昼休みの職員室
同じ金曜日の昼休み、生徒たちの賑やかな声が中庭から微かに届く職員室の奥で、ジラール先生とルフェーヴル先生が静かに言葉を交わしていた。
「ルフェーヴル先生、昨日は急な要請にもかかわらず、女子寮の点呼を引き受けてくださり本当にありがとうございました。おかげで助かりました」
ジラール先生が深く頭を下げると、頑強な体躯のルフェーヴル先生は「いや、お気になさらずに」と短く首を横に振った。
「こちらも男子寮の点呼を前倒しにすることでスムーズに対応できました。ランベール君をはじめ、生徒たちも規則を守って早めに戻ってくれていましたからね。……それで、昨日の面談はいかがでしたか?」
「ええ、その件なのですが……」
ジラール先生は周囲に聞こえないよう声を潜め、昨夜、面談室で女子生徒から投げかけられた相談と、学生寮の規則をめぐる見解について順を追って話し始めた。
話が進むにつれ、普段は厳格な面持ちを崩さないルフェーヴル先生の太い眉がわずかに持ち上がった。しかし、ある程度まで内容を聞いたところで、彼はふと真顔になってジラール先生を見つめた。
「ジラール先生、差し出がましいようですが……その生徒のプライベートに関わる内容を、私が伺っても差し支えないのですか?」
教員としての高い倫理観と守秘義務を重んじるルフェーヴル先生らしい問いかけに、ジラール先生は柔らかな笑みを浮かべて頷いた。
「ええ、ご心配なく。昨日のうちに彼女自身から『男子寮でも同じ誤解があるなら、学校全体で解決すべき問題だからルフェーヴル先生にも共有してほしい』と、はっきりと了承を得ています」
「なるほど……。それほどまでに、彼女自身も真剣にこの問題を受け止めているということですね」
納得したルフェーヴル先生は腕を組み、ジラール先生からの詳しい報告の続きを最後まで真摯に聞き届けた。
すべての説明が終わった後、二人の間には重みのある沈黙が流れた。
「――やはり、そうでしたか」
ルフェーヴル先生は深く息を吐き、静かに視線を落とした。
「長年にわたり生徒たちの間で誤った解釈が定着し、根拠のない噂や過度な締め付けとして一人歩きしてしまっていた……。大人の側が規則の本来の意図を正確に伝えきれていなかった責任は重いですね」
「ええ。生徒たちが過度な窮屈さや誤解を抱えたまま寮生活を送ることは、教育上決して健全ではありません。私たち教員の手で、きちんと真実を生徒たちに伝えなければなりませんね」
ジラール先生の言葉に、ルフェーヴル先生も力強く頷いた。
「同感です。近いうちに男子寮と女子寮の全員を集めて全体集会を開き、規則の本来の趣旨と正しい解釈について再確認を行う機会を設けましょう」
「ええ、日程を調整して準備を進めましょう」
二人の教師は静かに頷き合い、生徒たちの生活を守り導くための決意を共有していた。




