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「魔王様、そろそろ目の前の方に我々を紹介して頂きたいのですが」

「おおそうだな。私自身も魔王という役職しか名乗っておらぬしな」

そういえば各個人の名前とか聞いてなかったな。誰かさんのおかげで魔族に対する第一印象が良くなかったし、正直深く関わるつもりがないからな~

「では、改めて私から名乗ろう。魔国メザード第32代魔王サタンだ」

これはご丁寧にどうも。魔王さんは肌の色とかはおっさんに近いね。外見は比較的人間に近いかな? まあ、額と耳の後ろに生えているゴツい角がなければだけど。

次に隣の女性が立ち上がり名乗った。

「私の名はディーヴァ。魔王様直属の近衛騎士です。種族はダークエルフです」

ダークエルフというだけに肌は薄い黒色で耳が長い。いささか露出多目の服装が気になるが・・・お腹冷えないのかな。

ディーヴァさんが座ると次は自分の番だとアピールするかのように男(?)が勢いよく立ち上がった。

「俺の名はルー。まあ見た通りの人狼だ、よろしくな」

そう言うと握手を求めてきたので応じると、おっさんの予想に反して普通に握られた。てっきり強めの力で握られると身構えていたので拍子抜けだ。見た目は強面で好戦的に見えるけど、意外と優しいタイプか? 人(?)は見た目で判断するものではありませんな。

「次はいよいよ真打ち登場、妾の番じゃ!」

声の主に目を向けると実は回復させた時点で気にはなっていたのだが、あえて見て見ぬふりをしていた存在がちょこんと鎮座ましましていた。

「妾の名はアリシア。ヴァンパイアじゃ」

確かに瞳は深紅だし口元から鋭い牙が見えている。ただ見た目は完全に幼女なんだが。これはどうしたことか。

自称吸血鬼の幼女を失礼ながら凝視していると「フフフ」と意味ありげにニンマリしておっさんに言い放った。

「今妾のことを幼女だと思ったのじゃろう。しかーし、この姿は仮初めのもので妾の本来の姿はボンキュボンのナイスバデイなのじゃ。男なら誰もが妾の魅力にメロメロになるのじゃ」

へえ~そうなんだ。ボンキュボンのナイスバデイ姿とやらには興味はあるが、正直20代後半くらいの年齢になってから性欲も結構減退気味でね・・・そのてのことからはご無沙汰というかもう足を洗った感じなんだよね。ある意味で常時賢者タイムみたいな。

「本来の姿がボンキュボンのナイスバデイということは、実年齢も見た目と違うということかい?」

「むう、おなごに年齢の話を振るとはなんとも不躾じゃな。妾は心がとてつもなく広いから多目に見るが、他のおなごに年齢の話を気軽に振るのではないぞ」

「あ、はい。すみません」

なんか反射的に謝ってしまった。

「わかれば良いのじゃ。して妾の年齢じゃが・・・正確な年齢は伏せるがそこにいる魔王を小僧と呼べるくらいの年齢じゃ」 

マジですか。魔王さんの年齢をおっさんの主観で外見から判断すると40~50歳くらいなのだが、その年齢の人を小僧呼ばわりできる年齢ということはつまりロリババア。若い頃にゲームやマンガ、ラノベなんかで見聞きしたことはあったが・・・まさか異世界とはいえ実在していたとは。

おっさんがロリババアの存在に驚愕していると、ついでとばかりにロリババアことアリシアさんが説明を続けた。

「でじゃ、お主の逆鱗に触れてそこで伸びとる者の名はシンというのじゃ。ちなみにこのメンツの中では一番の若輩者じゃ」

そう言っていまだに意識が戻らないシンという上級魔族を指差さした。

「アイツは戦闘関連は筋がイイんだが、ただな・・・感情的になりやすくてな。俺らも再三にわたって注意しているんだが、なかなか成長しなくてな」

頭を掻きながらルーさんは困ったように耳を下げた。

「それも若さじゃよ。若いうちしか素直に感情を表に出せないからの~若さ故の過ちというやつじゃよ」

流石はロリババア、発言に年季を感じさせるな。

「若さ故の過ちでは済まされないケースもあります。特に今回はシンの言動によって魔王様の生命を危険にさらし、ひいては魔国が消滅する可能性があったのですから。もう少しことの重大さを認識して下さい」

ディーヴァさんが少し怒気を含んだ声で二人に苦言を呈した。

魔王さんの生命はおっさんが発見する前にすでに風前の灯火でしたけど。あと国が消滅するって君達はおっさん達のことをほんと何だと思っているの?

「お前達 それくらいにしておけ」

議論がヒートアップしそうになったところで、魔王さんが止めに入った。

魔王さんの介入で自己紹介が一段落したところで、対面に座っている全員が何故かおっさんを凝視している。え、何か?

おっさんがボーッと沈黙していると、魔王さんが沈黙に耐えかねて口を開いた。

「支障がなければおっさん殿ことも教えて頂きたいのだが」

他の3人の上級魔族も「ウンウン」と首を縦に振っていた。

なるほど、おっさんのことが知りたいとな。さて何をどこまで話したものか・・・

「おっさんはおっさんです。この森でひっそり暮らしています。以上」

他に言うこともないので締め括ると、対面のみなさんが「え、それだけ?」みたな顔をしている。

だって初対面の人(?)にあんまり個人情報教えたくないし、おそらくこれっきりもう会うこともないだろうし。

「・・・ではこちらからいくつか質問してもよいだろうか?」

魔王さんや、こんなおっさんの個人情報がそんなに欲しいのかね。まさかそっちの気があるのか? ちなみにおっさんはノーマルだから。

深呼吸をして、魔王は神妙な顔で口を開いた。

「おっさん殿はその・・・異世界人なのではないか?」

「はい、そうですけど」

別に隠す必要もないので、即答した。そもそもこの部屋にはおっさんがエクストラスキルで製作した異世界の品々が数多く置いてある。洞察力や観察力がある人なら違和感に気がつくだろう。

おっさんが隠すこともなく答えたことに若干驚いていたが、小声で「やはり・・・」と嘆いていた。

他の3人の上級魔族も複雑そうな表情をしている。おっさんが異世界人だと何か問題があるのだろうか?

「温水洗浄便座を見たときからまさかとは思っていたが・・・」

そこで気がついたの? 魔王さんや、そんなに温水洗浄便座が気に入ったんですか。

「あなた方の反応からするとおっさんが異世界人だと何か都合の悪い事情があるのですか?」

言いにくそうな雰囲気が場を支配した。

「おっさん殿には関係がないこちらの世界の事情なのだが、話してもよいだろうか?」

チラチラおっさんを見て聞いて欲しそうなオーラを出すのはやめなさい。

興味ないけど聞きますよ。ほら~あからさまに嬉しそうな表情になったよ。

「まずこの世界には大きく分けて4つの大国が存在する。ヒューマンの国「シャングリラ」、我が魔族の国「メザード」、獣人の国「アウル」、精霊族の国「ザイン」だ。我が魔族の国と獣人国とは友好関係を結んでいるので外交的にも特に問題はない。精霊族の国に関しても一応だが問題はない。精霊国は極めて閉鎖的な国で外界との接触を一切行っていないのだ。外界に全く興味がないと言った方が正しいかもしれん」

国レベルでの引きこもりとは、中々想像できないな。まあ若者とかが脱走してそうだけど・・・家出精霊か。

ここまで説明して魔王が盛大にため息をついた。

「問題はヒューマンの国なのだよ。あの国はヒューマンこそが至高の種族だと主張し、他の種族を認めようとしないのだ。自らの存在を認めて欲しくば従属しろと他国に言い渡し、その主張を他国が拒否すると武力によって支配しようとする国なのだ」

あくまで魔王側からの視点なので全てが真実ではないが、全てが嘘という訳でもないだろう。だとするとこの世界の人間はどうしようもないクズの集まりということになる。完全な作り話ではないところが余計に始末に悪い。

「ヒューマンの国はかなりの頻度で他国に侵攻してくる。もちろん我々もただ手をこまねいているわけではなく、その都度迎撃している。ここ数年は均衡状態が続いていたのだが数ヵ月前、ヒューマンの国で勇者召喚が行われたという情報がヒューマンの国にいる密偵からもたらされたのだ」

へえ~勇者召喚ね。異世界ものの定番だけど本当に召喚とかするんだ。

「誤解がないようにさきに言っておきますけど、おっさんは勇者じゃないです。召喚なんてされてません。あなた方はおっさんが勇者またはその関係者であることを危惧しているみたいですが、全く微塵も関係ありません」

おっさんの発言を聞いて魔王達が本気で安堵したようにみえる。

「そもそも自分の力で何とか出来ないことを他人、それも全く関係ない異世界の第三者に押し付けている時点で人間としてアウトでしょ。召喚された側にしてみれば戦う理由はないわけですし。戦いには理由がいるからおそらく勇者が戦わざるをえない理由としては、すべての国を支配下においたらもとの世界に戻すか戻れるとかですかね。おっさんの個人的な意見としてはそんな国とは未来永劫関わりたくないですね」

この森から出るつもりがないから関わることはないとは思うけど・・・ヒューマンの国「シャングリラ」か、おっさんのブラックリストの先頭に記載しておこう。

おっさんがわりとボロクソに同じ種族(?)のことを言うもんだから、対面の魔族のみなさんが目を真ん丸にしていた。

「我々の言葉を信じるのか?」

「え、嘘なんですか?」

「いや、あまりにもすんなり受け入れられているので・・・」

「ああ、そういうことですか。こういう言い方はあなた方にとっては失礼になるかもしれませんが、先程の話が真実だろうが嘘だろうがそもそもおっさんには関係ないからですよ」

森に永住するおっさんにとっては世界情勢なんてどうでもいいことです。外で勝手にやてくれ。

対面の魔族のみなさんが今度は「むむむ」という表情をしている。

「おっさん殿が現時点ではヒューマン側の勢力ではなく、妾達の敵でないことがわかっただけよかったのじゃ。それだけでもここに来た目的を果たしたようなものじゃ」

難しい顔をしている他の魔族を尻目に、ロリババアが話を綺麗に締め括ってくれた。しかもおっさんを見てウインクのおまけ付きで。

あらやだ可愛い。おっさんロリババアという新たな性癖に目覚めるかも。

それにしてもこの世界ではじめて随分長話をしたな。なんか疲れた。本音を言おう、そろそろ帰ってもらってもいいですか。



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