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肆弐話 好きだからこそ、周りが見えないくらい熱くなる

一部訂正しました

 今日は本当にいろいろと突然で大変な日だ。

 火蛇族サラマンドラへ向かうと決意するも、レイラさんがいきなり同行すると言い、それで風精族シルフィの国境砦を越えるために命がけの水中引き回しをされたり……

 そんでもって、一番大変な時とは、その後ガルシャードの案内でキャサレス村とやらの中に入ったことだ。


 その時はまだ時刻は夕方だったから所々ちらほらと火蛇族サラマンドラがいるんだが……


「なんつーか……視線が痛い」

「すいません。けど、我慢してくださいであります」

「そりゃそうだけどな……」


 なんというか、周りにいる火蛇族サラマンドラの視線が皆こっちを向いていて、その上ひそひそ話まで始めているよ。

 おそらく、人間である俺と水妖族オンディーヌのレイラさんに対するこう……侮蔑? ……とは少し違うが、明らかに嫌われている感がする。

 それなのに同じ火蛇族サラマンドラであるガルシャードがなぜか同行しているため、疑惑の声も上がっている。


「あの火蛇族サラマンドラ、いったい何のつもりで一緒にいるの……?」

「人間に水妖族オンディーヌが、いったい何の用でここにいるのかしら……」

「おい……こいつら、問題を起こす気じゃないだろうな……」


 …………こうも露骨に言われ続けると結構、精神的にくるな。

 省かれるってこういう気分?


 それにしても……火蛇族サラマンドラにも、女性ってのがあったんだな。

 見た感じ、ほとんど男と変わらないように見えるけど、声の感じからして女性だとわかる。

 と、そんなどうでもいいような発見でとりあえず、精神的に落ち着かせる俺。


 とまあ、そうこういろいろと思い、そのままガルシャードの後ろを歩き続けていると……


「見えました。あれが火鰐アリゲイドを飼っている、鰐舎であります」

「おお……」


 鰐舎ってなんだよと突っ込みたい気分だが、そんなこと感じさせないほどに立派な建物が目の前にある。

 横長に広がる石造りの建物に、その隣に広がっている真っ赤な池……

 ……真っ赤?


「おい、ガルシャード。あの真っ赤な池はなんだ」

「え? あれでありますか?」


 真っ赤って言っても、血の色と言うよりは炎の色をしている。

 まさか……


「溶岩であります」

「溶岩!?」


 なんで村の中に溶岩が当たり前のようにあるの!?


火鰐アリゲイドを飼うには欠かせないものなのであります。火鰐アリゲイドは一定の間だけ溶岩を浴び続けないといけないのであります」

「…………そうか」


 なんか……不便というか、飼うのが大変な生き物なんだなこの世界の鰐……


「久々に見たな。敵国だからでもあるが、何度見ても火鰐アリゲイドは迫力があるな」

「……そうか」


 もう、突っ込むのはよそうか。

 というかレイラさん、ここ一応村の中だから不用意な発言は控えてくれない?


「それではハクレイさん、レイラさん。自分はこの鰐舎の主と交渉しに行きますので、ハクレイさん達は入り口の外で待っていてくださいであります」

「わかった」

「気をつけろよ、ガルシャード」

「それはハクレイさん達の方でありますよ。でも、気を付けて行くであります」


 どうやらここから先はガルシャード一人で何とかするようだ。

 俺もレイラさんも、特にすることはないようなので鰐舎の入り口近くで待つことにした。


 ……いまだ浴び続ける視線を堪えながらである。



          2



 …………それから、しばらく経って。

 ガルシャードが帰って…………こない。


「レイラさん……ガルシャード、遅いですね……」

「そうだな。いったいどうされたのか……」

「その上……」


 俺たちを怪しそうに見る火蛇族サラマンドラがまだいやがるよ……

 さっきより数は少なくなっているが、全く離れようとはしない者が数名、俺たちのことを見続けている。

 ああ……早く来てくれないか……ガルシャード…………


「おい、そこのあんちゃん。ちょっとお話しようじゃないか」


 ほら見ろ! なんか見ず知らずの蜥蜴人リザードマンのおっさんに出会っちまったじゃねえか!

 しかもすごい強面じゃん。真正面からだと迫力凄いじゃん。


 ……いかん、人は見かけで判断しちゃいかん。

 さっきから痛い視線ばっか浴びてるからこんな悪い発想をしてしまうんだ。


「……お話? いいですけど、俺たち人を待っているのですが…………」

「ああ、かまわんよ。ちょっとだけ付き合ってくれるだけでいい」


 と、おっさんはニカッと爽やかな笑みを浮かべてこちらを見てきた。

 しかしその反面……


「やだ……パルデロの奴、人間に話しかけているぞ」

「おいおい、水妖族オンディーヌだっているのに、なにを平気で話しかけてるんだ?」

「頼むから変なことはしないでくれ……」


 …………。

 そうか、このおっさん……もといパルデロさんも省かれているのかよ。

 なんだろう、このわけのわからない安心感と複雑な気分。


 まあいいや。余所の事は放っておいて、話を続けるか。


「あんちゃん、変わった服を着ているねぇ! 火蛇族サラマンドラもそうだが、風精族シルフィでも見たことのない、なんとも不思議な衣服だ」

「おっ! もしかしてジャージに興味があるのですか!!」


 まさかここにきてジャージに興味を示してくれる人がいるとは!

 見る目あるよこの人!!


「ほう、ジャージと言うのかい! 見た所動きやすそうな感じがするのだが?」

「そうですよ! ジャージとは、山でも谷でもどんな所でも、暑い時でも寒い時でも、その上緊急時に服以外の用途にも使える万能着なんですよ!」

「なんと、そんなすごい服なのか!!」


 おおお! 食いついてくれた!

 これは説明しがいがある!!


「そうですよ! 寝るときにも使えますから緊急時に起こされてもすぐそのまま動けますし、頑丈だからある程度べの用途に使えますし、何よりも動きやすさを追求したこの伸縮性は最高です!!」

「ほう、すばらしいな! 迷い子の世界にそんな技術があるとは驚きだ!」

「でしょう! もう、俺ったらこの素晴らしさを知ってしまったせいで他の……」

「白零殿、白零殿」

「え……」


 な、なんだよレイラさん。今いいところなんだから止めないでくれよ。

 せっかく熱くなってきたところなのに……


「周りをよく見られよ」

「え?」


 レイラさんに指を指されて周りを見ると……

 あれ? みんなすごい怪訝顔でこっち見てるんだけど。

 なんか、怯えてない?


「白零殿、熱くなりすぎだ。そのジャージとやらが素晴らしいことが分かったが、もう少し抑えて言え」

「別にいいじゃないか。人間誰だって好きな物を語るときは熱くなるもんだよ」

「白零殿は、もうすこし自重された方がいい」


 まったく……何なんだよ。

 そりゃあ、街中で大声出すのは迷惑そうだけど……

 迷惑そう……


「……すいません。近所迷惑でした」


 ……そうだよ、なにいきなり大声とか出しちゃっているんだよ!

 滅茶苦茶恥ずかしい……!


「はっはっは! 興奮するほど、あんちゃんはその衣服が好きなんだな!」


 おお……パルデロさん笑って許してくれたよ。

 めちゃくちゃいい人じゃん……!


「それじゃあ、気を取り直して、他のことを訊いてもいいかい?」

「あ、はい。いいです」

「よし。時にあんちゃん……見た通り迷い子だそうだけど、いったいどこの里から来たんだい?」

「え? いや、その……」


 いっていいのか、それ?

 別に住所でもなんでもないけど、なんとなく……言っていいのか?

 そう思い、俺はちらっとレイラさんの方に視線を向けると……


「…………大丈夫だ」

「そうか」


 どうやら言ってもいいようだ。

 俺はパルデロさんの明るい表情を真っ直ぐ見据えて答えた。


水妖族オンディーヌの里から来た。訳あってぶらり旅でここの里を訪れようとしている」

「「「!?」」」


 あ、周りの火蛇族サラマンドラたちが、明らかにざわめきだした。

 まあ、人間自らが里へ行くなんて聞いて、大丈夫かって思うだろうな。心配とは別で。

 すると、パルデロさんも素で驚いていた。


「ほう! あんちゃん、里へ行くつもりなのか!! だから鰐舎の前で待っているんだ!」

「……そういうことです。今、仲間が主と交渉しているそうですので……」

「ほう、なるほど。人間の事はあまり知らんが……あんちゃん見るからに若そうだってのに根性あるねえ!!」


 ……この火蛇族サラマンドラは人間の事をあまり毛嫌いしていないんだな。

 平気で俺の肩叩いているよ。


「……しかし、あんちゃん。あんまり自分の里を悪く言いたくはないがあそこはおすすめできんぞ。特にあんちゃんのような異種族が歓迎されるわけではない」


 しかし、感心したと思うと直後に心配そうな表情になって俺に忠告をしてくれた。

 ……その気持ちは嬉しいけど、


「いいえ、俺はそれをわかっていていくつもりなんです。あそこで会わなくちゃあならない人が、待っているはずですから」

「? よくわからんが人探しかい? あんちゃんも大変だねえ……」


 と、しみじみと自分のように大変そうに呟いてくれた。

 この人、結構感情表現豊かだな。

 表情がそのまんま顔に現れているよ。


「おっといけねえ。さっきからあんちゃんの事ばっかり訊いてしまった。なにかあんちゃんの方からも訊きたいことはないかい?」

「え? 訊きたいことですか? そうですね……」


 そりゃあ、長居することはなくてもこの村にはちょっとばかし興味があるし……

 そうだな……


「お待たせしてすみません! なんか火鰐アリゲイドを貸してもらうことができたであります!」 

「え? 終わったのか?」


 おいおい、ここで鰐舎からガルシャードが出てきてしまった。

 いや、出てきたこと自体はいいんだけどなんて言うか間が悪いと言うか……


「……おや、いかん。どうやらあんちゃんの待っていた人が出てきたようだ」


 あぁ……少々残念だ。せっかくだからもう少し話がしたかったんだけどな……

 仕方がない。


「え? あれ? ハクレイさん。火蛇族サラマンドラと仲良くお話を……しているのでありますね?」

「ガルシャード殿。少し静かにされよ」

「? はぁ…………」


 どういう訳かわからずに混乱しているし、あんまり長引かせることはできない。

 最後に……


「俺の名前は金斬かなぎり白零はくれい。最後に自己紹介しませんか?」

「ふむ、いいの。わしはパルデロ。あんちゃんとは少しお話がしたかった」

「でしたらそれは次の迷い子とかに取っておいてください。パルデロさんとの話は結構楽しかったですよ」

「はは! 言うね。わしも楽しかったぞハクレイ! じゃあの!」


 と、パルデロさんは笑いながら背を向けて去って行った。

 結局なんだったの、と言いたげな他の火蛇族サラマンドラたちだったが、やがて自分たちも去って行ったのだった。


 さて……


「……遅いぞガルシャード。と、言いたいところだけど別にいいや」

「は、はぁ……よくわからないでありますが……」


 なんか釈然としない様子だけど別にいい。

 終わってしまった以上、次へ急がなくてはな。


「まあいいであります。それでこの鰐舎の主は、相手を見る目がありますし、嘘も通用しません。説得に時間はかかりましたが、なんとか自分の事を信用してもらえて、火鰐アリゲイドを貸してもらえたであります」

「……すげーな。お前」

「いえ、それほどのものではありません」


 謙遜で言ったつもりだが、ガルシャードは少し照れくさそうに笑いながら言った。まったくかわいいな。

 とはいえ、移動手段が手に入ったのは上等だ。


「とにかく火鰐アリゲイドを借りることができたんなら、急いで火蛇族サラマンドラの里へ行くぞ」

「はい、であります」


 日はすでに落ちているのだが、そんなこと構いはしない。

 どの道こんな落ち着かないところで宿には泊まれないし、第一金銭的に心配だ。

 だったら一刻も早く進んで、時々休んで、そして進むといった方がいいだろう。

 とはいえ……


「しかし白零殿。火鰐アリゲイドに乗ったことはあるのか?」

「いや、当然ない。レイラさんは?」

「私も同じく、ない」


 というか、人間世界で鰐に乗るようなシチュエーションがあるのか?


「大丈夫であります。貸したのは大型の火鰐アリゲイドでありますので、一匹に三人とも乗ることができるので、初心者のハクレイさんやレイラさんも安心して乗ってくださいであります」

「いや、乗ってくださいって……」


 そもそもガルシャード、お前は鰐に跨れるのか?

 だってお前……足ないじゃん。


「……まずは実物を見てからにするか。ガルシャード、案内頼む」

「はいであります」


 とりあえず俺たちはガルシャードを先頭に、鰐舎の中へと入っていったのだった。



          3



 と、いうわけで俺たちはその後、いろいろと四苦八苦しながらも、ガルシャードの扱いの元、巨大な走る鰐である火鰐アリゲイドに跨り、火蛇族サラマンドラの里へと一直線に進み続けた。

 途中、休憩も入り、時々村に寄りつつ順調に目的地へと進み続けた。

 そして、日も昇った朝の時……


「ところでガルシャード。そう言えば火蛇族サラマンドラの里ってのはいったいどういった特徴があるんだ?」

「はい? 特徴でありますか?」

「そうだ。周りの地形とか町全体の雰囲気とか、そんな感じの」

「そうでありますね……」


 と、ガルシャードは力なく頭を少し下げて

 ……まさか、いきなり重たいところに入るのか?


「基本、自分たち火蛇族サラマンドラの里は、主に三つに分かれているのであります。上から、里を統治する皇族が住む王宮、その後続をお守りする軍人が住む軍寮と上町、そしてそれ以外の下級民が住む下町に分かれているのであります。自分はじかつて下町に住んでいたであります」

「下町……」


 住処も主に三か所に分けられているのか。

 けど、ガルシャードのすこし暗そうな説明とは違い、あまり悪いイメージは浮かばない。

 が、まだなにかあるんだろうな。


「下町は、あまり治安はよくないのであります。強盗などの犯罪も良く起きますから、自分たちは安心して寝られません」

「そうなのか……」

「特にひどいのは、病気やけがが起きてもまず病院ありません」

「なに!?」


 治安が悪いとか、犯罪とかそれも十分危ないが……

 下町に……病院はないだと!?


「病院は、上町にあるのです。しかし軍人でもない、さらには蛇人サーペンターであるならなおの事入れてもらえません」

「おい……どういうことだよそれ」


 軍人じゃないならまだしも、蛇人サーペンターだからってのは……


「……それは、火蛇族サラマンドラには、上位の竜人ドラグナー、中位の蜥蜴人リザードマン、下位の蛇人サーペンターと、三つの位に綺麗に分かれているのであります。それと同時に、住処もおなじく上位、中位、下位へと……」

「なんだよ、それ……!」


 ふざけやがって……なんなんだそのシステムは……

 格差社会そのままじゃないか……!


「やはり、想像以上に火蛇族サラマンドラの里は、かなり違う様子に代わっているな」

「はい。すべては三年前……あの日から全て……」

「…………」


 ……いかんな、重たい話になってしまったな。

 その三年前に、なぜ変わってしまったのか訊きたいところだが、それはまず後回しだ。

 聴きたいことはそれだけじゃない。


「その火蛇族サラマンドラの里はどういった場所にあるんだ?」

「あ、はい。火蛇族サラマンドラの里は、向こうに大きな火山が見えるのですが、その火山の中に里があるのであります」

「火山の中?」


 ……なんかまあ、それらしいっちゃそれらしいが、なんでそんな面倒な場所にあるんだ?

 いろいろ不便そうたが……


「はい。理由はいくつかあるます。ひとつは火蛇族サラマンドラにとって大切な溶岩が近くに流れているからであります。地底に最も近い場所でもありますから、重宝されるのであります」

「溶岩……」


 あれか? 人間は水がなけりゃ生きられないのと同じ原理か?

 そんなに溶岩が大事なのか?


「二つ目は、地形的に敵に攻められにくいようになっているからであります。火山の中とはいえ、直接外から入れるわけではありません。もう少し進んだ先に谷があるのでありますが、その谷の中に入って地下をしばらく進むと、里にたどり着くのであります」

「まずは谷からって……じゃあ、もしも何者かがわざわざ谷に落ちてまで攻めてきたらどうするんだ?」

「その時は里の番人が出てきて、侵入者と戦うのであります」

「番人……?」


 へぇ、門番らしきものまでいるのか。

 門番と言えば大抵負けやすそうな連想だが……


「番人は谷の上から火山の里の間を観測しており、もしもなにか落下物や侵入者を見つけた場合は、即排除するのであります」

「へぇ〜」


 しかし、谷の上ってことはその番人とやらも、一人だけじゃなさそうだな……


「その上、途中経路に谷の中があるということは、仮に里まで攻めてきたとしても、逆に逃げられないのであります」

「ちょっと待て。谷から出られないのは、火蛇族サラマンドラも同じことじゃないのか?」

「いいえ、火蛇族サラマンドラにはある特殊な移動方があります」

「特殊な移動?」


 ってことは……


「この火鰐アリゲイドのことか?」

「いいえ、火鰐アリゲイドではありません。火鰐アリゲイドでも里へ下りることは可能でありますが、番人はもっと恐ろしいものに乗っているのであります」

「恐ろしいもの? それっていったい……」


 なんなんだ? と、訊こうとしたら……


「おい! そこの火鰐アリゲイド! 止まれ!」

「「「!」」」


 すると突然、俺たちのはるか上から怒鳴り声が響いてきた。

 いったいなんだ……


「!? なんだありゃ!!」

「……先ほど話に出た、里の番人であります」

「……なつかしいな」


 俺たちのはるか上空には、俺たちを見下ろす蜥蜴人リザードマン……

 ……だけじゃない!


「ドラゴンって……そんなのありか!」


 しかもそいつは、翼を広げて空を飛んでいる赤い竜に跨ってこちらを見下ろしている。

 本当に実在したよ……ドラゴン。


「キェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッッ!!」

「うおっ!?」

「うっ!!」


 番人が乗っている赤い竜が力強く吠え出した。

 俺もレイラさんもガルシャードも驚き、火鰐アリゲイドは驚きのあまり立ち止まってしまった。


「今のは耳に響いた……!」

「おいおい……!」


 そして、停止した俺たちを見て、降りてくる飛龍。

 こいつは……


「なあ、ガルシャード。その番人とやらは……強いのか?」

「……当然であります」


 さすがのガルシャードもまずいといった顔で、上を見つめている。


「将軍ほどではありませんが……番人もかなり強いであります」

「……そうか」


 さて、どうするべきなのかな……

 本気で何とかするべきか、とりあえず俺はジャージの袖を肘まで捲ってみたが……


「ですが大丈夫であります。番人に見つかること自体想定内であります」

「なに?」


 不意に、ガルシャードが落ち着いた様子で、案に俺に制止するように言いだした。

 ……そりゃあ確かに、番人なんだから里を目的としている以上必ず遭遇はするが……

 冷静過ぎじゃないか?


「ハクレイさん。レイラさん。ここはひとまず大人しくしておくのであります。下手に戦ったところで大騒ぎになりますから」

「ガルシャード……お前……」


 この状況でも冷静に俺たちになにかお願いをするガルシャード。

 その落ち着いた態度はつまり……


「白零殿。おそらくガルシャード殿にはなにか考えがあるようだ。ここはガルシャード殿の言うとおり大人しくしよう」

「……わかった」


 ……ここはガルシャードを信じるとしよう。

 どちらにしろ、ここで逃げたら二度と里には行けねえ。


「…………」


 上空からゆっくりと番人が近づいてくる。

 さて、どうなることか……

ガルシャードの考えとは

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