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リヨンの高校生たちの群像劇  作者: Red Baron
イザベルお姉さんのマナー講座(中編)
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83/90

伝説の美女の正体

4人が教室に足を踏み入れると、クラスの中は朝からすっかり大騒ぎになっていた。

昨日の放課後、校門の前に鮮やかな赤のプジョー308GTが停まっていたこと、そして車から降りてきたドライバーが、スーツを纏った背の高いスタイルの良い美人のお姉さんだったことが話題の中心だった。彼女が校門から堂々とした美しい姿勢で歩き、まっすぐアンドレに話しかけてその車に乗り込んだため、生徒たちの間で大きな噂になっていたのだ。

「なあアンドレ、昨日のあれはいったい何だったんだよ!」

席に着くやいなや、ルイが目を輝かせて詰め寄ってくる。男子生徒たちは、イザベルの圧倒的な美貌とプジョー308GTの組み合わせに刺激され、「パリのモデルか女優のセレブなんじゃないか?」「いや、大企業のOLになりすました国家機関のスパイに違いねぇ!」などと勝手な想像を膨らませていた。


一方、女子生徒たちは男子とは違った視点で大盛り上がりだった。

「あんなに背が高くて、姿勢も歩き方もすごく綺麗だったよね……」

「あんな素敵な車を乗り回してみたいわ。どうやったらあんな大人の女性になれるんだろう?」

女子たちは同性としての憧れのまなざしを向け、うっとりとした表情でその話題を持ちきりにしていた。


ざわめく教室の中、アンドレは「ああ、昨日の帰りに姉ちゃんが迎えに来た時のことか」と苦笑しながら答える。

しかし男子たちが信じようとしない中、以前イザベルに会ったことがあるセシルが、マリアたち女子生徒に向かって証言した。

「ううん、本当よ。確かにあの人がアンドレのお姉さんだわ。私もその車を見たことがあるもの」

セシルの言葉に、女子生徒たちが「え、本当なの!?」とさらに驚きの声を上げる。

「ほら、前に写真で見せたじゃん」

アンドレがそう言って、先週アンドレとイザベル、そして姪のエマの3人で写ったスマートフォン内の写真を見せると、女子生徒たちはのぞき込むように画面に群がった。

「あ、本当だ! 髪型(ブラウンのロングヘア)がそっくり!」

「服装を変えただけで、こうも印象が変わるんだなぁ……」

写真のブラウンのロングヘアを見て納得する女子たちをよそに、ルイは諦めきれないといった様子で「なあ、お姉さんは普段どんな仕事をしてるんだ? やっぱりパリのモデルか、女優か、それとも国家機関の――」と食い下がった。

そのルイの言葉を聞いたマリアは、やれやれといった表情でため息をつき、厳しい視線を向けた。

「ちょっとルイ、映画の見過ぎでしょ。男ってさ、綺麗な人を見るとすぐに馬鹿になるんだからねー」

マリアの鋭い一言に、周囲の女子生徒たちも「本当よねー」「全く同感!」と一斉に同調し、男子たちを呆れたように見つめた。


飛び交う憶測を断ち切るように、アンドレははっきりと首を横に振って否定した。

「違うってば。姉ちゃんは俺と同じベルギーのワロン地方出身で、今は結婚してリヨンに住んでるんだ。それに、仕事は国家機関のスパイなんかじゃなくて、ごく普通のOLだよ」

アンドレのそのあまりにも現実的で平穏な説明を聞いて、男子生徒たちは「えー、普通のエリートOLなのか……」「スパイであってほしかったぜ……」と大げさに肩を落とし、女子生徒たちは「やっぱりね、映画の見過ぎなのよ」と満足そうに頷くのであった。

イザベルは作中出てくる女性キャラの中では(恐らくですが)一番身長が高いです。私も身長を描写する時、女性キャラの身長を高めに設定してしまう傾向があるかなと思いました。

ちなみにセシルは166センチ、マリアは157センチになります。

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