弐壱話 お前等安全運転はきちんとしろ。
二本立ての二本目!
今さらですけどタイトルコールは白零です。たとえ出番がなくても言います。
今回は新キャラクターが何人も……
同時刻、夜。場所を変えて。
ここは人間界のある所の、町から外れた殺風景で周りには何もない街道にて……
そこでは数分前まではとても静かで人気のないところだったが……
……今だけは違っていた。
そこには、一台の大型キャンピングカーが何もない静かな街道を必死な様子で走っていており、その後ろを……
「ジャンクッショォォォオオオオオオオオオオオオオオオオン!!」
一人の少年がサブマシンガンを片手にオートバイに跨りキャンピングカーを追走していた。
「イェ―――――――――――――――――――――――ッ!!」
しかし少年もオートバイも普通では見ない容姿だった。
少年は野戦服に身を包み、頭に機械のゴーグルとヘッドフォンを一体化したようなものを着けていた。
オートバイの方も、通常のオートバイにはありえない様々なものを載せており、全く違う形状であった。
「待・ち・な・さぁ―――――――――――――――い!!」
少年は明らかな敵意をキャンピングカーへ向け、大声を上げた。
「ア―――イェ―――――――――――――――――――――!!」
少年はもうひとつ高らかに奇声を上げた。
それに対し……
「ヒャァッッッッハ―――――――――――――――!!」
もうひとつ甲高い声が聞こえた。
しかし、少年の声ではない。
それは……
「ヘェェェェェェェェエエエエルメエエエエエェェェェェェェスッッ!!」
少年が叫ぶと……
「ヒャッハー! どうしたのキノサキ!」
驚くことにオートバイが合成音声で返事をしたのだった。
「ぁんの車の奴ら! 何でこちらの邪魔をするんだぁ――――――――!!??」
「ヒャッハー! 向こうも仕事じゃないの!? だからこそ本機達が選ばれたんだし!」
「ナイン! そういうことか! だったら遠慮なしだぜぇぇぇぇぇぇえええええ!!」
すると、少年はサブマシンガンを仕舞い、明らかに片手では扱えない巨大な機関銃を出すと……
「イェア! 公務執行妨害でぇぇぇぇぇぇ!!!」
「ヒャッハー! 別に“公務”じゃないけどね!」
「射殺ぅぅぅううううううううう!!」
ズダダダダダダダダダダダダッ!
と、容赦なしに片手運転をしたままキャンピングカーへ発砲した。
しかし……
カカカカカカカカカカカカカン!
「あれぇ?」
弾丸は貫くどころかめり込むことすらなく弾かれてしまう。
「ヘェェェェェェェェエエエエルメエエエエエェェェェェェェスッッ!!」
「ヒャッハー! どうしたぁ!?」
「これも通用しないぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ズダダダダダダダダダダダダッ!
少年は奇声を上げつつも発砲し続けた。
また、追われているキャンピングカーでは……
「発砲音が変わった……」
「どうやら奴は銃を変えたようッス」
「うう……早く諦めてよぅ……」
そんな声が聞こえたのだった。
それぞれ喋っていたのは……
キャンピングカーを運転している釣り目で青い帽子をかぶった男。
助手席に座っている半袖短パンの軽装に緑のバンダナをした男。
後部座席で震えている大きな赤いリボンを付けた金髪御下げの女。
彼らは必死に迫ってくるオートバイと少年から逃げていたのである。
「こんなの……かつてない危機だよぅ……」
リボンの女が言うと……
「そうッスね。追われることは何度もあったッスけど、殺し屋に追われるのは初めてッスね」
バンダナの男が軽い感じにそう答えた。
「危機は珍しくないが、まさか移動中に殺し屋に襲われるとは……」
帽子の男がそう呟く。
すると……
「なんなんだよ! 殺し屋って!」
そう言ったのは先ほどの三人ではなかった。
後部座席にもう一人、高そうな服を着ており、ライトブラウンの髪に整った顔をした、まだ幼さが抜けていない感じの少年であった。
少年は不安を隠すことなくそのまま口にして言った。
「本当に大丈夫かよ!」
不安なのか少年はバンダナの男に大声を張る。
「大丈夫ッス。なんとしてもセーヴェ君を安全に目的地まで届けるッス」
バンダナの男もはっきりとそう言った。
つまり彼らは殺し屋に狙われており、そのまま追われていた。
「聞こえていたのか?」
「いったいなんだあれは! 本当に殺し屋なのか!?」
「そう思うのも無理はないッスけどね……」
少年……セーヴェの問い対し、バンダナの男……キッドと呼ばれた男が答えた。
「ロビィ。殺し屋について、教えるッス」
「え! キッド君!?」
リボンの女……ロビィと呼ばれた女は突然指名され、驚いた。
「ロビィ。せめて自分らを追う殺し屋くらいは教えておかないといけないッス」
「わ、わかったよぅ……」
そういうとロビィはメモ帳を取り出し、後ろの殺し屋のことを述べた。
「えっと……
名前:ガンスロット・キノサキ
性別:男
年齢:不明
備考:強襲系の殺し屋。主に移動中の要人を殺すことに特化しているの。た、たしか……彼には〈追走者〉〈叫び狂う男〉と、二つの異名を持っていて、『強襲・殺し屋名鑑』では危険人物ランキング四位に選ばれるほどの男……。また、そいつが乗っているのはただのオートバイじゃない……。ボーカロイド、人工知能、対話機能、あと多数の武装を搭載された戦闘用に特化したオートバイ、『ヘルメス』。彼らは二つで一つの殺し屋なの。そして移動中に強襲することにおいての任務での成功率は…………」
「ロビィ? どうしたッスか?」
「成功率は……」
するとロビィは喋るのを中断し……
「ロビィ……死ぬのはいやだよぅ……!」
突然項垂れてしまった。
「おい! 成功率が何!? なんだっていうんだよ!!」
セーヴェもうなだれるロビィを見て一気に不安に……
「う……うう……」
それにより彼もすっかり諦めの状態になってしまった。
「大丈夫ッス。今まででも何度かこういうのがありましたし、きっと大丈夫ッス!」
「う、うう……」
悲観的なロビィに対し、キッドは軽い調子でそう言う。
その言葉にロビィは……
「そうだよね。ロビィ、大丈夫……大丈夫……だいじょうぶ……ダイジョウブ……」
「……全然大丈夫に見えないッス」
……小声で大丈夫と呟やき続けたのだった。
ロビィは必死に自分に言い聞かせている中……
「はぁ……デヴィッドさん」
「あぁ?」
キッドは、キャンピングカーを運転している帽子の男……デヴィッドに話しかけた。
「殺し屋って二つ名があったり名鑑があったり、ずいぶん目立っているんスね」
「ああ……それはな、強襲系は暗殺系とは違い目立つ者が多い上、危険人物の比率も高い。そういったものに対する警戒色のようなものが二つ名ということだ」
「はあ……なるほどッスねえ。たしかあの殺し屋が属している組織は……」
「ああ、かなり危険な組織だ」
殺し屋には様々な種類がある。
組織を持たない一匹狼。
組織や事務所に属する者。
また、所属する組織にもさまざまな種類があるが……
「……あそこって目的不明で謎の多い組織じゃあ……」
「ああ。分かることと言えば、純粋な好奇心。ただそれだけの理由で非道な実験を容赦なく行うような狂科学者の集まりってことだけだ。その上、あそこに所属する殺し屋は皆……」
「ああ……」
やっかいッスね……と、キッドは呟いた。
そしてすぐに憤るような表情になった。
「しかし、とんでもない依頼主ッスね。口封じだがなんだが知らないッスがそんな理由で子供を殺すだなんて……」
「そうだな。何を見たのか詳しく聞くと、俺たちも抹殺の対象になってしまうから知らないがな」
「……いや、今の状況でも十分やばいッスけど……」
そうこう言っていると……
「ふぅぅぅぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおん!!!」
「「「!?」」」
急に後ろから奇声が響いてきた。
それはいまだにしつこく追いかけてくる殺し屋の声である。
「ヘェェェェェェェェエエエエルメエエエエエェェェェェェェスッッ!!」
「ヒャッハー! どうしたんだい!」
「さっきからどの銃を選んでもまったく通用しないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!??」
後ろから響く殺し屋の叫び声に対し、
「そりゃそうッス。そのキャンピングカーは特殊改造されたものッスからねえ」
さらっとキッドはそう言ったのだった。
その言葉にセーヴェは、疑問を抱く。
「特殊改造?」
「そうッス。今、乗っているこのキャンピングカーはただのキャンピングカーではないッス! どんな状況にも耐えるために様々な改造を施された特注性ッス!」
疑問するセーヴェに対し、キッドは自慢するように言った。
しかしセーヴェはまだ不安そうだ。
それは……
「でも、いくら車体が頑丈でもタイヤとか撃たれたら……」
「問題ないッス」
不安そうなセーヴェの発言に、間髪入れずキッドは自信満々であった。
なぜなら……
「ヒャッハー! タイヤを撃ったら?」
「そっちも通じないぜぇ――――――!!」
先ほどから銃声音が響くがこの車には一切傷がついていなかったのだった。
「装甲車並みの強度を持つこの車が銃の弾丸ごときじゃあ傷ひとつつかないッス」
と、得意顔になって断言するキッド。
どう改造したかはわからないが自信満々に言うにはそれほどの強度を持つのだろう。
しかし……
「ヒャッハー! じゃあこれを使えばいいんだよぉ!」
「大丈…………え?」
と、小言ばかり言ってたロビィが、今の発言が気になったのか後ろの殺し屋を見てみると……
「……!? ええ!?」
「どうしたんッスか」
「後ろの……無反動砲を持っているよぅ!」
「はあ?」
無反動砲。
発射の際、火薬ガスの一部を後方に噴射させて、反動による砲身の後退を制限した火砲である。
その威力はいくら走行車並みの強度を誇る車であれ、当たればただでは済まないほどのものだ。
「……ははは。なんでそんな危ないものを持っているんスか。それ以前に両手使うからバイクに乗りながらじゃ無理でしょ」
こんな状況でもキッドはずっと軽い口調のままだ。
しかし……
「ヘェ―――――ルメェ―――――ス!」
「ヒャッハー! なんだい!?」
「操縦はまかせたぁぁぁぁああああああああああああああ!!」
「ヒャッハー! 了解!」
「「なにぃ!?」」
殺し屋の発言にさすがのキッドもロビィと同時に驚いた。
後ろを見ると、少年は両手をハンドルから放し、無反動砲を構えている。
「流鏑馬るぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ヒャッハー! うまく当てろよ!」
殺し屋はオートバイを走らせた状態でありながら撃つ気満々である。
その様子にさすがのキッドも慌てた。
「デヴィッドさん!」
「ちっ! 仕方がないな!」
この状況に運転手のデヴィッドは……
「コースを変えるぞ! 気をつけろ!」
「え!? 待って! そこは山に森だよ!?」
「構わん!」
街道から突如軌道を変え、木が生い茂る山へと突っ込んだのだった。
それを見る殺し屋も……
「逃・が・さ・なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」
「ヒャッハー!」
叫び声をあげ、後を追ったのだった。
2
そして、ここは山の荒れた獣道。
「お前等ぁ! どこかに掴まれぇ!」
「わかったッス!」
「う、うん……」
「おう……」
キャンピングカーはその中を荒れた道にもかかわらず必死に走っていた。
その背後に、
「待ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁちやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「ヒャッハー!」
殺し屋はしつこく追走する。
「ちくしょおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「ヒャッハー! どうした!」
「周りの木に気を気配りする気になった気のせいでうまく狙いが定められないよぉ―――――――!!」
「ヒャッハー! 言語も無茶苦茶ぁ――――――!」
殺し屋は整備されてない地面の上を走っており、また、周りの木の枝にぶつからないよう注意しているせいで先ほど出した無反動砲が使えないのである。
「どうするッスか! あれを投げますか!」
「駄目だ! 今のあいつは無反動砲を持っている! 下手なことをして暴発したらいけない!」
「じゃあどうするんだよ! このままじゃ……」
と、三人が言い合う中、ロビィは……
「どうしよう……どうしよう……どうしよう……!」
一人頭を抱えて必死に解決策を考えていた。
その時だ。
「待ってぇぇぇええええええええ! ロミオォォォォォオオオオオオオオオオ!!」
「!?」
後ろの殺し屋が再び無反動砲を構えながら叫んだ。
オートバイが自動で乗り手を振り落さないよう配慮して走っているからである。
「あなたを逃がさない! 地の果てまで追いかけるからぁぁぁああああああああ!」
「そんなジュリエットがいるかぁ!」
殺し屋の発言につい突っ込んでしまうセーヴェ。
「そうだよ! 結ばれなくちゃね! だからジュリエットなんて……呼ばーな、いーで!」
殺し屋は無反動砲を構えると、ふとこんなことを言い出した。
「標的! もし今すぐ止まって素直に出てきてくれたら邪魔をした奴らは殺さないと保証しよう!」
「「「なに!?」」」
「…………!」
いつの間にか入れ替わっているが、突然の勧告にキッドもデヴィッドもロビィも驚いた。
そして、セーヴェも……
「殺し屋たるもの! 必要外の殺しはしなぁい! だから余計な恨みも買わないでお買い得!」
「…………!」
ふざけてはいるが正真正銘の勧告にセーヴェは迷いが生じた。
正直この状況、はっきり言ってかなり危ない。
このまま無反動砲が放たれれば、恐らく自分たちに命はない。
セーヴェは死にたくない気持ちがあるが、他者を巻き込んでまでそのままの顔で生き残っていられるほどの精神は持たない。
つまり……
「オ、オレのせいで……みんな死んでしまうのなら……!」
つまり、今のセーヴェは諦めという気持ちからこの提案に乗ろうとしたのだが……
「駄目ッスよセーヴェ君」
「え……」
すかさずキッドはそれを差し止めた。
「別にこの状況、セーヴェ君が悪いってことじゃないッスから責任感じる必要はないッス」
「で、でも! あいつもう無反動砲だなんて代物を……!」
セーヴェは言い切る前にロビィが前に出て、体を震わせつつも言う。
「ロ、ロビィ……痛いのは嫌だし、死ぬのは怖いけど…………」
それでも、とロビィは懸命に言った。
「目の前で仲間が、子供が、人が傷つくのは嫌なの……!」
「…………!」
「そういうことだ、誰一人この提案に乗るつもりはない」
「そうッス!」
危機的状況にもかかわらずキッドは笑顔ではっきりと告げる。
「正直、あんな殺し屋にやられるわけがないッスから!」
「皆……!」
彼ら三人の言葉に安堵するセーヴェだが……
「そうか……お断りしますか……」
どうやら様子からして察した殺し屋は構えた無反動砲に、狙いを澄ますと……
「ならば……邪魔ものども皆、並んで逝くがいい!」
殺し屋は引き金を引き……
「大丈ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ夫! 死んだら死んだで次は美少女に生まれ変われるように神主に祈ってるからぁぁぁぁあああああああああああああああ!!」
「来るぞ!」
大声で叫ぶ殺し屋を余所に、無反動砲から一発の弾頭が放たれた。
車よりも速い速度の弾道はまっすぐこちらへ向かっていく。
このままでは避けきれない。
「ど、どうしよう! 当たっちゃう……!」
「おい! 何とかできないのか!」
ロビィとセーヴェがうろたえる中、デヴィッドは……
「キッド! こうなったらあれを使え!」
「あれ? ……あれッスか!? しかしまだ試作……!」
「構わん! このまま無反動砲の餌食になるならば……!」
「……わかったッス!」
デヴィッドの提案にキッドはそう言うと……
「新兵器! リフレクター君!」
と、キッドは助手席から前についているスイッチを押すと……
「!?」
「なんだ!?」
「キッド君! これって……!」
車に搭載したある装置が作動した。
それにより車から“なにか”が放たれた。
「成功してくれッス……!」
その、放たれた“なにか”は車へ近づいてきた弾頭を……
「ほへと?」
「ヒャッハー? 返ってきた?」
「え? もしかして恋しいの!? でも……」
殺し屋の方へ返したのだった。
そして……
「お・断~りしまぎゃあああああああああああああああああ!?」
「ちょっと!? ヒャァッハアアアアアアアアアアアア!?」
ドォーーーーーーーーーン!!
殺し屋に命中したのだった。
「…………」
「…………」
「…………」
デヴィッド以外の三人は後ろを注目した。
その結果……
「追いかけて……こない?」
「ああ……こないぞ……!」
殺し屋は追跡してこなくなった。
「あ……危なかったッス……」
キッドたちは安心し、大きく息を吐いたのだった。
「う……うまくいったね」
「そうッスね。まさか試作の新兵器が役に立つとは……」
車に兵器が搭載とはもはや何者かと思ってしまうが……
「た、助かった……」
セーヴェはあまり気にしないのであった。
「うう……ロビィ、生き延びれたよぅ……!」
「よかった……よかった……!」
ロビィとセーヴェが助かったことから喜びを分かち合ったのだが……
「ん?」
キッドは突然何かを感じたのか、窓から後ろを覗き込んでいた。
「どうした、キッド」
「いや、なにか物音が聞こえたような……」
「え? ちょっと……怖いこと言わないでよぅ……」
しかし、次の瞬間。
ドンッ!
「「「「!?」」」」
車の上から何か大きな物音が聞こえた。
まるで、なにかがこの車体の上に飛び乗ったように……
「今の音は……」
「まさか……」
そして、ガチャリ、と
「!?」
上で何かを取り付けるような音がした。
その直後、次に上から今度は跳び上がるような音がした。
それを聞いたデヴィッドは……
「いかん……!」
上での物音の内容に気が付いた。
そして……
「お前ら! 今すぐどこかに掴まれ!」
「ちょ、何を……?」
「早く!!」
指示した、次の瞬間……
「ヒャッハー! Cィィィィイイイイイイイイイイイ!!」
「フォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
後ろから聞こえてきた声に……
ドッ……!! と、
「!?」
「うわっ!」
「きゃあ!?」
「わっ!」
上から強烈な音が響き、車体は大きく弾かれてしまった。
車体は破壊されることはなく、何度か地面をバウンドすると……
ガタッ!
「!?」
車体は急斜に身を乗り出してしまった。
「なん、だと……!?」
嘆いてももう遅い。
キャンピングカーはそのまま坂から転げ降ちてしまった。
「くっ…………!」
「うおおおおおおおおお!!」
「きゃああああああああ!!」
「うわああああああああ!!」
転がり落ちていく車に車内はパニックになる。
デヴィッドもキッドもロビィもセーヴェも皆大声を上げ、車の中がパニックとなったのだった。
そして車は坂を転がり続け、やがて……
3
一方、爆発からなぜか軽傷の殺し屋が、車体に攻撃を仕掛けたのだが……
「ヘールメース……」
「ヒャッハー。どうしたんだい」
「あいつ等の生体反応が……」
殺し屋はキャンピングカーが転がり落ちた先を見て呟いた。
「……消えた」
「ヒャッハー。どういうことかねぇ」
「普通ならあそこで爆死なのだが……」
先ほどは殺し屋がやったことはつまり、何らかの方法で標的の車の上に乗り、そこに設置型爆弾を仕掛けたのである。
車体ごと標的を殺すか、殺せなくしても車という足を奪う方法である。
その後、生死どちらであれ、死体を確認し、生きていたらとどめを刺すつもりだった。
しかし、予想外にもキャンピングカーは頑丈であり、無傷とまでいかなくても破壊されることなく弾かれただけなのであった。
「だが、死んだとは思えない。死んですぐに体の機能が止まるわけじゃない……」
「ヒャッハー。じゃあどうするの?」
殺し屋はキャンピングカーが突如消えてしまったことに戸惑っていた。
しかし、徐々に元のテンションに戻ると……
「……追いかけると……しようぜええええええええええええええええ!!!!」
殺し屋はキャンピングカーの後を追い、坂を下りた。
しかも……
「イェア! 超・エキサイティィィィィィィィィィィィィング!!」
「ヒャッハー! スゥリリーーーーーーーーング!!」
オートバイに跨ったまま下り坂を走っていくのだった。
「バァァァァァァァァックトゥゥゥゥゥゥゥゥゥザァァァァァァァァァァァッッ!!!」
「フュゥゥゥゥゥゥゥゥゥチャァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
オートバイはどんどん加速していく。
少しでも車体が浮けば大変なことになるくらいである。
「速すぎて……このままだと……風になっちゃうぅぅぅううううううううう!!!」
「ヒャッハー! どういう意味で? どういう意味で!?」
「ふぉろわああああああああああああ!!」
意味不明な発言を連発して坂を下っていく殺し屋。
「そろそろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
そして坂を降りきったが止まる様子のない殺し屋。
しかし……
「ん!? ヘェェェェェェェェエエエエルメエエエエエェェェェェェェスッッ!!」
「ヒャッハー! わかったあああああああああああ!!」
キキィィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイ!!!
ものすごい速さにもかかわらず難なく急停止して止まった。
「ここは……」
たどり着いたのは山の中であるのにとても開けたところで、空がよく見えるところなのだが……
「ヘェェェェルメェェェェェス……」
「ヒャッハー。これは……」
そこで殺し屋は何かを見つけ、感嘆の声を上げていた。
それは……
「ちょう」
と、ここで殺し屋は何かをやり始めた。
殺し屋はヘッドフォンの左の耳当てからコードを出し、それをオートバイに繋げた。
「ヘールメース」
「ヒャッハー。わかったぜ」
と、右の耳当てからはマイクを取出した。
つまり……
「番号は78で」
「ヒャッハー。了解」
ツー、ツー、ツー、
どうやら通信の様だ。
相手が出てくるのを待っていると……
「も――――――しもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもいもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしもしも…………」
ブツッ!
「しもし……あれ?」
「ヒャッハー! 切れちゃったぜ!」
即、切られてしまった。
当然である。
「ヘェェェェェェェェエエエエルメエエエエエェェェェェェェスッッ!!」
「ヒャッハー! 了解!」
もう一度同じことをしていると……
「あ! もしもし! オレだよオレ! オレ、オレオレオレ! オレオレオレオレオレオレオレオレオレオレオレオレオレオレオーレ! オレオレオレオレオレオレオレオレオレオレオレオレオレオレオーレ!」
『――――――!!』
「オレッ………!?」
と、突如殺し屋は耳に手を当てて顔をしかめていた。
それは通信先から甲高い声が響いたからであった。
『――――――――! ―――――――――!』
「イェア! ごめんごめん。今のあまりにもの状況に喋らずにはいられなくて!」
『………………。―――――――――』
「いやなに。ちょっと不思議なことが起きましてぇ!」
『――――――――?』
「標的が消えたんですよぉ!」
標的……あのキャンピングカーの事である。
『――――――?』
「そう! それでねぇ! 後を追ったんだけどね! そしたらぁ!」
改めて殺し屋はそこで見た不思議な現象を言った。
「不思議で巨大な木を見つけたんだいぃ!」
『――――――?』
先ほど殺し屋が見つけ、しばし見とれていたもの。
それは、開けたところの中央に一本だけある巨大な木であった。
何が不思議なのかというと……
『――――――?』
「フォウ! その木がね……光っているんだよぉ――――――――――!!」
『―――! ―――!?』
その巨大な木は周りとは違い、強い光をはなって輝いていた。
まるで、その真上にたたずむ月の光を浴びているように……
「画像送るヨロシ!」
『――――――』
と、殺し屋は自分の視た映像を通信先へと送った。
すると……
『…………』
「?」
しばらくの沈黙。
そして……
『――――――』
「ほえ? いや竹じゃなくて木だけど……」
『――――――』
「いやいや、チューリップでもない」
…………一体何の会話だろうか。
『――――――?』
「おう? 入れるのぉ?」
『――――――?』
「いやいや確信して言えよぉ! もしかしたら神隠しで名前が盗られちゃうかもよぉ!」
とまあ、少しふざけたところが続いたが……
『――――――。――――――』
「まあ、確かに……一度依頼を受けた以上……」
やがて、静かで獰猛な表情になると……
「それは生半可な気持ちじゃノー。確実に……ヒットマァァァァァァァァァン…………」
『…………』
明らかに危険な笑みを浮かべ、そう呟いたのだった。
その後に向こうからため息のような音が聞こえてきた。
『――――――』
「……了解!」
ピッ!
通信は切れたのだった。
「……………」
「キノサキ…………」
殺し屋は少しの間沈黙していると……
「ヘールメース」
「ヒャッハー。なんだい?」
「行こうぜ」
そう言うと、ヘッドフォンの耳当てから出したコードとマイクを仕舞う。
そして……
「標的……殺っちゃうぜ!」
「ヒャッハー! 了解!」
「標的は、本能寺に……ありぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「ヒャッハー! タイムスリップ!」
オートバイを発進させ、木に突貫していった。
すると……
「お……」
オートバイは木にぶつかったが弾かれることはなく……
「おうおうおうおうおう!!」
「ヒャッハー!」
飲み込まれたのだった。
「新天地へぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええ!!」
「ヒャッハー! ゴォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
その後、その木は輝きを失い、元の木に戻ったのだった。




