壱漆話 波瀾万丈な出来事に年齢制限はない
なんか途中にショッキングな描写がありますのでお気をつけて。
あいつが出てこなくなってから数日後。
それ以降あいつももう一人のあいつも会う事はなかった。
一般にはいじめが原因で不登校になったと言うが……
俺はそれだけじゃないと思った。
俺はあの日を機にいろいろと動いたものだ。
親父から教わった身刀流。
正直変な剣術だけどな、だがそれを編み出した親父は……
……正直、強かった。
一度も勝てなかったし。
剣技から体術、またはその逆の予測不能の攻撃。
型にはまらない攻撃の幅。
さらには手だけじゃなく足などで刀を扱う奇抜さ。
クセは強いが使いこなせば相当なものだとわかった。
だから変な剣術であれ、俺は必死に使いこなそうと努力した。
それと、俺はある人物を見つけだした。
それが所長……青江堅一郎だった。
俺は所長に俺をこの事務所に入れてください。そして俺を用心棒にしてくださいと頼んだ。
初めは断固拒否だった。そりゃそうだ。
世の中には色々と仕事があるのにまだ子供である俺がなぜそれを選ぶ、といった風だった。
用心棒は危険な仕事でもあるからな。
しかし俺は諦めなかった。何度も何度も頼んだ。
当時の他のメンバーにつまみ出される日も多々あった。
それでも、とにかく行動あるのみと続けた結果、最終的には渋々、認めては貰えた。
なんとかなり始めた頃、まだ任務は受けられないが用心棒としてのノウハウを教えてもらった。
また、どんな状況でも負けないよう、必死に身刀流を鍛え上げた。
そして、千代に出会って……中学を卒業して……
そうやって、努力して用心棒になった。
今度こそ護れるようにと。
しかし、ある任務でのこと。
その任務は危険度が高かったため、千代だけではなく経験豊富な他のメンバーも同伴で行った。
しかし、その時に……
……あいつと再会した。
正確にはもう一人のあいつだったが……
そう、しばらく見ない間にもう一人のあいつは《殺し屋》になっていた。
依頼を受け人を殺す。そんな殺し屋に、もう一人のあいつは……
俺は冷静じゃなかった。しかし、やるしかなかった。
とにかくもう一人のあいつの狙いは依頼人だった。
俺は焦る心を抑えつつ、必死で依頼人を護ろうとした。
幸い、別のメンバーがフォローしてくれたおかげで何とかこの依頼人を護ることはできた。
俺はもう一人のあいつに殺し屋をやめるよう説得した。
しかし、答えは“いいえ”だった。
あのあとあいつを捕まえようとしたが逃げられてしまった。
それ以降俺は任務でもう一人のあいつに会う事が何度もあった。
敵対も多かったが、もう一人のあいつは俺が護る依頼人の敵を殺す依頼もあり、皮肉にも協同することがあった。
そして俺はもう一人のあいつに会うたびに何度も何度も説得した。
殺し屋はやめろ、と。
しかし、もう一人のあいつの答えは決まって“いいえ”だった。
何度も捕らえようともしたが結果は失敗だった。
もう一人のあいつが殺し屋になったのは……
悪を、外道を、許さないということだ。
だから殺す。そんな殺し屋になってしまった……
殺し屋になったもう一人のあいつは俺が護れなかった象徴のようなものだった。
だが、俺は諦めなかった。
もう手遅れかもしれない。だけど、
あいつ等を諦めることは、どうしてもできなかったのだった。
あいつはきっともう一人のあいつが殺し屋をすることなど望んでいない。
もう一人のあいつを殺し屋からやめさせる。
それが俺の……贖罪だった。
たとえそれが……俺の我儘だとしても……
2
「そう……結局カルリトロス将軍は見つからなかったのね」
「ああ、もう逃げられたかもしれないな」
「そう、わかったわ」
ハクレイの治療が始まって三日。
レイラの頼みで本当に水妖族のリュンピ様が駆けつけてくれた。
そして、治療もいよいよとなってきた。
「あれからどうしてるんだろう……」
そんな時、私はハクレイがいる診療所へと向う。
すると先に診療所の長椅子に座っていたクロチヨとレイラを見つけた。
「クロチヨ……レイラ……」
「ラネット殿……」
「……………」
レイラはハクレイが心配なのか疲れたような表情をしている。
しかし……
「……………」
クロチヨはもっと酷い。
憔悴した顔。
目の下には隈。
痩せこけた顔。
彼女はあまり眠っておらず、また、ほとんど何も食べていない状態だ。
クロチヨはあれからずっとこんなのだ。
ハクレイが診療所に運ばれてからずっとここにいることになっている。
「……………」
彼女は何も喋らない。
朝から夜まで終始この状態だった。
そんな彼女を私はもう見ていられない。
「クロチヨ。ハクレイが心配なのはわかるけど、今度はあんたが倒れたら意味がないのよ」
「……………」
返事がない。ただ黙っているだけだ。
……何でこんなことに。
「……の……で……」
「え…………?」
今、なんて……
「私の……せいで……零ちゃんが……」
「!」
クロチヨ、もしかして……
「私があの時出てこなかったら、零ちゃんは……」
「……………」
自分の事が許せなかったんだ……
「そんなことは……」
……ないわけがない。言えるわけがない。それは事実だったから。
確かにハクレイは私達をかばって重傷を負った。
あの時出てこなければもっとましなことになってたかもしれない。
だけど……!
「あんただけのせいじゃないよ……」
「…………?」
ハクレイは身体を張って私たちを護った。
「私だって出てきてしまったんだから……」
「!」
それなのに私たちはハクレイを護れなかった……!
「だからあんただけのせいじゃない。私もよ。私だって出てこなければ……!」
あれ、なんでだろう……
まだ治療中なのに……なんで……!
「ラネットさん……泣いているの……?」
「そう言う……クロチヨだって……!」
いったいなんで……こんなことに……!
「私は……ただハクレイを護りたかっただけよ……だからハクレイを助けに出てきたのに……逆にハクレイが私たちを護るために……こんなことに……!」
「……ラネットさん」
私はハクレイと約束した。
『決して一人で無茶はしないでよ』って。
それはあいつに怪我を負わせたくないための約束だった。
なのに……
「私も……私もそれが原因で零ちゃんが怪我をした……私たちは零ちゃんを助けたかった……護りたかっただけなのに……!」
予想外だった。
カルリトロス将軍があたし達を真っ先に殺そうといたことを、
そしてそれを体で受け止めたあいつを……
「でも! ハクレイもハクレイよ!」
「え?」
なんであいつは……私たちのためにそこまで…………
「その後もハクレイは私達を護ろうとカルリトロス将軍に……!」
「!」
「そのせいでハクレイはますます酷くなったし……なんでなのよ……」
「ラネットさん……」
だめ……止まらない。
どんどん言葉が、溢れ出てくる……!
「……クロチヨ……ハクレイが怪我したのは私達のせいだけど、でもあとは私達に任せてほしかった……」
「……私たちは、結局……なにも……」
「……黒千代殿、ラネット殿、お待ちを」
「「?」」
レイラ?
「あなた方が悔いているのはわかる。だがそれ以上はやめられよ」
「レイラさん?」
「それでは何のために白零殿があなた方を護ったのだ」
「レイラ……」
レイラ……怒っている?
「私にはあの時なにがあったかはわからない。しかし、白零殿があなた達をかばい、命がけであなた達を護ったのだろう。だとしたら今ここでするべきことは懺悔ではない」
「レイラさん……じゃあ私たちは何を……」
クロチヨの疑問にレイラは……
「まずはご自身を大事にされよ。折角守り通した命がこのような形で悪くなればそれこそ白零殿に申し訳が立たぬ」
「……! ご自身を……大事に……!」
「それともうひとつは……」
「もうひとつは……?」
「……白零殿が無事に治るよう願う事だ」
その言葉に私は……
「本気で申し訳ないと思うのなら、白零殿ご本人の前でもう一度言われよ。懺悔するのはそこからだ」
「レイラさん……わかりました」
クロチヨ……
「……忘れていました。『自分を護れなくては誰かを護れない』。零ちゃんの言葉です。折角零ちゃんが起きてもこの状態の私を見たらきっと怒ります」
「黒千代殿……」
「まずは零ちゃんが助かるのを信じて待ちます」
その時だ。
「ふう……終わったぞい」
「「「!」」」
治療室からリュンピ様と数名の治療班がでできた。
珍しくリュンピ様の表情が疲れて見える。
「リュンピさん! 零ちゃんは……零ちゃんはどうなったのですか!!」
クロチヨが一番にリュンピ様に結果を聞きだした。
「ちょっとクロチヨ! 落ち着いて!」
「ラネットさん……でも……!」
「落ち着いてって!」
今のクロチヨは寝不足であまり冷静じゃなくなっている。
「うむ……正直、できる限りの事はしたぞい。後はあの小僧が起き上がるのを信じて待つしかない」
「そう、ですか……」
それを聞いたクロチヨは……
「あ、あの……リュンピさん……」
「ん?」
「お願いがあるのです」
「なんじゃ?」
「はい……あの……零ちゃんが起きるまで、零ちゃんに付き添っても……いいでしょうか……?」
クロチヨは必死な感じでリュンピ様にお願いをした。
それは……
「駄目じゃ」
「!」
「……と言いたいがいいじゃろう。静かにするのなら特別に許そう」
「……ありがとうございます」
クロチヨが感謝に頭を下げた。
私もたまらずに一緒になって頭を下げる。
「ただし、まずはそなたが元気になってからじゃ。不眠不休で空腹のままじゃ許さん。いいか」
「わかりました」
クロチヨの声に、さっきの弱々しさはない。
もう……大丈夫ね。
「うむ、レイラよ」
「はい」
「辛いと思うがあともう一仕事じゃ。頼むぞ」
「はい」
レイラはそう言って診療所を出て行った。
……正直、私も付き添いたかったけど、今は彼女だけにしよう。
そう思い、私もクロチヨと一緒に外へ出たのだった。
「クロチヨ……」
「……零ちゃんを信じる。絶対起き上がるって」
「……! そうね……」
ハクレイ、絶対に起きて。
クロチヨも……そして私も、あんたに会いたがってるんだから……!
3
白零の治療が終わり、あとは起きれるかを信じて待ち続け、数日後の夜。
オーリエ村の外の平原にて、ある一匹の火蛇族の男がいる。
「クックックックッ! あの小僧め……! よくも……よくも俺に……」
その火蛇族は鎧を身に着けたまま、よたよたした動きで歩いていた。
「この俺が……この俺が敗けたなど……あっていいわけねえだろ……」
そう、こいつは数日前、白零に敗れたカルリトロスだ。
カルリトロスはあの後、風精族の兵士達が取り押さえに来る前に自分の腹に刺さっていた刀を折り、近くに身を隠して体力が回復するのを待っていたのだ。
「あの傷だ……そう遠くへはいけない……村のどこかにいるんだろ……」
火蛇族は生命力が高いので数日である程度は自然回復していた。
そして、腹に刺さっていた刀で白零の元へ意趣返しに向かっているのだ。
「貴様のせいで……貴様のせいで……殺してやる……殺してやる……!」
カルリトロスにとって人間の子供に負けたのは屈辱的な事だ。
その上作戦失敗まですることになったのだ。
風精族の小さな村を奇襲して奪う。
たったそれだけの作戦に将軍が出るのはおかしいが、その上失敗となるとカルリトロスに立つ瀬はない。
「建物……片っ端から建物を焼き払えば……いずれあの小僧は……」
そして、村が見えてきた時……
唐突に、場に合わない声が聞こえだした。
「見~つけた♥ カルリトロス将軍♥」
「何?」
突然、高い声がカルリトロスの後ろから聞こえた。
振り向くとそこには……
「……! 貴様……!」
「こんな時間に、何をしに行くの?」
金髪の髪に女子高生のような制服。
先ほどまで怪我をした蛇人を運んでいた少女がいた。
少女はにこやかな表情だが、それに対してカルリトロスは怒りの表情へと豹変する。
「貴様こそなぜそこにいる! そもそもあの時なぜ兵士達が倒れていくのを黙って見てたのだ!」
「あら、質問に質問で返さないでよ♥ まあ簡単に言うとあなたが言ったからよ♥」
「何?」
クスクスと笑いながら少女は腰のベルトに引っさげた鉈の柄を撫でる。
カルリトロスは警戒して少女を見るが、何が可笑しいのか少女はにこやかに答える。
「『貴様は大人しくしていろ。この先の奴は俺が殺ってやる』って」
「貴様……!!」
「そ・れ・で、何をしに行くの?」
そう言う少女はにこやかな顔をしていたが目は全く笑っていない。
しかしそのことに気が付いていないカルリトロスは……
「決まっている! 今からあの小僧を殺しに行くのだよ! 俺の邪魔をしたあいつを殺しにな!」
「そう……」
少女は返事と同時に温度が下がっていくような感じがした。
だが、まだ少女の変化に気が付かないカルリトロスは、どんどん自らを危機にさらす言葉を吐き続ける。
「お前がいるのならちょうどいい! お前が殺しに行け! 数日前、風精族の兵が見えたから恐らく警戒されているだろう。だが、貴様があの小僧を殺して首を持ってくるのならば先ほどのことは水に流しておこう! どうだ!」
「そうね……」
少女は顔を俯かせて、何かを考えた様子だが、直後再びにこやかな顔のままカルリトロスを見て、言う。
「……それじゃあカルリトロス将軍♥ 腕を出して♥」
「なに? なぜだ」
「大事なことよ。早く♥」
「あ、ああ……」
カルリトロスは疑問に思いつつも右腕を前に出すと……
「それじゃあ握手しまーす♥」
少女は差し出されたカルリトロスの右手を同じ右手でつかみ、そして……
ザクッ!
と、何かを割るような音が……聞こえた。
「え……?」
と、同時にカルリトロスは右腕に違和感を感じ、見てみると……
「……!? ぎゃあああああああああああ!!!」
そこにあったはずの右腕が……
「はーい♥ いただきましたー!」
切断されていた。
それも切り口が全く歪んでいない綺麗な切れ方だ。
「き、貴様ぁ! いったいどういうつもりだぁ!」
「あはははは。そりゃあもちろんあなたが不愉快だからよ」
「なに!?」
少女の右手には切断されたカルリトロスの右腕があった。
対して、少女の左手。そこには大振りの鉈を持っている。
しかも、まだ乾いていない、真新しい血がついている。
少女はその鉈を手の中でもてあそびつつ答えた。
「実はね、雇い主の今回の指示はね、あなたを抹殺することなのよ♥」
「なん……だと……!?」
「いやーだってそうでしょ♥ あなたって将軍将軍って言われてるけど本当は卑劣な手でそうなっただけでしょ♥」
「な……!? なにを……!」
「あなたの傍若無人な行いのせいでいろんなところから愛想尽かされちゃってね♥」
少女の言葉にはっとするカルリトロス。
少女は続ける。
「本当はこの村を制圧した後、密かに殺すつもりだったんだけどね♥ でも、本日の予想外なことがあったからね」
「あの小僧の……ことか……!」
「うん♥」
ぎりぎりっ! と、歯ぎしりをするカルリトロス。
理不尽で、腑に落ちない彼女の言動に激昂しながら訊く。
「じゃあ村を奇襲し制圧するのはなんだったんだ!」
「あれ? あれはね、本命のための布石にすぎないわよ」
「布石……本命……!?」
「そ♥ 村の奇襲なんて、成功でも失敗でもいい。その事実があったことが必要なだけよ♥」
「じゃあ……俺は……!」
「うん。ついでにあなたを始末しようってわけ♥」
まあもっとも制圧できればそれはそれでよかったけどね、と少女は付け足した。
カルリトロスはそのことに憤りながらも反抗心はまだあった。
「だが! 俺を殺せるのか! たかが人間の小娘に俺を!」
「たかが?」
「なめるなよ! 剣は小僧に奪われたが、俺には精霊術という人間にはないものがあるんだからよお!」
「はぁ…………」
もうこれ以上なにも話さなければまだいいのに、まったく相手を見ないカルリトロスはどんどん愚かしい言葉を吐き続ける。
故に、少女は……
「俺は殺されんぞ! 逆にお前を返り討ちにして、そしてあの小僧も……」
「もう喋らないで」
ドサッ!
「え……!」
目の前の少女は特に大きく動いていない。
それなのにカルリトロスの左腕も……
「あ…………?」
完全に斬り落とされた。
「貴様! いつの、間……に……」
カルリトロスがみた少女の顔。
それはいつものにこやかな顔ではない。
今の顔は、あまりにも違っていた。
「ああもうだめね。もう限界よ。いくら笑顔で取り繕っても、やっぱり駄目ね」
「あ……ああ……!」
もはや恐怖で悲鳴も上がらなかった。
少女はもう笑顔ですらない。
本性をさらけ出した少女の顔は……とても昏く、陰惨な表情をしている。
「正直言ってあなたは不愉快だったわ」
少女は無表情で言う。
怒りとは言えない、言い難いような顔で。
「平気で人の心を踏みにじり、手折る。あたしはそんな容赦しない外道がね、大っ嫌いだったわ」
「…………!?」
「だからこうして常に笑顔で、楽しそうな声を出して、隠してたけど……今だけはいいよね」
「ひ…………!」
すると少女は手に持った鉈を大きく振り上げて、カルリトロスの元へ近づいていく。
少女の変貌した顔に恐怖があるのか、カルリトロスは少女に背を向けて逃げ出す。
「ああ……!」
「待って……」
ブンッ! ザクッ!
「ぎぃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
しかし、そんなこと少女は許しはしない。
少女は鉈を投げ、カルリトロスの足を割った。
そこらじゅうに響き渡る悲鳴に構わず、少女はもうひとつ鉈を抜いて振り上げた。
「い、痛い……痛いぃぃぃぃぃ!」
もはやカルリトロスに戦意はなかった。
両腕は斬りおとされた。
足を割られた。
少女のあまりにも違う変貌に戦慄した。
精神が不安定なため精霊術は使えない。
もう彼になす術はない。どうしようもない。
「や、やめろ! こっちに来るな! おい! 助けてくれぇ!」
もう彼には……
プライドなどまったくなかった。
命乞いをし、必死に後ずさっている。
「い、いやだ! 死にたくない! 俺はまだ死にたくない!!」
「あなたに命乞いをした人もあなたと同じ気持ちだったんだね。それなのにあなたは……」
「!?」
「殺すわ……あなたのような外道を……この手で……」
「い……いや……たす、け……」
「もうあなたに……酷い目に逢わされない人のために……」
そして、少女は鉈を振り下ろし……
「……さて、終わったわね」
手に血で濡れた刃物を持つ少女の目の前。
そこには体中割られた、物言わぬ火蛇族の死体がある。
「白零君ったら本当に詰めが甘いね。ここで殺さないから、その甘さにつけあがって、またしても同じことをする馬鹿が出てくるってものよ……」
少女は血に濡れた鉈を持っていた布で拭い、仕舞った。
「ただ防ぐだけじゃ本当に護れないわ。脅威を払ってこそ護るのよ」
少女は折れた刀を拾い、呟く。
「正直、会いたいな……」
名残惜しそうではあったが……
「……会っちゃおうか♥」
少女はまた元の状態に繕うと……
「……今の白零君じゃ満足に動けないしね♥」
そう言うと、村の方へと向かったのだった。




