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リヨンの高校生たちの群像劇  作者: Red Baron
都市伝説の真実
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都市伝説の真相

「どうぞ、お尋ねください」とモルヴァン先生が促すと、イザベルは少し言葉を選びながら、慎重に切り出した。


「実は……アンドレから『この学生寮では、女子生徒を建物に入れたら即退学になる。だから寮内では男女が会話をすること自体がタブーなんだ』と言われまして……」

その言葉を聞いた瞬間、モルヴァン先生とルフェーヴル先生は驚きの表情を浮かべたが、イザベルはそのまま話を続けた。

「私も、学生寮といえば男子と女子が完全に隔離されているものだと思い込んでいました。でも、この前夫にそのことを話したら『それはフランスの学生寮の仕組みとしてあり得ないルールだ』と言われまして。さらに、今日こうして寮に入ったとき、男子寮のはずなのに女子生徒の姿も見かけたので、私の想像していたのとは全然違うなと思ったのです」


それを聞いたモルヴァン先生は、かけていた老眼鏡をそっと外し、机の上に置いた。

「――なるほど。それは、我々教員側も長年頭を悩ませている問題なんですよ」

そして、ルフェーヴル先生がうなずきながら言った。

「結論から申し上げますと、ご主人のおっしゃる通りです」


ルフェーヴル先生は手元のハンドブックを開き、特定のページへと指を滑らせた。


Article 13 (Principe concernant l'accès du sexe opposé)

1. L'accès aux « chambres » (dortoirs et chambres individuelles) des résidences pour garçons et filles par une personne du sexe opposé est strictement interdit.

2. L'interdiction mentionnée à l'alinéa précédent s'applique non seulement aux élèves inscrits, mais à toute personne, y compris les personnes extérieures.

3. En cas de violation des deux alinéas précédents, après vérification des faits, une procédure disciplinaire sera engagée, déterminée par le directeur de l'internat et le proviseur. Dans les cas graves, cela peut entraîner l'expulsion de l'internat, voire un renvoi devant le conseil de discipline de l'établissement.


(第13条:異性の立ち入りに関する原則)

1. 男子寮及び女子寮の「居室」(寝室・個室)への、異性の立ち入りを禁ずる。

2. 前項の禁止は、在籍生徒間に限らず、外部者を含むすべての者に適用する。

3. 前二項に違反した場合は、事実確認のうえ、寮長及び校長が定める懲戒の対象とする。重大な場合は、寮からの退去、ひいては校内懲戒委員会付託となる場合がある。


ルフェーヴル先生は規約の文面を指し示しながら、穏やかな声で説明した。

「ご覧の通り、規則で禁止しているのはあくまで『異性寮生の個室への立ち入り』であり、建物全体への立ち入りを禁止しているわけではないのです」


イザベルは大きく息を吐き出し、胸のつかえが下りたような安堵の表情を見せた。

「……それでは、どうしてあんな極端な噂が学生たちの間で広がってしまったのでしょうか?」

イザベルのその疑問に、ルフェーヴル先生は一つひとつ数えるように語り始めた。

「心当たりは、大きく分けて4つほどあります」


1. 教員からの注意・指導

我々教員は、生徒が大きな処罰を受けないよう、未然に防止するために日頃から指導を行います。恐らく『そんな軽率なことをしたら罰則の対象になるぞ』という注意が、彼らの間では『これをやったら一発で退学になる』という意味に大きく拡大解釈されてしまったのでしょう。


2. 難解で曖昧な表現が多いこと

先ほどの保護者の定義のお話でも触れましたが、生徒たちは細かい条文や難しい表現の部分を読み飛ばしたり、自分都合で間違って覚えていることがよくあります。今回のケースで言えば、第1項にある『居室』という言葉の定義が彼らにとっては曖昧になっていたのだと思います。


3. 退学への強い恐れ

誰だって、学校を退学にはなりたくありません。そのため、真面目な生徒ほどこうした噂を過剰に信じ込んでしまうものです。今回のランベール君も、まさにその典型でした。規則を守ることはもちろん大切ですが、我々としては何が良くて何が悪いのかを正しく見極めて、充実した学生生活を送ってほしいと願っています。


ここで、ルフェーヴルは一度言葉を切り、隣に座るモルヴァン先生に目を向けた。「モルヴァン先生、この最後の理由についても、私からお話ししてもよろしいですか?」と尋ねると、モルヴァンは「ええ、構いませんよ」とうなずいた。ルフェーヴルは再びイザベルに向き直り、少し声を潜めて続けた。


4. 上級生から下級生への悪質な「指導」

実は、寮生の間で、この噂が先輩から後輩への指導(という名の脅し)に使われているケースがあるのです。『過去に異性の生徒を学生寮に入れて退学になったやつがいるから、絶対に建物の中に入れるな』と……。ひどい場合は、これで下級生を脅して萎縮させる悪質な上級生もいるのです」


その話を聞いたイザベルは、思わず目を見開いた。

「……あの、その『異性を学生寮に入れたことで退学になった生徒』という話は、本当なのですか?」


ルフェーヴル先生はふうと小さく息をつき、静かに首を横に振った。

「過去にトラブルが起こったこと自体は事実ですが、様々な出来事が混ざり合って歪められています。真実は、その生徒が異性を自分の部屋に入れたことが発覚したことで、まずは『退寮処分』になったということです。ただ、その生徒は一発で退寮になったわけではなく、日ごろから他の規則違反も重なっていたための累積での処分でした。その後、その生徒はいつの間にか学校自体も辞めることになったのですが、噂が一人歩きするうちに、生徒たちの間では『異性を学生寮に入れたから退学になった』という話にすり替わって広まってしまったのだと思います」


イザベルは納得したように深くうなずきながら、驚きと呆れが入り混じったような複雑な笑みを浮かべたのであった。

こういうことが大きく捉えられることは現代でもあることですよね。

皆さんはこういった経験はありますか?

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