可愛いプレゼント
アンドレとクロードによる男同士のマナー講座が無事に終わると、クロードは「さて、そろそろ妻と娘を呼んできようか」と微笑み、子供部屋へと向かった。
子ども部屋のドアをノックし、特訓が終わったことを告げると、イザベルは「お疲れ様、クロード。うまく教えられたかしら?」と満足そうに微笑んだ。その傍らで、エマはパパの足元にぴたりとくっついてリビングへと戻ってくる。
リビングに戻ると、エマはまっすぐにアンドレのもとへトコトコと駆け寄った。そして、背中に隠していた画用紙を嬉しそうに差し出す。
「アンドレおじちゃん、これプレゼント!」
「えっ、これって……?」
受け取った画用紙には、エマが一生懸命描いた立派なライオンの絵と、その下にフランス語で「Allez, courage tonton André !」と書かれていた。
エマは少し背伸びをしながら、一生懸命に言った。
「この絵のライオンさんみたいに、おじちゃん強くてかっこいい立派な人になってね! エマ、応援してるから!」
可愛い姪っ子からの心のこもったプレゼントと真っ直ぐな応援の言葉に、アンドレは胸が熱くなり、絵を大切に両手で抱えながら笑顔で答えた。
「ありがとう、エマ! おじちゃん、このライオンさんみたいに立派になって、必ず土曜日のテスト勉強を成功させてくるよ!」
その微笑ましいやり取りを見て、イザベルとクロードは温かい眼差しで二人を見守っていた。
その後、夕食の準備ができるまでの間に、アンドレはシャワーを浴びることにした。家族の中で最後にお風呂に入った者が行うという我が家のルールに従い、アンドレは風呂上がりにしっかりと浴槽や床をピカピカに磨き上げ、水滴まで綺麗に拭き取る。その手際よく丁寧な動きに、イザベルは「ふふ、全寮制の学校でちゃんと生活習慣が身についているみたいね」と内心で感心していた。
そして――いよいよ夕食の時間となった。
今夜のメニューは、料理上手な義兄クロード特製の、栄養満点で香り高いビーフシチューと焼き立てのパンだ。
食卓を囲みながら、アンドレは昼間にイザベルから教わったフォークとナイフの正しい持ち方や、背筋をスッと伸ばした美しい座り方、そしてスープやパンを食べる際の上品な所作を、意識的にすべて実践してみせた。
その様子を斜め向かいからじっと観察していたイザベルは、ふうっと安堵の息を漏らし、グラスの水を飲みながらクロードに小声で囁いた。
「ねえ、クロード……見て。あの子、さっき私が教えたテーブルマナーの基本をちゃんと綺麗に守って食べてるわ。あんなに最初はガサツだったのに……。ちゃんと特訓の成果が出ているわね」
「ハハ、そうだね。本人の努力はもちろんだけど、君のスパルタ指導の賜物さ」とクロードも優しく微笑み、家族全員で和やかな笑い声に包まれた美味しい夕食の時間を楽しむのであった。
土曜日の本番に向けて、心強い味方たちに囲まれながら、アンドレの準備は着実に完璧へと近づいていた。




