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今朝は日課のジャージ姿での筋トレではなく、デュラちゃんとの模擬戦のためフル装備だ。

おっさんが模擬戦を行うために広場に辿り着くと、すでにギャラリー達が大勢陣取っていた。

いつもより観客が多いな。みんなおっさんがどれくらい成長したか気になるのだ。

そんなに期待されてもおっさん期待に応えられるかわからんよ。

もうお互いにウォーミングアップは済ませているので、いつでも始められる。

しかしおっさん何か重要なことを忘れている気がするんだよね。何だっけ?

この年齢でもう物忘れが酷くなったかな。熟考。 

あ、思い出した。普段使っている武器の新調だ。おっさんの急激なレベルアップに武器の耐久性がついてこれずに、ガタがきてるんだよな。シゼルにシゴかれている間は騙し騙し使っていたけど、流石にもう限界かな。

デュラちゃんとの模擬戦は何とかもちそうだけど、終わったらアイテムクリエイションと錬金術に細工で新調しよう。

幸いにもシゼルに追い回された空間で、貴重な鉱物資源や神木を大量に入手できたことだし。

忘れていたことを思い出してスッキリしたところで、デュラちゃんに向かい合う。

ギャラリーに被害が及ばないように、ノーライフキング先生が強力な結界を広域ではってくれている。

ちなみにギャラリーの中にはシゼルの姿もある。これはちゃんと成長した証をみんなに見せないと後が怖いな。

お互いに礼をして模擬戦開始

「カーン!」

また誰かがゴングを鳴らしやがった。そのうちラウンドガールと実況解説者とか出てくるんじゃないだろうな。

デュラちゃんが軽く愛剣を一振りする。すると幾重もの魔力を帯びた斬撃の真空波が発生し、おっさんに向かって飛来してくる。

未来視と未来視の魔眼を同時に発動して、直撃コースの斬撃を確認。飛来する斬撃に停止眼を発動。

実力差がかなりあるから流石に完全に停止することは出来ないが速度が若干落ちる。すかさず石化の魔眼で斬撃を石化させて拳で砕く。

土石魔法と水流魔法でデュラちゃんの足元に即席の底無し沼を作る。

デュラちゃんは近くの枝の上に回避しようとするが、そうはさせない。

樹木魔法で極太の蔦植物を作り出して、デュラちゃんの両足首に巻き付かせる。デュラちゃんが足に絡み付いている蔦を切ろうとした隙に、重力魔法でデュラちゃんに過重を加えつつ風雷魔法でダウンバーストを発生させて即席底無し沼に叩き落とす。

デュラちゃんを底無し沼に叩き落とし、土石魔法で硬度が高い鉱物を底無し沼の表層に集め高質化させて蓋をした。ふ、デュラちゃんを埋めてやったぜ。

周囲の気配を注意深く探る。嫌な予感がしたので後方に右足を下げて右半身を後ろに引く。直後先程までおっさんが立っていた地面が「スパッ」と両断されその中からデュラちゃん登場しつつ、突きをおっさんの顔面目掛けて放ってきた。

第六感スキルのおかげもあって一瞬先に攻撃を回避していたとはいえ、右頬を浅く切り裂かれた。

「さきに回避してこれか。相変わらず凄まじい剣筋だな」

デュラちゃんは常に自身の首を左脇に抱えているため、剣で攻撃する際は常に右手なので攻撃の軌道は読みやすい。

突きを回避したおっさんは左手にジャマダハルを装備した状態で、デュラちゃんの右脇腹にボディブローを繰り出す。

以前では考えられないことにデュラちゃんの鎧にほんの少し傷をつけることができたが、代償としてガタがきていたジャマダハルは完全に粉々に砕け散った。

デュラちゃんは突きから水平の斬撃に行動をシフトして、おっさんの首を切断しにくる。

上体をマ○リックスよろしく反らして斬撃を回避する。デュラちゃんの斬撃は防御しても問答無用で切断

されるので、回避が基本である。

反らした上体の勢いを利用してバク転をして近接戦闘の間合いから逃れる。

しかし剣を振り抜き終わったデュラちゃんが「逃がさん!」とばかりに一気に距離を詰めてくる。

おっさんまでの距離がちょうど半分くらいに縮まったところで、小細工発動。

バク転をした際に両手をついた場所に2つの設置魔法を準備しておいたのだ。バレないように偽装も施してあるよ。

1つ目はよく多用する爆炎魔法。今回は設置する際に地雷をイメージしたので、直下からの爆発によるダメージ重視なんだが・・・まあ、おそらくダメージは期待できないだろう。デュラちゃんの着ている鎧はそんなにやわじゃない。なのどちらかというと目眩まし重視。

2つ目は次元魔法。目的としてはとにかく剣の間合いから一旦完全に逃れる。そのために瞬間移動の応用版の物体瞬間移動で、デュラちゃんを初期位置の底無し沼まで強制的に瞬間移動させる。

デュラちゃんが設置魔法の真上にきたので、まず爆炎魔法を発動して足を止め視界を奪う予定・・・だったのだがあろうことかデュラちゃんは地雷的なものを踏んだことにすら気がついていない。そんなに

ダメージなかったの? これは予想外だわ。模擬戦とはいえ作戦を考えて実行しても、中々思い通りにいかないもんだ。

焦りながらも次元魔法を発動してなんとか効果範囲内ギリギリでデュラちゃんを補足して、初期位置に強制的に瞬間移動させることに成功した。いや~ホントに焦った。背中に嫌な汗かいたわ。

初期位置に戻されたデュラちゃんは自身に何が起こったのかをすぐに理解したうえで、おっさんに愛剣の切っ先を向けて「やるじゃん!」て感じに誉めてくれた。首から出ているオーラの色も心なしか楽しそうな色をしている。

さて小手先だけの戦術ではダメージも望めないし、おっさんの成長具合を示せない。ふう・・・やるか。

おっさんの目つきが変わったことに気づいたデュラちゃんが、おっさんに向けていた切っ先を下ろして中段に近い構えをする。

「魔装展開」

おっさんの全身が蒼白い光に包まれる。激しい光が周囲のみんなの視界を一時的に奪う。

やがて光が収まるとそこには・・・

「魔装弐式・蒼天雪羅」

デュラちゃんをはじめ、ギャラリー達が驚いていた。みんなおそらく「熾天阿修羅」を使うと想像したのだろう。しかし光が収まり現れたおっさん姿はみんなの予想とは異なっていた。この姿がシゴかれるまえにシゼルから出された課題の1つ目の答えだ。

より人間に近いフォルム。おっさん自身が己の体の一部として自由自在に使いこなせる魔装。

「熾天阿修羅」のように神話などの空想に近い存在をモチーフに創造されたものとは異なり、「蒼天雪羅」は機械的な要素が強くなり、洋風な騎士甲冑を軽量化したようなもので頭まで覆うフルフェイスが特徴。

「蒼天雪羅」のコンセプトは人型で高速戦闘。ちなみに全体的なカラーリングは蒼系統。

武装は右手には長銃剣「白姫」。ライフルモードによる高出力精密射撃とブレードモードによる剣術による近接戦。

左手は取り回しの良いオートマチック剣銃「雪姫」。連射重視の牽制がメインではあるが小型の短剣を装備してありナイフでのような近接格闘戦が可能。

弾装には各属性の魔法の補助の薬莢が入っている。詠唱破棄、連射性能向上、安定性向上、威力向上、精密射撃を発射時に付与。薬莢は排出せずに代わりに魔力が煙のように排出される。

両腕には防御及びパリィ用の鱗のようなものが数十枚重なっている籠手を装備している。その間からは絶えずスカイブルーの帯のような粒子が出ている。この粒子はパリィの際に攻撃の軌道を変え、また帯が集束、重なり薄いマントのようになり盾として使用できる。両膝と両肘、腰の両脇にも同様の装備がある。

背中の中心には背ビレのような機動翼。

肩甲骨の辺りにはメイン推進力の小型スラスターが2つ。

背ビレと小型スラスターはおっさん魔力と妖力を放出して、推進力にしている。

おっさんの新たな魔装を見たデュラちゃんは何故か喜んでいた。あとで理由を聞いたところ「亜種とはいえ剣を使っていたのが嬉しかった」そうだ。戦闘中でも剣への愛がブレないデュラちゃんである。

背部のスラスターから漏れる蒼い光の粒子の量が増加し始める。「飛翔」スキルを習得したおかで空中での移動がよりスムーズになった。

デュラちゃんもおっさんと同じ高さに浮かんでくる。

背部のスラスターの出力を一気にはねあげて距離を詰め、右手の「白姫」で切りかかる。

どうやらおっさんの移動速度がデュラちゃんの予想を上回ったようで、ほんの一瞬動きが遅れる。

おっさんの斬撃が鎧に当たる寸前で愛剣で受け止めるデュラちゃん。また右脇がガラ空きだよ。

さっきジャマダハルでボディブローを放った箇所に左手の「雪姫」を押し当て、ゼロ距離で風雷魔法で貫通力を高めた雷弾を連射する。

この攻撃は流石のデュラちゃんも嫌だったようで、剣圧でおっさんを吹き飛ばし少し距離をとる。

吹き飛ばされるが背部のスラスターの出力を調節して衝撃を殺し、左手の「雪姫」で牽制射撃を行う。

デュラちゃんは高速で飛来する雷弾を下降しながらヒラヒラとかわして地面に着地しようとする。

左手の「雪姫」を連射している間に、右手の「白姫」をブレードモードからライフルモードに変形させる。

デュラちゃんが着地したのを見計らって、右手の「白姫」から爆炎魔法と光学魔法で作った熱線を極太のレーザー状にして放つ。

デュラちゃんは愛剣を高速で回転させて、極太の熱線レーザーを受け止める。

数秒後レーザー照射が終わると無傷のデュラちゃんと、ドロドロに溶けた地面が辺りに広がっていた。

おっさんが次の戦術を考えていると、突如デュラちゃんが愛剣を地面に突き刺した。

一体どうしたのだろう?

と思った次の瞬間、デュラちゃんから凄まじい剣気、魔力、妖力が発せられた。

何が起こったのかとおっさんが戸惑っているとデュラちゃんに変化が現れはじめた。

全身が一回り大きくなり、着ている鎧と愛剣が見るからに強力で禍々しい姿へと変化していった。

これ明らかにパワーアップしてるよね。ただでさえ現状でかなりのレベル、実力差があるのにパワーアップしたよあの人。鬼畜か!

おっさんが内心で悪態をついている間に、デュラちゃんのパワーアップは完了したようだ。

何故パワーアップの最中に攻撃しなかったのかって? 口で説明するのは難しいのだが、何と言うか様式美的な感覚というかあそこで攻撃するのは何か違うのだ。おっさん世代に近い人ならわかってくれるはず。

パワーアップが完了したデュラちゃんが左手で抱えていた頭部を両手で持つと、オーラが出ている首とドッキングした・・・え!?

「ええええ~!?」

戦闘中にも関わらずおっさんは思わず大声を出して反応してしまった。だって首と頭がくっついたんだよ! いやまあ、それが一般的な生物の正しい姿なんだけどデュラちゃんはデュラハンだからね。

おっさんの認識だとデュラハン=首なし騎士のイメージなんだけど、この世界では違うのかな?

おっさんが慌てふためいている姿を見たデュラちゃんが「どうかしたの?」、という感じに可愛らしく小首を傾げている。

戦闘中に相手から視線を外すのは致命的な行為だとわかっていながらも、 あまりに衝撃的な出来事だったので助けを求めるようにギャラリーの方に視線を向ける。

熊師匠、ノーライフキング先生、蜘蛛お嬢達は「何をそんなに驚いているの?」というポケーっとした表情をしている。

アレ? おっさんがおかしいの? デュラハンってこういう感じなの??

念のために虎鉄と小雪の方も見てみると、お座りをしているが興奮しているのだろう、尻尾をブンブン振っていて時おり「アオーン」と遠吠えをあげている。うーん参考にならない。

次にシゼルの方を見てみると、相変わらずの無表情でまったく参考になりませんでした。

ちなみにアリシアは顎が外れそうなくらい大口を開けて驚いていた。よし、おっさんに似た反応をした人発見。しかし何に驚いているのかわからないので、これも参考にならない。

セレスは「わあ~おくびとあたまがくっついた! ふしぎ~♪」だそうです。

おっさんは思考を放棄した。

最終的にデュラちゃんに視線を戻すと、右手には禍々しく進化した愛剣。左手には周りに鋭利な小型の刃物が多数ついたラウンドシールドのような盾を装備している。

おっさんとフルフェイスごしに視線が交錯したとき、デュラちゃん本人が答えをくれた。

「細かいことはきにしない♪」だそうです。はい、そうします。

答えを得たおっさんにデュラちゃんが続けて一言(?)。

「じゃあ、いくよ」

そう言った(?)瞬間 、視界からデュラちゃんの姿が消えた。

これまでにない嫌な予感を感じて即座に未来視と未来視の魔眼を発動すると、デュラちゃんがおっさんに愛剣を振り下ろす姿が頭に浮かぶ。

とっさに両腕の籠手から出ている光の帯を集束してマントのような盾を作り、頭の上で両腕をクロスして防御姿勢をとる。 直後に防御姿勢をとった腕に凄まじい衝撃と重さが襲ってくる。

背部のスラスターの出力を全開にしてもパワーで押しきられそうになる。一応攻撃と防御の瞬間に「剛力」スキルを発動してパワー関係も上げているんだけどな。それでもこれか・・・しんど。

おっさんが防御で精一杯の隙にデュラちゃんの左手によるシールドバッシュが、おっさんの防御している右腕に炸裂する。防御ごと吹き飛ばされたのが幸いして、振り抜かれた剣を半身を捻ることで何とか回避することができた。が、体勢が崩れた状態のうえ右腕がシールドバッシュのダメージで痺れて、思うように動かない。

左手の「雪姫」で雷弾と火炎弾を連射して少しでも体勢を整える時間を稼ぐ。

しかし牽制射撃などお構いなしに前方に盾を構えつつ、デュラちゃんがおっさんに突っ込んでタックルをかましてくる。タックルの勢いそのままにデュラちゃんはおっさんを地面に叩きつける。

凄まじい衝撃がおっさんの全身を襲う。

「かはっ!」

衝撃で呼吸困難になる。しかしながら、ここでようやく右腕が動くようになった。

衝撃で舞った粉塵が晴れると、横たわるおっさんにまたがり上段から今まさに 剣を振り下ろそうとしているデュラちゃんが視界にうつる。

回避は間に合わないので左手の「雪姫」を離して、右手の「白姫」を両手持ちでデュラちゃんの一撃に対処する。剣と剣がぶつかり合い火花が散る。

受け止めることには成功したが、やはりパワーで負けている。徐々にデュラちゃんの剣がおっさんの体に近づいてくる。

このままじゃ結局切られるのは時間の問題だな。どうする・・・

デュラちゃんの剣が地面を両断する。しかしそこにおっさんの姿はない。

とっさに瞬間移動でデュラちゃんの後方の空中に逃げた。

瞬間移動した先のおっさんの眼前に、何故か先程までデュラちゃんが左腕に装備していたラウンドシールドが迫っていた。下方を見るとデュラちゃんが左腕を振り抜いた体勢でいるのが確認できた。

どうやらおっさんの瞬間移動先を先読みされたらしい。おっさんの咄嗟の時の回避癖を完全に読まれているな。

高速で回転飛来するラウンドシールドを回避出来ずに、顔面に直撃をもらってしまう。

魔装の上からとはいえノーガードの状態で顔面に直撃したため、フルフェイスの頭部の魔装が一部砕け、衝撃で意識も朦朧となる。

おっさん墜落中。

墜落先に向けて剣を担いだデュラちゃんが止めを刺しに向かってくる。

「はあ・・・おっさんにしては頑張った方かな。もういいかな、諦めて」

落下しながら自身の敗北を認めかけたとき、声が聞こえた。

「諦めるのか? 本当にその結末で満足か?」

そう耳元で声が聞こえた気がした。

無意識に体が動き地面に激突前に体勢を立て直して着地する。間近にデュラちゃんが迫ってくるのが見える。そして上段から愛剣を振り下ろしてくる。その一撃をおっさんは六本の腕に持った武器で防ぐ。

背中の三対六翼の翼をはためかせ突風を発生させて、デュラちゃんを吹き飛ばす。

はためかせた翼から細く鋭利な針状になった無数の羽が、吹き飛ばしたデュラちゃんを追撃する。

「魔装換装 熾天阿修羅」

2本の腕で防げないなら、腕の数を増やせばいい。

装備している武器を全てアイテムボックスに収納して、六本の腕それぞれで異なる属性の魔法をデュラちゃんめがけて撃ちまくる。

正確な狙いなどせずに、とにかく乱射する。

無数の針状の羽を盾でガードしていたデュラちゃんは、流石に魔法の量が量なのでガードはせずに回避行動をとり始めた。

ただ魔法を乱射しているだけではデュラちゃんに命中することは決してありえない。

正面の頭と両目で未来視と未来視の魔眼を発動する。不可は大きいが可能な限りデュラちゃんの動きと、自分の魔法が命中する未来を見る。

同時に左の頭と両目でサイコキネシスと停止眼を使用する。停止眼で放った魔法を止めて緩急をつけて少しでも回避しづらくする。そしてデュラちゃんが回避した瞬間にサイコキネシスで無理矢理魔法の軌道を変えて、命中させる。

右の頭と両目でパイロキネシスと石化の魔眼を使用する。パイロキネシスで予想した回避先やデュラちゃん自身を燃やし回避を少しでも妨害する。また効果は薄いが石化の魔眼をデュラちゃんに常時かけて、少しでも動きを鈍らせる。

6つの目の視界は常に共有されているので、どこに回避されても姿は見失うことはない。

以前よりは「熾天阿修羅」を上手く使えるようになったが、まだ完璧とは言えない。

しかし今はこの攻撃スタイルが有効な気がするので、「熾天阿修羅」を使用する。

多くの回避妨害に加えて停止眼で魔法に緩急はつくわ回避寸前で魔法止まるわ、追尾魔法でもないのに回避してもサイコキネシスで予期せぬ軌道で魔法が襲ってくるので、流石のデュラちゃんもウザそうだ。

このまま続けていてもダメージは見込めないし、魔力消費も多いのでおっさんのダメージが回復するまでにしよう。

ダメージがかなり回復したので最後に威力強めの魔法をそれぞれの属性で放ち、魔装を「蒼天雪羅」に換装する。

おっさんからの魔法の乱射攻撃が止み、デュラちゃんが空中で静止する。心なしかホッとしているように見える。余程さっきの魔法攻撃がウザかったのかな?

「仕切り直しだ~!」みたいなノリで、デュラちゃんがおっさんに愛剣の切っ先を向ける。

「仕切り直しね。何か楽しそうだなデュラちゃん」

仕切り直すのは良いがさっきの魔法乱射のお陰でかなり魔力を消費した。それに普通にやりあってもさっきと同じように圧倒される。やるなら短期決戦だ。

「蒼天雪羅 烈式影雪」

おっさんの全身が蒼く淡い光に包まれる。

光が収まると「蒼天雪羅」の姿が変化していた。

背部の小型スラスターは中型クラスのサイズの大きさになり、また腰より少し上の部分に小型のスラスターが2つ増設された。

背ビレのような機動翼は上下に開き、その間から魔力の粒子が漏れ出している。

腕の籠手は鱗にように重なりあった装甲の間が開き、より多くの魔力粒子を放出できるようになった。

右手の「白姫」はクレイモアクラスの細身の大剣になり、より剣らしいフォルムになった。

左手の「雪姫」も剣の部分が拡張され、より近接戦闘に重点をおくフォルムになった。

太もも付近の帯状の魔力を放出していた下半身のダメージ軽減用の装備も形状が変化して、よりスラスターとしての役割が強くなった。

そしてフルフェイスの頭部に一本角のような鋭利なものができ、頭突きの威力が向上した(?)

脚部はデザインがより鋭利なものになり、太ももの裏とふくらはぎの部分に新たに魔力粒子の放出口ができた。

おっさんの魔装の変化を見たデュラちゃんは、かなり喜んでいた。たぶんこの魔装がより近接戦闘仕様になったから、剣での戦闘頻度が増すことにウキウキしているのだろう。

それに対しておっさんはというと、全く余裕がない状態です。

「蒼天雪羅 烈式影雪」は超速戦闘を行うためにスラスターをはじめとする各部の放出口から、より多くの魔力及び妖力を常に放出している。そのため「蒼天雪羅」の状態に比べて消耗が激しい。

また超速戦闘の負荷におっさんの体がまだついていかずに、しかも「超速再生」、「再生」、「復活」などの回復系のスキルの治癒速度を上回るダメージが全身を襲う。そのため全力で戦えるのは3分が限度。おっさんはどこぞのヒーローか。

そして最大の難点はその超速度におっさんの認識がついていけないため、せっかく相手が反応出来ない速度で接近してもおっさん自身も「相手に接近した」ということを脳で認識するまで数秒かかってしまうことだ。

ついでに言うと視覚も速度に完全には追い付いていない。「五感強化」、「超反応」、「第六感」を併用して無理矢理なんとかしている状態だ。故に常に「未来視」と「未来視の魔眼」を併用して、先の未来のビジョンを当てにして行動している。

「さて、時間も余裕もないし・・・行くか」

「瞬神」スキルを併用してさらに速度の向上をはかる。背部の5つのスラスターと各部の魔力放出口から爆発的に魔力と妖力を放出して、初速から最大加速で文字通り一瞬で間合いを詰める。

「未来視」と「未来視の魔眼」を使用して、未来のビジョンを見つつ攻撃にうつる。

おっさんの急激な速度向上に咄嗟に対応できずに、ほんの一瞬だが反応が遅れるデュラちゃん。

右手の「白姫」を振りかぶり上段からデュラちゃん目掛けて振り下ろす。

その際に籠手と「白姫」の両刃のうち相手の当たらない刀身の間から、瞬間的に魔力を爆発させるように放出して今のおっさんのレベルでは出せない威力と速度の斬撃を放つ。

しかしその反動と負荷に耐えきれずに腕がすぐに悲鳴をあげ始める。

ラウンドシールドでおっさんの斬撃を受けるデュラちゃんだが、予想を上回る速度と威力に驚き体捌きに若干のズレが生じる。

周囲に今まで以上の衝撃波が生じる。

初撃が防がれたので左手の「雪姫」ですかさず追撃の横薙ぎを放つ。

しかしおっさんの動きを読んでいたデュラちゃんに、対応され愛剣で左肘辺りから切断されてしまう。

激痛がはしりおっさんの左腕が空中に舞う。「痛覚遮断」スキルを発動し「雪姫」をアイテムボックスに回収する。

太ももの裏とふくらはぎの魔力放出口から爆発的に魔力を放出して左足で蹴りを放ち、落下し始めた自身の左腕をデュラちゃんに蹴りつける。

再び体が負荷に耐え切れずに悲鳴をあげる。

今までのおっさんでは考えられない行動に、デュラちゃんが驚愕の表情(?)をする。

腕を蹴った際に接触爆発系の魔法を付与していたため、デュラちゃんの腹部に接触した瞬間に大爆発を起こす。

まだこれしか動いてないのに、既に体への負荷が回復関係のスキルを上回ってしまい切断された左腕の再生がされていない。

でもそんなことは気にしてられない。長くは持ちそうにないので次で決める。

後方に少し下がり最後の一撃の準備をする。

背部の5つのスラスターと各部の魔力放出口から、これまで以上の魔力を爆発的に放出して超加速する。右手の籠手と「白姫」の鍔からも魔力を放出して、その勢いを「白姫」の突きにのせて放つ。

爆煙をラウンドシールドを振ることで吹き飛ばし、開けた視界に間近に迫るおっさんを確認したデュラちゃんは慌てることなく迎撃の突きを放つ。

両者の突きが激突するかと思われたが、結果としてそうはならなかった。

「そこまでです」

いつの間にか現れたシゼルがおっさんとデュラちゃんの突きを、左右の親指と人差し指で摘まんで止めている。

2本の指で摘ままれているだけなのに、微動だに出来ない。

「これは模擬戦であって殺し合いではありませんよ。お忘れですか?」

シゼルの言葉でおっさんが戦いにのめり込み、熱くなっていたことを自覚した。どうやらそれはデュラちゃんも同じだったようで「シュンっ」としている。

「ご主人様、その魔装は極力使用しないように言ったはずですが。ご自身にかかる負荷に耐え切れずに回復が間に合っていませんね? 回復しますので魔装を解いてください」

強制的に模擬戦を中断させて公衆の面前で軽いお説教・・・おっさんゾクゾクしちゃう。でもおっさんはマゾじゃないよ。

魔装を解除するとギャラリーから悲鳴があがった。何故かって? おっさんの全身が血塗れだったからです。目の前のデュラちゃんもあたふたしている。

右腕と蹴りを放った左足からは骨が飛び出ているし、目とか鼻とか口からも出血している。

魔装を解いて緊張の糸も解けてしまったのか、全身から力が抜けて意識が朦朧とし始める。

気が抜けたかな? そう思った瞬間からシゼルとデュラちゃんがやけに上の方にいるように見える。

何でだ? あ、おっさんが下に落ちていってるからか。

どうやら知らないうちに「飛翔」スキルも解けていたらしい。あ~地面が近づいてくる。

そんなことを思っていると、衝撃と共に落下が中断された。

朦朧とした意識で状況を確認すると・・・なんということでしょう、シゼルにいわゆる「お姫様抱っこ」されてました。キャー恥ずかしい! 30歳過ぎてメイドさんに「お姫様抱っこ」されるおっさん。もうお嫁に行けない。

全身の痛みがなくなったことに気づき自身の体を見ると、飛び出ていた骨は元通りになり左腕も生えていた。どうやら「お姫様抱っこ」した際にシゼルが回復してくれたようだ。相変わらず仕事が早い。

「ゴング係のウサちゃんズの方、終了のゴングを鳴らしてください。模擬戦は終了です。ご主人様はこれ以上戦闘続行は不可能ですので」

有無を言わせずシゼルがそう言うと。「カンカンカン!」と終了のゴングが高らかに鳴らされた。

とりあえず成長の成果は見せられたかな? というかゴングを作ったのシゼルだったのかよ。何してんのホント。

終了のゴングが鳴らされると、両者の健闘を称えるかのように拍手と歓声が沸き起こる。

その喧騒の中、おっさんの意識は徐々に闇に落ちていく。

「まったく貴様はスローライフだ日々平穏だのと言いながら、ときたま戦闘中に別人のように己を顧みない戦闘方法をとるな」

おっさんにしか聞こえない声量でシゼルが呟く。今はそっちのキャラなんですね。

「まだ多くの問題点と改善点はあるが、まあひとまず・・・よく頑張りましたご主人様」

朦朧とする意識の中、今までで一番優しく穏やかな声音でおっさんを誉めたシゼルの顔を見ると微かに微笑んでいた。

そんなシゼルの出会ってから初めて見る優しい笑顔を心に焼きつけて、最近になって親友に昇華した闇へと意識を預けた。 


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