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目を開けると視界が天地逆転していた。下? この場合は上になるのか。上には離れたところに地面が見える。下を見ると糸でぐるぐる巻きにされているおっさんの体が見える。どうやら空中に糸で吊るされているようだ。これ頭の方に血がいっちゃわない? 大丈夫??

体の傷は治っているな。気を失っている間に治しておいてくれたようだ。

額に脚先がコツンとあたる。正面を見ると8つの眼がおっさんを見つめている。

「はあ~参りました。降参です、蜘蛛お嬢」

おっさんの言葉を聞くと満足そうに体を揺すった。満足そうで何よりです。で、あの~そろそろ下ろして頂けませんか。

おっさん地面に立つ。少しの間しか離れていなかったのに懐かしの地面だ。

「蜘蛛お嬢、怪我を治して頂いてありがとうございます」

お礼を言うと「気にしない気にしない」という感じで脚を振ってくれる。蜘蛛お嬢は何て言うか姉みたいな感じだ。世話焼きながらも、適度な距離感を保ちつつこちらを気にかけていてくれるような存在だ。

さきほどの模擬戦の反省点を考察し、助言を頂くお時間です。あ、その前にお茶とお茶菓子の準備をしますね。

おっさんが準備を始めると虎鉄と小雪が「もう近く行っても大丈夫?」という風に、耳を後ろに倒し尻尾をブンブンさせてながら足元にすり寄ってくる。

2人の頭をなでお茶の準備をしようとするが、二人が「もっと撫でて」という感じにおっさんの足に頭をグイグイ押し付けてくる。

仕様がないな。いったん手を止めて膝を折って2人に目線を合わせて全身をワシャワシャする。気持ち良かったのかついにはお腹を出して仰向けになり始めた。しばらくすると満足したのか立ち上がって体をブルブルさせて寝転がった時についた汚れを飛ばす。ちょ、こっちにまで飛んできてるよ。

2人でじゃれあい始めたのを見てお茶の準備を再開する。

今日のお茶とお茶菓子は蜘蛛お嬢の好みに合わせています。お茶はほうじ茶、お茶菓子はきんつばと栗羊羮である。なんでこの森の猛者たちは好みが渋いのだろうか? 今のところ洋菓子派がいないのは何故だろう。

地面に降りてきた蜘蛛お嬢に専用の湯飲みにほうじ茶、お皿にきんつばと栗羊羮を準備して蜘蛛お嬢にお渡しする。足元にいる虎鉄と小雪にもミルクときんつば、栗羊羮を専用のお皿に乗せてあげる。

ちなみに食器もお茶菓子も全て蜘蛛お嬢サイズの大きさである。

お皿に乗っているきんつばを器用に脚先で挟んで口元に持っていくと、モキュモキュと咀嚼し始める。

外見は怖いが食べてる姿は結構カワイイイ。え、すみません。睨まれました。

蜘蛛お嬢は全長10メートルの大きな蜘蛛(?)である。体は紫色で真紅の細いラインが何本か入っている。お目眼も真紅。糸で巣を作って獲物待ちというか、ボーッとしている時間よりも地面を歩いて移動している時間の方が長く、結構な頻度でおっさんの家に遊びに来る。

きんつばを食べ終わりほうじ茶を一口飲んで蜘蛛お嬢はおっさんに向かい合う。

「おっさんとしては今回は超速再生を使用しなかったこと、蜘蛛お嬢に接近戦を挑めたこと、未来視、未来視の魔眼、時間圧縮の連携攻撃が成功したことが良かったと思います」

おっさんの意見を伝えると蜘蛛お嬢は「うんうん」という風に頭を上下に動かした。「ちゃんとさっきの戦闘を見直せているわね」という感じだ。

次に蜘蛛お嬢からの助言のコーナーです。蜘蛛お嬢曰く「魔法による攻撃頻度をもっと増やすこと」、「使用する魔法属性に偏りがあるから、他の属性も使用すること」、「瞬間移動の使用回数の上限を増やし、瞬間移動を練り込んだ戦術をたてること」、「武器による物理攻撃に魔法をもっと絡めて威力向上をはかること」とのことです。

難しいことを仰ることで。まあ助言を頂けるだけ非常に助かります。おっさん自身では気がつかない部分もあるから、助言されたことをしっかりと噛み締めます。

「蜘蛛お嬢、本日はありがとうございました。またよろしくお願いします」

正座の状態でお礼を告げながら頭を下げる。え、なんで正座してるかって? いや~なんか蜘蛛お嬢を目の前にすると、助言されているのに説教されている雰囲気になるのです。ちなみに地べたではなく外専用にカスタムした座布団の上で正座していますよ。

栗羊羮をほうばりながら「苦しゅうない、また殺ろうね!」という感じに器用に空いている脚を上げる。

えーと、できれば「殺る」方ではなく普通に「やる」方にしませんか? 蜘蛛お嬢の「殺る」は本当に洒落にならないケースが多いので・・・何度おっさんの葬式が行われそうになったことか。なんか思い出したら体が震えてきた。

みんながおっさんお方を見ている。うん、どしたの? あ、食べ終わったのね。お粗末様でした。

汚れた食器を「クリーン」で綺麗にしてからアイテムボックスにしまう。

さて、日も暮れてきたしそろそろおいとまするかな。

「それでは蜘蛛お嬢、おっさんはこれで失礼します」

虎鉄、小雪帰るよ~声をかけるとじゃれあっていた2人がおっさん方に駆けてくる。

別れの挨拶を終えたので帰ろうと歩き出すと、蜘蛛お嬢がついてくる。

「アレ、どうしました?」

疑問に思い聞いてみると子首をかしげるように頭を動かした。

「運動の後はお風呂でしょ?」だそうです。でも蜘蛛お嬢、絶対汗かいてないでしょ。口答えしてすみません。謝りますからいきなり脚先で刺そうとしないで下さい。

その後は自宅に到着するまで、森の中をおっさんは蜘蛛お嬢に追いかけまわされました。


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