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リヨンの高校生たちの群像劇  作者: Red Baron
イザベルお姉さんのマナー講座(前編)
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紳士の対応

ロールプレイングのフィードバックを終えると、イザベルは腕時計を確認し、次に土曜日本番の当日のスケジュールと行動の確認へと移った。


「さて、土曜日の当日の動きについて確認するよ。アンドレ、あんたは土曜日の朝、ここ(実家)を出て電車で最寄り駅まで向かうのよね?」

「うん、13時に駅でセシルと待ち合わせをする予定になっているよい」とアンドレが頷くと、イザベルは表情を引き締めて言った。


「セシルちゃんのお家に行くのは今回が初めてやんな? 当日はセシルちゃんの案内で家まで向かうことになる。その道中の接し方で、男の器量が決まるんやからね」

イザベルは指を折りながら、道中での鉄則を挙げた。


1 距離感:「近づきすぎず、遠すぎず。絶妙なパーソナルスペースを保つこと」

2 歩幅:「絶対に自分のペースで歩かない。常にセシルちゃんの歩幅に合わせなさい」

3 身だしなみと態度:「ポケットに手を入れたり、歩きながらスマホをいじったりするのは論外。そんなことをしたら一発でアウトや」

4 会話:「セシルちゃんの会話にしっかりと耳を傾けること。自分の自慢話や、学校の愚痴なんて絶対にしたらいかんよ」


「その理由は何だと思う?」とイザベルが問うと、アンドレは「えっと……エスコートする相手への気遣いを見せるため?」と答えた。

「その通り! 道中での気遣いができない男は、どんなに勉強ができても信用されない。すべての行動が『私はあなたを大切に思っています』というメッセージになるんや」


続けてイザベルは、さらに踏み込んだ重要な忠告をした。

「玄関の入り方やご家族との面接の練習はしたけど、実際に『どこで勉強するか』――つまり、リビングで勉強するか、セシルちゃんの部屋で勉強するかについてはまだ話していなかったね」

アンドレがハッとした顔をすると、イザベルはそれぞれのパターンを想定して解説を始めた。


パターンA:リビングで勉強する場合

「もしリビングに通された場合、ご家族の目が常にあるプレッシャーの高い環境や。ここで良い例は、姿勢を正して分からないところを誠実に質問し、適度に周りへの配慮を見せること。悪い例は、ご家族がいる前で必要以上に馴れ馴れしくしたり、ダラけた態度をとることや。あんたがするべきことは、常に『私は真面目に勉強しにきました』という姿勢を背中で語ることやね」


パターンB:セシルの部屋に通された場合

イザベルは真剣な表情を一段と強め、アンドレをじっと見据えた。

「そして、もしセシルちゃんの部屋に案内された場合……ここは、あんたの『紳士としての真価』が最も試される最大の難所や!」

「ご家族…特にお父様やお兄様は、年頃の男女が一部屋で二人きりになるという環境に、どうしても心配や警戒心を抱くものよ。だからこそ、部屋に入った時、あんたはドアを開けたままにしておきなさい」


「えっ、ドアを開けっぱなしにするの? もしセシルかご家族の誰かがドアを閉めちゃったらどうするの?」とアンドレが尋ねると、イザベルは即座に答えた。

「その場合はそのままでいい。無理に開け直そうとせず、相手の意向に従いなさい。ただし、二人きりの空間になったからといって、絶対に羽目を外さないこと! あんたの心のブレーキを普段の2倍に引き締めなさい」


さらにイザベルは、少女のプライベート空間に対する絶対的なルールを言い渡した。

「部屋に入れば、男子高校生の普段の生活ではお目にかからないような、彼女の私物や趣味のものが目に入るかもしれない。だが、これらを見回したり、興味本位で触ることは絶対に厳禁や! あくまで『テスト勉強をしに来た』という本来の目的を絶対に忘れてはならない。いいかい、部屋は、彼女にとって『聖域』なんやからね」


イザベルの圧倒的な説得力と細やかな気配りに、アンドレは深くうなずき、本番に向けて気を引き締めるのであった。

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