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リヨンの高校生たちの群像劇  作者: Red Baron
イザベルお姉さんのマナー講座(前編)
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スマートな退室

「さて、玄関、面接、勉強中の距離感、そしてテーブルマナーと一通りやってきたけれど……最後に一番大事な締めくくりを教えるわ」


イザベルはスパルタ教官の表情に戻り、アンドレに指を突きつけた。

「それはな、 『帰る時の片付けとスマートな退室の仕方』 や!」


アンドレは「えっ、帰る時もそんなに細かいルールがあるのかよ」と驚いたが、イザベルは真剣なトーンで説明を続けた。

「当たり前や! どんなに勉強を頑張って、セシルちゃんのご家族と仲良くなっても、終わった後の片付けや最後の退室の仕方がだらしなかったら、これまでの好印象がすべて台無しになってしまう。最後の最後まで気を抜かんことや」


イザベルは具体的な手順を、良い例と悪い例を交えて指導する。


1. 勉強を終えた後の「片付け」の作法

NGな例:「終わったー!」と言って、使った参考書やノートを机の上に広げたままにしたり、椅子を引いたまま立ち上がること。

OKな例:自分が使った教科書やノート、消しゴムのカスを綺麗にまとめる。使わせてもらった机の上は、来た時よりも美しく整頓すること。


2. 部屋やリビングからの「退室の作法」

立ち上がる時は、椅子を音を立てずに静かに元の位置へ戻す。

部屋を出る時、もしドアが閉まっていた場合は、自分で閉めずに少し開けたままにするか、家族がいるリビングを離れる時は「失礼します」と一礼する。


3. 玄関での「最後の挨拶と靴の履き方」

家の玄関までセシルちゃんやご家族が見送りに来てくれた場合、そこで気を緩めてはいけない。

玄関を背にして、家族の方々としっかり目を合わせ、笑顔と落ち着いた声ではっきりと感謝を伝える。

「本日はお招きいただき、本当にありがとうございました。とても勉強になりました」

靴を履く時も、お尻を向けないように注意しながらスマートに履き、最後に綺麗に靴の向きを揃える。


「そして最後に、ドアを開けて外に出る瞬間……。完全に外に出るまで、決して気を抜かないこと。門をくぐるまで、あるいはセシルちゃんたちが見えなくなるまで、背筋をピンと伸ばした紳士のままでいることや。それが、相手の家族に『またこの子を呼びたい』と思わせる究極のコツなんやからね!」


イザベルの熱のこもった指導を聞き、アンドレは「なるほど……終わりよければすべて良しってわけだな。最後まで気を抜かずにやり切るよ」と大きくうなずき、本番を完璧にやり遂げる決意を新たにするのであった。


「なあ、姉ちゃん。そもそもテスト勉強の終わりの時間って、何時くらいを想定してればいいんだ?」

アンドレが首をかしげながら尋ねた。セシルと一緒に勉強する約束はしたものの、いつまで居座っていいのかピンときていない様子だ。


イザベルは「そこよ!」とばかりにビシッと指を立てた。

「終わり時間を自分で決めずにダラダラ居座るなんて言語道断や! 相手のご家族にも夕方の家事や夕食の準備がある。どんなに勉強が楽しくても、基本的には夕方17時、遅くとも18時前には切り上げるのがマナーやね」

「あまり遅くまで居座ると、相手のご家族のプライベートな時間を奪うことになるし、『気が利かない子だな』って思われてしまうから要注意やで」


時間を意識することの大切さを叩き込んだ後、イザベルは立ち上がった。

「よし、理屈はそこまでや。今から実際に、勉強が終わったところから玄関を出るまでの流れを、全部通して練習してもらうで!」


リビングを、セシルの家のリビングの机に見立て、アンドレは実践をスタートさせた。


勉強終了の合図と片付け

時計を見て「そろそろこの辺りにしておこうか」と落ち着いた声で区切りをつけ、参考書やノートを素早く、かつ丁寧にまとめる。


椅子の収納と起立

椅子を静かに引き、音を立てないように元の位置へ戻してスッと立ち上がる。


退室と最後の挨拶

「本日は本当にありがとうございました。とてもはかどりました」と、玄関で見送るセシル(に見立てたイザベル)に向かってしっかりとお辞儀をする。


靴のスマートな脱ぎ履きと扉の向こう

お尻を向けないように注意して靴を履き、ドアを開けて外へ出る瞬間まで、背筋を伸ばして凛とした態度を崩さない。


イザベルは厳しい視線を送りながらも、「……うん、さっきよりずっと板についてきたやないか。その調子や! 家に入ってから、出るまでの動きを忘れんようにするんやで!!」と、最後には満足そうに頷(うなづ)いたのだった。

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