可愛い講師によるマナー講座
本日行うマナー講座の全貌が明かされる!!
入浴を済ませた後、家族みんなで食卓を囲み、イザベル手作りの美味しい夕食をいただいた。
食事の最中、アンドレがスープを飲む仕草やフォークとナイフを扱う手元、姿勢の美しさをそれとなく観察しながら、イザベルは「ふふっ、昨日の特訓の成果がしっかり身についてるわねぇ」と心の中で感心していた。
夕食が終わり、みんなで片付けを済ませたその時――。
「さて、アンドレ!」
イザベルがキリッとした表情で両手を叩いた。
「予告しとった、マナー講座の実践を始めるで! エマ、昨日の打ち合わせ通りに準備をお願いね」
「はーい!」と元気よく返事をしたエマは、トコトコと小走りで子供部屋へと戻っていき、イザベルもその後を追うようにキッチンから離れた。
(……一体、どんな鬼のような指導が始まるんだ……?)
アンドレはゴクリと唾を呑み込み、身構えてリビングで待機する。
それから約5分後。
「お待たせしましたー!」
エマが小さなワゴンをトコトコと引いてリビングに戻ってきた。
ワゴンの上に乗っていたのは、エマが普段から大好きな動物のぬいぐるみたち――クマ、ゾウ、キリン、アルパカ、ネコ、ウサギ、キツネ、そしてヘビの面々だった。さらに、イザベルの手には子どもが使う小さなおままごとセットが握られている。
「みなさん、お待たせしました! 今日のマナー講座はこれや!」
イザベルが自信満々に宣言する。
「土曜日に訪問するセシルちゃんのお家に見立てて、ここでおままごとを開始するわ! 昨日私と特訓した、ご家族の方々への話し方や、セシルちゃんとの距離の取り方がちゃんとできているか、ここで実践してもらうからね。あ、もちろん家族の役は、このぬいぐるみたちにやってもらうから!」
そして、とイザベルはニッコリと微笑んだ。
「もちろん、お菓子の渡し方についてもここでバッチリ教えるわよ」
その光景と説明を見た瞬間、アンドレは「そういうことか……!」とやっと納得した。
今日、イザベルが「一味違う」と言っていた意味がよく分かった。それは、ただの座学や厳しい特訓ではなく、エマや愛しいぬいぐるみたち(家族総出)を巻き込んだ、壮大でシュールなおままごと形式の実践型マナー講座だったのだ。
準備が整うと、エマが小さな胸を張って、今回のマナー講座における動物たちの「役割と性格の設定」を発表し始めた。ちなみに、これらの性格設定は以前、アンドレとセシルがエマに教えてあげた実際の生態にちなんだものになっている。
クマ(セシルお姉ちゃんのお父さん役):ハチミツが大好き。なお、この役はなぜかクロードが担当することになる。クロードは「まぁ、要は誠実である姿勢を見せれば、ご家族もきっと理解してくれるさ」と、父親役としてアンドレに温かいアドバイスを送る。
ゾウ(セシルお姉ちゃんのお母さん役):家族を温かく見守る、包容力のある優しいお母さん。
キツネ(セシルお姉ちゃんのお兄さん役):料理が得意。妹を大事に育ててきた優しいお兄さんで、アンドレに対して「食」に関する鋭い質問を投げかけてくる。
ウサギ(セシルお姉ちゃんのお兄さんの彼女役):パティシエール。手際よくお菓子を振る舞ってくれる。
ネコ(セシルお姉ちゃんの家のペット):アンドレの膝の上にちゃっかり乗っかって、上手に撫でてもらう役割。「不意のスキンシップにも臨機応変に対応する練習やで!」というイザベルの提案によるもの。
アルパカ(セシル役):もちろん本命のセシルちゃん。
キリン(特別審査員①):長い首を活かして、高い位置からアンドレの一挙手一投足を厳しく審査する監査役。
ヘビ(特別審査員②):顎の骨の振動で、アンドレの緊張や微細な動きを敏感に察知して審査する監査役。(なお、キリンとヘビのハードル高すぎる監査役コンビは、イザベルが一人二役で声を当てる予定である)
個性豊かすぎる配役とカオスな状況を目の当たりにし、アンドレは「これ、本当に攻略できるのか……?」と早くも冷や汗を流すのであった。
最初は全部エマが全部演じるつもりで考えていましたが、3歳の子に一人八役はハードな上、父親や兄の複雑な気持ちをエマが演じるのは難しいと思い、経験をしているクロードが演じることにしました。
どんな講座になるかは次回のお楽しみです。




