女子会
同じ時間の昼休み――。
教室の片隅では、クロエ・ド・モンフォール、エロワーズ・ベルナール、ジュリエット・ロランの3人が、こぢんまりとした輪を作ってひそひそと楽しげな相談をしていた。
「みなさま、聞いてちょうだい。わたくしたち、そろそろ本気で『真の大人の女性』を目指すための会を結成しようと考えているの」
黄金色の縦ロールを優雅に揺らしながら、クロエはいつも以上に上品かつ熱のこもったトーンで切り出した。
まずは会の名前をどうするか。3人がそれぞれのセンスで「麗しの淑女会」「レディ・アカデミー」といった候補を出し合い、盛り上がっていく。
続いて、具体的な「目標」についての意見交換になった。
「それでね、ちょうど今日と明日、あの素敵なお手本であるイザベルお姉様が放課後にいらっしゃるでしょう? どうにかして、彼女から直接『大人の女性』についてお話を聞くことができないかしらと思って」
クロエのその提案に、エロワーズとジュリエットも大きく頷いた。それぞれの口から、目指すべき女性像のアイデアが飛び出す。
クロエ:「何といっても、あの圧倒的な立ち振る舞いの美しさや、いつでも余裕を感じさせる上品な笑顔ですわ!」
エロワーズ:「それなら、ファッションやトレンドの最先端を研究することも欠かせないわよね。着こなし一つであれだけ雰囲気が変わるんだから」
ジュリエット:「それに、知的な教養と、誰とでもスマートに会話できる優れたコミュニケーション能力も絶対に外せないわ!」
それぞれが理想の目標を語り合った後、エロワーズとジュリエットが顔を見合わせ、「そういえば……」と言葉を濁した。
クロエは美しい眉を軽くひそめ、上品に首を傾げた。
「あら、どうしたのかしら? 何か思い出したことでもあって?」
「ううん、さっき意見に出た『立ち振る舞いの美しさ』や『ファッション』、それに『教養やコミュニケーション能力』のことを考えていたらね……(イザベルお姉様の他にも)もう一人、ぴったり当てはまる人が思い当たったのよ」
「まぁ、どんな方かしら? 気になりますわね」とクロエが目をパチクリさせると、エロワーズとジュリエットはクスリと笑って説明した。
「同じ寮生なんだけど(※クロエは実家通学、エロワーズとジュリエットは寮から通学している)、その子はとにかく姿勢が美しくて、ファッション雑誌から最新のサブカルチャーまで、他にもいろんな分野にすごく詳しいの。私たちとはクラスが違うんだけど、教室をのぞくといつもいろんな同級生と分け隔てなく楽しそうに話している姿を見るわ」
「それに、定期テストの成績はいつも学年トップ10の常連だし、噂によると先月9月の体育で行われた体力測定では男子に匹敵するほどの抜群の運動神経を発揮したらしいわよ。いわゆる、完全な『文武両道』ってやつね」
その話を聞いたクロエは、感心したように息を呑んだ。
「まあ……そんな素敵な方がいらしゃるのね! ぜひ、その方の意見や生き方も参考にしたいわ。……ちなみに、その方のお名前はわかりますの?」
エロワーズとジュリエットは微笑みながら答えた。
「名前はベアトリス・ロシュフォール。私たちと同じ学年よ」
「テスト成績の掲示板にもいつも名前が載っているし、体力測定の結果も廊下の掲示板に貼り出されているはずよ」
それを聞いたクロエは、パッと表情を明るくさせて立ち上がった。
「それじゃあ、さっそく掲示板へ見に行きましょう! どんな方なのかしら、とっても楽しみですわ」
こうして、3人は新たな知的探求と憧れを胸に、掲示板へと向かって歩き出すのであった。




