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参玖話 訪問は突然に…………あれ?

白零「あれ? せっかくの俺の再登場が…………?」

ガルシャ「ハクレイさん。どうしたでありますか……?」

白零「……いや、なんでもない。話を続けてくれ」

「はーい! どちら様ですか?」


 突然来た訪問者にラネットさんが訊ねながら玄関の扉を開けました。

 すると……


「ちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっす!! 宅配便でぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええっす!!」

「ヒャッハー! 不幸を……届けになぁ!!」

「…………」


 ……バタン。


「…………」

「…………」

「…………」

「あれ? 今の声って……」

「言わないで、クロチヨ。そんなのあり得ない」

「え? だって……」


 覚えのある声なのですが……


「あら、宅配? いったいなんなのかしら?」

「母さん……少しはおかしいって思いなさいよ……」


 アデルさんがきょとんとしてラネットさんになんなのか訊きます。

 ラネットさんは……頭を抱えています。


「ラネットさん……」

「うん。幻だよね。だっているはずないんだもの……」


 そう言ってラネットさんはもう一度玄関の扉を開けました。

 すると……


「テイク2ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!! 宅配便でぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええっす!!」

「ヒャッハー! 不幸を……届けになぁ!!」


 バタンッ!!


「…………」

「…………」

「…………」

「ラネットさん。やっぱり今のって……」

「やっぱり!? やっぱりなの!?」


 やっぱりも何も……間違いありません。


「キノサキさんが……訪問してきたのですね」

「ちょ、ちょっと待て!! なんでここに来てあいつがここにいるんだよ!?」


 今気が付いたセーヴェさんがあたふたと慌てています。

 ロビィさんは……


「そ、そんなの……セ、セ、セーヴェ君を狙いに来たんだよ! どどどどうしよう……!」

「ロビィさん……落ち着いてください……」


 ロビィさんも慌てていて、その上取り乱しています。

 アデルさんは……


「あらあら、キノサキってさっきの子? なかなかハジけた子ね」

「母さん、冷静すぎるよ! どう聞いてもまともじゃないでしょうが!!」

「もう……困った子ね……」


 するとアデルさんが椅子から立ち上がって一直線に玄関へ向かって……


「え、え!? ア、アデルさん!! 危ないよ!!」

「お、おい! 待てよ!!」


 ロビィさんやセーヴェさんが止めにかかります。

 もしかして……今度はアデルさんが出るのですか?


「母さん! 待っ…………!!」

「ラネットさん、待って。大丈夫」

「何が大丈夫よ! だって相手はあの……」

「大丈夫よ、ラネット。お母さんを信じなさいって」

「でも……!」


 やっぱりみなさん、キノサキさんが相手だから心配しています。

 でも……


「大丈夫だって。ちょっと言いたいことがあるだけよ」

「え……?」

「そうです。今のキノサキさんなら……大丈夫」

「クロチヨ……」


 ……まだ納得ができないようですけど、最後にラネットさんは許してくれました。

 ロビィさんもセーヴェさんも、もうこれ以上なにも言わないようです。


「さて……」


 そして、今度はアデルさんが扉を開けたら……


「テイク3ィィィィィィィィィィ!! 宅配便でぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええっす!!」

「ヒャッハー! 不幸を……届けになぁ!!」


 先ほどから同じことを言っていると……


「コラ!! 近所迷惑でしょう!! もっと静かに言いなさい!!」

「え?」

「え?」


 ……アデルさんがキノサキさんを叱っています。

 皆さん……呆然ですね。


「…………母さん」


 えっと……確かにキノサキさん達の声は大きいですけど…………

 セーヴェさんもロビィさんも予想外の言葉に唖然としています。

 大してキノサキさんは……


「……はい、すいませんでした」

「ヒャッハー。反省します」

「謝った!?」


 素直に反省してくれました。



          2



「あら、キノサキさんって変わった眼鏡を装着しているんだね」

「そうなんですよ奥さん! このマルチセンサーとはいかなる状況に対応しており、中でも状況判断とマークすべき対称を自動判断すること、たとえヘェェェルメェェェスの高速走行でも交通事故を起こさないのでーす!!」


 アデルさんの叱咤の後にキノサキさんが家に上がって、今の食卓に着きました。

 さすがにヘルメスさんは乗り物ですので外にいるのですが、たぶん話し声とかはキノサキさんが通信で教えているのでしょう。

 ですけど、いきなりなにをしにここへ来たのでしょうか…


 アデルさんは、物珍しい姿に関わらずキノサキさんと普通におしゃべりをしています。


「(おい! いったいどういうつもりなんだよ!)」


 アデルさんがキノサキさんに応対している間、裏でセーヴェさんが怒って私に問い詰めます。


「(そそそそうだよ! 家に上がらせるなんて、いくらなんでも危ないよ!)」

「(本当に大丈夫なの!?)」

「(うーん……)」


 でも今のところキノサキさんは……戦おうとはしなさそうですし……

 とにかく、今は話し合いをするところですね。


「(セーヴェさんとロビィさん。お二人は奥の方で控えてください。もしキノサキさんが奥へ進もうとしたらラネットさんは止めてください)」

「(え? さ、三咲さん?)」

「(……あんたはどうするの?)」

「(私はキノサキさんとお話をします)」

「(……そう)」


 念には念を入れて、ロビィさんとセーヴェさんは控えるようにします。

 場所は居間の奥……出口近くで待機させてもらいます。

 その前をラネットさんが待機するようにします。

 場所的にも話の内容が聞こえるようですし……


「(お、おい……お前……)」

「(ん?)」

「(……気をつけろよ)」

「(はい。わかりました)」

「(き、気を付けてね……)」

「(はい)」


 ロビィさんやセーヴェさんは心配そうに、でも居間の奥へ行きました。

 最後にラネットさんが、


「(クロチヨ)」

「(なに?)」

「(……あんたのすることは大体予想はついてたけど……でもあいつが少しでも妙な動きをしたら、即止めに入るからね)」

「(…………わかりました)」


 そんなことは……起こさせはしません。

 私は三人がそれぞれの場所に着いたことを確認すると、居間の食卓に座っているキノサキさんに話しかけます。


「キノサキさん。あの……」

「ん? おお……作戦会議は終わりか? クロチー!」

「クロチー?」


 あれ? 呼び方が変わっていませんか?

 えっと……言いたいところはまだたくさんあるのですがまずは……


「なに馴れ馴れしい呼び方なんかしているのよ。それよりもなんであんた勝手に軟禁所から出ているのよ! 看守の皆はどうしたのよ! それになんで私たちがここにいることがわかっているのよ!!」


 ラネットさんが一歩も場所を動かずに、声を強めにキノサキさんに問いかけます。

 確かにいろいろと言いたいことは多いですけどそんなに多一辺は……


「質問が多いいからひとつずつ答えるとね、ここがわかったのは、もちろんお前に発信機を仕掛けたから!」

「…………え?」


 キノサキさんが私に指を向けて、発信機を……

 ……発信機!?


「お前のそのお腹に巻いている布を調べてみろ」

「帯に……?」


 そう言われて私は和服の帯の部分を調べます。

 すると……


「……あ、これ…………!」

「素で気づかなかったようだな」


 確かに、帯の上の裏側の部分に何か小型の機械のようなものが張り付いていました。

 手で取ってみると……


「! クロチヨ、それは……?」

「……これのせいでキノサキさんに場所が割れてしまったようです」

「そんな……でもいつの間に……!」


 そうです。昨夜はそんなことをされた気配が全くありませんでした。

 ということは……


「キノサキさんと撃ち合いをしたあの時……!」

「え?」

「その通り。こちらがクロチーにSBパンチをしたときについでに仕掛けさせてもらった」

「え……仕掛けさせてもらったって……」

「お前が標的であったセヴェリーニのそばにいると仮定してな、一応仕掛けたってわけだ」

「…………!」


 そんな……

 ということはもしキノサキさんが風精族しるふぃさんに捕まらなかったら……


「やれやれ、お前もまだまだだな。妖精……じゃなかった。風精族シルフィだっけ? そいつらに捕まらずに一時撤退していれば標的を抹殺するところだったんだぜ」

「…………!」


 そんな……

 私としたことが…………!


「あんた……また懲りもしないで……!」

「いいや、ここに来たのは標的の抹殺じゃない。というより要件は早く終わらせたいんだよねー」

「はあ? それっていったいどういう……」

『あ、見つけたぞ迷い子!! ……いや、乗り物の方か!!』

「「…………え?」」


 あれ? 外から声……?

 それも風精族しるふぃさんの声ですよね……?


『ヒャッハー! 見つかっちゃったぜ! それじゃあアデュー!!』

『貴様! 待ちやがれ!!』

『もう一人の方は何処に居るんだー!!』

『ヒャッハー! 内緒!!』


 …………。

 ……今の声は多分風精族しるふぃさんとか、ヘルメスさんですよね?

 それとヘルメスさんが走り去った音と風精族しるふぃの皆さんが飛び立つ音も聞こえて……


「…………ねえ、どういうこと?」

「いやー監禁部屋とか看守とかそういうもんはね…………」


 キノサキさんがなぜか照れくさそうに笑いながら……


「全部無視しちゃったぜ!」

「なにしてるのよあんたは!?」


 え、えっと……それってつまり……

 脱走……ってことですか…………!


「でも大丈夫! ただ逃げただけだから看守とかには一切危害を加えてはいないぜ!」

「そう言う問題じゃないでしょ! そのまま大人しくしていればいいのに何でわざわざそんな危険なことを……!」

「ラネットさん、待って」

「! クロチヨ……!」


 ラネットさんが怒る気持ちもわかりますがここは抑えるべきです。

 キノサキさんは、要件は早く終わらせたいと言いました。

 でしたらここは早く、要件がなんなのか訊かないといけません。


「キノサキさん。ここに来た理由がセーヴェさんじゃないのでしたらいったい何なのですか?」

「いやはや、それだよ。ものは相談なんだがよ、聞いてくれないか?」

「……いったい、なんなのでしょうか」


 セーヴェさんを傷つけに来ていないしたら、いったいなにが……

 キノサキさんがこちらに意識をしっかりと向けて、改まった様子で言います。


「こちらとヘルメス。クロチーの所に同行させてもらえないか?」


 …………え?

 同行、ですか……?


「どういう、ことですか?」

「やー! 言葉通りの意味! こちらガンスロット=キノサキがクロチーと一緒にこの世界を旅したいんだね!」

「待って! あんたいったい何を言っているのよ!」


 ……あの、いくらなんでも内容が内容ですので、いきなりすぎて混乱します。

 ラネットさんは意味がわからないみたいに声を荒げて言います。


「ええ!? もしかしてピクシブガールもこちらと同行したいっていうの!?」

「違うわよ! なんで呼び名が変わっているのかいちいち訊かないけど、勝手に監禁部屋から出て、すんなりとこの里から出られる訳ないでしょうが!」

「もうー! 細かすぎるじょしーは嫌われるゾ!」

「…………!」


 ラ、ラネットさん……落ち着いてください。

 確かに、勝手に部屋から抜け出したのはいけませんが……


「実はこちらとヘルメス、諸事情によりこの世界を自由に満喫しようかなーって思って」


 キノサキさん……顔は真剣そうですけど言っていることはまだわかりません。


「諸事情……とはなんなのですか?」

「言えない。でも……これからのガンスロット=キノサキは自由行動をしようかと思います」

「自由……?」


 キノサキさんの口から……驚く言葉が出てきました。


「そう、フリーダム! 自由はもはやこちらの中では義務なんですよ! 義務と化しちゃったのよ!!」

「…………?」


 昨日までは自分の意志はないとか言っていたのに、どうして今日はまた違う事を言うのでしょうか?

 変わるのがいきなりすぎて混乱するのですが……


「でもね! こちらとヘールメースはこの世界で生きるにはいろいろと物を知らなさすぎるからね、同じ異邦人であるクロチーにちょっと一緒にどこかへ行かないかなー、って……」

「え……?」


 えっと……この世界でいろいろと行きたいところがあるけど、でも何も知らないから同じ“迷い子”である私とならって……


「たぶんクロチーってずっと一か所に留まっているわけじゃないと思うんだよね。そうだろ?」

「……確かにそうです。この後私には行かなければならないところがあるのですが……」

「……それってこの幻界の中でどこかへ行きたくなったけど、一人では心細いからクロチヨに頼るってこと? いろいろ言いたいことはあるけど、あんたは現に脱走しているから……」


 ラネットさんは落ち着いて、キノサキさんの現状を言います。

 確かに勝手に抜け出したことはいけませんね。


「なぁにピクサブガール。それはお前自身の権力でちょこっと!」

「……あんた私の事なんだとおもっているのよ。そんなことできるほど私はすごくないし、するつもりもないし、あとさらに呼び名を変な風に変えないでよ!」

「わかったよ。ラっちゃん」

「誰よ!?」


 ラネットさんがキノサキさんと変な風にもめています。

 後ろでロビィさんもセーヴェさんも多分驚いているでしょう。

 ラネットさんの気持ちもわかりますが……


「……私は別にキノサキさんと一緒でも大丈夫ですけど?」

「お!」

「え、クロチヨ!? それ本気で言っているの!?」


 キノサキさんが嬉しそうに、でもラネットさんが信じられないように言います。


「大丈夫ですよ。いろいろ心配だと思っていたキノサキさんが一緒ならいろいろと安心できるところもありますし……あ、でも零ちゃんはなんと言うんだろう?」

「いやそう言う問題じゃないでしょ? あんたは昨日まで危険なことし合った間でしょう!?」

「でもそれはキノサキさんがセーヴェさん目当てだったからで、今はそうじゃないから大丈夫だよ?」

「けど…………」


 でもラネットさんはまだ渋ります。

 すると……


「ラネット、私にはくわしい事情は分からないけど一つだけ言えることがあるわ」


 話を横で聞いていたアデルさんが真剣そうな顔でラネットさんに言います。


「なに? 母さん」

「男の子が思い切って旅をするって大事な時に、素直に見送らないのは女の子が廃るものよ」

「いや……母さん。そんなきれいな話じゃないし、第一こいつの危険度を知らないからそんなことが言えるのよ」

「そうよね……旅のお供にクロチヨさんを選ぶなんて、大胆というか、いきなりすぎると言うか……」

「いや、そう言う問題じゃなくて……」


 そうですね……確かに昨日の時点でそんな素振りが感じられませんでしたし……


「それでもクロチヨさんはいいよって言ってくれたし、見た感じ彼は真摯そうだし……」

「何処をどう見たらそう見えるの!? だからこいつは脱走とかしているのよ!」


 そう、ですか……

 やっぱり脱走は駄目ですよね……

 するとキノサキさんは、疲れたように息を吐いて、椅子から立ち上がりました。


「……ちょっと、どこに行くのよ」

「……しょうがないな。じゃあ分かった。ようはお前が言うには脱走の件を何とかすればいいんだな」

「え? いや、それだけじゃないと思うんだけど……」

「よろしい。ならばこちらに任せろ」

「いや、あんたが原因だからね」


 そう言ってキノサキさんは特に何もすることなく、そのまま玄関から外へと出て行ってしまいました

 ヘルメスさんは外にはいないと思いますけど、いったいなにを……


「…………」

「…………」


 ……もう、来ないですね。

 キノサキさんは家を出た後、しばらくして気配が感じられなくなりました。


「ラネット、大体話は分かったと思うわ」

「……本当、母さん?」

「ええ。だいたいこうでしょ? キノサキさんは以前にクロチヨさんに酷いことをした。それなのにクロチヨさんに同行すると言って全く反省する気がないキノサキさんを簡単に許せない、ということ?」

「……まあ、だいたいそう言う事よ」

「……そう、キノサキさんがクロチヨさんに……」


 アデルさんは真剣な顔で手を頭に当てながら、なにか考え事をしています。

 アデルさんにとってはキノサキさんに会ったのは初めてですからいろいろと不思議に思うところはあるのでしょう。

 あと……もうキノサキさんはここにはいないと思いますので……


「……ロビィさん。セーヴェさん。もう出てきていいですよ」

「……え? う、うん……」

「…………」


 もう大丈夫だと思い、私はロビィさんとセーヴェさんを呼びました。

 そしたら二人とも静かで重たい様子で出てきました。


「……ロビィさん、セーヴェさん、大丈夫ですか?」

「……え? う、うん……その……えっと…………」

「いや、いくらなんでもそれはありえなさすぎる……」

「…………」


 二人とも、困惑しています。

 無理はないと思いますけど……


「……なあ、お前あの殺し屋を連れて行くって本気なのかよ」

「え?」


 セーヴェさんが恐る恐るといった様子で

 もしかしてさっきのお話を聞いて、不安に思ったのでしょうか。


「……はい。キノサキさんが自由になると言って、私について行くと言いましたから拒む理由はないって…………」

「ちょっと待ってよ! そんなの駄目に決まってんだろ!」」

「え?」


 セーヴェさん?

 なんでいきなり怒って……


「何考えてんだお前! あんな殺し屋いったい何が目的でそんなこと言いやがるんだよ!」

「え、え、セーヴェ君?」

「お前もお前だ! そう簡単に心許してんじゃねえよ! あいつは運転手とその隣の奴に怪我をさせたんだろうが! その上お前もあいつと戦ったそうだってのになんで許してんだよ! バカじゃないのか!!」

「ちょっと!」

「セーヴェ君! だ、だめだよそんなこと言っちゃ!!」


 ラネットさんとロビィさんはセーヴェさんの事を怒っていますが……

 私は体をかがめてセーヴェさんと同じ目線の高さになって話します。


「……セーヴェさん、ごめんなさい。大事なことを失念していました」

「な、なんだよ……」

「セーヴェさんの言いたいことは分かります。確かにキノサキさんに殺されそうになったセーヴェさんには、簡単にキノサキさんを赦せない気持ちはあるのもわかります。ですが、許しているとは少し違……」

「そ、そんなこと言ってるんじゃない!!」

「え?」


 あれ? 違うのですか?

 自分を殺そうとする人が許せないのではないのですか?


「お前はそれでいいのか!? 用心棒ってのがそう簡単に殺し屋を赦してもいいのか!? 別に俺自身もう殺されることがないならそれでいいが、だとしてもあいつは放っておけるような存在じゃないだろ!!」

「セ、セーヴェ君? どうしたの……?」

「お前は怖くないのか……あんな得体のしれない殺し屋と一緒にいて、怖くないのか……!」

「セーヴェさん……」


 心配……しているのですね。

 キノサキさんと一緒にいて大丈夫なのか、と


「大丈夫です。キノサキさんを放っておける人じゃないと思うのは私もです。だからこそキノサキさんは放ってはおけないのです」

「……え?」

「私は……キノサキさんの事がとても心配なのです」

「心配? あいつのどこに心配する要素があるんだよ!」


 心配することは……たくさんあります。

 昨日のキノサキさんとの話で、そう思えるようになりました。

 それがなんなのかは……はっきりとは言えませんが……


「それは……えっと、その……まだ確信は持てませんし、不思議に思う事はありますけど……」


 でも、このままキノサキさんを一人にするのは……

 ……いけないと思うのです。


「心配だから、そばにいて、安心できるように、一緒に力になりたいのです」

「お前……ずいぶんとあの殺し屋のこと気にかけているんだな」

「……そうですか? ただ、放っておけないだけですけど……」

「もういい!」

「あ……」

「セーヴェ君!」


 でも、セーヴェさんはまだキノサキさんを赦してはいないようです。

 セーヴェさんはそのまま怒って二回の会談へと上がっていきます。


「ま、待ってセーヴェ君! そこはラネットさんのお部屋だよ!!」


 ロビィさんが止めるように言いますがセーヴェさんは怒ったまま上の部屋へ上って言ってしまいました。

 やっぱりそう簡単には許してはもらえないのでしょうか……


「……いいのよクロチヨさん。しばらくそっとしておいた方がいいわ」

「え…………?」


 そうしたら、考え事からさっきの話を聞いていたアデルさんが、話しかけてきました。


「アデルさん……そっとするって……」

「殺し屋とか自分が狙われていたとかそんなこと関係ないのよ。あの子にとってはこんなこと予想外でしかないの。好きな子に酷いことをした人間が、それなのにその子と同行をするって言って、しかもその子もそれを許しちゃうんだもの。混乱するって言ってもいいかしら」

「?」


 それは…………どういうことでしょうか?

 殺し屋に狙われたことは関係ない……?

 それに……


「好きな子って……どういう事ですか?」

「あらあら…………いいえ、なんでもないわ。気にしないでちょうだい」

「?」


 ……よくわからないけど、つまり今のセーヴェさんは落ち着かせる時間が必要なのですね。

 するとラネットさんがため息を吐きながら呆れたような感じで言います。


「もう……クロチヨも母さんももみんなも……あの迷い子が外へ出ることを前提に話しているんじゃないの!」

「あらラネット。それはどうして?」

「あの“迷い子”は今風精族シルフィに警戒されている身よ。そう簡単に許しがもらえるわけは……」


 ラネットさんが冷静にそう言っていると……


「……そうね、いったいあいつ何をしているか気になるわね」

「ラネットさん?」

「ちょっと私、あいつの所へ行ってくる!」

「あ、ラネットさん! 待って!」


 あいつとは、キノサキさんの所でしょうか……

 でしたら私も……


「クロチヨ! あんたはここにいて! 念のためだけどロビィたちのそばにいて!」

「!」


 そう言うとラネットさんは居ても立っても居られないように、玄関の扉を開けて外へ出て行ってしまいました。


「……ラネットさん」

「あらあら、あの子ったら……」


 ……仕方がありません。キノサキさんの脱走をどうにかすると言うのなら、私にできることは待つことしかありません。

 私はここで、ラネットさんかキノサキさんが来ないかどうか待つことにしました。

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