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森の入り口に瞬間移動すると、今まさにズボンを下ろそうとしているゲス男が視界に入った。

女性陣が一瞬で組敷かれている女性の周辺に移動して、男達を文字通り瞬殺した。

特にズボンを下ろそうとしていた裏切り者君は首から上が消滅して、土手っ腹に大穴があいて下半身がズタズタに引き裂かれるという無惨な最後を遂げた。

おっさんは念のため周囲を覆う大きめの認識阻害&消音こみの結界をはる。

「虎鉄、今回おっさん達はバックアップと周囲の警戒担当だね。敵の処理は女性陣にお任せしましょう」

「わん」

おっさんの隣でお座りをして虎鉄が周囲警戒に入る。

外の世界ではかなり知名度のあるアリシアの姿を見たヒューマン達が、何やら騒いでいたがそのアリシアにすぐに灰塵にされていた。

アリシアの居所がバレないように、目撃者は全員処理しないとな。おっさんの心の平穏のために。

一方では氷漬けにされたヒューマン達が、小雪に砕かれて絶命していく。

女性陣のお怒りは相当のようです。触らぬ神に祟りなし。

シゼルの方は・・・いくつもの黒い球体がヒューマンに接触した瞬間、黒い球体が膨張してヒューマンを飲み込み存在を消滅させていく。恐ろしや恐ろしや。

このまま突っ立ていても良いのだが、倒れたままの女性の容態が気になるので様子を確認しに行くか。虎鉄行こう。

高速移動で女性のもとに行くとなんともあられもない姿だった。凌辱されなかったことが唯一の救いか・・・おっさんは平気だけど思春期の少年が今の彼女の姿を見たら大興奮してしまうので、アイテムボックスから毛布を出して彼女を抱き上げてくるむ。

見たところ体のダメージは大したことはないが、精神的なダメージはかなり深刻だ。

涙を流しながらも目が虚ろで表情がない。これはマズいな。


応急処置として治癒魔法と、精神的苦痛を和らげるのに効果がありそうな魔法をいくつかかける。

しかし彼女に大きな変化はなく、力なくおっさんの腕の中で放心状態のままだ。

いっそのこと記憶を抹消して容姿も変えて、別人としてどこか静かな村とかで暮らした方が幸せかもな。

でもおっさん1人の判断でそれを行うのはちょっとね・・・

とりあえず一旦保護するか。全く捨て猫(犬)を拾ったのは誰なんだか。

おっさんの視線の先にはいまだに蹂躙されているヒューマンの男達がいた。

シゼル達、ワザと苦しみを与えながらゆっくり殺しているな。

さて、おっさんは少し頭脳労働をしよう。前回アキレスケン・ハルバートの際は考えなしに死体を全て処分してしまったことが原因で、今回長々ヒューマンが森の入り口に居座った。

故に今回は死体をあえて残すことにする。特におっさんの腕の中にいる女性の死体は残した方が良いだろう。この女性を殺すことも目的だったように見えたからな。

魔法で死体を偽造することも出来なくはないが、高レベルの魔法使いに見破られる可能性がある。

やはり実際の人間の死体を偽装するしかないか。

地面にレジャーシートを敷いて1度彼女を地面に下ろす。そしてこの女性を裏切ったであろうもう1人の女騎士から鎧を外し、殺される予定だった女性が着ていた赤色の鎧に着せ変える。

そんな小細工の準備を行っていると殺戮を終えた女性陣が戻ってきた。

「ご主人様、ゴミの処分が終わりました」

「久しぶりに暴れたのじゃ。悪は成敗なのじゃ」

「ワオーン!」

どうやらお怒りは収まったようだ。一方的な八つ当たりと言われてしまえばその通りなんだけど、今回はヒューマンに同情はしないな。

「ところでおっさん殿は何をしておるのじゃ?」

アリシアがおっさんを不審な目で見てくる。違うからね、おっさん死体に興奮する性癖は持ち合わせてないからね。

「前回のアキレスケン・ハルバートの時は死体がなかったから、生死がわからずじまいで今回のような捜索隊が出された。まあ、今回はこの女性を始末するのも目的だったようだけど。でも今回は死体が山ほどあるから偽装工作でもしようかなと思ってね」

上手く騙せればこの森に人がくることがなくなるし。

「なるほどのう。うん? このおなごはアリア(アリア・フォン・シャングリ・ラ)ではないか! 何故王族のこやつが暗殺されそうになっておるのじゃ」

アリシアが驚愕している後ろで、シゼルが虎鉄と小雪にミルクとジャーキーを与えていた。

お疲れさま的な意味合いかな?

「知り合い?」

「何度かヒューマンとの会合で顔をあわせたくらいじゃ。アリアはヒューマンの中では珍しく穏健派で他種族との和平を望んで尽力しておった。それに王族なのに庶民を見下さない姿勢で、民衆からの人気はかなりのものじゃった」

「だから他の王族からは疎まれていたと。よくある話だね。捜索隊の中に暗殺部隊みたいのが混じっていたのは彼女を事故にでもみせかけて殺害するためか」

おっさん達の中でヒューマンという種族の株価が大幅に下落したぞ。取引ストップになりそう。

「さて、虎鉄。ちょっと仕事を頼みたいんだけど」

「わふーん?」

口元にミルクがついた状態で「なーに?」とおっさんの方に顔を向けた。それを見かねた小雪が虎鉄の口元を舐めて綺麗にし始めた。どっちが年上なんだか・・・

「周囲にある死体を焼いて欲しいんだ。鎧はミディアムで死体はウェルダンでお願いしたいんだけど、大丈夫?」

「ワン!」

力強く「任せろ!」的な一声だけど、まだ小雪にキレイキレイされているね。説得力の欠片も感じないのだが・・・大丈夫かな?

虎鉄からゆらりと魔力が立ちのぼり全ての死体が発火し始める。パイロキネシスの精度が格段に向上している。おっさんの知らないところで練習したな。虎鉄も頑張りやさんだからな。

数秒後、死体を覆っていた炎が消えるとおっさんの注文通り死体はよく焼きで、鎧は半生って感じに焼き上げてくれた。よ、職人芸!

「このくらい死体が焼き爛れていれば、性別の判別はついても個人の特定までは不可能だろう。それこそ余程の特徴がない限りはね」

「そのための死体の焼き加減がウェルダンですか。しかしご主人様、1つ重大な問題を見落としていませんか?」

「え、何?」

「胸です」

「・・・はあ?」

「おっぱいです」

「言い直さなくてもわかって・・・は!?」

重大な事実に気づき赤い鎧を着せたよく焼けた死体の胸部と、レジャーシートに横たわる女性の胸部を比べる。

なんてことだ・・・ヒマラヤ山脈と絶壁、天と地ほどの差がある。

く、これは大誤算だ。どうする・・・

「胸って結局は脂肪の固まりじゃん。炎の熱で溶けて縮小したことにならないかな? もしくは豊胸ブラ的なものを身に付けていたとか・・・」

「どちらも現実的ではないですね。これだけの巨乳ならば多くの男性陣が目に焼き付けているでしょう。よく焼きの死体になったとはいえ同じおっぱい好きの男性として、その男性陣の目を欺けますか?」

確かにこれだけの代物だ。多くの男性陣の目と記憶に焼き付いているだろう。

ん? シゼルさんや、何故おっさんが「巨乳好き」に認定されているんだい?

おっさんも男だからもちろん好きだけど、シゼルの中ではおっさんは「巨乳好き」というイメージなのね。あとで話し合おうね。

「バレるかな、やっぱり」

「おそらく大丈夫じゃろう。たとえ死体の偽装がバレたとしてもアリアは死んだことにされるじゃろう」

「なんで?」

「その方が色々と都合が良いからじゃよ、ヒューマンの王族連中にとってはな」

「もしかして、いわゆる厄介払い的な意味合いで?」

「そうじゃ。ヒューマン国の統一見解ではあの国は「反他種族主義」じゃ。しかしアリアは他種族との和平を望み、積極的に活動しておった。しかもその活動の成果を穏健派の一部の上層部に少なからず評価されておった。それプラス民衆からの絶大な人気じゃ。その結果他の王族からどう思われていたか、わかるじゃろう?」

「さぞかし目障りだっただろうね。自分達の考えに異を唱え輪を乱す存在であり、民衆からの人気も自分達より上。妬みに嫉妬、実に人間らしい醜い感情だね」

「これでアリアが王位継承権を持っておったら、もっとドロドロした関係じゃっただろう」

「うん? 王族なのに彼女は王位継承権を持っていないの?」

「持っておらんそうじゃ。以前本人から直接聞いた。アリアの母は平民のハーフエルフだったため、側室の1人じゃったそうじゃ。エルフの血が混じっておったから容姿端麗だったため、現在の国王に見初められたそうじゃ。その時からヒューマン国は「反他種族主義」じゃったが、「ハーフ」であったためそこまでの差別や避難は浴びなかったそうじゃ」

「なるほどね。じゃあ国に返してあげないと、親御さんが心配するかな?」

「その心配はないのじゃ。アリアの母親はアリアを出産した際に亡くなっておる。父親である国王も最近では正妻の子供ばかりにかまけて、アリアとは絶縁状態だったらしいのじゃ。今の状態で国に返すのは流石に酷なのじゃ」

なんかまた壮絶な過去を持つ苦労人に出会ったよ。異世界に来ても物理的な争い以外でも、人間関係とか政治的駆け引きやらでの争いも絶えないね。人類みな兄弟的な発想はないのかな。

アリシアと少し話し込んでいると、足元から視線を感じたので見てみると・・・虎鉄と小雪が誉め待ちしていましたよ。

「おーよしよし~」

背中、頭、お腹などを触りまくっていると二人ともコロンとして「へそ天」をしてしまった。死体の横で犬達と戯れ和む・・・実にシュールな光景だ。

二人のお腹を擦っているとシゼルがこちらに戻ってきた。

「ご主人様、周囲に敵影はありません。それでその女性はどうするのですか?」

「どうするとはどういうこと?」

「ですから自宅に連れて帰るのか、この場に放置するまたは敵として処理するのかという意味です」

えーおっさん完全に保護するつもりだったんだけど、みんなは違ったの!?

「えーと・・・一応死体の偽装工作もしたし何よりこんな心身ともにズタボロの人間を、放置するのも微妙に気が引けるからな・・・確認だけどみんなは彼女を助けるつもりで、殺戮のかぎりを尽くしていたんじゃないの?」

おっさんはてっきりそうなのかと思っていたんだけど。

「私は女性の敵を処理しに来ただけです。人命救助をするとは言っていません」

「妾は女の敵の抹殺と、妾とセレスの追っ手を片付けただけじゃ。アリアをどうこうするとは一言も言ってはおらぬ」

「わふーん?」

・・・こいつらおっさんのこと嵌めやがったな。責任回避のために彼女に対することに言及しなかったのか。やられた・・・ここまでして今さら保護しないという選択肢はほぼないよ。

アリシアなんて期待を込めた目で、チラチラとおっさんの様子をうかがっているし。あー仕方がない。

「現状では彼女をとりあえず保護します。身の振り方は彼女が回復してから考えます。以上、撤収」

おっさんが保護の方針を宣言すると、アリシアはガッツポーズをしてシゼルはため息をついた。小雪は・・・興味がないみたいだ。

虎鉄だけがおっさんの足に抱きついて尻尾を振って、おっさんを元気づけようとしてくれた。ありがとう。

忘れ物、見落としがないか再度確認して彼女を抱き上げて自宅に瞬間移動する。

おっさんのスローライフは自業自得の行動で、また一歩後退した。シクシク(ToT)







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