第16話 雨降り縁日
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あなたは心に傷を負った事がありますか?
生きていれば誰しも大なり小なり傷を負っていると思います。
心の傷はなかなか消えずいつまでもぢくぢくと心にかさぶたのように残り、ふとした拍子にそのかさぶたが剥がれる時がある。
私のかさぶたが剥がれると見える情景は、何時も雨。にぎやかな光の中に邪魔するように現れる。にぎやかな音も、より強い雨の音が消す。
私は一人濡れながらその場所に佇んでいた。
親に買ってもらった浴衣を着てお面を付けて濡れるままにただ佇んでいた。
私は誰にも見えない、だから私は誰も見ない、だから誰か私…関わらないで……
◇◇◇
昼休みにばったり会う男と女と男。この場で部外者の俺は取り敢えず笑っておけと引きつった笑顔でこの場所で起ころうとしているお昼のドラマ略して昼ドラを見たくない気持ちで見ていた。
気持ちはウキウキウォッチングにはならない気持ちを略奪されるバイキング。
「二人とも、もうすぐ昼休みが終わるわよ」
「いっけね!?急ごうぜ友田!」
「え?ああ…」
あれ?昼ドラは?
ドロドロのグチョグチョにペペらないの?
ほっとしていいのか。がっかりすればいいのか。
立花と先ほどまで女の好みの会話していた俺はここぞとばかりに聞いてみた。
「そうだ、桜野さんはどうだ?」
「何がだ?」
「好みの話だよ」
俺はゲス顔で聞いてみた。心の中じゃはっきり言って、このすれ違いを解いとかなければならないと言う気持ちでいっぱい、いっぱいだった。
「……桜野か…そうだな」
「ん?悩む事か?可愛い顔だし誰にでも優しいぞ」
「いや、そうじゃなくて、何て言うか。見えないんだ…」
「見えない?」
「もちろん顔が可愛いのは分かるし、クラスのみんなに分け隔てなく優しい。だけどこう…気持ちって言うのか、彼女の本心が何か見えないんだ」
見えないか、確かに桜野と親しくなろうかと入学当初からいろんな理由で話しかけて来たが、話しかけても当たり障りのない返しでこれ以上入れない壁みたいな、防壁が存在していた気がした。
よし彼女をこれからナヴァロンさんと呼んでいこう。
「見えないという意味じゃ友田もそんな感じかな」
「え?そうなの何かショック」
「どちらかと言うといくつもの顔があってどれが本物か分からない感じなんだがな」
千佳どうやらお前の兄ちゃんはいくつもの顔を持つアシュラマンらしい、これからは立花に悪魔超人として阿修羅バスターをかけていこうと思います。
俺の近くには優しさを教えるサムソンは居ない、家にいるのは寒いギャグで損する親父だけなので手加減しない方針です。
バカなことを考えていたら教室に着く前にチャイムが鳴った。
◇◇◇
それから時がたち俺も学園を卒業する時を迎えた。
思えば自分の部屋で策略ばかりしてたな…
ん?俺の机に手紙が入っている…
『貴方に大切な話があります、伝説の木に来てください。』
俺は待たせる訳には行かないと走ってその場所に向かった。
ハァー…ハァー…
「ご、ごめんお待たせ…」
「ううん、大丈夫。待ってないよ…
あのね……俺、お前の事が…」
俺?
「好きだったんだ!!」
そこには立花が何故か半裸でポーズを付け立っていた。
って…
「おまえかぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
ガバッと俺は叫びながら起きた、最悪の夢だ。
とんでもないバッドエンドにしてもこれは無い、そして何故俺が主人公視点なんだ。友人Aはどうした
先日立花と話してからずっと、立花とアイツの好きな黒川。そして桜野の関係を考えて、考えすぎて立花だけ夢に出てきた。最悪の形で。
ゲームの中じゃ黒川に関しては実習生として今年の九月に学園に現れ、そして主人公が二年になると担任になるはずだ。ゲームのままならな。
◇◇◇
子供の頃は気持ちのまま動いていた気がする。
好きなものは好き。嫌いなものは嫌いと。
子供の頃私が好きだったもの。
幼馴染の二人。
憧れのお姉さん。同い年の好きな男の子。
その日私達は町の縁日に来ていた。
縁日では人が多くてお姉さんは逸れない様にと私達と手をつなぎ歩幅を合わせて歩く。男の子はお姉さんに手を引かれるのが恥ずかしいと顔をうつむかせていたのが印象的だった。
私達は縁日を楽しみながら店を見て回った。リンゴ飴。金魚すくい。ヒーロー物のお面。
心の底から楽しかった私がしたミスは、迷子になったこと。
一人になり泣き出しそうな私は顔を見られたくなくヒーロー物のお面をかぶって二人を探した。
二人はすぐ近くに居た、私は見つけた事に安堵し二人に近づいて行くと男の子はお姉さんに告白していた。
今ならば幼い恋心にお姉さんが困っていたのが分かるが当時の私にはひどい衝撃を受けた。
ここに私の居場所がない。私は走ってその場から逃げだした。
子供の足では遠くまで行けず近くの社にたどり着いた私は鳥居に腰を下ろす。
すると空から雨が降ってきた。今の私の感情と同じように降るザーザー振りの通り雨。
縁日は雨の中でも光を発しながら続いて行く。それを私は黙って見ていた。
すると私に声をかける男の子の声が聞こえた。
幼馴染の男の子が探しに来たのかと、私は顔を見られたくないとお面を被りなおして声のする方へ向いた。
「こんな所に居たのか、探したぞ」
そこには私の知らない男の子がいた。




