16:最下層
黒いローブを纏った私が、召喚魔法を行使する。
「にゃお~ん!」
「わっ!」
「むむむ!」
可愛く鳴いた黒猫がそのまま朽ち果てる。
うーん、なんで攻撃してこないんだろう。
「クロに似てたね」
「うむ、リン、鑑定した?」
「うん、したよ。スキルなにもなかったよ」
「そうか、まだまだだな」
「うん」
私達の存在が特異すぎるからかな?
けど、確実に進歩してきている。
ちなみに、私との対峙はこれで三回目。
豪奢な宝箱を開ける。
魔眼を発動しスキルの一覧を見る。
頭の中の前回、前々回のスキル一覧と比べる。同じ、同じ、並びもスキルも変わらない。
「うーん」
「同じか?」
「うん、同じかなあ」
「リン、錬金か忍術を取れ、そして帰ろう」
「んー、錬金はカーサがいるからいいんじゃない? 忍術は今でも似たようなこと出来るし、クロが取ればいいんじゃない?」
「思ったのだが、触媒とか無しで我でも使えるのか?」
「多分、クロは魔物扱いなんじゃないのかな、マスターニンジャとか触媒無しで使うよね?」
「魔物扱いとは無礼な! しかしネコ忍は捨てがたい」
「多重ネコ分身とか見てみたいね、あ!」
「む?」
「これ」
「むむむ!」
全て同じだったスキル一覧、しかし、今回は一番最後にひとつだけ追加されているスキルがある。
…………
……
宝箱が消えて、扉が開く。
「お疲れ様です。お嬢様」
「リン様。ご無事で何よりです」
「今回も最初の時と同じく時間が掛かりましたな」
セザールさんが、疑念満々のお言葉を吐いてきます。まあ、彼に確かめる術はないんだけどね。
取り合えず今日は、次の通常ボスを倒して脱出用転移魔法陣で帰る事にしよう。
文句は言わないけど、彼等には結構な時間たまに出るであろう魔物を狩るだけで、ずっと私のボス部屋周回につき合わせてしまった。
待つだけというのも結構辛いものがあるはず、何かお礼したほうがいいかなあ。
「えーと、次のボス倒したら今日は帰ります」
「わかりました。お嬢様」
「かしこまりました。リン様」
「今日はってのは、意味深ですな、お嬢様」
「ちょっと、ゴルジフさん、この人無礼討ちにしてください」
「ハッ! 殺れ!」
「ちょ! まて!」
「逃がしません。お嬢様へきいた無礼な口を切り取ります」
「ぎょえー!」
本当に殺さないで下さいね、と言い残しボス部屋に入る。
現時点でわかっていることは、二回目と三回目のレアボスは丁度周回五週目に出た事。
おそらく宝箱のスキルを選択しない事で、レアボスフラグは消えないけど連続で出ることはなく一定数の間が開く、それがおそらく四回、四回というのは偶然の可能性もあるからもう少し検証が必要かな。
正面奥が淡く輝きだす。
重戦士が出現した!
狂戦士が出現した!
暗殺者が出現した!
大司祭が出現した!
大魔法使いが出現した!
「リン、我が殺るのだ!」
「どうぞー」
クロが魔物に襲いかかかる!
どうするかな、取り合えず明日までが限度かな、そうそう独占できるものでもないだろうから、私達が最下層に挑戦してたというのは今居る人達に口止めしても、すぐにばれる。迷宮に入るのは大勢に見られているから、どこまで潜ったのかという話しになるし、まさか八層や九層まででしたとはならない、当然最下層まで行ったという話しになるし、帰還するところを見られれば最下層は今安全かもしれないという話も出てくる。
そうなれば、レアボスが怖いからという理由で最下層挑戦を控えていた冒険者達が押し寄せてくるかもしれない。当然レアボスが普通に出てくるんだけど、下手すると運良くレアボスに勝ってしまう人が出るかもしれない。
一度攻略されると次回いつ最下層が開かれるかわからない。これだけは避けなくてはならない。
あー、サイテーな事思いついちゃった。権力を使えば最下層立ち入り禁止に出来るなーとか。
「リン、終わったのだ!」
「はいはーい」
宝箱を開け、光魔法の巻物を手に入れる。
明日は一人で来たいな、なんだかんだで人を待たせているのはやっぱり気が引ける。
周回というのは本当に作業だから、待っているだけというのは結構辛いはず。
「今日は付き合ってもらって悪かったですねー、はい」
メイド長さんに光魔法の巻物を渡す。
「お嬢様、これは、」
ゴルジフさんにも同じ物を渡す。
「リン様、これは光魔法の巻物ではないですか!」
ボロボロのセザールさんにも。
「ワシにもくれるの?」
「ここに来たことは秘密でお願いしますね。じゃあ、帰りましょう」
お礼とか言われても面倒くさいのでさっさと魔法陣に乗ってしまう。
輝きだす魔法陣に慌てて皆も乗ってくる。
「リン様、これはゴルジフ家の家宝にいたします」
「いやいや、家宝とかやめて」
「お嬢様、このようなものは頂けません」
「光魔法無いでしょ、自分に使って」
「ワシも自分に使うか」
「え、売ったお金私のギルド口座に入れといてくださいね」
「え? くれんじゃないの」
「え? なんで」
「え?」
「嘘ですよ、好きにしてください」
光が溢れ、軽い浮遊感の後、隠密を発動する。
転移魔法陣の回りに人だかりが出来ている。だれを待っているのかは簡単に想像が出来る。
注目は彼等に任せて私は、そっと、人だかりを抜け帰路につく。
こうでもしないと、ゴルジフさんとメイド長さんはバラの宿までついて来るだろうからね。




