イザベルの疑問
火曜日の17時。仕事を終えたイザベルは、愛車であるエリクサー・レッドのプジョー308GTに乗り込み、会社をあとにしてルイ・ル=グラン高等学校リヨン分校へと急いだ。
日曜日のことだった。弟のアンドレから「土曜日の件は、結局お咎めなしだったよ」と連絡を受けたとき、イザベルは胸をなで下ろした。しかし、それだけでは終わらなかった。「もし先生のご都合が良ければ、お姉様ともお会いして直接お話できませんか?」と、アンドレが担任からの伝言を告げたのだ。
9月の入寮説明会のときは、娘のエマの育児に追われていたため、母親がアンドレの付き添いとして学校へ赴いていた。そして今日、火曜日こそが、その面談の日だった。
だが、イザベルがこの分校へ向かう理由は、面談だけではなかった。
もう一つ、彼女の胸の内でくすぶっていた疑問があった。それは、アンドレが言っていた「異性を学生寮の中に入れたら即退学」という厳格な規則が、本当にそこまで徹底されているのかという点だ。
自分自身は学生寮の経験がないイザベルは、これまで学生寮といえば、男子寮と女子寮が完全に別の建物に切り離された、まるで厳格な修道院のような場所を想像していた。
しかし、学生寮に通ったことのある夫のクロードから、先日こう聞かされていたのだ。
「フランスのリセの学生寮の多くは、男子寮と女子寮が完全に別々の建物に建っているわけじゃないんだ。同じ一つの大きな建物の中で、フロアや区画ごとに『男子居住エリア』『女子居住エリア』と厳重にセキュリティを分けて管理しているのが一般的なんだよ。もちろん居住エリアや部屋の中へ異性を入れるのは重い処罰の対象になるけど、食堂やラウンジといった共有スペースで男女が一緒に勉強したり、会話を交わしたりすることまで禁止はしていないはずだ」
夫のその言葉を聞いて以来、イザベルの頭の中には小さな疑問の芽が育っていた。
――実際のところ、あの厳格なリヨン分校の寮はどうなっているのだろうか?
夕暮れの街並みを赤く鮮やかなプジョー308GTが滑らかに駆け抜けていく。イザベルはハンドルを握りながら、面談への緊張感と、長年の思い込みを確かめたいという好奇心を胸に、学校へと急ぎ足で車を進めた。
新章突入です。学生寮に流れていた都市伝説の真相が明らかになります!!




