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17:噂

スキルの迷宮からの脱出用魔法陣の出口、そこに現れた奇妙な組み合わせの一団を黙って見つめる野次馬達。

通常ならば、質問攻めが始まるのだが、さすがに口火を切れる馬鹿者は存在しないようだ。


ゴルジフ卿、今現在のこの施設を実質的に取り仕切っている大貴族。軽口を叩こうなら即殺だ。

火の一族のメイド達、いわずもがな、実力主義の魔法の一族、迷宮内でメイドと侮り軽口を叩いたものが多数殺されている。

そして、

「ええい! 散れ散れ!」

冒険者ギルドのギルド長セザール。

迷宮管理の実権の大半を貴族に奪われてしまっている。己の不甲斐無さと貴族に対して忸怩(じくじ)たる思いを抱いているはずである。


互いが相容れない存在。それが揃って迷宮から出てくる。

当然皆、それを可能とした存在を探すがどこにも見当たらない。


「……屋敷へ戻るぞ」

ゴルジフ卿と騎士が、魔法陣から出る。


「……」

続いて、メイド達も無言でその場を離れていく。


一人残ったセザールに冒険者から質問の雨が降る。

「黙れ黙れ! ワシは疲れてるんだ!」

近付いてくる野次馬に対し戦斧を振り回しながら応戦する。





黙って歩くゴルジフに騎士がおずおずと声を掛ける。

「若様、あの御方は、」

「我々に構われるのを煩わしく思われたのだろう。実際迷宮内で我々は足手纏いでしかなかったからな」

「…………」

黙り込む騎士達。実際、自分達が命懸けで挑戦しても勝てるかどうかが半々の最下層のボス部屋を易々と攻略してしまうあの御方。

「ローランの名を背負った上で単独行動を許されている御方だ、護衛云々を我々が申し出てもリン様の行動を制限してしまうだけになりかねん」

「…………」

「しかもこのようなものまで頂戴してしまった」

光魔法の巻物を大事に抱えるゴルジフ卿。王族からの賜り者だ、大事に扱わなくてはならない。

「このままではゴルジフの名折れだ、明日は完全装備で行くぞ」

「ハッ!」


騎士が気付いたように質問する。

「若様、戦力という点だけでなら秀でているあいつも呼びますか?」

「ガロッチか、あの様な者をリン様の前に出せるわけが無いだろう。最低限の礼儀も知らん無法者だ」

「確かに、最近益々粗暴な態度が目立っています」

「奴との契約は切れ、リン様がこの町に滞在している間に何か問題でも起こされては我が家名に傷がつく」

「ハッ!」





人気が無くなった事を見計らい、最近その実力から戦闘メイドとして配属されたメイドの一人が質問する。

「メイド長様、あの御方は火の一族の血族の方なのですか?」

火の一族の中にあれほどお若くして、有力貴族であるゴルジフ家が(かしず)く程の存在の方が居たのを知らなかったのだ。

「お嬢様は、我等メイドが命を賭して仕える真なる存在。お嬢様が望まれるなら火の一族全てを殺すことも是とするのです」

「そ、それほどの御方なのですか! た、確かに我々でも攻略困難な最下層を軽々と攻略してしまうあの実力は全てを超越した存在です」

「その通りです。お嬢様こそ至高にして究極、お嬢様の覇業を邪魔するものは問答無用で排除。わかりますね?」

「は、はい!」

実力主義の火の一族、その裏を支える戦闘メイド。

戦闘力こそが正義の彼女達には実際に目にしたその想像を超える戦闘力こそが、メイド長の破綻した説明さえも納得に足るものとなるのだった。





「くしゅん!」

(リン、風邪か? 我の光魔法の出番か?)

(え、違うよ。誰かに噂されてるんじゃないかな)

(うむ、確かに町中の噂になってるな!)

(だよね!)

昨日回れなかった屋台を回っているんだけど、私の噂で持ちきりです。

まあ、噂の域なんで、大貴族のご令嬢とか神子さんとか、容姿も金髪碧眼とか見当外れのが結構混じっていてまだまだ平気そうです。


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