第五十二話
「おい……ユー! まさかお前、あの時の力を使う気か!? あの嫌な感じは、ありゃあ耀気とは違う……おそらく命を削る力だ! お前自身がわかってるだろ!」
カッセルが絶叫した。彼でさえ、ユーが今からやろうとしていることの狂気に戦慄していた。
「やめろ……ユー! あんな……死んじまうぞ」
カイルも必死に声を絞り出すが、ユーの耳には届かない。
「……あいつを、逃がすわけにはいかないんだ。フェルゼンを殺すためなら邪魔するコイツも殺す。命を賭けて!!」
ユーは自身の全耀気を一点に集中させ、高密度のエネルギーとして『夜月耀石』へと叩き込んだ。本来なら耀気が通りにくい夜月耀石に亀裂が生じる。黒霧魔獣と似た黒い靄のような生命エネルギーが発生、赤蝕の核である紫の結晶に絡みつくようにユーの右手にあの時同様の黒きオーラが発せられる。
「やめろぉぉぉ!!」
カイルは叫ぶ。
ユーの右手を覆う耀気は、光を放つ炎から、周囲の光も音も吸い込む「漆黒の靄もや」へと変貌した。本来、耀気が循環することのない石が強制的に励起れいきされ、世界の理から零れ落ちた暗黒のエネルギーが溢れ出す。
「……ぐ、あああああッ!!」
ユーの絶叫が夜空を裂いた。
右腕を駆け巡るのは、血管を焼き切り、神経を逆なでするような激痛。漆黒のオーラの中に、赤い光が混じり、赤黒い放電が始まる。
激痛に顔を歪めながらも、ユーは前を見据える。
しかし、その右腕から放たれる圧倒的な「圧」は、居合わせた者すべての本能に死を予感させた。
「くっ……ユー、お前ってやつは」
カッセルが絶句する中、劫斧竜は警戒体制となり、喉を鳴らした。
ユーは、獄炎武猿との戦闘時よりもさらに大きく迸る、赤黒い雷を撒き散らす右腕を無造作に下げた。




