↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
58/68

第五十八話

ギィィィン、ギィィンッ……!


火花を散らしながら、ユーは死力を尽くして剣を振るい続けた。だが、フェルゼンから放たれる触手の速度と数は、ユーの限界を刻一刻と削り取っていく。


(……くそっ、キリがない……!)


弾いても、斬っても、赤黒い粘液は即座に形を変えて襲いくる。

反撃の隙を見出せないまま、腕の筋肉は悲鳴を上げ、視界には激しい疲労が混じり始めた。

その時だった。


——パキン。

研ぎ澄まされた神経が、絶望的な音を拾った。

これまでの激闘、そして過負荷なまでの高密度耀気に耐えかね、師匠から譲り受けたユーの愛剣の腹に細い亀裂が走る。


「……しまっ——」


動揺が走った刹那、フェルゼンの触手が、獲物を狙う蛇のようにその隙を突いた。


ガシュゥゥゥッ!!


「……が、はっ……!?」


次の触手を弾こうと掲げた片手半剣が、黒く硬質化した槍の直撃を受けて粉々に砕け散る。


防壁を失ったユーの無防備な胴体を、二の矢となる槍が容赦なく貫いた。


槍の穂先がユーの横腹を深く掠め、鮮血が夜の闇に舞う。

凄まじい衝撃に、ユーの体は木の葉のように吹き飛ばされ、地面を転がった。


「カハッ、……はぁ、……がっ……」


脇腹を抑え、荒い息を吐きながら顔を上げる。

指の間から溢れ出す温かい血が、地面に黒いシミを作っていく。


手に残っているのは、無残に折れ、輝きを失った剣の柄だけだった。


「おや、もうおしまいかい? あれだけ力強かった耀気も随分と弱まってしまったね」


フェルゼンは一歩も動かぬまま、ゆらりと触手を揺らして嘲笑う。


武器を失い、傷を負い、絶体絶命。

ユーの手から、剣の柄がするりと零れ落ち、石畳に乾いた音を立てた。

ユーは震える左手でポーチを探り、そこから二つを取り出した。


禍々しく脈動する『紫の結晶』。そして──夜月耀石。


「いいさ……やってやるよ……!」


血に濡れた右手。その人差し指と中指の間に『紫の結晶』を、中指と薬指の間に『夜月耀石』を、それぞれ深く挟み込む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。