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周囲の高さ数十メートルある木々を隠れ蓑にしながら相手との距離をつめるために疾走する。数秒前までおっさんがいた場所が抉れる。
右手を前に出し巨大な氷柱を数十本作り氷柱の底部に突風を叩きつけ相手に飛ばす。直線的な軌道だが少しは注意をひけるだろう。その隙にアイテムボックスから身の丈ほどある三日月状の大型ブーメランを取り出し、半身を捻って両手で投げる。
相手の注意が氷柱に向いてるところに認識害からブーメランでの攻撃。だが相手は氷柱を足で難なく砕くと迷いなくブーメランが飛んでくる方向に体を向ける。相手から糸が放たれる。目的はブーメランの軌道変更のはず。故に少量の糸しか飛ばしていない。そのことを逆手にとり糸が接触する数秒前にブーメランを分離させる。
スライスされたようにブーメラン本体が3つに分裂する。軌道は同じだが同方向から3つの攻撃。
糸に1つは絡めとられ軌道が変わり明後日の方向に飛んでいく。残り2つは真っ直ぐ相手に飛んでいく。
攻撃の結果を確認しながらも足は止めずに次の攻撃の準備をする。2つの魔法を同時に脳内で準備しつつ、アイテムボックスからコンポジットボウを取り出して矢を魔法で作成していく。
2つのブーメランが直撃するかと思われた瞬間、急激にブーメランの角度が変わり何本も木々を斬り倒し地面に突き刺さる。
目を凝らして空中を見ると視認できるかできないかくらいの極薄の糸がはられている。ブーメランの軌道が急激に変わった理由はこれか。空中に投擲攻撃する際は気をつけよう。
相手の8つの眼がおっさんの姿をとらえる。すぐに近くの木に姿を隠し準備していた2つの魔法を発動する。
木の影からおっさんの姿をした8つの幻影が四方に散る。 次に光学魔法で光学迷彩を展開して姿を隠し木の上に移動する。
おっさんの基本戦術として相手の注意を自分以外に向けさせて、その隙に攻撃する。攻撃が当たる確率を少しでも上げるためだ。
戦術通り相手の注意を幻影が引いている間に矢を魔法で作っていく。属性は炎と雷の2属性で構成する。
何故手や空間から魔法を放たないのか? それはおっさんの検証の結果、普通に魔法を放つより弓矢で放つ方が格段に威力が向上したためだ。これはおっさんのイメージの問題らしく、何か発射台のようなものから物体を放つイメージの方がおっさんは想像しやすいため威力が向上するようだ。
矢の形に2つの属性を形成して魔力を圧縮していく。高密度の魔力を圧縮しているときは、少しでも気を抜くと暴発する恐れがあるため集中力がいる工程である。そのマイナス面の分威力が上がるので、使いどころさえ間違わなければ良い武器になる。
おっさんが矢の形成を終え弓を引く。その間にも幻影が1つずつ消されていく。最後の1体が消されたところでおっさんの方に8つの眼が向く。
居場所がバレてら。矢が相手の魔力感知に引っかかったかな? 構わずに弓矢を射る。「ギュオーン」およそ弓矢から放たれた音とは思えない音が辺りに響き渡る。
一直線に放たれた矢は薄い糸などものともせずに相手に向かっていく。この攻撃は流石にまともにくらいたくなかったようで、今までとは比較にならない速度で糸を放ち確実に矢を絡めとる。手加減されているのがよくわかるな~でもただじゃ止めさせないよ。
矢を絡めとろうと糸が絡まるが、減速されるまえに矢を拡散させる。1本から1000本に別れた矢が相手に降り注ぐ。威力はかなり落ちるがそれでもただ止められるよりはマシだ。
素早く木から降りると爆撃のように矢が降り注ぐ中を瞬神のスキルを使用し一気に距離をつめにかかる。
2属性の矢が次々と着弾し爆音と衝撃波が響き渡る中、相手を観察しながらアイテムボックスから2つの武器を取り出す。
右手にジャマダハル、左手に小型チェーンソーを装備する。
ジャマダハルは、切るよりも刺すことに特化した武器だ。手に持つと拳の先に刀身が来るような造りになっている。拳で殴り付けるように腕を突き出せば、それだけで相手を貫くことができる。
いまだに降り注ぐ矢の爆撃で少しでも相手の視界を遮っているうちに確実に距離をつめる。
途中で木の影に入り光学迷彩と気配遮断を発動して、すぐさま木の影から出る。
爆撃音が減ってきたのでそろそろ矢が射ち終わる。相手の背後に回り込み木々を足場にしてこちらの攻撃が届く距離まで跳躍する。ついに爆音と衝撃波が完全に消えた。
ガラ空きの胴体に拳を突き出すようにしてジャマダハルを突き刺す。高音が鳴り響き、一瞬火花が散るが相手の装甲を貫くには至らない。すぐさま左手のチェーンソーに魔力を流し、無数の刃がついたチェーンを回転させて相手を切断しにかかる。チェーンソーが接触した箇所から絶え間なく火花が散る。火花は散っているが削れているのはこちらの武器の刃だ。
一瞬、相手の体が少し後方に下がったとか思うと、体当たりされおっさんは空中に弾け飛ぶ。
空中で身動きがとれないおっさんに追撃とばかりに脚が迫る。とっさに両手の武器を前方でクロスさせて攻撃を受ける。直撃は避けられたが両手の武器は粉々、しかもさらに体勢を崩された。そこにとどめとばかりに再び脚が間近に迫る。あ~これ避けられないヤツだ。為す術もなく攻撃が当たる瞬間、それまでヒラヒラとはためいていたクロークが姿を変え、前面におっさんを守るように展開され表面が硬質化する。おっさんの体を貫くかと思われた攻撃はクロークによりガードされる。が、おっさんはまたもや吹っ飛ばされる。
吹っ飛ばされながらもアイテムボックスから大量のフランキスカを空中に放出し、サイコキネシスで相手に向けて飛ばす。その間もおっさんの体は空中から地面に着々と近づいていく。フランシスカが命中し炸裂するのと同じくらいのタイミングでおっさんが地面に激突して、そのまま数十メートル転がっていく。
転がる勢いが収まったところで立ち上がって木の影に腰を下ろす。
「はあ、はあ・・・バリアブルクロークがなければ腹に風穴が空いてたな」
ボロボロになったクロークを撫でながら安堵する。
バリアブルクロークは超速再生スキルの弊害で、攻撃を受ける癖があるおっさんの苦肉の対応策の結果である。有事の際には液状化しその形態を変え装備者を守ってくれる。熊師匠にも指摘されたおっさんの癖だが直そうとはしたのだがやはり簡単には直らず、「それならいっそのこと別の受け方をすれば良いのでは?」と思い導きだした結果である。
呼吸が整ったところで周囲の異変に気がついた。いつの間にか音が止んでいる?
背筋に悪寒が走る。通常の回避では無理だ、これから来る攻撃は避けきれない。あー全身に負荷がかかるから出来るだけ使いたくないけど、仕方ない。
数秒前までおっさんがいた木々が鋭利な刃で切られたようにスパッと切断された。これは・・・かまいたちかな? 木々が徐々に倒れていく光景を相手の頭上10メートルくらいから落下しながら見つめる。
瞬間移動。とっさに使ったから移動座標がずれた。しかも全身がズキズキする。瞬間移動は便利だけど負荷が強いからあまり使いたくないんだよな。
アイテムボックスからバルディッシュを取りだし、落下のエネルギーも利用して必殺の一撃をお見舞いする。だがそれだけでは足りない。重力魔法で自分にかかる重力をupしてさらに攻撃を重くする。
未来視と未来視の魔眼を同時に使用して相手の動きの未来と、これから起こるであろう未来の可能性を見る。相手の攻撃を回避するいくつもの未来、おっさんの攻撃が当たるいくつかの未来。その両方の中からおっさんに有利な未来を確定する。さらにその未来を今の時間軸に時間圧縮で無理矢理とどめる。あー頭が痛いし耳鳴りがする。瞬間移動のときとは違う種類の負荷だ・・・きつい。
相手との距離が5メートルくらいまで近づいたところで、バルディッシュを力の限り振り下ろし時間圧縮を解放する。直後、1振りから放たれたとは思えない無数の攻撃が相手を襲う。様々な武器、様々な属性の魔法が放たれる。それを見た相手はおっさんに向けて視界が埋まるほどの糸を吐いた。目の前が糸で真っ白になり全身を糸に飲み込まれたと思った途端に地面に叩きつけられ、おっさんは意識を失った。




