↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/52

25

シゼル特製のどこだかドアを通り抜けるとそこは、高台にある古びた遺跡のような場所だった。

ようやく首根っこを解放されたおっさんが高台から見えた景色は、バラエティーにとんでいた。

遠くには雪化粧をした山々に熱帯雨林のような密林、砂漠に氷河地帯。大海原に大草原、人が直前まで住んでいたかのような町。はたまた長い間放置し風化した高層ビル群、空があるはずの場所には白黒の床と不自然な角度の無数の階段の数々。なんとまあ、独特な空間ですな。おっさん反応に困ります。

景色を眺めていると、シゼルがおっさんの隣に立ち話しかけてきた。

「面白い空間だろう? 貴様を鍛える上で様々な環境を体験させるのも重要なことだからな。故に様々な場所を用意した」

シゼルの口調がメイド時のものから、召喚直後の口調に戻っていた。あ、この空間ではもとのキャラでいくんですね。

「皆に1日で戻ると伝えたが、たった1日で我の退屈を解消するのは不可能だろう」

おい、最早おっさんを鍛えるという目的がなくなっているじゃないか! 100パーセント私利私欲じゃねーか! 少しはオブラートに包もうよ。

おっさんが呆れた目でシゼルを見ていると、それに気づいたシゼルがこちらに振り向いた。

「案ずるな、貴様を鍛えることを忘れているワケではない。ただの優先度の問題だ」

そうですか。おっさんを鍛えることの優先度はシゼルの中ではかなり低そうですね。とほほ。

「伝えてなかったが、この空間は現実世界とは時間の流れが異なっている。 現実世界での1時間がこの世界では約1日になる。わかるか? 我は皆に「1日で戻る」と伝えたが、我と貴様にとっては24日になる」

おっさん、もう絶望感に馴れつつあるよ。しかも何、その「精○と○の部屋」の下位互換。そもそもどこだかドアを通る前にその説明してよ。心の準備時間が足りないよ。

おっさんが口に出さずにそんなことを思っていると、突如足を踏まれた。痛い・・・これは粉砕骨折レベルのダメージだよ。が、即座に超速再生スキルで回復する。

「ねえ、なんでおっさんの足を踏んだのよ?」

「なに、何となく失礼なことを言われたような気がしてな」

酷い。もう少しおっさんを労って下さい。地味に傷つきやすいんだから。

「さて、これから我の退屈しのぎ兼おっさん強化計画を始めめるのだが・・・その前に」

シゼルがおっさんに手をかざすと、おっさんの足元に見たことない複雑な魔方陣が浮かび上がる。

数秒後、魔方陣が消えるとおっさんの体に異変が現れる。

体全体が重くなり、体が動かしづらい。まるでどこぞの筋力増強ギブスをつけられたようだ。それに魔力、妖力、剛力などの力が練りづらい。何より呼吸もしづらい。一体何なんだこれは?

「シゼル、おっさんに一体何をしたんだ?」

流石に物凄く不安を感じたので、シゼルを問い詰める。

「案ずるな。それは貴様の能力を意図的に押さえる抑制魔法が作用しているだけだ。その方が短い時間で効率的に貴様を鍛えられる」

そうなの? でも、現状でかなりおっさんキツいんですけど。

「まずはその状態に馴れろ。そうだな・・・その状態で日常生活が普通におくれるくらいに馴れろ。それだけでも貴様の全能力が著しく向上する」

マジですか。日常生活をおくっているだけで強くなれるなんて、どんだけ強い抑制魔法をおっさんにかけたんだよ。

「我が暇潰しのついでに貴様を鍛えるワケだが、ただ我に殺されるだけでは訓練にならん。故に貴様にいくつかの課題を与えるから、訓練中にその課題をこなしてみせろ」

おっさんの理解が色々と追い付かないうちに話がどんどん進んでいくよ。

「まず1つ目の課題だが、貴様の魔装「熾天阿修羅」だったか? その魔装の稼働時間を延長させろ。もしくは稼働時間を無くせ。時間切れで使用不可能なうえ使用後は消耗して使い物にならないなど、戦場では論外だ。それに貴様は魔装の能力をほぼ発揮できていない。貴様自身も薄々感じているだろう?」

「それは、まあ・・・」

いきなり真面目な話になった挙げ句に、おっさんが実は気がついていたけど目を背けていた問題に「ズバッ」と切り込んできた。ああ、また胃が痛くなってきたよ。

「貴様が何故あのような姿を選択したかはわからんが、人がいかに神と呼ばれる存在を模倣しても無駄だ。所詮人は人だ。背中に羽が生えようが、腕が六本になろうが、頭が3つになろうが本来自らの体にない器官だ、使いこなせるワケがない」

はい、おっしゃる通りです。おっさん、実際に魔装を使いこなせていません。

「故にもう2つ目の課題だ。人型に近い魔装を作れ。貴様が完全に制御でき使いこなせる魔装をな。最後に3つ目だが貴様が今会得している各スキルの使用方法をもっと掘り下げろ。基本的な使用方法は出来ているようだが、もっと応用をきかせろ。現状では宝の持ち腐れだぞ」

随分と現実的な課題だ。言っていることは確かに利にかなっているのだが、おっさんのスローライフがどんどん遠ざかっていく。気のせいだろうか?

「せて、説明も済んだことだしボチボチ始めるとするか」

そう宣言するとシゼルは何処からともなく、三ツ又の槍を取り出した。そう認識した瞬間、おっさんの意識は闇に沈んだ。意識を失っていた時間はほんの数秒だと思うのだが、意識が戻るとシゼルが三ツ又の槍を手でクルクルと回していた。

「意識を取り戻したか。何が起こったか理解できていないという顔だな。故に我が説明してやろう。我がこの槍で貴様の頭部を突いて吹き飛ばしたのだ。どうだ? 理解できたか?」

クルクル回していた三ツ又の槍を握り、おっさんの方に向ける。

これまでに何度か頭部を吹き飛ばされたことがあるから、意識を失った理由は理解できた。だが何をされたかはまではシゼルから言われるまでわからなかった。

油断はあったと思う。それでも説明されるまで何をされたのかわからなかったのは、始めてかもしれない。

「その顔から察するに何をされたか全くわからなかったことが、ショックだったか? 貴様が今まで意識を失っても辛うじて何をされたか理解できていたのは、ひとえにあの強者たちの絶妙な手加減のおかげだろう。随分と甘やかされたものだ」

なんだろう、今の言いぐさには流石のおっさんもカチンっときたな。スローライフを目指してその過程で鍛えているとはいえ、今までのおっさんの努力を踏みにじられている気がする。率直にムカつく。

「ほう、貴様に召喚されてからはじめて見る目だな。日々平穏とかぬかしていたから腑抜けかと思ったが、なかなかどうして・・・」

今の状況で何が面白いのか知らないが、シゼルはおっさんを見て意地悪そうな笑浮かべている。

「どうした? もう我の暇潰し兼貴様を・・・」

シゼルが最後まで言葉を発する前に攻撃をしかける。抑制魔法の影響でいつものように体が動かない。だからどうした! おっさんこの世界に来てから久しぶりに本気で怒ったことで、一時的に抑制魔法を上回る力で魔装を展開してシゼルに六本の腕で切りかかる。

が、またしてもシゼルの動きは全く見えないまま3つの頭部を吹き飛ばされる。頭部を失い脱力したおっさんの体が後方に倒れていく。

「なんだ、我の言動を遮っておいてその程度・・・」

後方に倒れかけたおっさんの体が高速逆再生のように直立に戻り、再び六本の腕の武器がシゼルに襲いかかる。

一瞬面食らったシゼルだが、瞳力のみでおっさんを10メートルほど吹き飛ばす。

「我に対する怒りの感情の影響か? 何とも面妖かつ器用なことをするな」

シゼルの目の前には未だに頭部が再生中のおっさんが佇んでいる。頭部再生前、おっさんの意識が戻る前に体が意識とは別に勝手に動いている。完全に無意識下でキレている。

「ふふふ、貴様は本当に我を楽しませてくれるな」

それからおっさんの意識が完全に回復するまで、シゼルは暇潰しを楽しんだそうです。

意識が戻ってからはどうだったって? 何回と色々な殺され方をしましたよ。何回死んだかって? 千から先は覚えてません。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。