明日の準備
夕食が終わり、寝室に戻ったアンドレは、ベッドの端に腰掛けながらスマートフォンを取り出した。
普段は学校近くの全寮制の施設で暮らしているため、毎日の登校時間や電車のダイヤを細かく気にする必要はなかった。しかし、今週は実家から学校に通うことになる。明日の朝慌てないよう、何時に起きるべきか、どの電車の時刻に乗れば遅刻せずに余裕を持って校門にたどり着けるか、しっかりと乗り換え案内アプリで電車の時間を調べていた。
「よし、明日はこの電車の時間に乗れば大丈夫だな……」
念入りにアラームの時間を設定し終えると、アンドレは安心してベッドに入り、心地よい疲労感の中でそのまま深い眠りについたのだった。
その様子を、寝室のドアの隙間からイザベルは密かに見つめていた。
消えかけた部屋の明かりの向こうで、誰に言われるでもなく自分で明日のスケジュールを確認し、しっかりと時間管理をしている弟の姿。その頼もしい背中を見て、イザベルはふっと誇らしげな笑みを浮かべた。
(――しっかり時間通りに行動すること。今日のマナー講座を通じて、知識だけじゃなくて、そういう時間の管理や段取りの意識もちゃんと身についているみたいね……)
姉としての厳しさと、弟の成長を見守る深い愛情を胸に抱きながら、イザベルは静かにその場を離れた。
土曜日の本番へ向けた準備は、心も体も着実に、そして完璧な軌道に乗っていた。
以上で前編を終わります。
次回からは中編へと移ります。




