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リヨンの高校生たちの群像劇  作者: Red Baron
間違ったルールの覚え方
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38/88

処分の結果

モルヴァン先生に促され、アンドレは静かなロビーを抜けて寮の面談用の個室へと案内された。

先生は机を挟んで向かいの椅子に腰を下ろすと、手元に白い一枚の報告用紙を置き、万年筆を構えた。


「さて、ランベール君。君のペースで構いませんから、昨日の朝からの一連の経緯を順を追って説明してもらえますか」

丁寧で落ち着いた声遣いに、アンドレは喉の奥を一度潤し、イザベルからの言いつけ通り一切の嘘や虚飾を交えず、ゆっくりと口を開いた。先生がメモを取る速度に合わせながら、丁寧に言葉を紡いでいく。


「はい。昨日、僕は土曜日の午前の外出許可を申請し、同級生のセシル・サルヴェールさんと一緒に、リヨン市内に住む僕の実の姉、イザベル・モローの自宅へ向かいました。目的は、次の試験に向けた勉強会を行うためです。僕たちの学生寮は規律上、建物内に異性を招き入れることが一切禁止されています。そのため、勉強に集中できる場所として姉の家を借りることにしました」

モルヴァン先生は万年筆を滑らせ、要点を紙に書き留めていく。

「二人で試験勉強に集中しすぎてしまい、気がついた時にはすでに18時を回っていました。そこから最寄り駅へ走っても、寮の門限である19時の点呼に間に合う電車がありませんでした。姉は、真っ暗な夜道を急いで移動するのは危険であり、僕の安全を最優先に確保すべきだと判断しました。そして寮の事務室へ連絡を入れた上で、今夜は自宅に泊まって翌日の午後に戻るようにと、僕に強く促したのです」


アンドレが話し終えると、モルヴァン先生はポケットから老眼鏡を取り出して鼻先に掛け、用紙に走らせたメモを見返した。

「なるほど……よく分かりました。では、同行していたセシル・サルヴェールさんはどうされましたか?」

「はい。姉が自分の車を出し、彼女の自宅近くの明るい広場まで責任を持って送り届けました」

先生は再び用紙に視線を落とし、しばし静かに考え込むようにペン先をトントンと机に当てた。


「一つ確認したいのですが、お姉さんのイザベル・モローさんは、今年9月の入寮説明会や手続きの場にいらっしゃいましたか?」

「いえ……9月の入寮手続きには、ベルギーから母が来ていました。そのため、書類上の保護者・身元引受人は母の名前になっています」

「分かりました。念のため、ベルギーにいらっしゃるお母さまに事実関係の確認でお電話を差し上げてもよろしいですか?」

「はい、問題ありません。母にも昨夜のうちに姉から連絡がいっています」


アンドレの了承を得ると、モルヴァン先生は一度席を外し、奥の事務室の電話へと向かった。

張り詰めた静寂の中、アンドレは祈るような気持ちで待った。

数分後、部屋に戻ってきたモルヴァン先生は、老眼鏡を外して穏やかな笑みを浮かべた。

「お母さまと直接お話しできましたよ。イザベル・モローさんが君の実のお姉さんであること、そして昨夜の経緯についても完全に一致しました」


先生は椅子に座り直すと、用紙にサインを書き加えながら告げた。

「今回の件ですが、処分ではなく『外出届と外泊届の相違についての指導』および『寮規則の再確認』という扱いにとどめます」

「えっ……処分には、ならないんですか……?」

アンドレは目を丸くした。規律の厳しいこの寮において、外泊届を出さずに夜を明かした以上、反省文や減点などの処分は免れないと覚悟していたからだ。


モルヴァン先生は、アンドレの驚きと安堵が入り混じった表情を優しく見つめ、その心情を察したように頷いた。

「形だけを見れば、事前に外泊届が受理されていない『無断外泊』に映るかもしれません。しかし、今回は血縁者である実の姉からの迅速な事前連絡と名乗りがあったこと、夜間に未成年者を焦って移動させるのは危険であるという妥当な安全判断があったこと、そして物理的に寮へ戻る交通手段がなかったこと。これらを総合的に鑑み、規則を故意に無視した悪質な無断外泊ではないと判断しました。また、同行していたサルヴェールさんを成人の保護のもとで親元へ安全に送り届けたという点においても、校則が禁じる『生徒同士の無断外泊』には該当しません。したがって、君に科すべき規則違反はありませんよ」


理路整然とした温かな判断に、アンドレは胸の奥が熱くなり、深々と頭を下げた。

「先生……ありがとうございます」


「ですが、ランベール君。君の話を聞いていて、私からもさらに深く確認したいことができたのですよ」

モルヴァン先生は机の引き出しから一冊の青い手帳を取り出し、アンドレに視線を向けた。

「君の鞄の中に、入寮時に配られた『学生寮生活規則の冊子』は入っていますね? それを出してもらえますか」

皆さんはどんな結果を予想していましたか?

次は18時に投稿する予定です。

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