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リヨンの高校生たちの群像劇  作者: Red Baron
都市伝説の真実
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伝えられた真実

自室にいたアンドレの元に、担当舎監のルフェーヴル先生がやってきた。

「ランベール。お前のお姉さんが話があるそうだ。ロビーの共有スペースまで来るように」

「……姉ちゃんが?」

アンドレは突然のことに戸惑いながらも立ち上がり、指定された共有スペースのソファーへと向かった。


そこで待っていたイザベルを見つけると、アンドレはさっそくワロン訛りの混じった調子で切り出した。

「姉ちゃん、面談は大丈夫やったんか?」

「大丈夫やよ。日曜日に電話であんたが話した通り、私の行動は保護者として正当な判断やって先生方もおっしゃってくれたわ」

イザベルはそう言って優しく微笑むと、さらに言葉を続けた。

「それとな、私、あんたの書類上の保護者としても追加で登録されることになったんや。父さんや母さんやと、もしあんたに何かあったときにこちらへ向かうまでどうしてもタイムラグがあるやろ? 近くにいる私が保護者になることで、父さんと母さんとの橋渡し役になれたらええなと思ったんや」


その言葉を聞いたアンドレは、胸の内で密かに自嘲した。

(俺、姉ちゃんにクロード義兄さんやエマと一緒に暮らしてほしかったから、わざわざリセで寮生活を選んだのに……これじゃあ、昔と何も変わってないやんけ……)


そんな弟の心を察したのか、イザベルはズバッと見透かすように言った。

「また『姉ちゃんに迷惑かけたな』って思っとるやろ? そうやないからな。あんたはまだ未成年なんや。まだまだ保護者の助けが必要なんやで。ある程度のことは一人でできるようになってきたけどな」


そう言うと、イザベルはバッグから学生寮の規則が書かれたハンドブックを取り出した。それはアンドレも9月の説明会でもらっていたものだった。

「あんた、これちゃんと読んどるか?」

「読んどるよ」と返すアンドレに、イザベルは「ホンマか?」と疑わしげな目を向け、冊子を開いて右の人差し指をピッと突きつけた。

「ここ、読んでみい。第13条や」


アンドレもその条文はよく知っていた。

「知っとるよ。どこか間違っとるんか? 女子を学生寮の建物に入れたら退学になるんやろ? 土曜日も話したけど、セシルを姉ちゃんの家に招待したのも、それがあったからやんか……」

それを聞いたイザベルは、盛大にため息をつきながら言った。

「全然わかっとらんわ。禁止しとるのは寮の『建物』やなくて、部屋、つまり『居室』やで。学生寮のロビーなら、セシルちゃんと一緒に勉強したってセーフなんや」


アンドレが「え……?」とポカンとしていると、イザベルはさらに呆れたように続けた。

「あんた、毎日この寮で生活していておかしいと思ったことないんか? 異性が立ち入り禁止なら、どうして他の女の子が建物の中に普通に出入りしとるんや? まあ、私も学生寮のことなんか知らんかったから、はじめはあんたの言うことが正しいと思っとったけどな。一昨日、日曜日にあんたから報告の電話モンをもらったあと、クロードに話したら『そんな規則、フランスの寮ではあり得ない』って言っとったで。だから今日、その疑問も先生方に聞いたら、クロードの言う通りのことやったんや」


イザベルは少し呆れ顔になりながら、トドメとばかりに言った。

「あんた、文系科目は昔から大の苦手やったもんなぁ。先生方もおっしゃっとったけど、難しい表現が多いから誤解されやすいんやって。この前の電話でも、保護者の定義をすっかり勘違いしとったやろ? これからは、規則についてわからないことがあったら、一人で勝手に決めんと、ちゃんと先生に聞きなさい。保護者としての命令やで」


それを聞いたアンドレは、目を丸くして聞き返した。

「じゃあ……女子を部屋に呼ばなければ、寮のロビーに呼んでも退学にはならへんの……?」

「ならんよ! そもそも、この学生寮は生徒を退学にすることなんてできんのやから。退寮と退学は全く別物やって先生が教えてくれたわ」


さらにイザベルは真剣な表情に戻って諭した。

「なんで『異性を寮に入れたら退学になる』なんて噂が広まったのか、そして寮生のみんなが噂していた『退学になった先輩』の真相についても、いずれ学校からちゃんと話されると思う。でも、どうしてそんな曲がった噂が広まってしもうたんか、その理由もちゃんと先生に聞くんやで」


その言葉の数々に、アンドレは自分がこれまでいかに大きな勘違いをして、勝手に恐怖に怯えていたのかを思い知り、激しく猛省した。


「ふぅ……。まあ、あんたの保護者としての説教はこれでおしまいや。あ、私が新しく保護者になったことについては、あとで私から実家の両親にも話しとくからな」

「……うん、ありがとな、姉ちゃん。わざわざ先生たちにいろいろ聞いてくれて……」

アンドレが頭を下げると、イザベルは満足そうにうなずき、立ち上がった。


その後、イザベルはルイ・ル=グラン高等学校リヨン分校の学生寮をあとにし、愛車のエリクサー・レッドのプジョー308GTに乗り込んで、夕暮れの街へと帰路についたのだった。

次回から新章に入ります!

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