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リヨンの高校生たちの群像劇  作者: Red Baron
イザベルお姉さんのマナー講座(中編)
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92/97

教官からの評価と予告

本日のミッションを完了したアンドレだが、まだ次なる試練が待ち受けていた!!

「ふう、なんとかミッション完了、っと……」

パティスリーの自動ドアを抜けて外に出たアンドレは、上品な紺色の紙袋を大切に抱えながら、駐車場の隅に停まっている赤のプジョー308GTへと軽やかな足取りで戻ってきた。

助手席のドアを開けて乗り込むと、サングラスを外したイザベルが温かい笑みを浮かべて待っていた。

「お、おかえり。どうやった? ええもん見つかったか?」

「うん、これ!」

アンドレが誇らしげに差し出した紙袋の中から、イザベルはクラシックで品格のあるネイビーのボックスを取り出した。彼女はフタを開けて中身をじっくりと見つめ、サブレの焼き色やフィナンシェの並び、そしてパッケージの控えめな上品さを一つひとつ丁寧にチェックする。

数秒の沈黙の後、イザベルはパッと表情を明るくさせ、満足げに大きくうなずいた。

「……合格や! 完璧やないの、アンドレ!」

イザベルは嬉しそうに声を弾ませる。

「ブルターニュ風の厚焼きサブレに、香ばしいフィナンシェの組み合わせ……しかもパッケージも過度に派手やなくて、落ち着いた気品がある。これなら、食に厳しいセシルちゃんのご家族――とりわけ料理人さんであるお兄様も、パティシエールである彼女さんも、文句なしで喜んでくれるわ! よく頑張ったねぇ」

姉からの最高の褒め言葉に、アンドレは「やった……!」と心の中で小さくガッツポーズをした。


「よっしゃ、それじゃあお家に帰ろか」

イザベルは再びスタイリッシュなサングラスをかけ直すと、心地よいエンジンの低音を響かせながらプジョー308GTをスムーズに発進させ、夕暮れの街路を家路へと向けて走り出した。


車が走り出して少し落ち着いた頃、運転席のハンドルに片手を添えたイザベルが、ふと楽しげな笑みを浮かべて口を開いた。

「そうそう、家に着いたらな、後でお菓子の上手な渡し方とそのタイミングについてもしっかり特訓したるわ。土曜日に向けての実践と、昨日の復習も兼ねてね」

それを聞いたアンドレは「おっ、いよいよ実践練習か」と身構えたが、イザベルは意味深な笑みを浮かべ、さらにこう続けた。

「ふふっ、期待しときなさい。ただ、昨日やったマナー講座とは、一味も二味も違うからねぇ。……楽しみに待っててや、アンドレ」


その言葉を聞いた瞬間、アンドレの脳裏には、これまでに受けた数々の「特訓」の記憶が鮮やかに蘇ってきた。

昨日は、姉ちゃんからは徹底的なスパルタかつ愛のあるマナー講座――玄関でのスマートな靴の脱ぎ方や挨拶、椅子へのエレガントな座り方、セシルとの適切な距離の取り方や、レストランでの洗練されたテーブルマナーなどを叩き込まれた。

さらに夜には、クロード義兄さんから「男同士のマナー講座」と称して、父親や兄といった男側の心理の読み解き方や、男らしい椅子の座り方、さらには初対面の印象を良くするための服装のポイントなどをみっちり伝授してもらったばかりだった。


(昨日のもかなり濃かったけど……姉ちゃんが「一味違う」って言うってことは、一体どんな特訓が待ってるんだ……!?)


背筋にヒヤリとしながらも、どこかワクワクするような好奇心を抑えきれないアンドレ。果たして、家に戻った彼を待ち受ける「一味違うマナー講座」とはいったいどのようなものなのか――赤のプジョーは夕暮れの道を滑るように進み、家族の待つ家へと急ぐのであった。

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