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陸捌話 悪夢はまだ、終わらない。(無事に直してくれ)

「……おい。キノサキ」

「んん? どうした」

「俺はラネットの厚意に感謝して寝室で休むことになるが……お前、下の部屋に行かないのか?」

「いいや、こちらは白髪ねぎと一緒にいることにした。看病でも添い寝でもお話にでもいろいろと付き合うぞ」

「なんでだよ。お前が俺と一緒にいる理由なんかないだろ」

「いいや、ある。簡単に言えば……お前とは二人きりになりたかったんだよ」

「気持ち悪いことを言うな。これから休むんだから、むしろお前が何かしないか心配なんだ。とっとと降りろ」

「心配!? 信用されてないなー。ああ、殺し屋を横に置いて眠れないのは当たり前か」

「むしろお前をそばに置いておける千代がすごいと思うんだがな」

「ん? おい、心配とかなんとかいうけど、それを言うならあのパツキーナの事だって、同じことじゃないの?」

「パツキ……? ああ、よる……じゃなくて昼江のこと? あいつはいいんだよ」

「なぜに? デレるにはまだ早いとこちらは踏んでいるんだけどね」

「何の話だ。……確かに百パーセント安心とは言い切れない。けど、あの場には千代がいる。心配することはない」

「へぇ、随分クロチーを信頼しているんだな。付き合いゆえの信頼か?」

「まあそんなもんだ。今の昼江には俺よりあいつといろいろ話してみた方がいいんじゃないかなって」

「なるほど。まあ願望みたいなものか。穏便に済めばいいけどね」

「そう言う事だ。というか、お前は殺し屋云々じゃなくて性格的に不安なんだ。だからさっさと降りろ!」

「はぁ!? せっかく白髪ねぎに誘導催眠させてジャージ以外の服を着せようとしたのに…………(ヘヴィメタとか)ボソッ」

「お前はなんて恐ろしいことを考えているんだ!? 降りろ! 今すぐ降りろ!!」

「落ち着けよ。お前は女の子三人の空間にこちらの改造人間サイボーグを投入しろと言うのか? 女心のわからない奴だな」

「ぐ……機械に女心の説教されてもただ腹立つだけだ」

「それともなにか? お前がクロチーと金髪の真昼と、ついでにラッちゃんの空気にぶち壊しに入ってもいいって?」

「あだ名が変わり過ぎだし、ラネットがついでかよ」

「なあ、別に外でもいいけどこちらはいろいろと目立つからな。ここにいるだけでもいい。ね、お願い」

「……はぁ。わかった。けどもしも俺に指一本触れてみろ。寝こみ中でも接近する奴には迎え撃つ自信がある。刀が無かろうとお前を本気で殴るから注意しろ」

「了解!」

「催眠誘導とか断固するなよ。いいか、絶対するなよ。絶対だぞ!」

「承知!」

「……はぁ、不安だ。なんで休眠も安心してできないんだよ」

「そう言うなよ少年。この人畜無害の改造人間サイボーグが保障するぜ」

「欠片も説得力がねぇんだよ」



          1



 零ちゃんが上の階に上がり、キノサキさんから零ちゃんのジャージの上下を渡された後、部屋の雰囲気が少し変わったような感じがしました。

 ラネットさんと昼江さん、お互いに初対面の人ではありますが、私が間に入る形で自己紹介と話し合いをします。

 ちなみに私は針と糸と予備の布を出して、零ちゃんのジャージを縫って修繕しているところです。


「あたしは浮空昼江。白零君のせいで今は無理だけど、殺し屋稼業をしていたわ。よろしくね」

「ヒルエ……」


 ラネットさんにとっては覚えのある名前です。

 零ちゃんがその名前を話していましたから。


「……私はラネット。風精族シルフィ領内の調査隊を務めているわ。ハクレイやクロチヨとはいろいろと世話になっているわ」

「へぇ、そう……」

「っ!」


 昼江さんがわざと殺気のようなものを笑みと一緒にラネットさんに向けています。

 ラネットさんも、それに当てられそうになりますが、頑張って持ちこたえます。


「なによ。私をどうこうしようって言うの?」

「……あはは、別に。ただ、あなたって殺し屋を前にしても堂々としてられるね」

「それは、もっと危ないやつを知っているからね…………」


 ラネットさんがどこか遠い目をして二階を見ています。

 何を言いたいかはなんとなくわかります。


「確かに、ガンスロット=キノサキを味方につけるなんて、結構驚きだよ。いったいどんな手を使ったのか気になる所だし」

「冗談じゃない。今でもあいつのことは警戒している。あんたのこともまだ完全に許していないわ……」

「クスクス。私個人と言うより、そういうものを安易に信用しないってこと? まあそういうのは必要な感情だと思うよ。けどねッ!」

「っ!」

「ラネットさん。大丈夫ですから、動かないでください」


 いつの間にか昼江さんの手に剃刀が握られて、私の首筋に触れようとしています。

 触れようとしているだけで、触れてません。寸前で止まっています。

 思わず私も、ジャージを縫う針も止まってしまいます。


「あたしはまだ白零君のことを完全に認めたわけじゃない。ただ彼には簡単には敵わないと思ったぐらいだし、隙あらば彼の寝首をかく事だって考えているんだよ」

「あんたは……!」

「だからほら、こんなあたしが彼のいないこんなところで何をしてもおかしくないんじゃない?」

「……それは違うと思いますよ」


 それは多分起きないことだと思います。

 なぜならこの人のことは、零ちゃんほどではなくてもわかることだからです。

 零ちゃんの隣でも、何度もこの人と相対しましたから。


「昼江さんが私やラネットさんに酷いことはしませんから」

「あら? 何を根拠にそう言うの?」

「昼江さんが酷いことをするのは、同じく酷いことをした人だけですから」

「ふーん。あなたって随分あたしのことをわかったように言うのね」


 昼江さんは表情を崩しません。

 まだどこか試されているような感じがします。


「殺し屋のやることを、あなたはいちいち信じるの?」


 確かに、私は零ちゃんほど昼江さんの事は知りません。

 でも……


「もし昼江さんがただの酷い人だったら、零ちゃんはここまで連れてこないと思いますから」

「…………へ?」

「そうね。だからハクレイに休むように言った時、あいつは心配することなく二階へ登っていったからね」


 昼江さんが目を丸くした後に……笑っています?


「……ククク、残念。少しも脅かせないなんてつまんないの。まあ、この程度で驚いちゃ用心棒は務まらないか」

「いいから早くその危ないものをしまいなさいよ」


 昼江さん。笑うのはいいですけど、私の首筋に添えた剃刀をしまわないままですと危ないですよ。


「あ、あのぉ……ただいま戻りましたよ……ぉ…………」

「ん? 誰だろ……」


 今の声は……玄関からですね。

 突然聞こえてきた声に、ラネットさんも昼江さんも玄関に視線を映していますと……


「ロビィさん……」

「三咲、さん……!」

「え? あ、」


 ロビィさんがこちらを見ながらだんだんと顔が青ざめていきます。

 いえ、私の首元に昼江さんが剃刀を近づけているような状況を見てますから、これは大変なことに……


「だ、だめ!」

「あ、待って!」


 私と昼江との光景を見た途端、ロビィさんが疑問に思うよりも先に、突然昼江さんの持っている剃刀の方へ手を伸ばして駆けつけて来ます。

 それにしても早いです。こちらまで三メートルほどなのに、たったの三歩でもう距離を詰めて……

 と、感心している場合ではありません。昼江がいきなり近づいてきたロビィさんに驚いて剃刀を引いたかと思うと、なぜか逆の手を反射的に引いて、ロビィさんを殴ろうとしています!

 ラネットさんは咄嗟のことで、止めようと手を伸ばしても、鉈まで届きません!


「昼江さん! だめっ!」


 ビリッ!

 私は手元にあるジャージを昼江さんの拳の前に出して受け止めました。

 大丈夫です。ロビィさんに影響はありません。まずはロビィさんを落ち着かせないと、

 私は、ロビィさんの両肩に手を添えてロビィさんの両目を見て、


「ロビィさん! 私は大丈夫ですから落ち着いてください!」

「え? ……あっ」


 ……ロビィさんがこちらを見ています。

 不思議です。私を見ているようで、でもなぜかどこか怯えたような目をしています。さっきの光景がロビィさんのなにかに触れたのでしょうか?

 とにかくロビィさんから目をそらしません。

 肩を少し握って、顔を向き合って、ロビィさんの目を見続けます。


 そうしてやっと、ロビィさんから震えのようなものが出て……


「さ、三咲さん……」

「はい」

「三咲さん! 戻ってきたんだね!!」


 ……ロビィさんが、やっと元のロビィさんに戻りました。

 私が無事だとわかったところで、ロビィさんが震えだしてきます。


「挨拶もしないでいなくなって……ロビィ、心配したよ!」

「はい。ご心配おかけしました」


 私はロビィさんを抱きしめて、ロビィさんの背中を撫でて安心させます。

 もう大丈夫です。無事にここへ帰ってきました。

 腕の中で、ロビィさんの震えが少しずつ収まっていくのが伝わりました。


「ああもう、いきなり突進したかと思えば、なんなのかしら。つい殴るところだったじゃない」

「あのねえ……そもそもあんたがこんなところで刃物を出すのがいけないでしょ。反省しなさい!」


 昼江さん。ラネットさんに注意されてますが、どこ吹く風です。

 それとも、なにかわざとそう言ってるのでしょうか?


「で、でも……さ、三咲さんに刃物を向けているこの人は、誰なの?」


 さっきまでとは違って、大人しそうに昼江さんのことについて訊いています。

 この人は……昼江さんの事は正直に話していいのでしょうか。

 零ちゃんのお友達? と紹介した方がよろしいかと……


「あたしは浮空昼江。元……殺し屋よ」

「殺し屋!?」

「昼江さん。それは……!」


 よりにもよってロビィさんにその紹介はまずいです。

 ロビィさんはキノサキさんという殺し屋のせいでいろいろと大変な目に遭ってましたから、昼江さんが殺し屋なのを知ったら……


「どどどどうしよう……ロビィ、殺し屋とは知らないであああんなことを……!」

「ロビィさん。昼江さんは悪い人では……ありましたけど今は大丈夫ですから。ね」

「え? うーんどうかしら。だってあなたのことなにも知らないし、もしかしたら……ね」

「ひっ!?」

「昼江さん……そんな…………」


 いったいどうしてそう危ないことを言うのでしょうか。

 昼江さんから遠慮のない言葉が次々と出てきています。


 まだ私達のことを心から安心しきれていないかもしれません。

 まだまだ私も努力が必要です。どうすれば昼江さんがこちらになじむようになるのか、いろいろと考える必要があります。

 昼江さんに何かがあったら零ちゃんに心配させてしまいますし……


「それよりもさ、あなた」

「私ですか? いったいなんでしょうか」

「白零君のジャージ、大変なことになってるよ」

「え? …………!?」

「さっきあたしが殴ろうとしたのを防ぐときに使ったそうだけど、まだ縫っていない裂けた部分が広がっちゃう形で……」

「そんな……」


 零ちゃんのジャージが……ジャージが…………!

 左肩から先が千切れそうに……!! 

 まだ縫っていない部分なのに、傷がさらにひどくなってます。


「どうしよう、零ちゃんに怒られる……!」


 もうすでに日は暮れかかっていますし、零ちゃんが起き上がるのはもうそんなに遅くありません。

 まだ縫い直すところは残っていますから、間に合うのか……


「もう、しっかりしてよ。白零君死んじゃうよ」

「ちょっと……そもそもあんたがロビィを殴ろうとしていたから起きたのに、その態度は何よ!」

「あら、あたしが悪いって言うより、フォローの一つぐらいは入れたらどう?」

「あんた少しは謝るくらいしなさいよ!」

「ラ、ラネットさん……えっと、おお落ち着いて。ロビィの方は平気だから、三咲さん……」

「……いいえ、まだです」


 いえ、諦めてはいけません。嘆いているよりも早く手を動かします。

 でも……もしも、それでもだめだったら……

 零ちゃん……ごめんね。



          2



「ぐあああああああああああああああああああああ!!」

「!? ヘルメス先生ぇ! 急患が、急患が!!」

『ヒャッハー、別に外科医じゃないんだけどどうしたんだキノサキ!』

「患者さん(十代、男、ついでに用心棒)がなぜか左肩を押さえて呻いている! こちらの誘導催眠が想像以上にすごいことになってしまったかもしれない!」

『ヒャッハー、どうすんだ?』

「誘導催眠で元の状態に戻す! 『オペレーション・白髪ねぎ更生プログラム』だぁ!」

『ヒャッハー! 手術費は一千万だ!』

「大丈夫! こちらガンスロット=キノサキ、絶対に失敗しないから」

『ヒャッハー! やまいは執刀だぁ!!』



          3



「まったくもう……なんであたしまでこんなことをしなければならないのよ……」

「すいません。でも、零ちゃんに全部直ったジャージを着て、安心してほしいのです」

「白零君のために、ね……よくわからないことね」


 零ちゃんのジャージの左肩が酷い破れ方をして、どうしようかと考えた結果、昼江さんの手を借りることにしました。

 針も糸も予備がありますので、私がジャージの下の所を、昼江さんが破れた左肩の部分を縫う事で、昼江さんと一緒に零ちゃんのジャージを直すことになります。

 文句を言いつつも、昼江さんは零ちゃんのジャージを丁寧に縫ってくれます。


「だいたい、あの風精族シルフィもお友達が困っているのに、裁縫が苦手ってどういうことかね」

「ええと……さすがに三人ですとかえって効率が悪くなるかもしれませんし、ロビィさんが一人になりますから……」


 ですが、私は昼江さんと二人きりで話したいことがありますから、ラネットさんはロビィさんと一緒にいるようにお願いして、私と昼江さんは少し場所を離して二人きりということです。

 私はジャージの腿や裾のほつれを見つけ、針と糸で直していきます。

 昼江さんも左肩の大きく裂けた所を縫います。破れた両端を持って、慎重に縫い合わせています。

 黙々と、修繕をしていく中、私は昼江さんに言っておきたいことがあります。


「あの……昼江さん」

「なに?」


 昼江さんは、零ちゃんのジャージを縫う手を動かしたまま、視線をこちらに向けました。

 話は聞いてくれるようです。安心して、私は本題を出します。


「ロビィさんがいきなり近づいてきたときに驚いたのはわかりますけど、できれば誰かを殴ることはしないようにしてください」

「え?」

「それと、ラネットさんが昼江さんのことを、注意深く見ていますけどあまり居心地を悪くしたら、無理をせずに言ってください。せっかく零ちゃんがいても、他の人と仲良くできないのは辛い事でしょうし……」

「ちょっと待ちなさい。それはどういうつもり?」

「……昼江さん?」


 いきなり昼江さんが私を睨みつけながら、小声で怖いことを言ってきます。

 どうしたのでしょうか、糸も針も特に問題はなさそうですが……


「あたしに対してその態度は何? バカにしているの?」

「え? いえ、昼江さん。決して昼江さんの事を悪く言うつもりはないのですが……」

「悪く? 違う。そう言う事を言ってるんじゃないわ」


 ほんの少し、昼江さんが怒っているようです。

 私やラネットさんに厳しい態度をとっていたようですが……


「言っておくけど、私はあのラネットって風精族シルフィの態度に苛立ってるんじゃない。あなたのことよ」

「私?」


 ラネットさにんよりもむしろ私の方に何か言いたいことがあるようです。

 器用に零ちゃんのジャージを縫う手は止めないまま、昼江さんは言います。


「あのね、あなたったら用心棒のくせにどうして平気であたしと一緒に裁縫ができるの。さっきまで刃物を出して、しかもまだそれを隠し持っているあたしを、よくもまあ平気で二人きりでいられるわね」

「それは……」


 私が昼江さんに対して、警戒を抱いていないということに昼江さんが憤っているのでしょうか。

 いえ、それとも…………疑念を抱いているのでしょうか?


「それにあたしは急に出てきたあの金髪の女に手を出された時、あたしは金髪女を殴ろうとしたのよ。故意であろうとそうでなかろうとね」

「…………」


 確かにそうです。ロビィさんを庇おうとした結果、零ちゃんのジャージを犠牲にしてしまいました。その上、ロビィさんがいきなり近づいたことも、昼江さんが原因です。そもそも初めに剃刀を出した目的もそうです。私を傷つけるよりも、私がどう反応するかをよく見ていました。

 ラネットさんは、昼江さんの事はわかりません。ただ、殺し屋である事実は変えられませんし、警戒することは当然です。


「お嫌いですか?」

「……なにが?」

「私は、ただ昼江さんとラネットさんに仲良くしてほしいと思っています。昼江さんが殺し屋なのは確かですから、ラネットさんが警戒することはわかりますし、それをやめてくださいとは言えません。でも……」


 確かに、私は十分に言えるほど昼江さんの事は知りません。零ちゃんから聞いたこととがほとんどで、直接対面してわかったことはほんのわずかでしかありません。

 ですが、


「昼江さんは、誰かと仲良くすることがお嫌いなのですか?」

「誰かと、仲良くするって?」


 昼江さんの目が意外そうに開かれます。今のはそんなにおかしい質問だったのでしょうか?

 そう思った途端に、昼江さんは大きく頭を振って、否定します。


「ありえない話ね。だってあたしは殺し屋よ。殺し屋と仲良くしようとする人がいると思っているのかしら?」

「昼江さんは、殺し屋としてこれから誰かを傷つけることはするのですか?」

「え?」


 今後のことにかわる重要なことです。零ちゃんが必死になって止めようとしていることを、また繰り返すかもしれません。

 私の問いかけに、昼江さんは目線を合わさず、曖昧は喋りで動揺しています。


「それは……その…………」


 昼江さんは答えません。零ちゃんとどう約束したかはわかりませんが、同じことをするとは安易には言えないようです。

 でしたら、昼江さんが誰かと仲良くすることはありえないことではありません。


「今後、昼江さんが誰かを傷つけることをしないなら、昼江さんを怖がる人はいません」

「そんなわけない。あたしはこれまで誰かの命を奪ったことに変わりはないことよ」

「確かに昼江さんが誰かを傷つけていましたし、相手にどのような理由があってもそれは確かなことです。でも……」


 もしも、昼江さんがただそれだけだったら、零ちゃんが命を懸けて連れ戻しはしません。

 零ちゃんが昼江さんに望んでいることがあるから、命を懸けたのではないでしょうか。


「今の昼江さんが、誰かと仲良くしたいって思うことが大事だと思います」


 昼江さんは誰かと仲良くすることに慣れないから、不安に感じたのでしょうか?

 私やラネットさんを試すために、剃刀を出したのでしょうか?

 急接近したロビィさんに不安を感じたから、反射的に殴ろうとしたのでしょうか?


 昼江さんの心情は全部わかるわけではありませんが、これだけは確かに言えます。

 昼江さんは何の意味もなく人を傷つけたりはしないって、それだけはわかりますから。

 だから、昼江さんにできないことはありません。


「以前の昼江さんのことを知っていても、少しずつでも昼江さんが私たちの事をわかってくれて、私たちがが昼江さんをわかってくれたら、仲良くすることはできるんじゃないかなって、そう思っていますから」

「……どうしてそこまでして私に誰かと仲良しになってほしいの? それがあなたに何の関係があるの?」

「関係ですか? 私は、ただ昼江さんと仲良くなりたいですし、ラネットさんとか零ちゃんとか、好きな人には喜んでほしいから……」

「……それだけの、理由なの?」

「はい。昼江さんのことをもう少しわかって、もしよろしければ昼江さんとも友達になりたいです」

「…………」


 昼江さんはなぜか信じられないような目をして私を見ると、恐る恐ると言ったようになにか訊いたそうです。

 まるで、見たこともないようなものを見るような感じですけど……


「あなたは……私と友達になってほしくて、私に誰かと仲良くなってほしいと言うの?」

「はい。昼江さんを好きになってほしいです」

「じゃあ、白零君も?」

「はい」

「ラネットって娘や、ロビィって人も?」

「はい」

「まさか、あのガンスロット=キノサキも?」

「はい。キノサキさんもです」

「…………」

「昼江さん?」


 なぜかため息をついているのですが……なにか悪いことを言ったのでしょうか?


「……難儀な子。もしもあたしが本気で武器を出して襲い掛かってきたらどうするの」

「それは、昼江さんを止めるだけですよ」

「あっさり言うね。まったく、白零君の相棒だけはあるね」

「あ、はい。ありがとうございます」


 昼江さんから零ちゃんのことを褒めているようで、嬉しいです。

 昼江さんは


「……はぁ、もういいわ。ほら、白零君も起き上がるしさっさと終わらせるよ

「はい。あと、ラネットさんやロビィさんのことも……」

「……努力はするよ。それが譲歩よ」

「ありがとうございます」


 よかった。昼江さんに大切なことを伝えられました。

 これからラネットさんやロビィさんと仲良くできるきっかけになってほしいです。

 零ちゃんもそろそろ起き上がるころですし、最後にジャージの修繕の出来を確認しましょう。

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