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お風呂から上がって自宅で寛ぎながら、夕食のメニューについて思いを巡らせる。

シゼルとアリシアが来てから夕食や家事を当番制にしている。シゼルが「メイドの私がやれば済むのではないのですか?」と言ったが、それではおっさんの家事スキルが鈍ってしまうしスローライフ感がない。

アリシアの場合は単純にもう少し色々と出来た方が良い気がするから、やってもらっている。

おっさんが夕食担当ということで、鍛冶場の清掃を終えて洗濯物を回収したシゼルが「暇です」と呟いてまたもやおっさんの隣に座り、おっさに寄りかかって昼寝をし始めた。何故おっさんの隣で寝るのか? こればかりは永遠の謎である。しかも最近ではご丁寧に毛布持参である。

さて、メニューは何にしようかな? 最近は中華料理を作ってないから中華にしようかな。

「麻婆豆腐」とかはどうだろうか? セレスには少し辛いかな。辛口と甘口の両方を作ればいいか。

ついでに「麻婆春雨」と「麻婆茄子」も作っちゃおうかな。なんか楽しくなってきた。

まだ夕食の準備には早いからおっさんもボーッとしよう。シゼルも寝ていることだし。

ボーッとしているとノーライフキング先生が遊びに来た。

「こんにちは、ノーライフキング先生。夕食を食べていきませんか? ちなみに今日は中華料理です」

「ヴぁヴぁ」

「まだ夕食まで時間があるので、寛ぎますか? それとも1局打ちますか?」

「ヴぁ!」

「ちょっと待ってくださいね。今将棋盤と駒を出しますので」

右側にシゼルが寄りかかっているので、起こさないように最小限の動きでアイテムボックスから将棋盤と駒を取り出して目の前のテーブルに置く。

ノーライフキングキング先生はおっさんの対面に座り、対局の準備を整える。

いまだに将棋での戦績はおっさんの方が上なので、ノーライフキング先生の方が挑戦者である。かかってきなさい(ドヤ顔)

寝ているシゼルを起こさないようにサイコキネシスで駒を動かすことにする。将棋を指しながらサイコキネシスの訓練も出来るという、実に効率の良い方法。

将棋を指しているとノーライフキング先生が長考し始めたタイミングで、思い出したかのように話題転換で「あの話題」を振ってきた。

「ヴぁヴぁーヴぁ?」

「はい、先程熊師匠から聞きました。正直今回ばかりは絶対に関わりたくないです。これ以上おっさんの日々平穏を崩されたくないのです。しかも森の入り口にいるのはヒューマンの部隊ですよね? おっさんこの世界のヒューマンに良い印象が全くないので・・・というかクズみたいのに何人か遭遇したくらいですね。故に現在の印象は最悪です」

ホント最初の印象が悪いとその後もワリと引きずるんだよな。

「ヴぁヴぁ?」

「え、おっさんもヒューマンじゃないかって? 何を言っているんですか。おっさんはおっさんという種族ですよ。ヒューマンではありません」

ノーライフキング先生が「そうなの?」みたいな感じで、珍しくポカーンとしている。意外と知られていませんがおっさんはヒューマンではありません。おっさん=おっさん。

ノーライフキング先生が長考の末に次の一手を指した。中々の一手ですな。今度はおっさんが長考タイムです。

「ヴぁヴぁ、ヴぁー」

「そうですね、森に足を踏み入れるか長期間滞在するようなら様子だけは見に行くかもしれません」

おっさん長考中・・・そんな静寂をぶち壊すかのように、玄関の扉が勢いよく開かれた。

「ただいまなのです!」

「なのじゃ!」

「「ワオーン!」」

今日は基本的にみんな休日だったので、おっさん以外の面々は午前中の畑仕事が終わったあとの午後はアスレチックで遊んだり、ウサちゃんズとスケルトン達とバスケやサッカーをして体を動かしていたようだ。しかも浴場でひとっ風呂浴びてきたようだ。

おっさんが元いた世界では公園で球技とかで遊んでいる子供達を見なくなった。そもそも公園自体の数が減っているから当たり前か。

それにネットも発達したから外に出なくても、友達とオンラインでチャットで会えるからわざわざ外に出る必要性もなくなってきた。あとは変質者が増えたのも外で遊ばなくなった1つの要因かな。

おっさんの個人的意見としては中外で遊ぶ割合を、半々くらいで子供のうちは色々と経験してほしいと老婆心ながら願っちゃうな。

「おかえり。全員洗面所に行って手洗いうがいをしてきてね」

おっさんの言うことを聞いて、みんな素直に洗面所に向かっていった。

「ん・・・はあ・・・」

急に騒がしくなったせいか、おっさんに寄りかかっているシゼルが軽く身じろぎをした。おや、起きるのかな?

「ふう・・・すう・・・」

また寝息が聞こえ始めた。まだお昼寝するようだ。いくら超越的な存在でも睡眠は大事ということだろう。睡眠は大事。お、良い手が浮かんだ。

「ヴぁ!? ヴぁ・・・」

おっさんが一手を指すとノーライフキング先生が苦悶の声を出した。我ながら会心の一手だ。

これはノーライフキング先生また長考かな?

そんな風に思っていると、洗面所から4人が戻ってきた。

セレスに虎鉄に小雪は冷蔵庫に直行。お昼寝三人衆は仲良く牛乳を飲んでいる。最近ではセレスが虎鉄と小雪のmy皿に牛乳を注いでいるようだ。

一方アリシアはというと「何でまたくっついて寝ているのじゃ! こやつ確信犯なのじゃ! ええい、おっさん殿も何故嫌がらんのじゃ!」とかなんとか喚いている。

「アリシア、少し声のトーンを下げてくれ。寝ている人と長考している人がいるんだから。あと何故嫌がらないのかと言われても、別に嫌がる理由がないからだよ。将棋を指すのにも支障はないし」

おっさんの言葉を聞いたアリシアは「なら妾にも座る権利があるのじゃ。妾は左側に座るのじゃ!」と言って、強引におっさんが座っているソファの左側に座った。いや、狭いんだけど。

そういえばアリシアは帰ってきてから水分をとっていないんじゃないか? 水分補給は大事だ。意識していないと意外と忘れがちで、足をつったりするからね。

「アリシア、喉乾いてない?」

「なんじゃ、急に」

「帰ってきてから何も飲んでいないようにみえたから。何か飲んだ方が良いよ」

「むう、そうじゃな。でも一度座ってしまうとすぐに立つのが億劫になるのじゃ」

ああ、それはわかるよ。直前まで「あれをやろう」と思っていながらも座っちゃって、立つのが億劫になって「まあ、いいか」になるんだよな~

気持ちが理解できるだけに、もう一度立てとは言えません。

アイテムボックスからスポーツドリンクもどきが入った容器とコップを取りだして、両腕が塞がっている状態なのでサイコキネシスで液体をコップに注ぐ。

「ほれ、とりあえずこれ飲んで。水分補給は大事だよ」

「わかったのじゃ」

スポーツドリンクもどきが注がれたコップをテーブルから手にとって、一気に煽る。

おい、もう少しゆっくり落ち着いて飲みなさい。

「ぷは~生き返ったのじゃ」

やっぱり喉が乾いていたんじゃないか。それにしてもビールじゃないんだから。

「ぱちん」

ノーライフキング先生が長考を終えて一手を指していた。

このところノーライフキング先生の将棋の実力の向上が目覚ましい。おっさんまだ将棋では負けたくないです。ここが踏ん張りどころの局面ですな。おっさん長考タイム。

おっさんが長考している間にアリシアがノーライフキング先生と何やら話しているようだが、今はそれどころではない。盤面に集中だ。

「なんじゃと!」

あー真横で騒ぐな、集中できないでしょうが。

「おっさん殿、将棋など指している場合ではないのじゃ!」

「「将棋などだと!」」

おっさんとノーライフキング先生(実際はうめき声)の声が重なる。真剣勝負に水を差されたおっさんとノーライフキング先生から僅かに威圧が漏れ出す。

「ひ、すまないのじゃ。だから威圧をやめてくれなのじゃ」

本気で涙目になっているアリシアを見て、やりすぎたと思い無意識に出してしまった威圧をおさめる。

「ごめん。つい無意識に威圧だしちゃった。でもわかってくれ、将棋とは真剣勝負なんだよ。そうですよねノーライフキング先生」

「ヴぁヴぁ」

「妾こそすまないのじゃ。今度から気を付けるのじゃ・・・それでじゃがおっさん殿、ヒューマンの部隊が奈落の樹海の入り口にいるらしいではないか。それもかなりの数の部隊なのじゃ」

何故か非常に慌てているアリシア。そんなに慌てることかね。

「らしいね。さっき熊師匠が教えてくれたよ」

盤面から目を離さずに答える。

「きっとセレスと妾への追撃とアレス・ギルバートの捜索部隊なのじゃ」

「だろうね」

「それでどうするのじゃ」

「別にどうもしない」

パチンっとおっさんが駒を指す音だけだ辺りを支配する。

「ヴぁーヴぁ」

「・・・どうもしないとはどういうことじゃ?」

「だから言葉通りの意味だよ。さっきノーライフキング先生にもお話したけれど、ヒューマンの部隊が森に入ってくるか長期滞在しない限りはこちらからアクションを起こすつもりはないよ。だって関わりたくないもん」

「そうか・・・じゃが、アレス・ギルバートクラスのものが部隊を率いていたらどうするのじゃ?」

誰だっけそれ? なんか遠い昔に聞いたことがある単語だな・・・あ、アイツか!

「アリシア最近自分のステータス確認した? 今のアリシアならアキレスケン・ハルバートなんて瞬殺できると思うよ」

「そう言えばこの森に来てからステータスは確認していなかったのじゃ。それとアレス・ギルバートじゃぞ。どれどれなのじゃ・・・」

パチン。ノーライフキング先生が長考を終えて次の一手を指してきた。その手で本当に良いんですか? ではそろそろ終局にしましょう。

パチン。おっさんが長考せずにすぐに指したのが意外だったのだろう、ノーライフキング先生がおっさんの顔を見て硬直した。

「さきに言っておきますけど「待った」はなしですからね」

「ヴぁ!? ヴぁ~」

さきに釘を刺しておかないと、絶対に「待った」と言うからな。

「ななな・・・なんなのじゃこれは!」

リアクションが大きいな。頭の新陳代謝が活発なのかな?

「妾のレベルが滅茶苦茶上がっているのじゃ。ここ何百年間何をしても上がらんかったのに、凄いのじゃ!」

「当たり前です。あなたが教えを乞うた相手が誰であったのか忘れたのですか? 矮小なあなたの遥か高みにいる魔道をおさめた存在なのですよ。その者から直接の指導となれば得られる経験は膨大なものとなります。それに基礎的な身体能力が筋力トレーニングや模擬戦で格段に向上したのです。レベルアップは必然といえるでしょう」

いつの間にか目覚めていたシゼルがレベルアップの理由を、アリシアに教えた。

「おはよう、シゼル。起こしちゃった?」

「おはようございます、ご主人様。近くでこれだけ騒がれれば嫌でも目が覚めます」

あのさ、目が覚めたと言いつつなんでおっさんに寄りかかって肩に頭を乗せたままなの?

「うむ、確かにその通りじゃな。長い間妾よりレベルが上の相手に出会うこともなく、魔法技術の向上訓練もサボっておったからな。筋力トレーニングも幼い頃に少しやって以来じゃった。この森に来てからの経験は妾の長い人生で得られた経験を遥かに上回るものじゃったしな。レベルアップも納得じゃ」

シゼルにレベルアップの要因を説明されて納得しているアリシア。

「ところでご主人様、アキレスケン・ハルバートとは誰のことですか?」

そんなところから起きてたの? じゃあさっきまで寝たふりしてたのかな? 

「アレス・ギルバートじゃ! それとなんで起きたのにまだベッタリとくっついておるのじゃ! 離れるのじゃ!」

そういうアリシアも起きてるのに、おっさんにくっついているよね。その理論だと君もおっさんから離れるべきなのでは?

「アキレスケン・ハルバートって言うのは、アリシア達を捕縛しようとしていたヒューマンの偉そうな変態のことだよ」

そう変態だ。この世界でのおっさんのヒューマンへの第一印象を最悪にした男だ。御愁傷様ですヒューマンのみなさん。

「そうですか変態ですか。しかしその言動から察するにアキレスケン・ハルバートはもうこの世に存在しないということでしょうか?」

「うん、アリシアとセレスと会話しようとしたら絡んできたから敵認定して処理しちゃった。だからもう二度とアキレスケン・ハルバートに会うことはありません」

もしアンデットとして復活とかしても、絶対に会いたくないな。あ、これフラグじゃないからね。しっかりと火葬したから復活はないです。

「お主らワザとじゃろ。ワザと名前を間違えておるじゃろう。妾が何度訂正しても間違いおってからに!」

「え、何のこと?」

「何のことでしょうか?」

「ムキー! お主ら妾をからかって遊んでおるじゃろう!」

「気づいた? なんかアリシアってからかいがいがあって面白いからさ」

「ご主人様と一緒ですね」

う、なんか真横から微妙に酷いことをサラっと言われた気がする。

「ヴぁ~!」

あ、ノーライフキング先生が投了して後ろに倒れた。ふ、おっさんの勝利だ。

「ありがとうございました。おっさんは夕食の準備に取りかかりますので、席を外しますね」

おっさんと軽く挨拶を交わしたノーライフキング先生は、今度はアリシアと対局するようだ。将棋好きですね。

今日の夕食当番はおっさんなのだが、いつもそれぞれ交代制でアシスタントもしている。

シゼルが今日のアシスタント。

シゼルにメニューを伝えてさっそく調理を開始する。熊師匠をはじめみなさん急用がない限り、基本的におっさん宅で夕食を食べるのでかなりの量を作ります。まあ、余ったらアイテムボックスに保存できるから無駄にはならないからいいけどね。

次々とみなさんが集まってくるなか、今晩の夕食「麻婆豆腐」と「麻婆春雨」、「麻婆茄子」が完成した。

栄養のバランスを考えて付け合わせに「ポテトサラダ」と「中華スープ」をつけた。

もちろん白米はマストです。

「みなさん手を合わせて、いただきます」

「「いただきます」」

美味しく夕食を頂いたのだが、意外だったのが熊師匠とシゼルが甘口の麻婆豆腐を選んで食べていたことだ。もしかして二人とも辛いの苦手なのかな? 今度から注視しておこう。

ちなみにお昼寝三人衆は牛乳を飲んでから、夕食まで遊び疲れて爆睡していました。寝る子は育つ。大きくおなり。


あれから1週間が経った。まだいますよヒューマンの方々。

「ご主人様、しゃくしゃく1週間経ちましたがいかがいたしますか? ぷっ」

「ほんとだね。ヒューマンってしゃくしゃくジュル意外と暇なのかな? あと食料とかどうしているんだろう? ぷっ」

「おそらくじゃがアイテムボックス持ちがいるのじゃろう。ジュルしゃくしゃく長々1週間もいるのはアレス・ギルバートの生死確認じゃろう。ぷっ。妾とセレスの捕縛作戦の件以外にも公にされたら困るしゃくしゃく内容を、知りすぎておったからヒューマンの国のお偉いさんはアレス・ギルバートの現状を知りたいのじゃろう。ぷっ」

「どこの世界でもお偉いさんの理不尽な命令にジュル、下っ端は振り回されるワケだ。ぷっ」

「わーい、セレスのたねがいちばんとおくまでとんだ!」

「わん!」

「わふーん」

「おーい3人とも。美味しく食べてくれるのは嬉しいけど、スイカを食べ過ぎるとお腹を下す可能性があるから程々にね」

「「はーい!。わん!」」

で、お前ら一体何をしてるのかって? スイカを食べながらヒューマンの部隊が、森の入り口付近に長期滞在していることについて話しています。

お昼寝三人衆はスイカの種を飛ばして、その飛距離を競いあっています。

おっさんも昔やったな~お行儀は悪いけど、何事も経験です。

今日は熊師匠、ノーライフキング先生、蟹さんがおっさんの自宅に来てくれています。

お三方も一緒にスイカを食べています。さっきまでスイカ割りをしていたのですが、熊師匠が手刀で見事にスイカを両断していました。その光景を見ていたセレスは「くましゃんすごーい!」と大興奮でした。

「関わりたくはないけど流石に1週間も森の入り口に居座られると、訓練時の気配察知に四六時中引っ掛かってウザくて仕方がない」

ティッシュで口を拭きながら、嫌々感を全面に出す。

「ぐぁぐぅあ?」

「そうですね。観念して様子だけは確認しようと思います。とりあえず千里眼で観察して、現地に行く必要が万が一にでもあれば瞬間移動でちゃちゃっと行って消してきます」

何個目かわからないスイカを種ごと豪快に食べながら、熊師匠が「観念して様子見に行くの?」と聞いてきたので観念したので様子を見てきますとしょんぼりしながら返答する。

「ご主人様ヒューマンを種族ごと、いえいっそこの世界ごと消滅させるのでしたら私もお供しますが?」

「待つのじゃ! 何故偵察から世界を消滅させる話に変わっているのじゃ。冷静になるのじゃ。アレか、奴等がさっさと帰らんからストレスがたまっておるのか?」

シゼルの言動の真意がはかれずに、本気で戸惑うアリシア。またからかわれているだけだって。そうだよね?

「ヴぁヴぁ、ヴぁ」

え、ヒューマン同士で争っているんですか? あの種族はホント何を考えているんでしょうね。またもやおっさんの中のヒューマンへの好感度がゼロ地点を突破したよ。

「これはもう様子を見るまでもなく、放っておけばよいのでは? 勝手に自滅コースの軌道に乗ったワケだし」

「そうですね。下手に関わって生き残りがいた場合、ご主人様が拾ってきてしまう可能性がありますからね」

段ボールに入っている捨て犬とか猫を拾ってくる感じで言うんじゃありません。犬や猫に失礼でしょう!

「じゃが今さら全く様子を見ないも気になるのじゃ」

だよね~様子を見に行くと決めた矢先のこれだからね。

「とりあえず千里眼で状況確認をしよう」

あ、蟹さんそっちのは黄色いスイカです。食べますか? どうぞどうぞ。

千里眼発動!

「あーホントにヒューマン同士で殺し合いしてるよ」

「同族で命の奪い合いとは、愚かな種族ですね」

「どこの種族もこんなもんじゃぞ。それにしてもしっちゃかめっちゃかじゃな」

「ぐぅあ~?」

「なんで1週間一緒だったのに、今日争っているのか?」と熊師匠に聞かれた。うーんなんて説明したものか・・・

「なんていうかですね・・・言葉で説明するのが難しいのですが簡単に言ってしまえば馬鹿なんです」

「ぐぁ?」

「そう馬鹿なんです。だから手を取り合って協力できないんですよ。まあ、放っておきましょう」

熊師匠と話ながら引き続き俯瞰視点でヒューマン同士の争いを高みの見物する。

どうやら表向きの任務しか知らされていない正規軍と、裏情報をしっかり知らされている暗部の戦いのようだ。

戦いはもう終わりつつある。おっさん達が千里眼で様子をみはじめた時点で、戦況は決していた。

おそらく食事に毒でも盛られたのだろう。正規軍の動きが明らかに悪い。

銀と青の甲冑を着た死体が積み上がっている。正規軍の大将を残して他は全滅したようだ。

いや、暗部側に何人か寝返っているのか? それともはじめから裏切っていたのか。

これは最後に残された大将は戦力的にも精神的にもボロ雑巾状態だな。

千里眼で正規軍の大将をズームしてどんな人間か確認する。

どうやら女性のようだ。働く女性は美しい・・・どこかで聞いたことのあるフレーズだな。

見た目は意外と若そうだな。長い紅色の長髪をポニーテイルにしている。耳が少し尖って長いぞ、エルフという種族か? だとしたら何故ヒューマンと一緒にいるんだろう。この女性は赤を基調とした甲冑を着ている。まさに大将の鎧。目立つね。

暗部と一緒にいる若い正規軍の鎧を着た男女に、何やら感情的に叫んでいる。

あーこれは裏切られたパターンの方で確定だな。

大将の彼女も何らかの状態異常にかかっているようだ。顔色が悪く額に玉のような汗がうかんでいる。

失意の彼女が男達に組敷かれ、鎧を剥ぎ取られる。はあ・・またこのパターンかよ。

ホントこの世界のヒューマンの男どもは性欲の固まりなのか? 娼館とかそういう感じの場所はないのだろうか。

今度は服を剥ぎ取られボリュームのある乳房があらわにされる。デカイ・・・着痩せするタイプか!?

裏切った男の方が諦めてしまった彼女の前に立ち、ベルトをゆるめはじめる。

流石に不憫だし何より見ていて非常に不快だ。行くか。

と、おっさんが決意した瞬間に三方向から殺気を感じた。え? 何。

殺気の発生源を確認するとシゼル、アリシア、小雪の女性陣3人でした。怖い((( ;゜Д゜)))

「私に決まった性別はないのですが、今の性別が女性だからでしょうか率直に不快です」

「妾も胸くそが悪いのじゃ。あやつらは女の敵なのじゃ」

「わん! ガルル・・・」

うちの女性陣が大変お怒りですよ。虎鉄がおっさんの後ろに隠れてるよ。虎鉄め、おっさんを盾にしたな。

「ご主人様、今回は手を出しましょう。皆殺しです」

「皆殺しなのじゃ」

「ワオーン!」

これおっさんに拒否権ないでしょう。どっみち行くつもりだったから、別に構わないけど。

「わかったよ、行こう。だからその駄々漏れの殺気を抑えなさい」

「みんなどこかにおでかけなの?」

こちらにやってきたセレスが首を可愛らしくかしげて聞いてきた。

「女の敵を始末しにいくのですよ」

「女の敵を始末なのじゃ」

「わん!」

「おんなのてきなの?」

「「そうです。そうなのじゃ。わん!」」

「そうなの・・・じゃあしまつなの!」

セレスまで物騒なことを口走りはじめたよ。幼女に怖いことを吹き込まないの。

「というワケでセレス、おっさん達はほんの少し出かけてくるからちょっと待っててね」

セレスの頭を撫で撫でして、ほんの少し留守にすることを伝える。

「わかったの」

やっぱり少し寂しそうな表情をするセレス。流石に血なまぐさい戦場には連れていけないからな。

突如セレスの体が空中に浮いたかと思うと、熊師匠の太ももの上に下ろされた。

そして熊師匠の大きな手でセレスの背中をサスサスした。

「ふえ? くましゃんくすぐったいの」

蟹さんが自らの鋏でセレスに食べやすいサイズにカットした、黄色いスイカを勧めている。

かと思えばノーライフキング先生がセレスの目の前で、スイカをサイコキネシスでお手玉のように回しはじめた。

「かにしゃんありがとうなのです。わーがいこつしゃんしゅごい!」

セレスが目をキラキラさせて、ノーライフキング先生を見ている。

流石は猛者のみなさん。気遣いができるジェントルマン(?)の集まり。すぐにセレスの笑顔を取り戻したよ。

女性陣はみな微笑ましい表情で、その様子を見守っている。

これなら出掛けても大丈夫そうだ。熊師匠、ノーライフキング先生、蟹さんありがとうございます。

「それじゃ、少し出掛けてくるね」

「いってらっしゃいなの~」

セレスが元気よく手を振って、見送ってくれる。みなさんにアイコンタクトをして森の入り口に瞬間移動する。

さて、うちの女性陣による殺戮のはじまりだ。

今回はおっさんと虎鉄は傍観者かな・・・


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