの光の渦が存在していた。
「※◇〇※ΣΘ※」
相変わらず聞き取れないがおっさんに向かって手を振っているから「バイバイ」的な意味だと思う。
つまりこの渦に飛び込めと? うーん、初対面の人の言葉を簡単に信じるのはどうかと思うけどこのままここにいても仕方ないからな・・・まあなるようになるか。
一応彼女(?)に会釈をして光の渦に飛び込む。
「ご自分の力の本質を理解し、コントロール出来るようになったらまたお会いしましょう」
おっさんの背後からそんな女性の声が聞こえたような気がしたが、おっさんの意識は光に飲み込まれて消えていった。
意識が覚醒していくにつれておっさんの現状がわかってくる。
どうやら誰かに両頬を触られているようだ。
細い指に小さな手、ヒンヤリしているようでどこか温かい。
段々と視界がはっきりとしてくると、おっさんの目と鼻の先にはシゼルの綺麗な顔があった。
「おっさんの寝込みを襲うなんて、シゼルのエッチ痴漢変態!」
照れ隠しのつもりで咄嗟にいかがわしい言葉が出てしまった。
「その様子ですと正気に戻ったようですね。ご主人様、現状は把握できていますか?」
おっさんが正気に戻ったのを確認し終えると両頬から手を放して、目と鼻の先にあったシゼルの顔が離れていった。不意打ちだったからまだ心臓がドキドキしてるよ。
「あらあら、シゼルちゃんとおーちゃんがイチャイチャしているわ。私もおーちゃんとイチャイチャするわ~♪」
誤解に満ちた言葉と共にレヴィさんが後ろから抱き着いてきた。
おっさんの年齢的にハーレム物語の主人公ではないので、こういう展開は望んではいないが・・・いち男としてはちょっと嬉しい。
「レヴィ言葉に語弊がありましたが、それよりもご主人様何か言うことはありませんか?」
「ごめんなさい。久方ぶりにキレて暴走しました」
その場ですぐに土下座しましたよ。レヴィさんに抱き着かれたまま。
あ、もちろんレヴィさんの服が汚れないように、地面に接する前にブルーシートと低反発クッションを設置しましたよ。
「わかっているのでしたら結構です。それでこの後始末はどうしますか?」
「後始末というか何もないよね」
「ないですね」
本当に何もないのだ。シゼル達がはってくれた結界内にはおっさんたち以外何も存在していないのだ。
比喩ではなく爆発して木っ端みじんとかで残骸が残っているとかではなく、綺麗にすべて消滅しているのだ。
敵だけでなく助けに来たダークエルフの捕虜たちもろとも。
「シゼル・・・どうしようか?」
「ご主人様はどうしたいのですか?」
「全てなかったことにしたいです」
「随分と欲張りですね」
「ごめんなさい」
やってしまったものはもはやどうしようもないが、可能ならなかったことにしたいと思うでしょ。だってこの後の事後処理が滅茶苦茶面倒くさそうだもん。
「はあ・・・反省しているようなので今回は全てなかったことにしてあげます」
「え・・・マジですか!?」
「マジです。ですが私は壊す方が得意なのでこの手のことはあまり得意ではないのです。ですのでレヴィ、お願いできますか?」
シゼル曰く全てなかったことに出来るらしいが、それを現在進行形で土下座から正座状態に移行したおっさんに抱き着いているレヴィさんに白羽の矢が立った。
というかシゼルはやっぱり破壊専門なんだ。
「あらあら私? シゼルちゃんも何だかんだでおーちゃんに甘いわね♪ ホントは起こってしまったことをなかったことにするのは色々と良くないのよ?」
「ですよね・・・」
「でもおーちゃんのためだから特例になかったことにしちゃいましょう♪」
反省中のおっさんの背中に物凄く大きくて柔らかい神の果実を押し付けながら、レヴィさんがノリノリで宣言すると同時に指を「パチンッ」と鳴らした。
空間が歪むとか時間が巻き戻るとかそういうことではなく、一瞬で景色が数分前のものに戻った。
レヴィさんが超越した存在なのは分かっていたが、実際に「奇跡」みたいなことを指をはじくだけで行うのを目の当たりにするとちょっとビビる。
「これで全部元通りよ♪ うふふ」
「・・・」
「あらあら? おーちゃんの希望通りにしてあげたんだから私に何か言うことはないのかしら? うふふ」
「ありがとうございます。レヴィさん」
「あらあら、どういたいまして♪ じゃあ今晩はおーちゃんは私の抱き枕ね♪」
「何故そうなるのですか、レヴィ?」
おっさんがツッコむ前にシゼルが鋭くジャブのようなツッコみをした。
「えーだって私がおーちゃんのお願いを聞いたんだから、当然の権利じゃないかしら? うふふ」
「そんな当然の権利はありません」
おっさんを挟んでシゼルとレヴィの空間がゆがみ始めた。
「2人とも折角元通りになったのにまた消滅させる気?」
おっさんの指摘により空間の歪みは収まった。
今考えるとおっさん結構な頻度で世界消滅の危機を救っているのではないだろうか?
まあ「世界消滅」の原因がおっさんであることが多いのも事実だけど・・・
「確かにご主人様のご指摘通りですね。レヴィ、この話は一旦お預けです」
「ええ、お預けお預けね♪ うふふ」
はあ・・・家に帰ってからが怖い。
「それでこれからどうしますか、ご主人様?」
「アリシア、アリア、シオンの意識を戻す前におっさん達だけで施設内を見回ろう。あの3人が一緒だと落ち着いて見て回れないからね」
「それもそうね。とくに狂犬ちゃんは煩そうよね、うふふ♪」
何気にレヴィさんもシオンに対して辛辣な発言が多いんだよな。嫌いなタイプなのかな?
「そう言えば女性陣3人が恐慌状態になって失禁していたけど、それもなかったことになってるの?」
「あらあら、ちゃんと粗相する前の状態に戻してあるわよ。どうしようか迷ったけれど♪」
粗相の原因を作ったおっさんが言うのもなんですけど、レヴィさん特定の人物に対してドSになりません?
「ぎゅるる~」
静かな空間にそんな音が響き渡った。音の主を確認するとお腹をさすりながらティアさんが微妙な表情をしている。
「ティアさん、夜食用にジャンバラヤがありますけど食べます?」
「食べる! 絶妙なタイミング・・・ご飯の人よ、やはりあなたが神か!!」
「違います」
イスとテーブルを出して寸胴鍋でかなり多めに作ったジャンバラヤを置く。
スプーンを出して取り分け用のお皿を出そうとすると、おっさんがお皿を出すまえに寸胴鍋を抱え込んでティアさんがスプーンで食べ始めていた。
それ1人用じゃないんですけど。嬉しそうにガツガツ食べているので今更止めるわけにもいかず、何となくおかずとしてシュウマイと餃子を追加で出しておいた。
「ティアさん。おっさん達は建物の中を見てきますから、そこの3人の面倒をお願いします」
「任せろ、ご飯の人よ。食事のついでにみておく」
口にジャンバラヤのご飯粒をつけながらの力強い返事。まあ・・・大丈夫だろう。
建物内部を見回るとやはり先に3人で来てよかったと思う光景が、アトラクションの如く点在していた。
事前に外から内部の簡易情報は確認していたが、実際に見るとまともな人やグロ関係に耐性がない人には結構つらいかもな。
最初に開けた部屋には体中傷だらけのダークエルフが数名、動けないように壁に磔状態で存在していた。
全員辛うじてだが息はしているようなので、命に別条がない程度に回復しておいた。
何故ちゃんと助けないかって? おっさんがそこまでする義理はないし、何よりシオンに同族がされたことを見せるためだ。ただそのまま見せるとシオンの精神が壊れる可能性があるのである程度「見られるレベル」にしておくことが重要なのだ。
「さて次の部屋のアトラクションはなにかな?」
2つ目の部屋の扉を開けた瞬間、あまりの淫臭に扉を秒で閉めてしまった。
こんなことならガスマスクを作っておくんだった。
おっさんの後ろですでに扉が開いた瞬間に中の惨状を目の当たりにしているシゼルとレヴィさんが怪訝な表情をしている。
「ご主人様、ご存じとは思いますが臭いなら魔法で遮断できますよ? それとも女性の裸体に耐性がなく時と場所をわきまえずに欲情したのですか?」
「あらあら、おーちゃんって意外とうぶなのね♪」
「欲情とかうぶとかそういう問題じゃなくて・・・」
「「じゃあ何が問題なの(ですか)?」」
「おっさんだってこの臭いを魔法でどうにかできることは分かっているけど、何と言うか・・・現実的に物を使用して防いでいる安心感が欲しいというか・・・アレだよ、アレ!」
おっさんの説明を聞いた2人はとくになんのリアクションもせずに、魔法障壁を展開すると同時に両脇からおっさんの腕をホールドして部屋の中に入った。
2つ目の部屋の中は結論からいうと男たちが見目麗しいダークエルフの女性に対して、性欲をぶつける凌辱部屋だ。
魔法障壁で臭いは遮断しているがそれでもさっきドアを開けたときに嗅いだ臭いがしそうだ。
うえ・・・気持ち悪い。
多くのダークエルフの女性が精液でベトベトな状態で、しかもこの部屋の連中は男も女も全員全裸だ。一応知性ある生物であるはずなのに何故服を着ていないのか? 風邪ひくぞ~
今まさに行為の途中の状態で意識を失っている者もいる。
まあそれはおっさんがキレたせいでもあるんだけど・・・
とりあえずこの部屋は淫臭だけを半分に緩和させておいた。
それにして部屋の奥の方でダークエルフの男性と人間の男性が行為に及んでいるみたいだけど・・・この世界にも同性同士はあるんだね。
しかも心なしか行為に及んでいる2人が笑顔という不思議。これは触れないでおこう。
きっと新たな世界の扉を開いたんだろう・・・
3つ目の部屋の扉を開くと見るものが見たら卒倒する、スプラッタな光景が広がっていた。
毛髪を抜かれ四肢を切断され、目をくりぬかれおそらく舌も抜かれていると思われるダークエルフが液体の入った容器に入れられている。
それも無数のチューブのようなものを体中に刺された状態でだ。
エルフという種族は貴重な魔法媒体になるらしいので、素材として余すことなく使う気なのだろう。
その証拠に隣では血液やら色々なものを搾取され骨と皮だけの状態になったダークエルフを、巨大なミキサーのようなものでぐちゃぐちゃのペースト状にしている。
おそらくこのあと魔道具の差材として使用されるのだろう。
いきなりこの部屋に入るのはシオンには厳しいので、最後にこの部屋に来るように誘導しよう。
施設内の他の部屋も見たが似たようなものだった。
どこの世界でも敵国に捕まった場合は類にもれず悲惨だな。
おっさんはこの厄介ごとが終わったら、森に引き籠ろうと改めて思ったよ。それにしても頭痛がするな・・・原因はやっぱりアレかな?
ともあれそろそろシオンを起こして気が済むまで復讐させて、ダークエルフ達を回収して帰ろう。おっさんホームシック状態になりつつあるから。
天井をある意味ぶち破って入ってきた最初の部屋に戻ると、3人はまだ気絶した状態だった。
ティアさんはどこから調達したのか、カレー(?)を食べていた。
「お待たせしましたティアさん。ところでそのカレーはどうしたんですか?」
「携帯食として前にシゼルに作ってもらった。ちなみにカレーは食べ終わったから今はハヤシライスだ」
「そうですか」
ティアさんそれは携帯食ではなく間違いなく主食です。というか空の寸胴が床に4つ置いてあるんですが、この短時間にどれだけ食べたんですか。
「むう・・・ご飯の人よ、ちなみに右から「チキンカレー」「グリーンカレー」「スープカレー」「牛すじカレー」だ」
「全部違うカレーだったんですね。ところで3人ともまだ意識が戻っていないんですね」
「一度アリシアとアリアが起きそうになった。でもご飯の邪魔になるから寝かせた」
ティアさんご飯の優先度高すぎでしょう。
「一通り施設を見終わったのでそろそろ3人を起こそうと思うんですが、大丈夫ですか?」
「かまわない・・・ご飯の邪魔さえしまければ」
キリっとした表情なんだけど・・・
「ティアさん、口の端にカレーだかハヤシライスのルーがついていますよ」
おっさんの指摘にティアさんは「ん!」とこちらに口を向けてくる。
あ、またおっさんが拭くパターンですか。仕方ないですね。
手持ちのポケットティッシュで口の端をぬぐっていると、後ろから冷気を感じた。
「ご主人様はティアに甘いです」
「おーちゃんはティアちゃんに甘いと思いまーす」
「甘いですか?」
「「甘い!!」」
おっさん的には子供を世話している感覚なんだけど・・・それは甘いのか?
ひと悶着あったが3人を起こそう。さてどうやって起こすか・・・
「ぐあ!?」
「くう!?」
「あう!?」
急に苦悶の声が聞こえたので慌てて発生源を見ると、シゼルが3人の脇腹に蹴りを入れて起こしていた。
シゼルさんや、何故にそんなに攻撃的な起こし方を選択したんですか。
様子がおかしく見えたのはストレスが原因なのか?
「あらあらシゼルちゃんがあの起こし方を選択した理由はおーちゃんが原因じゃないから、気にしなくて大丈夫よ♪」
「そうなんですか? ていうかおっさんの心を読むのはやめてくださいレヴィさん」
「てへ♪」
かわいらしく舌を出しても・・・まあ許しますけど。
雑な起こし方で意識を取り戻した3人に何故意識を失ったかと、現状を説明した。
意識を失った件についてはおっさんちゃんと謝罪はしましたよ?
敵が全員意識を失った状態でレヴィさんが復活させて、なおかつレヴィさんが「意識を戻す」と念じない限り危険がないので、説明を聞いてすぐにこの場を離れたシオンにも危険はないだろう。
アリシアとアリアもシオンの後を追いかけていったし、しばらくの間は好きにさせておこう。
「ご主人様、このあとはどうするおつもりですか?」
「捕虜のダークエルフに関しては命に別状がないレベルまで回復するとして、敵はリーダーぽいのと4~5人だけは殺さないよう言っておいてあとはシオンの好きにさせればいいんじゃないかな。魔国も情報を引き出せる相手が欲しいだろうからね」
敵方を捕虜に出来るのは戦争において一定のアドバンテージだからね。
「ダークエルフ達は一旦森に連れて行くのですか?」
「いや、これ以上おっさんのシャングリラに異物を混入したくないから、敵方の捕虜と一緒に転移で直で魔国にお帰り願うよ。細かい説明はアリシアを一緒に連れて行って説明してもらえば済むし」
もうこれ以上この世界の厄介ごと関係は結構です。おっさんイベント盛りだくさんでもう満腹で吐きそうです。
「わかりました、ご主人様。魔国に転移する際は私もご一緒します」
「うん? いいけど・・・なにかあるの?」
「私もご一緒します」
「何かわからないけどこれ以上ツッコむとヤバそうなので、どうぞご一緒して下さい」
今日のシゼルは不機嫌(?)なのかはわからないけど、感情が読みづらいので本人の好きにさせた方が良い気がする。
「じゃあ実際に魔国にダークエルフ達と敵方の捕虜を宅配するのはおっさんとシゼル、アリシア、シオンの4人で他のみんなは自宅に戻ってもらって夜食の準備とかしてもらうのでどうかな?」
「それで構いません」
「じゃあみんなに知らせ・・・」
後ろの方で叫び声と雄たけびを足して二で割ったような声が聞こえたけど、シオンがどこぞの部屋に入って発狂しかけただけだろう。
アリシアとアリアも一緒だから精神崩壊はしないだろうから、とりあえず無視でイイや。
「あーでもその前にシオンの復讐心を満足させないと後々面倒くさいか。ダークエルフ達を保護している間にシオンには溜まりにたまった負の感情を爆発してもらおう」
「ここでですか?」
「いーや。多分時間がかかるからそれ専用の空間を作って、その中で思う存分復讐してもらう」
「ご主人様・・・自身で任意の空間を製作できるようになったのですね。成長しましたね」
「そんな無表情で微塵も流れていない涙をハンカチで拭く仕草をされても、なんも嬉しくないわ! こほん! とりあえずおっさんもこれ以上この場所に長居したくないので、空間の中での時間の流れは1分間で外の時間換算で1週間とします」
「ご主人様、そのこころは?」
「いくら煮えたぎった憎悪や復讐心でも1週間も相手を半殺し状態にしていれば、流石に飽きるでしょ?」
「1週間も時間があった場合、敵方はみんなご臨終になりいたぶる相手もいなくなるのではありませんか?」
「そこはアリシアに死ぬ寸前で回復してもらって、半永久的に殴れるサンドバックにしてもらえれば万事解決でしょ。ついでにアリシアの回復系統の魔法の訓練にもなるし。何回も回復するから練度上がるから一石二鳥でしょ?」
何故かシゼルにレヴィさん、食事中のティアさんにまで若干呆れが混じった表情をされた。
何故だろう?
「あらあら、じゃあ私は今の話を発狂しかけている子とその他2人に説明してくるわね。おーちゃんはその間に空間の準備をしておいてね。そうね、ついでに捕虜のダークエルフと敵さんを回収してくるわね♪ うふふ」
おっさんの提案を了承したレヴィさんが、いまだに遠くの方で叫んでいるシオンとその他を連れてきてくれるらしい。
面倒くさいことを進んで引き受けてくれる・・・気が利くかつ出来る女性だ。
レヴィさんが振り返ってウインクした。絶対今おっさんの心読んだな。
3分ほどでレヴィさんが色々と連れて戻ってきた。
アリシアは苦虫を嚙み潰したような表情をし、アリアは見るからに顔色が悪い。
アリシアは年の功で凄惨な現場は見慣れているだろうから大丈夫だろうけど、アリアにはちょっとキツかったかな?
戦場に出て実戦経験があると言っても、戦場で見る死体とは種類が違うものがここには多いからね。それに元自国だし。
狂犬シオンはまさに「復讐真っ只中!」みたいな憤怒の表情だ。
さっき奇声を出していたとは思えないメンタルの回復力。復讐心効果もあるだろうけど、案外メンタルが鋼なのでは?
豆腐メンタルのおっさんからしたらかなり羨ましい。ちょっと分けてほしいくらいだ。
ニコニコしているレヴィさんが指を「パチンっ!」と鳴らすとあら不思議、ダークエルフ達と敵さんが目の前に綺麗に分けられた状態で出現した。
「話はレヴィさんから聞いていると思うけどシオン、今から復讐タイムする?」
復讐のための空間を作り終えたので、聞くまでもないがシオンに問う。
ちなみにおっさんが作り上げた復讐のための空間の内装は誰もが思い浮かべる絵にかいたような「ザ・拷問部屋」である。
できるだけ部屋に入った人間に精神的なストレスを与えるビジュアルプラス、苦痛と恐怖を増幅させる精神干渉魔法もおまけでつけておいた。
「する。私たち一族が受けた辱めと苦しみを何度でも何度でも何度で味合わせてやる!」
眼が血走って歯を食いしばり、握りしめた拳からは血が垂れている。
おーコワ。流石「狂犬」。
「ということだから、アリシアはシオンの気が済むまで思う存分相手をいたぶれるように、回復よろしく」
どこでも復讐空間のドアノブに手をかけて、扉を開ける。
「なにが「ということだから」じゃ! 何故妾とシオンの二人だけなのじゃ! 貧乏くじじゃ、横暴じゃ!」
そんな駄々をこねるアリシアとは対照的に、シオンは嬉々とした表情でドアをくぐっていく。
「あなたの国の管轄でしょう。つべこべ言わずに入れ」
メイド口調が完全に崩壊したシゼルが、アリシアの尻に蹴りを入れてドアの中に吹き飛ばした。
ちなみに拷問される側の敵兵達はすでに手足の自由を奪って、拷問部屋に入室済み。
「思う存分楽しんで~」と言ってドアを閉める。
機嫌が悪そうなシゼルはスルーしつつ、3分待つことにする。
何故3分待つのかというと「1週間あればたぎる復讐心の炎は消える?」とシオンに聞いたところ「その程度の時間では到底満足できない!」と力強く返事をされたので、おっさん的にキリの良い「カップラーメンの3分」にしたわけだ。
待っている間に夜食のメニューの希望をとった。
すると何故か生姜焼きになった。
自宅に帰る頃にはてっぺん超えて朝に近い時間になるけど・・・みんな食欲旺盛だね。
ただアリアは悲惨な場面を見たばかりで肉料理には若干難色を示したが、最終的には多数決で黙らせた。
数は力なり!
どこでも拷問部屋のドアが開き中にいた連中が出てきた。
最初に出てきたのは3週間拷問の限りを受けた敵兵達。
出てきたというよりは拷問部屋から飛び出て地面を転がって、近場の壁に激突した。
壁に激突したにもかかわらず敵兵は誰一人としてピクリとも動かない。
「ただいまなのじゃ。あ゛~老体にはシンドイみっしょんだったのじゃ」
「都合の悪いときだけ年寄りに変身するのかよ。まあお疲れさん」
肩を回しながら出てきたアリシアにねぎらいの言葉をかけると、その後ろから無気力状態のシオンが出てきた。
おっさん的には復讐を終えた者の末路は2択だと思う。
① 復讐を糧に生きてきたので、目標を達成することで生きる意味を失い自殺する
② 自分が復讐した相手の家族から今度は自分が復讐対象とされて狙われる。
まあどちらにしてもハッピーエンドではないよね。
でも今回は幸いにも1人ではなく生きていた仲間がいるから、マシな方でしょう。
正直復讐を終えたシオンがこの後どうなろうとおっさん関係ないし。
事後処理は温水洗浄便座LOVEな魔王さんがするだろうから。
「じゃあさっき話した通りおっさん達は魔国に厄介ごと関係を返却してくるから、先に戻る組は夜食の準備お願いね」
「うふふ、任せておいて。たくさん愛情込めて作っておくわ♪」
「任せろ、ご飯の人。さきに食べて待っているぞ」
「ティアさんが先に食べたらおっさん達の分がなくなるでしょう! 帰るまでステイですからね!」
おっさん達の毎度のやり取りの横ではアリアが沈んだ顔をしている。
事前に覚悟をしていたとしても、実際に自分の故郷だった国の凶行を目の当たりにしたショックは大きいようだ。
豆腐メンタルのおっさんだったら、部屋に引きこもるね。確実に。
『あらあら、アリアちゃんが心配?』
おっさんの表情から察したレヴィさんが念話をしてきた。
『まあ流石にね。アリアは自国の暗く汚い部分も自分のせいにして抱え込みそうなタイプだから、変に思い詰めなきゃいいんだけど・・・』
『やっぱりおーちゃんは優しいわね』
『優しいかどうかは別として、単におっさんの近くに負のオーラを放つ人がいると落ち着かないだけです』
『あらあら、照れ隠しかしら?』
『違います』
『一応私の方でそれとなくフォローはしておくから、安心して♪』
『助かります』
『あらあら、じゃあ見返りに私のささやかなお願いを聞いてくれるかしら?』
『内容にもよります』
『あらあら、今晩私と添い寝してくれるだけでいいわ♪』
『「だけ」の難易度が微妙に高くないですか?』
『あらあら、もっと難易度が高いことを要求しようかしら?』
『添い寝で手を打たせて下さい』
『交渉成立ね♪ うふふ。ついでにシゼルちゃんにも説明しておいてね』
『途端に難易度がヘル(地獄)モードに跳ね上がった気がするんですけど・・・』
『気のせいよ、うふふ』
レヴィさんとの交渉が済んだので、行きたくないが魔国に行きますか。
とその前に・・・
「アリシア、一応温水洗浄便座大好き魔王さんに念話でこれから行く旨を伝えておいてくれる? さすがにいきなり転移するのは色々とマズいだろうからさ」
「わかったのじゃ。じゃが妾の魔力では念話しても距離がありすぎて届かん。またブーストをお願いするのじゃ」
「はいはい、了解」
もはやアリシアすら「温水洗浄便座大好き魔王さん」という名称に関して、ツッコミをいれなくなった。もう略して「べんちゃん」でいいんじゃないか?
おっさんがアリシアの念話の増幅器役をしている間に、シゼルにシオンの武器と防具を回収してもらっている。
流石にあの装備を森の外で自由に使わせるわけにはいかない。だって戦力過多になるじゃん。あの武器を持った人間が一人いるだけで戦況が傾くからね。
それにおっさんが信用していない人間に、おっさんが製作した武器をあげたくないし。
武器と防具の回収はスムーズに終わり、交換で森の外基準より少し性能が良い武器を渡しておいた。
おっさん印の武器の回収にシオンが難色を示すかと思われたが、様子を見ている限り逆に全くの無抵抗だった。
心ここにあらず状態である。
復讐を一応終え生き残った仲間を救出したから、完全に気が抜けているようだ。
まあこちらにとっては好都合だからいいけどね。
「おっさん殿。魔王に簡単な経緯の説明と人払いをさせたから、すぐにでも転移してき大丈夫だそうじゃ」
「うん、人払い? 何故に??」
「おっさん殿の機嫌を損ねると一瞬で魔国が亡びる可能性があるからじゃ」
「んな大げさな」
「いえ、的確な判断です」
「シゼルさんや、その心は?」
「ご主人様への暴言や失礼な態度は、たとえご主人様が許しても私が許しません。その場で全てを無に帰します」
シゼルの言葉を聞いたアリシアの表情が引きつっていく。
やっぱり今日のシゼルはいつもの路線から過激路線に変更してる。これは連れて行かない方が賢明か?
『ご主人様、私を置いていこうなどという愚かかつ、不可能なことは考えないことをお勧めします』
視線はアリシアに向けたまま、おっさんの思考を読んだかのタイミングでシゼルが念話をしてきた。
『いや連れて行かないとは言ってないけど、シゼルの機嫌(?)的なものが悪そうだから・・・』
『ご心配なく。機嫌は悪くありません。』
『そう? もし何かおっさんに出来ることがあるなら言ってね。出来る範囲で・・・』
『今晩の添い寝を希望します』
『はい?』
『レヴィと同じように今晩の添い寝を希望します』
レヴィさんとのやり取りがシゼルに筒抜けなんですけど。しかも要求内容も一緒だし。
『えーと、おっさんとの添い寝をマジでご希望ですか?』
『はい。ご主人様との添い寝を私はマジでご希望です』
『了解しました』
添い寝か。おっさん加齢臭はまだしていないはずだよな? あーそれより先約のレヴィさんに何て説明しよう。二人とも「今晩」を指定しているからなあ・・・
『あらあら、今晩おの添い寝の権利を全面的に譲る気はないけれど、シゼルちゃんとの3Pなら妥協してあげるわ。おーちゃん両手に花よ! うふふ♪』
『その妥協案に関しては非常に助かりますが、3Pというあらぬ誤解を招く言い方はやめましょうね』
『あらあら、私は誤解されても構わないわよ? きっとシゼルちゃんもね♪』
『とりあえず添い寝の件は感謝します。さっそくシゼルに伝えて・・・』
『レヴィ、3Pという妥協案に感謝します。さっそくですが私はご主人様の右側を希望します』
『あらあら、じゃあ私は左側ね♪ うふふ』
あれ? 念話って第三者にも普通に聞こえるものなのか? 普通にシゼルがおっさんとレヴィさんとの念話に参加しているのだが?
まあ事態が丸く収まるなら些細な問題かな?
『『些細な問題です(よ♪)』』
しっかりと心読まれてるし・・・
「じゃあ先に帰宅組はさっき決めた夜食というか、朝食になるかもしれない準備よろしく」
森に戻る組に分かれを告げて、アリシアの転移に魔力を上乗せしてブーストする。
転移先の魔国の中枢に実際に行ったことのあるのはアリシアだけなので、転移はお任せで。
地図上で魔国の位置は確認したからおっさんでも転移自体は可能だが、魔国のどこに転移するのかわからないのでそんなギャンブルはせずに安牌を選びました。
ちなみにシゼル他二名はどこでも転移可能だそうです。ホント神かよ・・・
無事に転移が成功して最初に思ったことは「質素な部屋だな」だった。
事前に転移先は混乱を避けるために魔王の執務室と聞いていたが、おっさんの中での「王の部屋」のイメージとは真逆のイメージの部屋だった。
確かに王の部屋ということだけあって調度品は見るからに高そうなものがいくつか置いてあるが、それだけだ。
部屋全体はシックな雰囲気に纏められており、その中でもひときわ目を引くのは仕事机である。
一言で表すなら「ザ・社畜デスク」である。
何故そう思うかって?
うず高く積まれたサイン(ハンコ)待ちの書類の山々、飲もうと思って入れたが結局一口しか飲めなかった冷め切ったコーヒー(?)らしき液体、灰皿らしきものに大量にある葉巻(?)の吸い殻。
アレ? 本当に魔王の執務室ここ? 誰か別の人の部屋と間違えてない?
「よくぞいらした、おっさん殿」
おっさんが社畜デスクを眺めていると、うず高く積まれた書類の後ろから魔王が現れた。
眼の下には濃いクマがあり、少し頬がこけていた。
今回のことの顛末の詳細をアリシアが報告し、魔国関係者達で今後について話し合うのが最優先なのは分かるが・・・
「あ、どうもお邪魔します。それと良かったらこれ・・・」
魔王さんはおっさんが取り出したものを見て、疲労→驚愕→笑顔という感じで少し回復した。
「これは!? 温水洗浄便座! 頂けるのですか!?」
「ええ、どうぞ。社畜の人にせめてもの楽しみを・・・」
「「社畜?」というものが何かは分かりませんが、ありがとうございます! オリジナルには遠く及びませんが似たような機能を再現したものを開発途中でして、それの参考にさせて頂きます!!」
温水洗浄便座を両手で頭上に挙げて歓喜する魔王って・・・少しは元気になったから良いか?
「喜んでいるところ悪いのじゃが、そろそろ話を進めてもよいのじゃ?」
おっさんと魔王のやり取りがひと段落したのを見計らって、アリシアが本題に入ろうとしてきた。
「コホン、すまない取り乱した。それでアリシアよ、ダークエルフ達を保護した状況を改めて詳しく報告してくれ。現場を見た者として。おっさん殿も出来れば話を・・・」
「あ、パスでお願いします。面倒くさいので」
熊師匠が拾ってきたから微妙に関わったけど、これ以上関わりたくないで本音を口から出してみた。
「いや、一応おっさん殿の意見も・・・」
「パスします」
「しかし・・・」
「パス」
おっさんと魔王の「どっちが先に折れるかゲーム!」が続くのかと思われた矢先、体感的に部屋の温度が急激に下がり背後から殺気を通り越して殺意の波動を感じて「どっちが先に折れるかゲーム!」は中断された。
目の前の魔王はカタカタと震え尋常でない冷や汗をかいている。
近くにいるアリシアも同様に震えている。
おっさんの背後にはシゼルしかいないので、この殺意の波動的なものはシゼルが発しているのは間違いない。
この場で普通に動けるのはおっさんしかいないので、必然的に振り向いてシゼルの様子を確認しないといけない。
故に思う、振り向きたくねー
よし3.2.1で振り向こう。いくぞ・・3.2.1。
いつもより3倍冷たい目つきと雰囲気のシゼルがいる。しかも周囲の空間が少し歪んでるし。ご機嫌斜めだよ、おっさんのせいですか?
「そこなる矮小なものは魔王でしたか? ご主人様は「パス」つまり話す気がないとおしゃっているのですよ。あなたは言葉を理解できない程、愚かなのですか?」
シゼルの不機嫌(?)の原因がおっさんではないと安心した反面、もうライフがゼロになりかけている魔王とアリシアをどう救おうか考えなくては・・・
『シゼル、とりあえず落ち着こう。じゃないとアリシアはギリセーフでも魔王が死んじゃうから!』
『安心して下さいご主人様。証拠は残しません』
『安心できないし、もう殺害は確定ですか!?』
『自分の立場が分からない矮小な存在にただ鉄槌を下すだけです』
『うーん、落ち着いてくれたら明日から1週間おっさんと添い寝が出来る権利を贈呈するから、それで手を打ちませんか?』
念話にも殺意が混じっているので、これは緊張感のある交渉だ。
しかし「1週間おっさんと添い寝が出来る権利を贈呈する」とかいう、とっさに思いついた誰得案で今のシゼルを宥められるか・・・
『「永遠にご主人様と添い寝が出来る権利を贈呈する」で手を打ちましょう』
何故か添い寝期間が1週間から永遠にクラスチェンジしたぞ。
食いついてくれたのは良かったけど、永遠ですか・・・
『シゼルさんや「期間限定」だからお得感があるという・・・』
『ご主人様、これ以上の譲歩や妥協案は認めません。私の場合の「期間限定」とは「永遠」という意味のことです』
もう無茶苦茶。でもシゼルがこれだけ自己主張するのは稀だから、それでこの場が治まるなら良しとするか。
『わかったよ。添い寝期間は永遠で良いから殺意の波動的なものをおさめてくれ』
『かしこまりました』
念話が終わるのと同時に圧迫感がなくなり、魔王とアリシアはその場になんとか膝をついた。
「死にかけたところ悪いけどアリシア、魔王さんに手短に説明よろしく。おっさんはシゼルとお茶でもしてるから終わったら声かけて~」
魔国担当アリシアにすべてを押し付けておっさんは優雅にティータイムである。
かくかくしかじかとアリシアが1時間ほどで説明を終えたらしく、声をかけてきた。
「待たせたのじゃ。魔王のヤツに詳細とダークエルフ達の保護と捕虜の引き渡しもしてきたのじゃ。どうする、もう帰るのじゃ?」
おっさんに話しかけつつもシゼルの方をチラチラと様子見している。
久々にシゼルという存在の恐ろしさを味わったから仕方ないか。
「おっさんはすぐにでも帰りたいけど、アリシアは良いのか? 久しぶりの魔国だろ? 何か用はないのか?」
「うーん、たぶんないから大丈夫なのじゃ!」
「たぶんって・・・お前」
「老兵はただ退くのみなのじゃ。あとは若い連中に血反吐吐くまで頑張ってもらうのじゃ」
「都合の良いときだけ自分を年寄り扱いすんな」
全魔国民の代わりに軽く頭にチョップをかましておく。
「じゃあ魔王さん、お邪魔しました。おっさん達は帰りますんで後はお好きにどうぞ」
「おっさん殿、改めて今回はダークエルフ達を救ってくれたこと魔国を代表して感謝する、ありがとう」
「どういたしまして。おっさんの運が悪かったから巻き込まれた・・・ということにしておくよ。でも次はないから。ではサラバ!」
捨て台詞を残して帰宅。さあ、お楽しみのギリ夜食タイムだ。
ギリというかもう白々としているけど気にしたら敗けだ。
自宅に転移すると先に転移した組が食事をちょうど完成させて、エプロンを外すところだった。
「あらあら、お帰りなさい。ご飯が出来たから手洗いうがいをしてきてね♪ うふふ」
「ただいま。すぐに済ませてきます」
レヴィさんとのお母さんと子供のようなやり取り終えて、料理が温かいうちに食卓につく。
あの惨状の影響で生姜焼きに反対していたアリアだが、普通におかわりするくらい食べていた。
アリアの精神的ダメージを心配していたけど食事ものどを通らないほどではなさそうだから、しばらくは色々と悩んでモヤモヤするだろうけどとりあえずは大丈夫かな?
レヴィさんが上手くフォローしてくれたおかげかな。
おっさんの視界の端でみんなにバレないように(*^^)vな感じのレヴィさんが見えた。
あなたまたおっさんの心読んだでしょ? あ、顔をそらした!
おっさんの心は常に読まれているってこと? プライバシー侵害だ! おっさんの安らぎを返せ! そして恥ずかしい!!
ちなみにおっさん達が帰宅した際は時間がかなり遅かったため、セレスは寝ておりその隣で一緒に寝ていた虎鉄と小雪はおっさん達の帰宅には気がついたが、隣で寝ているセレスを起こさないために目線と尻尾だけで歓迎してくれた。
熊師匠はおっさん達を待っていたようで起きていた。
夜食(?)が終わり何故かおっさんが1番風呂をいただいた。
シゼルとレヴィさんに進められてだ。理由? 「疲労が溜まっているように見えるから」だそうだ。
そんなに疲れているように見えるだろうか?
確かに首は痛いし、最近は胃薬を多用してはいるけど・・・
おっさんがお風呂からあがるとリビングスペースで、みんながそれぞれが寛いでいた。
シゼルとレヴィさんはテーブルで紅茶を飲み、ソファーではアリアとアリシアが話し込んでいた。
熊師匠は専用ロッキングチェアで揺れてましたよ。
ティアさん? 朝方の背徳感マシマシのカップ麺を笑顔で食べてましたよ。
今日はなんだかおっさん疲れたので少し早めに寝ることにする。
やっぱり歳のせいかな? 歯を磨いてトイレに行って大人しく就寝しよう。
「みんな~おっさん疲れたから今日はもう寝るね。まあもう早朝に近い時間だからたぶん昼過ぎには起きると思う。みんなも体内時間がずれるだろうから早めに寝なよ。今日はお疲れ、それじゃおやすみ~」
「おやすみなさい(のじゃ!)」
ご主人様の部屋の扉が完全に閉まったことを確認します。
「ご主人様は就寝なさいましたね。レヴィ、この空間を隔離しますよ」
「了解~♪」
リビングスペースだけをこの世界から一時的に隔離する。
これでご主人様にはバレないでしょう。ご主人様は極稀に変なところで勘が働く方ですが、私とレヴィが2人がかりで空間を隔離したので今回はその心配はないでしょう。
何が起きたのか理解できずにオロオロしている者たちにお説教タイムです。
その前に無駄口を叩かれると時間の無駄なので、分かりやすく意識を刈り取らない程度に威圧しておきます
「「ひっ!」」
私とレヴィの最小限の威圧によりアリシアとアリアは、ガクガクと震え始めました。
熊さんは器用に正座しています。
これから何が行われるのか既に察しがついているようです。
「熊さんとアリシア、あなた方に少しお説教をします。威圧したのは無駄口を叩かせないためです。私たちの話を聞いて理解すればそれでかまいません。分かったのなら首を縦に振りなさい」
「「コクリ」」
3人とも首を縦に振りました。
「まずは熊さん。この森で人間に近い生物を見つけても無暗に接触しないことを心掛けて下さい。まして今回のように拾ってくるなど論外です。熊さんもご主人様やその他の種族と触れ合って好奇心が沸くのは理解できます。ですがこれまでが例外であっただけで、基本的に森の外の世界とは接触を避けるべきです。この件に関してはすでに森の外で3人も拾っている前科持ちのご主人様の行動にも非があることは明白なので、これ以上は言いません」
熊さんはご主人様の胃薬と頭痛薬の服用量を気にしていたので、自覚があったのでしょう。反省しているようですね。
「さて、次にアリシアですが・・・あなたと魔王はギルティです」
私の「ギルティ」という言葉を聞いて、アリシアがビクッとしました。
いい気味です。
「こちらもお人よしのご主人様にももちろん非があります。しかしアリシア、あなたは今回のダークエルフ奪還とその施設の破壊にご主人様を少なからず利用しましたね?」
私の言葉を聞いてアリシアが首を縦に・・・振らない? 何故でしょう??
なんですかレヴィ、私の威圧が増していると? これは失礼しました。どうやら少し感情的になっていたようです。
「首を突っ込んだご主人様にもあとで軽くお説教をしておきますが、今日の感じを見る限りその必要もないでしょう。心底面倒くさそうな表情をしていましたから。話を戻しますがアリシア、ご主人様を利用しましたね?」
「コクリ」
「魔国が公に動けば敵に感づかれる、加えてダークエルフ奪還に戦力を分散させたくない。その2点をクリアしているご主人様はうってつけだったわけですね」
「コクリ」
「はあ・・・ご主人様も自分が利用されていることにはしっかりと気がついていたようですが、気がついていながらその場の流れに身を任せて曖昧な意思表示をするから」
「そうよね、おーちゃん「外の面倒ごとには関わらない!」って明言しているのに、今回なんて結構ガッツり関わっているしね。きっと根が優しい人なのね! ますます好きになっちゃうわ♪ うふふ」
発情期のレヴィはスルーして・・・
「アリシア、今回はこの程度のお説教で済ませましたが・・・次はありません。そのことを夢忘れないように心に刻み込んでおきなさい。アリアも同様にご主人様を余計なことに巻き込まないようにしてください。例えばご主人様が明確な拒否の姿勢をとらない際はとくにです」
「「コクリ」」
「理解していただけたのなら結構です。これでお説教は終わりですがこの際ですから1つはっきりさせておくことがあります。この世界で私はご主人様以外の存在には興味がありません。従ってご主人様自身とその思考が最優先されます。ご主人様の安寧のためでしたらあなた方を処分して、初めからこの世界にいなかったことにするのも可能です。ですがその行為はご主人様にとってあまり気持ちの良い行為ではないので、出来るだけしたくはありません。ですのであなた方の今後の行動には細心の注意を払うことをお勧めします」
「「コクリ」」×超高速。
2人とも確実に理解したことは分かりますが人間の体の構造上、あんなにも高速で首を動かすことは可能なのですね。これは新発見です。
「これにてお説教は終了ね♪ うふふ。それにしてあのシゼルちゃんがここまで優しくなるなんてね、本当に驚きよ」
何故かレヴィが「ニヤニヤ」と形容するのがもっとも適切な表現である顔をしています。
「どういう意味ですか?」
「あらあらだってあの自身の視界に入ったものを「私の視界に無断で入るな」って、存在を消滅させていた頃と比べればね・・・」
「あれは若気の至りです。今思い出しても黒歴史ですね。レヴィこそ、私のことを言える立場ですか?」
「あらあら? 何のことかしら?? 私はシゼルちゃんほど怖くない存在だけれど?」
「よく言いますね。微笑を浮かべながら「邪魔♪」と自身の通り道にあった世界を破壊していたくせに」
「あらあら、昔の話よ♪」
おや、何故でしょう? もう威圧は出していないはずなのに、アリシアとアリアが顔面蒼白状態になっています。威圧の後遺症でしょうか? そんな後遺症は聞いたことはありませんが。
「いったい何の話をしている? もしや朝食のメニューについてか!?」
私がお説教をしている最中もカップ麺に続き団子を食べていたティアが、今更会話に参加してきました。
ティアはこの世界に来てからというもの「食事」というものを満喫しています。
私たちにとって欲求や望みなどは本来ないものなのですが、よほどご主人様の手料理に衝撃を受けたのでしょう。ティアは自分でも料理できるにも関わらず、事あるごとにご主人様の手料理をねだります。
完全に餌付けされた獣です。
いくら食べても私たちの体に変化はないので、問題はないですが。
「あらあら残念♪ 朝食の話ではないわよ。今後のおーちゃんについてのお話よ」
「今後のご飯の人の話? ご飯の人は今後もここでご飯を作るのだろう? 何も話すことなどないが?」
「あらあら、ティアちゃんはブレないわね。でもね、おーちゃんって最近森の外の世界に関わりつつあるわよね。そうするとおーちゃんの目標の「日々平穏」から遠ざかっちゃうのよ。おーちゃん自身も気がついてはいるけれど何人か外から拾っちゃっているから、完全に外と関りを絶てていないのよね~」
「それがご飯の人の今後にどう影響するのだ??」
「うーん。ティアちゃん直接関係することで説明するなら、今後おーちゃんの手料理を食べられる頻度が減るわね」
「!? 何だと・・・」
「あらあら、そんなにショック? だっておーちゃんが肉体的にも精神的にも崩れたら料理どころじゃないでしょ? でもそれはあくまで「万一」の場合のお話よ。そんなことには私が絶対にさせないから安心して。うふふ」
ご主人様を案じているレヴィの言葉は紛れもなく本心であることは理解できます。しかし最後の笑顔の際、目が全く笑っていませんでしたよ。
「・・・そうか、つまりは私がご飯の人の手料理をこれからも食するうえでこの森以外は不要ということか・・・」
おや? ティアの様子が変ですね。まずありえないですが食あたりにでもなったのでしょうか?
「仕方がない。今後の私のご飯のためにこの森以外の存在を今のうちに消しておこう」
その一言をきっかけにティアの周囲に激しい力の奔流が出現しました。
これはいけません。
「レヴィ!」
「わかっているわ。結界の強化は私がするから、シゼルちゃんはティアちゃんを沈めて!」
結界の強化が一瞬遅れたせいかティアから放たれた力の余波が、ほんの少し結果外に漏れてしまったようです。
余波だけでアリシアとアリア、熊さんだけでなくこの世界の全ての生物が意識を刈り取られたようですね。
ご主人様の部屋は特別製の結界で覆ってあるので、感づかれることはないでしょう。
しかし隔離した空間内でさらに結界を一時的にでも貫通するとは・・・ティアのご飯欲を侮っていました。
今後は「ご飯欲」=ティアの地雷だと改めて認識しておきましょう。
しかし今はティアを落ち着かせることが最優先ですね。
「ティア、落ち着きなさい! でなければ朝食は抜きにしますよ!」
「!?・・・」
少し漏れ出ている波動は減少しましたが、まだまだですね。
仕方がありません。
「#$?*%」
「!?」
真名を呼ばれたことで正気に戻りましたか。これで一安心ですね。
「ティア、何か言うことはありますか?」
「ご飯を最優先にし過ぎて我を忘れた。迷惑をかけた・・・すまない」
まるで叱られた子供のように「シュン」としています。
「反省しているようですからこれ以上は何も言いませんが、以後気をつけてください」
「わかった。それで朝食のメニューは決まったのか?」
「やっぱり一発殴っておきましょうか?」
「まあまあ、ティアちゃんも反省しているし死人もでていないから良しとしましょう♪ うふふ」
私が拳を握りしめると同時にレヴィが後ろから抱き着いてきました。
嫌ではないですが暑苦しいので、早々に離れてほしいものです。
「確かにイレギュラーはありましたが当初の目的は果たせました。今回はこれで仕舞いにしましょう」
「あらあら、じゃあこの後はお楽しみの添い寝タイムね♪ うふふ」
「そうですね。お楽しみの添い寝の時間です」
隔離したリビングスペースを元の次元に戻し結界を解除、無様に倒れているアリシアとアリアをそれぞれの部屋のベッドに放り投げて手早く入浴や肌ケア歯磨きを済ませて、レヴィと共にご主人様の寝室に急ぎます。
熊さんはすぐに意識を取り戻して、再び専用のロッキングチェアで眠りにつきました。
ご主人様の部屋のドアを静に開けると、ぐっすりと眠っていらっしゃいました。
先ほどのティアの感情の高ぶりによる余波の影響もないようです。
「予定通り私はご主人様の右側を頂きますよ、レヴィ」
「あらあら、じゃあ私は左側ね♪ うふふ」
ご主人様は寝相が良いので簡単に添い寝が出来るので助かります。
右腕をしっかりと抱きしめながら眠りに落ちることにします。
本来私たちには「睡眠」は必要ないのですが、様式美というやつです。
そういえばご主人様の枕が変わっている気が・・・もしや頭痛の原因はこれなのではないでしょうか?
危機管理のために完全に意識を手放すことはありませんが、今はご主人様との添い寝の時間を満喫することにしましょう。
願わくばご主人様とのこの穏やかな時間が永遠に続きますように・・・
おっさんは起床した瞬間から危機に瀕していた。
シゼルとレヴィさんに両腕をホールドされ、胸の柔らかな感触やイイ匂いと吐息による性欲との戦い・・・ではなく尿意が、膀胱が破裂しそうなのだ。
おっさんが目を覚ましてからはや10分。そろそろマジで限界が迫っている。
しかし両腕をホールされているから動けないし、おっさんより遅く寝た2人を起こすものも悪い気がするし。
まだだ、まだ漏らさんよ! あと15分くらいは耐えて見せる!
結局10分ほどしたところで2人が起きてくれたので、おっさんになって漏らすという大惨事は回避できた。
2人が起きてホールドしていた腕を開放した瞬間に、トイレにダッシュしていくおっさんをシゼルには冷めた目で見られレヴィさんには笑われた。
「「起こしてくれれば良いのに」」
と2人には言われたけど、なんか起こしづらいじゃん。
既に起きていた熊師匠と弟子がいなくなって自棄酒している蜘蛛お嬢に、朝というか昼の挨拶を済ませて虎鉄と小雪の散歩に出かける。
ところでいつも通りの時間に寝た虎鉄と小雪はおトイレは大丈夫だったの? デュラちゃんが代打で散歩に付き合ってくれたの。そっか、あとでお礼を言っておかなきゃ。
日差しが眩しく小川のせせらぎ心地よいいつもの風景・・・ではなく、至る所に生き物が倒れている。
何事かと思い一匹の大型の猪もどきに近づいて確認すると、どうやら気絶しているだけのようだ。
ふと川を見るとこちらも気絶している魚たちがプカプカと浮かびながら、上流から下流へと流れている。
「ヒャッホー! 大量だ。今夜はパーティーだぜ!!」的なテンションになりそうになるが、なんか怖いので何匹かだけを〆てアイテムボックスに入れる。
シゼル達なら何か知っているかもしれないので、とりあえず散歩を切り上げていったん自宅に帰ることにする。
ちなみにその場で虎鉄と小雪に聞いてみたが、首をかしげて頭上にクエスチョンマークを浮かべていた。
可愛い・・・おっさん癒されるわ~
自宅に戻って見てきたことをみんなに話すとそれぞれ次のような反応があった。
・シゼルとレヴィさん➡知りません。知らないわ~。
・ティアさん➡肉を多めに確保しておいてくれ!
・熊師匠➡ぐぁーぐ(わからない)
・セレス➡わたしもなにかひろってくる!
・アリシアとアリア➡シゼルとレヴィさんとティアさんの方をチラチラ見ながら「妾は何も知らんのじゃ」「私も存じ上げません」と回答した。
いや最後の二人、冷や汗垂らしながら言ってる時点で嘘じゃん!
完全にあの3人がなんかやった感じじゃん!
どうする、踏み込んで聞いてみるか? 藪をつついて化け物が出てきたらおっさん対処できないけど。
一筋の助けを求めるように熊師匠に視線を向けると、あろうことか両手で顔を隠した。
あ、これ踏み込んだらアウトなやつだ。
気にしたら負けだ。よし忘れよう! 畑仕事に精を出そう。
一心不乱に作業にいそしめばきっと忘れるはずだ!
「おっさん畑仕事に行くけど一緒に来る人いる?」
「「わん!」」
「はーい!」
「ぐぅあ!」
虎鉄と小雪にセレス、熊師匠が同行するようだ。
「じゃあ、ちょっくら行ってきます。夕飯までには戻るから」
「いってらっしゃいませ、ご主人様。ちなみに今晩のメニューは餃子です」
「それまたなんで?」
「私が食べたいからです」
「さいですか」
玄関の扉を開けて畑を目指す。うん今日も日々平穏だ。
こことは異なる世界での一コマ。
「あの3人最近姿を見ーひん思たらあないなとこにおったのね。もう何万年も退屈続きでちょうど刺激欲しかったのよね。少しちょっかいを出しに行こかしら?」
本当に久しぶりの投稿です(^▽^;)
書いている本人が設定を忘れそうになるレベルですw
これからも不定期になりますが投稿は続けたいと思いますので、少しでもこの作品に興味がある人は見捨てづに続きを待っていてください。
なるべく早く投稿できるようにしますので(>_<)




