閑話 夏の憂鬱と昴の憂鬱
今日は俺の友達の話をしよう。
彼の名前は伊集院昴、この七色学園に通う、俺と同じクラスの同級生だ。
彼との出会いはたまたま席が近いと言うだけだったが、話してみて案外いいやつだと思った。
彼について話すなら色々な逸話がある、伊集院財閥の御曹司であり、顔がイケメンで金髪ハーフ、女性には優しく紳士、ファンクラブまである、などなど。
正に男子の理想、女子の妄相、誰もが羨む完璧DK(男子高校生)そんな彼と俺は友達だが彼の家には行ったことはない、玄関開けたら干物に変身するのかもしれないがそんな姿は想像できない。
彼が俺、友田をどう思っているのかは、俺は知らない。俺が彼に聞くことはないだろう。
これは彼の物語だから
◇◇◇
僕の世界は狭い。
家は伊集院財閥、会社もいくつも持っており、政界にまで名前は轟いている。
しかし、家が大きかろうと、僕、伊集院昴は小さい人間なのかもしれない。
我が家の家訓は、『完璧であれ』冗談のように聞こえるが、常に言われ続けている言葉だ。
伊集院の家は常に前に立ち、民を導き繁栄してきた。
導く人間が完璧でなくては民は不安になると大真面目に言われている。
僕はこの言葉を常々守ってきた。
完璧な人間であろうとした。
例え無理だとしても…
僕が自分の家が経営している私立七色高等学園に入る事は前から決まっていた、そこでも僕は完璧であろうと自分がトップであろうと思っていた。
しかし…
「あなたが新入生代表ではないわよ」
「…え?」
母と食事の時間に唐突に言われ本当に意味が解らなっかた。
「ですから、あなたはトップではないので入学の挨拶はしなくていいです」
学園に入る入学テスト、そのトップの成績の人間が新入生の挨拶をする。
「そんな!いったい誰が!!」
僕が声を荒げ母に問おうとすると母がわ…僕を目で落ち着いて座るように促した。
昔から母の目には僕は勝てない、席に着き、落ち着いて再度母に質問する。
「いったい誰なのですか…」
「たしか…」
◇◇◇
「友田遊人…あいつか…」
入学式で僕は自分が挨拶すると思っていた場所に倒すべき敵と言っていい男がいた。
そこに居たのは特徴もない平凡な男、背はそこそこ、顔も可もなく不可もなく、全ての人間を集め平均値を叩きだしたらこうなるんじゃ無いかと言う、ザ・凡人だった。
ただ彼の声はどこまでも安心感を与えるような印象がある。
まるで教会の神父のような、澄んでいて相手を落ち着かせる、そんな声だった。
はたしてこんな喋りが一学生に出来るのであろうか?彼は学生の皮を被った老人なのではないか?
カリスマ性とでも言えばいいのだろう、僕は彼に興味を持ったのはそんなところが始めだった。
◇◇◇
彼と話す切っ掛けは彼は僕の隣の席だった。一瞬母の顔が浮かび、仕組まれてるんじゃないかと思ったが、母の掌の上なのは何時もの事かと諦めがつき僕は彼に話かけることにした。
彼と喋った第一印象ははっきり言って普通、ザ・凡人のイメージはそのままだった。
翌日以降に出てくる、凡人とは違う部分は有ったが基本彼は良い人と言う印象しかない。
僕が思ってる印象は他の人と大体一緒なんだろう、彼は他人の懐に簡単に入る。
◇◇◇
この学園には委員会と言うものがある。僕の通っていた中学には無かった制度で教師などではなく学生が様々な委員会に入り擬似的に様々な仕事を熟すらしい。
なるほど使われる立場も勉強しなければいけないのかと僕は納得した。
クラスの全ての人間が委員会に入るわけではないようだ。
しかしクラス委員だけは今決めなくてはならないらしい。
クラスの連絡を受け負う正に雑用って感じだな、そんなのは誰もやりたがらない。
教師の杉崎はどうも友田がやるだろうと当たりを付けていたが彼はすでに飼育委員に入ったようでその頼みを断っていた。
「友田君は何故飼育委員に?」
「なんて言うか…なりゆきかな…」
彼は困り顔で僕の質問に答えた。
「へ~、意外だね。君はなりゆきとかは嫌いそうなのに」
「そんな事ないさ、生まれた時から流されぱなしよ俺なんて。
…それに委員会に入れば部活動以外にも他の人と知り合える機会があるかもしれないしね
…出会いを大切に…ってね」
僕は友田君の言葉を聞きながら自分の利益よりも感情優先型かなと彼の内面を自己判断していると、後ろの方がざわついてきた
「つまり眼鏡系委員長に出会える?」「いや、鬼畜系かも知れないわ」「これは出会いのチャンス?」「俺は元から誰かの為に仕事をしたかった!」「やるなら今しかねえ!!」「っふ、俺の心に火が付いちまったぜ!」「某が、忍者の末裔として」「おれがやるでぇ!」「あたしが犠牲になれば!」「クラスも救えず世界なんて救えるのかよ!」「クラスの為なら!」「やる気!元気!クラス委員!」「――――」「――――」「――――」「――――」「―――――」
いつの間にかクラスの男女が我先にとクラス委員に立候補しだした。単純と言うかなんて言うのか…
僕は呆れているとハッとして、まさかこれも計算づくなのかと友田君を見ると彼は少し悪い顔でニヤニヤしていた……恐ろしい…
◇◇◇
梅雨が明け学園も夏休みに入る直前の日曜日。
いつもの習い事がなく珍しく空いた時間、僕は暇を持て余していた。
こんな時、みんなならどうするのだろう?友達と遊ぶ?趣味に時間をつぶす?
僕には両方やったことがない、友達と考え、友田君の顔が出てきたが、彼には彼の都合があるかと考えると誘うのも躊躇われる。趣味は…特にないが、散歩にでも行こうと思いついた。
そうなればすぐにでも行動しようと僕は自分の外出着に着替え、窓から外を見ると七月になり日差しも強くなってきたので帽子を被ることにしする、何時もの髪型が邪魔だったので髪を下すことにした。
準備も整い部屋から出ると僕を呼び止める声がした。
「お兄様!」
僕の年の離れた妹、奏が僕を見つけ走ってきた。
「お兄様、どうされたのですか?綺麗な格好をされて」
僕の外出着が珍しいのだろう、奏が褒めてくれる
「ああ、少し散歩に行こうかと思ってね」
「奏も行きます!」
僕は奏についてきた家庭教師を見ると彼女は首を振る。
「奏、また今度ね」
僕が奏を撫でながら申し訳なさそうに言うと、奏は頬を膨らまし少しいじけて「ぶー」とかわいらしく鳴き、「次は一緒に行きましょう」とすぐに笑顔で僕に言った。
うん、妹は天使だ。
◇◇◇
外に出ると夏にの日差しが照りつけてきた。気温が上がりアスファルトが僕の体温を上げてきた。
暑いな…僕は知り合いがいないであろう日影がある公園へと向かった。
中央公園、僕が向かったそれなりに広く池もある公園。公園内を一回りすればそれなりに運動になるだろうと僕は日影ぞいの道を景色を見ながら歩いた。
数分ぐらい歩いたか流石に気温が暑く僕は近くのベンチに座る事にした。
自分の体を自己判断すると水分不足の日射病かと考え自己管理が出来てないなと少し自嘲気味になる。
すると男性が僕に外国語で話しかけて来た。恐らく僕の髪を見て外国人だと判断したんだろう。
僕は相手の言葉を否定するために顔を上げた。
『大丈夫ですか?』
「ええ、だいじょ…」
僕は相手の顔を見た瞬間慌てて顔を下に向け隠した。
「あ、すいません…気分が悪そうなので声をかけさせていただきました」
「えっと…少し休めば大丈夫です」
僕の姿お見て話しかた彼は友田君だった。
何故彼が?どうしてここに?why?
聞いた話では彼の家はここから二駅ほど離れた場所らしいのだが…今の姿を見られる訳には行かない
「日射病のようですね…これどうぞ」
「まだ開けてませんよ」と言いながら友田君は僕にペットボトルの水を手渡した。
顔が見えないように帽子を深くかぶり、何時もまとめている髪を下しているから彼は僕が外国から来た観光客に見えているのだろうか?
正直お水はありがたかったので僕は素直にありがとうとお礼を言い水を受け取る、心の中では友田君に帰れの祈りを捧げながら。
◇◇◇
何故こうなった??
僕は今、友田君と一緒に公園を歩いている。
彼は正義感からか僕の事を送ると言って離れなかった。
何故僕がこうまで友田君に…いや、知り合いに見られたくないからと言うと僕の格好にある。
長い髪を下ろし、白いワンピースを着て、麦わら帽子を被っている……つまり女性の格好だ。笑いたければ笑えばいい。
僕は女装をしている訳では無い。元々女子だ。しかし男性の格好をしなければならないのには理由がある。
僕が伊集院財閥の跡取りだからだ。
元々伊集院家は男性が当主となっていたがいつの頃か呪いのように女性しか生まれてこなくなった。
養子や婿を当主に置いてもいいと思うがそれをした時期は必ずと言っていいほど経済が傾いた。
我が家の家訓『完璧であれ』これが邪魔をする。
民を導き、不安にされてはならない。
母は今でも仕事の時は男性の格好をする徹底ぶり、僕だけが伊集院家の決まりを破るわけにはいかない。
僕が不安になってる横で友田君はいつもの笑顔で僕に話しかけてくる。
人の気持ちも知らずにと僕は恨めしい気持ちになりながら、そう言えば先ほど外国語で話しかけられたことを疑問に思い聞いてみることにした。
「そう言えば先ほど外国語で話しかけてきましたが得意なのですか?」
「いや~日常会話程度ですよ。通じなければ身振り手振りで行こうと思ってました」
これはウソだな、イントネーションが完璧だった。彼は本当とウソを混じわった話をし自分を見せようとしない。処世術なのかとも思ったが、彼は相手に負担をかけまいとの考慮だと最近になって知った事。つまり自ら道化を演じている。それだけ彼は頭だ良すぎた。
「おねーさんはこそ日本語上手ですね」
「家の家訓なので」
「家訓ですか?」
「ええ、完璧であれ。笑ちゃう家訓ですよね」
僕は自嘲気味に我が家の家訓を言った。
ほんとに笑える、僕のどこが完璧だろうか。中途半端な自分が嫌になる。
「いいえ、素敵な家訓ですよ」
「は?」
「たぶん、その家訓を考えた人は子孫の人たちに今の状態に胡坐を掻かず努力をし続けてほしかったんじゃないですか?
俺の友達にも常に努力をする奴がいます。困っていれば周りを助け、自分自身をも妥協せず鍛え続けている奴です
完璧ではないですけど、完璧に近づこうとしている俺の尊敬できる友達です」
「……」
「肩ひじ張って少し心配になりますけどね」
「あなたはその人と友達なのですね…」
「ええ、あなたみたいな色の髪でね、もう女の子にモテまくりの奴なんですよ」
「ははは」と笑いながら友田君は僕の方を向き「おや?」と言う顔をしたので僕は慌てて
「ここまででいいです、ここから私の家は近いので!」
「えっ?大丈夫ですか?」
「は、はい!それではごきげんよう!」
僕は慌ててその場を後にした。
◇◇◇
その日の夕食母は僕に「良い事でもあったの?」と聞いて来たので僕は「友達と遊んできただけだよ」と返した。
読まなくてもいい、おまけ
これより『友田過大評価裁判』をはじめる
被告人伊集院は友田をあろう事か過大評価し読者に多大な被害を負わせた。
昴「え?え?」
よって伊集院昴にToLOVEるハプニングの刑に処す。
昴「ええ~~~~!!?」




