↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リヨンの高校生たちの群像劇  作者: Red Baron
イザベルお姉さんのマナー講座(前編)
PR
77/91

女同士の作戦会議とサプライズ

その頃、子供部屋では――。


可愛らしい動物のぬいぐるみに囲まれた空間で、エマが大きなお気に入りの動物図鑑を開いていた。その隣には、優しく微笑むイザベルがぴったりと寄り添って座っている。

エマはページをめくり、大好きなライオンが大きく描かれたページで小さな指を止めた。


「ねえママ、ライオンさんはどうしてこんなに髪の毛(たてがみ)がたくさんあるの?」と、エマが首をかしげて尋ねた。


イザベルは愛おしそうに娘の頭を撫でながら、優しく説明した。

「それはね、お父さんのライオンさんは立派なたてがみがあることで、自分の強さや家族を守るかっこよさをみんなに示しているのよ。……そういえばね、エマ。今週末の土曜日に、アンドレおじちゃんもね、とっても大切な人のお家に行くことになっているの。そこで失敗しないように、今パパとママと一緒に一生懸命お勉強をしているところなのよ」


すると、エマはパッと顔を輝かせた。

「セシルお姉ちゃんのこと? 前におじちゃんと一緒にうちに遊びに来た時、エマに動物さんの生まれた場所をたくさん教えてくれた、あの優しい可愛いお姉ちゃんだよね! エマ、ちゃんと覚えてるよ!」


その無邪気な言葉に、イザベルはふっと微笑んだ。

「そうよ、よく覚えていたわね。ママも、セシルちゃんのことは大好きよ」


しかし、エマは少し心配そうな顔をして首を傾げた。

「でもね、さっき玄関で会った時のおじちゃん、なんだかすごく緊張してて怖がってるみたいだったよ……」


イザベルはクスッと笑いながら、娘の言葉にうなずいた。

「ふふ、そうね。今のアンドレおじちゃんは、まだ生まれたばかりの小さなライオンの赤ちゃんだわ。だけど、パパやママから色んなことを教わって、おじちゃんはどんどんライオンさんのようにたくましく成長しているところなのよ」


それを聞いたエマは、小さな胸を張って力強く言った。

「じゃあ、エマもアンドレおじちゃんのこと、いっぱいいっぱい応援する!」

そう言うと、エマはクレヨンと画用紙を取り出し、一生懸命に絵を描き始めた。画用紙いっぱいに元気なライオンの絵を描き、その下にはフランス語でこう書き記した。


「Allez, courage tonton André !」 (アンドレおじちゃん、がんばれ!)


イザベルは微笑ましそうにその絵を覗き込み、部屋中に並べられた動物のぬいぐるみたち――クマ、ゾウ、キリン、アルパカ、キツネ、ウサギ、ネコ、そしてヘビのぬいぐるみたちに向かって優しく語りかけた。

「ねえ、エマ。アンドレおじちゃんが立派なかっこいいライオンさんになれるように、エマとお友達の動物さんたちも、みんなで協力してあげてくれる?」


エマは「うん!」と元気よく返事をすると、お気に入りの小さなおままごとセットを取り出した。

「よし! このおままごとをセシルお姉ちゃんの素敵なお家に見立てて、エマがおじちゃんのお勉強の練習台になってあげるの!」


「それは素晴らしいアイデアね!」とイザベルも目を輝かせ、お友達の動物たちの役割分担をエマと一緒に楽しそうに考え始めた。


リビングで男同士の熱い指導が行われている一方、子供部屋では――愛娘エマとイザベルによる、最高に微笑ましくも心強い「女同士の秘密の作戦会議(マナー講座)」が、こうしてひそやかに幕を開けていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。