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伍参話 決着をつけてやる

詫び:読者のみなさん申し訳ありません。間違えて完結にしてしまいました。

まだ続きます。

 殺し屋になった昼江は、いったいどこから学んだのか恐ろしい暗殺術を使う。


 昼江はどちらかというと戦う事より密やかに殺すことを得意とする。

 あいつは投擲技術に特化した殺し屋だ。

 毒針や剃刀なんてあからさまなものはもちろん、変に硬い鉛筆や研いだ鉄製のものさしなんて変わった凶器、あげくにはガラスの破片に削りだした木の枝を使う。

 鉈なんて目立つものは強襲ぐらいだ。


 それをあいつは遠くからではなくあえて近くの人ごみに紛れて投げる。

 予備動作をあまり必要としない最小限の動きで凶器を投擲し、標的を殺す。


 ……まるで狙撃だ。

 それとも暗器使いか?


 けど、俺が昼江の正面に立って戦う事はあまりない。そう言うのは不得手だからだ。

 ならば今この状況、あいつはどういうつもりで正面から挑んでいるんだ?

 いろいろと考えたくもなるようだが……


「そこ!」


 そんな暇は俺にはない!


「!」

「ずいぶん反応がいいわね!」


 投げ飛ばされた大振りの鉈が俺の顔面を掠める。

 相変わらず速い。投げる速度というより、手に掛けてから投げるまでの間隔が短いのだ。

 けど……


「いったい何回お前に殺されかけたと思っているんだ」

「あの時とは一緒にしないで。今だけは本気なんだから!」


 炎で焼ける街を背景に、昼江は腰のベルトに掛けた鉈の柄に手を当てる。

 次も来る……!


「そうかよ!」


 手にかけてから即座に鉈が俺の方に向かって飛んでくる!

 それも今度は真正面からではない。クルクルと回転しながら、俺を左右から挟み込むように一本ずつ来る!

 避けられない!


「はっ!」


 俺は左右の腰にある刀を、抜刀せずにそのまま取り出し、左右から迫る鉈を弾く。

 左右の攻撃はなんとかした。あとは……


 ヒュン!!


 ……………………!?


「…………っ!」

「あら惜しい」


 俺は正面から何かが来ると直感し、上半身のみを左へと全力で傾けた。

 ……今何か、俺の首筋をすれすれで通った。


「……それも学習済みね。昔を思い出すわ!」

「…………!」


 昼江は、もう残り少ない鉈をベルトから抜き出し、最小限の動きで俺に向けて投げる。


 ……こいつのやりたいことはわかる。

 こいつが戦闘をするときは、まずあからさまに目立つ大鉈で相手の注意を惹きつける。


「当たるか!」


 俺はまた迫り来る鉈を、あえて体を大きく動かして回避した。

 すると……


 シュ……!


「ここだ!」

「!」


 俺は鉈をよけた直後に迫るなにかを、半ば予想通りに掴み取った。

 手にとったのは、薄く鋭い刃で、本来は髭とかを剃り落すもの、


「……本当にお前の使う凶器は悪意しか感じられない」


 強く握ったせいで血を流す俺の右手には、刃がむき出しの安全じゃない外国産の剃刀。

 その上握って投げやすいように昼江の改造が施されている。


「鉈を避けた直後に、避けた先に小さな武器を投げて首や目玉を突く。……二度も首筋を狙うなよ」

「外した。やっぱり手の内を知っているのは厄介ね。ネタがわかりゃ、どうすることもないからね」


 ……見た感じ昼江の腰に鉈はもうない。

 なら突撃か? いいや、昼江相手にそんなことは禁物だ。

 だけど、近づかない限りあいつを止めることはできない。


「今行くぞ! 身刀流。刀足かたあしの段・刀馬走法とうばそうほう!」


 俺は、今度は刀を納刀したまま柄の上に乗り、昼江のもとに向かって駆け出す!

 さらに納刀したままの刀を片手に一つずつ持って突撃する!


「白零君、そんな程度じゃ愚直すぎるわ!」

「!」


 やはりまだ昼江は何か凶器を隠し持っている!

 昼江がベストの袖からよく見えないが何かを滑らせてこっちへ投げてきた! なんらかの凶器が俺の所へ向かう!

 けどな!


「身刀流! 刀手かたての段・回車まわしぐるま!」

「!?」


 俺は両手に一つずつ持った納刀された刀の中ほどを持ち、手の平でとにかく速く回す!


 カンッ! キン!


 突き出した掌の前で回る刀は、昼江から放たれた何かを弾き飛ばす!

 小物を投げつけても無駄だ!


「そんなもん予習済みなんだよ!」

「……バカね」

「?」


 昼江がどこか呆れたようにこちらを見ている。

 まさかなにか見落としを……?


「弾いたものがなんなのかも知らないで!」

「なに!?」


 弾いたもの、だと?

 昼江は相変わらず何かを投げ続けている。

 それを俺は刀で弾き続けている。それはいったい…… 


 ふと俺の横に何かが流れてきた。

 昼江が投げてきたのだろうか、俺の刀に弾かれて飛んできた……

 赤く、キラキラ光る宝石のようなものが…………


「…………!?」


 まさか…………!


「発動、【爆発エクスプロシオン】!」


 まずい……!

 急いで回避を…………!


「もう遅い」

「…………!?」


 その時、

 服に仕込めるほど小さな石なのに、それとは全く想像できないような爆発が、俺の左側へ襲い掛かる。


「くっ…………!」


 まずい……!

 俺は爆風で吹きとばされ、そして石造りの硬い床に激突した。

 一瞬遅れて、俺は……!


「う……ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!」


 左腕が……痛む……!

 爆風と熱で……腕が焼ける……!


「誰の動きが予習済みだって?」


 昼江が繕いのない冷徹な自身の手を掲げて見せる。

 そこにはいくつもの赤い宝石のような石がきらめいていた。


「熱凝石……!」


 おいおいマジか……!

 こういうのは火蛇族サラマンドラぐらいしか持ってないと思ったが……!


「だから甘いのよ。一応あたしにもアルバロス将軍が渡されたからね」

「おいおい、ガルシャードの話じゃあそんなに出回っているもんじゃないだろ? 俺なんかに使っていいのか?」

「火の精霊術なんて、同族の火蛇族サラマンドラにはあまり通用しないのよ。せいぜい注意を引くことぐらいか知らないのよ。ましてやこれ、即席物だし」

「……ああ、そうか」


 とはいえ、あいつがあとどれくらい危険な石を持っているのかわかんねえ。

 ちくしょう。指ほどのサイズであの火力は反則的だろ。

 それも使用者は昼江だ。俺にとっては最悪に危険な武器になる。


「けど、白零君のその変な剣法も見納め、ね!」

「!」


 昼江がスカートの内に隠した何かをこちらに向けて投げた!

 良く見えないが危険には変わりない!

 俺はとにかく体勢を立て直し、すぐに立ち上がると投擲したものを回避した。

 案の定それは剃刀だった。また俺の目でも破壊するつもりか。


 急いで俺は刀を足でつかんだまま立ち上がり、再び刀馬走法の姿勢に戻った。

 正面で昼江はなにやら体をもぞもぞと動かして投擲物の確認でもしている。


「それにしても白零君、なんで刀を抜かないの? こんな時でもあなたはまだ甘いことを言うの?」

「それがどうした」

「本気で行かなきゃ、あたしに負けるよ!」

「!」


 昼江が横に跳んで、投擲後に落ちた大きな鉈を即座に回収した。

 しまった……!


 鉈を拾った途端、即座にそれを上に投げ、更にはまた新しい投擲物をこっちに向けて放り投げる!

 針にカッターに……おいおいフォークにナイフって、なんでディスクなんか投げてるんだよ。


 正面と横、更には上からにも投擲物が襲い掛かる。下手に避けた所で、避けた先にまた何か投げてくる。

 俺は右脚と両手の刀で、向かってくる投擲物を弾き続ける!


「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


 カキカキカキキィンキンキィンキン!!


 これだけ連続して投げ続ければいずれ……!


「無駄よ!」

「!?」


 昼江は窓からどこかの民家に無理やり入り込んで中に入った。こいつまさか……!?

 …………ん? 足元になにか……


 シュウウウウウウウウウウウウウウウウ!!


「うっ……!」


 発煙筒……!

 何でもありかよこいつ……!


 ヒュッ! ドッ!!


「がっ!?」


 俺の左肩に、何か刺さった……!

 これは……千枚通し!?


「言っておくけど、あたしにとっては周りは投擲物であふれているのよ」


 煙が晴れた先、窓から昼江が出てくる。なんか腰や肩に道具が増えている。

 やっぱり投擲の弾を拾いに入ったのか……


 ったく、左肩が痛いしこのままじゃ埒が明かない…………!

 防戦一方じゃダメだ。


「言ったでしょ。戦闘は不得手だけど、本気を出さなきゃ勝てないよ」

「……だったらこっちも見せてやるよ。身刀流の真髄ってやつを!」

「え?」


 だったらこっちも本気を出して昼江を攻める!


「身刀流! 四肢四刀ししよんとうの段・縦横四刃大車輪じゅうおうしじんだいしゃりん!」


 両手に刀。両足にも刀はある。

 俺はまず足で刀を掴んだまま近くの壁へと跳躍し、着地と同時に昼江の方へ跳ぶ!

 そして、両腕を上に両脚を下に伸ばし、空中で体を縦に回転して攻める!


縦転じゅうてん!」

「!?」


 こんな大振りな技を出されても案の定昼江は回避する。

 視界は回るものの回る前からの距離感ならわかる。そろそろ壁だ。


「っと! ……あっちか!」

「…………」


 壁に着地直後、周りを見渡す。割と近いところに回避している。

 昼江が信じられないような目でこっちを見ている。


「白零君……真面目にやってるの!?」

「俺は至って真面目だ!」


 両足の刀を掴み直して、もう一度昼江の方に向けて跳ぶ!

 今度は両腕両脚を横に広げるように伸ばし、同じ縦回転でも頭を横にするようにしてH字のように広げて昼江の方へ攻める!


横転おうてん!」

「……ふざけた技を…………!」


 昼江が回転する俺に鉈を投げつけてくる!

 回転途中で右手の刀を地面について軌道を止め、地面に垂直に立てた右手の刀を軸に、身体を横へ平面回転して飛んでくる鉈を回避する。


「!?」


 鉈を回避したことを確認した。

 次に俺は左足の刀を踏み台にまた跳躍し、左手の刀を左足に渡して、片手両足の刀を三角錐のごとく一点に集め、昼江の方へと回転しつつ飛ぶ!


錐転すいてん!」


 ドリルのごとく回転し、突撃する!


 昼江が投げてきた投擲物を弾く。

 無駄だ。体はなるべく横に出さずに縮めることで、正面からの投擲は回転する三刀の先端で弾く。

 攻防一体の突撃技は的確に昼江を突くように飛んで行く!


「あら白零君! わたしに対して空中へ出るなんてうかつすぎるわ!」


 ……だろうな!

 恐らく昼江は落ちてくる俺に向けてなにか投げてくるだろう。

 そうなる前に、俺は右腕の方の刀を上にあげて錐型を解き、そのまま右腕の納刀した刀を回りながら昼江に投げる!


「っ! ちょ…………!」


 さすがに予想外だったが、投擲を得意とする昼江でもチャッチしそこねたようだ。

 その後、両足の刀馬で昼江のそばに着地! そのまま刀を踏み台に昼江の元へ急接……


「…………ぐあっ!?」


 昼江の方へ届かず、近くの地面に不時着してしまった……!

 なんだ……体が…………

 思うように、うご……か…………


「……よ、ようやく効いたわね。致死性はないものの、いつまで経ってもあんな変な動きをするから……」

「…………!」


 ま……麻痺か!

 もしかしてさっきの千枚通しか!


「けど、もうだめね。白零君ったら、刀は半分無くしたし、満足に動けないし、もうだめね」

「…………!」


 遠くから昼江が小さな投擲物の準備をしている。

 対して俺の刀は、最初の一本は跳躍に、次は投擲に……

 確かに、俺にはもうあと二本しかないが……


「ま、まだだ……!」


 不完全でも体の方は動く!

 両手を地面に付いて軸にし、そのまま両脚の刀を回転する!


「円回斬り! 二輪裂にりんざき!!」


 円回斬りの二刀版で、接近する鉈やナイフなどの昼江の投擲物を弾く!

 片足の方は大ぶりの鉈に当たったため弾かれ、残り一刀になる。

 構わず俺は両腕を地面に付いたままひじを曲げて跳び、片足に残った刀を右手で持ち直して投げられる前に接近する!


「昼江! お前はいったい何を考えてこんなことをしているんだ!」


 昼江はがれきなどから新しい投擲物を拾いつつ、牽制などに的確にこちらの目を突くように投げる。


「は? いきなり何の話よ!」

「とぼけるな! お前が火蛇族サラマンドラ蛇人サーペンターのために、いろいろとしていることだ!」


 刀はもう残り一本。

 昼江の投擲物に足をなるべく止めずに昼江の元へと突貫する!


「白零君、今さらあたしの考えていることが分からないわけじゃないでしょ! あたしがいつも何を目的に行動しているのかを!」

「違う! 俺が言いたいのはそこじゃない! なんでそのことに風精族シルフィを巻き込む必要がある!」


 俺は刀を抜刀せず、正面切って昼江の方へと刀を振り下ろす。

 大して昼江は投擲用に残した鉈を右手に攻撃を防ぐ。


「国境警備隊のこと! カルリトロスが攻めようとしたオーリエ村のこと! あとこれは確信ないが、風精族シルフィの里の事も、全部お前が絡んでいるだろ!」

「残念。カルリトロスのことは合っているけど、残り二つは銀生さんの管轄よ!」


 防御からの反撃を躱し、俺は後ろにではなく横に避ける!


「……やっぱりあれは銀生の仕業か」


 ラネット曰く、国境警備隊は里に連絡する暇もなく誰にも気づかれることなく全滅した。

 そんなことができるのはあいつぐらいだ。

 とはいえ、あいつの事はあいつ本人に訊く方がいい。今は……


「おまえにも銀生にもいろいろと訊きたいことがたくさんある。だからまずはお前を止めてこんな惨状止めてやる」

「止めるだって?」


 昼江は瓦礫の破片や針などを投擲してくる。

 俺は、刀を防御主体に用いり、半ば捨て身気味に昼江の元へと突撃する。

 体に突起物が刺さるが、急所じゃない。このまま勢いを殺さず走る!


「甘いのよ! 仮にあたしを止めたとしてもこの惨状は止まらない! 今この時でも火蛇族サラマンドラの血は流れ続けている!」

「なにが言いたい!」


 手を伸ばせば触れるほど、昼江と俺の距離は詰まる。

 俺は納刀された刀を左手で振り、昼江の右手を弾く。


「こんな事をしてなんの意味があるのよ!」


 俺は右拳を握り、昼江の腹部に向けて殴りつける。

 しかし、俺の拳は昼江の左手に防がれ、逆に掴まれてしまう。 


「なぜそこまであたしに固執するの!? こんな危険なところまで来てなんの理由があるの!? 殺し屋のあたしを優先させる理由がどこにあるというの!」

「…………」


 俺は右足を少々あげて昼江の左膝を蹴りつける。


「っ!」

「……俺がここにいるのは、俺個人の私情だ」


 膝を蹴られた痛みに顔を顰める昼江だが、倒れない。

 意志の強さのみで痛みに耐えている。


「……私情ですって?」

「いろいろと余計な要素があるからシンプルに言うが……」


 俺がここにいるのはお前と同じ理由……


「お前と本当の意味で決着をつけるために、俺はここにいる」

「……へぇ!」

「!」


 膝を蹴られたにもかかわらず昼江は持ちこたえ、掴んだ俺の右拳を引いて俺を引き寄せる!


「うおっ!」

「何が私情よ。白零君にしては珍しいじゃない!」


 っ! 俺を引き寄せた直後に昼江は俺の額に頭突きをかます。

 視界が……揺れる…………!


「いつもいつも他人を優先する白零君にしては珍しいじゃない! どういう風の吹き回しよ!」


 ……昼江の追撃が来ない。俺の言葉を待っているのか?

 だったら……


「その他人にお前はいる! 俺は本気でお前を連れ戻しに来たんだよ!」


 この戦いが終わってもまだまだ問題は山済みだ。

 やれ皇帝だのやれ結界だの、精霊術に関しては俺はさっぱりわからない。

 その上、昼江やアルバロス将軍の反乱軍? の殲滅。

 問題を数え上げればきりがない。だけど…… 


「余計な話は無しだ」


 今だけは他の事を考えたら、昼江には勝てない!

 たった一人でも昼江もまた護らなきゃならない人だ。だから……!


「今だけは……俺個人の私情を踏まえて、お前に挑む!」

「…………上等よ!」


 さらに昼江は右手に持った鉈を俺の頭に……!?

 いきなり!?


 ゴシャ!


「…………っ!?」


 が……ぁ…………!

 頭を横にしたから避けられた。けど、左肩が…………!

 千枚通しといい、左肩に恨みがあるのか……!

 だったら!


「…………!?」

「身刀流。身体の段・体鞘たいしょう!」


 体に精いっぱいの力を籠めることで、昼江の鉈が俺の左肩から抜けない。

 これで昼江の鉈を封じた。

 意識を……持て…………!


「……なるほど、本気の様ね。だったらあたしも、この里のことに関係なく言わせてもらうけど……」


 ゴッ!


「がっ!」


 お前……グーで、腹に…………!


「あなたの考えていることは本当に甘い! そう誰も彼も無差別に傷つかないなんて、そんな博愛が通じると思っている、の!?」


 昼江の追撃が来る!

 俺は、向かう昼江の左拳を掴み、その指を潰す手前で強く握る!


 バキッ!


「痛っ!?」

「博愛、か。勘違いしているから言っておくけど、確かに理不尽な暴力は嫌いだがあくまでそれは理不尽だからだ。意志の強いお前相手に、手は抜けないんでね!」


 安心しろ。時間が経てばちゃんと治るはずだ。

 良い子は真似するなよ。


 これでもう昼江の片手は投擲なんて器用なことはできない。それ以前に殴ることもままならんだろう。

 しかし昼江は苦悶の表情を浮かべつつも、鬼気迫る表情で問答する。


「……は、はは……だったらあたしはどうなの? 今回の事に限らずあたしは数々の人を殺した。けどそんなあたしさえ護ると言うの?」

「…………」


 昼江は俺の右手から手を離し、握りしめることなくゆっくりと下ろしている。

 しばらく攻撃は来ない。俺はそれをただ静かに見つめてることにした。


「あなたがそんな考えだからあいつ等は変わらなかった! どれだけ白零君があたしを護るためにあいつ等に対抗でも、あいつらは変わらなかった!」


 ……昼江がここ来て激情を織り交ぜた声を出している。

 まだ攻撃をする様子はない。俺も攻撃はせず、言葉に耳を傾ける。


「……わかる? あなたがあいつ等を必要以上に責めることなんかしなかった。ただの言葉だけであいつらを説得させようとした。その結果がこれよ?」


 あいつら……

 昼江と夜を傷つけ、俺に幾度となく対抗したあのいじめっ子たち。

 確かに俺はあいつらに必要以上の攻撃はしなくなった。


 ……あの日まで、だが。


「……決して消えない傷を負わされた。そのせいであの子は消えた。わたしたち(・・・・・)わたし(・・・)だけになった」

「…………」


 昼江、それがお前の本音か。

 いや、お前は…………


「結局リスクというものが必要なのよ! 一度侵せば取り返しがつかないくらい、記憶に焼き付けるほどの罰がいるのよ!」


 ……けど、やっぱり耐えられないのだろうか、恐らく俺は久々にこいつの感情的な声を聴いた。

 こいつの声が…………激流のごとく止まらない。


「だからわたし(・・・)はこの道に進んだ! それでもあなたは、あたしの事を止めて引き戻すつもりでいる!」

「俺は……もう後悔なんかしない。間違っていようがなんだろうが、迷いなくお前を引き戻す!」

「……白零君。わたしは、あなたとは違う」


 激情が一周してまたこいつは静かな口調に戻る。

 感情が不安定だ。均衡の危うい声で言葉を紡いでいく。


「あなたと違って、あの子が消えたわたしに、護るものなんて……ない」

「…………」

「白零君。そんなわたしでも護るって言うなら、護ってみなさい!」

「!?」


 昼江がポケットから何かを取出し…………!?


「熱凝石!? おまっ……!」


 それも投げてきたものよりやや大きい!

 まだあと一つあったのかよ!


「それとも白零君。……一緒に、死ぬ!」

「よせ!」


 こいつ、自分の命を犠牲にしてまで俺を殺す気か!

 早く石を取り上げないと…………!


「この…………!」

「させない…………!」


 昼江が右手で熱凝石を握りしめて離さない!

 くっ……! 固く握りしめている上に、今の俺は左腕が動かせないから……

 離せない……!


「自爆特攻用の特注品よ。わたしの手の中でも爆発力は十分…………ふふ、最後があなたと心中なんてね…………」


 昼江の手の中の熱凝石が光り輝き

 やばい、このままじゃ……もう…………!


「さようなら、白零君」

「昼江ええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 その時、熱凝石の光が俺と昼江を覆い…………

昼江、白零、共に……

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